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読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
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訪問者
山中にひっそりとたたずむ古い洋館——。
三年前、近くの湖で不審死を遂げた実業家朝霞千沙子が建てたその館に、朝霞家の一族が集まっていた。
千沙子に育てられた映画監督峠昌彦が急死したためであった。
晩餐の席で昌彦の遺言が公開される。
「父親が名乗り出たら、著作権継承者とする」
孤児だったはずの昌彦の実父がこの中にいる?
一同に疑惑が芽生える中、闇を切り裂く悲鳴が!
冬雷の鳴る屋外で見知らぬ男の死体が発見される。
数日前、館には「訪問者に気を付けろ」という不気味な警告文が届いていた……。
果たして「訪問者」とは誰か? 千沙子と昌彦の死の謎とは?
そして、長く不安な一夜が始まるが、その時、来客を告げるベルが鳴った——。
嵐に閉ざされた山荘を舞台に、至高のストーリー・テラーが贈る傑作ミステリー!(カバー折り返しより)

面白かった! 恩田陸成分をいい感じに補給しました。
視点となる人物は、昌彦について話を聞きたい、と館を訪れた記者。館には五人の老人たちとお手伝い、預けられている子どもがおり、記者はカメラマンを連れて、彼らから昌彦の話を聞き出そうとする。しかし、次々と明かされる謎の答えと嵐の訪れ、そして「訪問者」の存在で、全員が疑心暗鬼に陥っていく。
大きな謎がいくつかあって、小さな謎から始まってそれが解決して、でも次の謎のせいで疑心が芽生えて、という密室ならではのミステリーだった。
老人たちのおしゃべりや、頭の良い人の存在、映画というモチーフなど、恩田陸さんが好きそうなものを結構取り込んである感じがしました。老人たちの中で、千次さんが好きだ! 老人という部分がなんだかとてもいい。
種明かしはすごく面白かった。すごく、らしかったと思う。締めの言葉も!
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太陽の塔 (新潮文庫)
私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった! クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。(裏表紙より)

京都の大学生のクリスマスまでの出来事を描く? ラストに全部持ってかれた気が。
「それ間違ってるんじゃ!?」という言動が飄々と行われるので楽しい。男の人がみんなこう考えているんだとすると、たのし、たの、た、…………鬱陶しそうだなあ(本音) 高薮さんがなんだかかわいいな、と思った。女の人に怯える男の人か……新しい萌えポイント?
クリスマスの事件はとても爽快だった。それまでが男ばっかりで妄想で鬱屈しているせいかな。みんなの一体感というか、それまでばらばらだったそれぞれの心のくらーい部分が、一気に爆発したような。それこそ、当時の流行みたいに。
なんだかくすりと笑えて、ちょっとほろっと来た話だった。
はるがいったら (集英社文庫)
両親が離婚し、離れて暮らす姉弟。完璧主義の姉・園は、仕事もプライベートも自己管理を徹底しているが、婚約者のいる幼なじみと不毛な恋愛を続けている。体が弱く冷めた性格の弟・行は、寝たきりの愛犬・ハルの介護をしながら高校に通い、進路に悩む。行が入院し、ハルの介護を交代した園。そんな二人に転機が訪れ——。瑞々しい感性が絶賛された、第18回小説すばる新人賞受賞作。(裏表紙より)

完璧主義の姉と、病弱な弟という設定に惹かれたので、表紙買いしてみた。
瑞々しいとあるように、とても澄んだ印象の物語でした。でも内容は結構現実的でリアルだ。
完璧主義の描写がなるほどなあと思うくらいリアルだった。書くのが女性だけあって、園の話は特に、二十代くらいの若い女性らしい話だったように思う。女のどろどろ恐い。思い込み恐い。レストランのシーン、すごかった。
解決していないところもあるけれど、それが納得できる。それがタイトルからも伝わってきたし、これは転機なんだなと思いました。いい季節の話でした。
人魚の姫―アンデルセン童話集 1 (新潮文庫)
一目見ただけで人間の王子に恋した人魚の姫は、王子とともに暮したいばかりに、美しい声と引換えに魔女から薬をもらったが……。あまりにも有名な表題作をはじめ、世界じゅうで今なお読みつがれるアンデルセン童話から、『すずの兵隊さん』『ナイチンゲール』『のろまのハンス』『イーダちゃんのお花』『モミの木』『雪だるま』『アヒルの庭で』『いいなずけ』など16編を収録。(裏表紙より)

「ナイチンゲール」のナイチンゲールがけなげでかわいい。
「人形つかい」からもなんとなく感じ取れる気がするのだけれど、やっぱり西洋の宗教観が盛り込まれているのだなあと。「人魚の姫」にそれは顕著だと。人魚姫の話は、再編集された簡単な幼児向けのものや、でずにーの物語のイメージが強すぎているので、この原本たるものを読んで、なるほどなあと思ったりした。特に、幼児向けのものでも人魚姫のラストではどうしても納得できていなかったので(多分でずにーの影響もあるだろうけれどそれ以前にも)、ちゃんとこうして、空気の娘たちの存在や、神様のお許し、といった要素が描かれていると、物語にきちんと納得ができた。読んでよかった。
清兵衛と瓢箪・小僧の神様 (集英社文庫)
瓢簞をこよなく愛した少年と、周囲の無理解なおとなたち。少年が永遠に失ってしまったものは何か? 表題作「清兵衛と瓢箪」ほか、深い人間観察と鋭い描写力で短篇小説のおもしろさをあますところなく伝える”小僧の神様”志賀直哉の代表的短篇13篇。(裏表紙より)

「菜の花と小娘」「荒絹」「清兵衛と瓢箪」「城の崎にて」「赤西蠣太」「小僧の神様」が特に好きだ! 子どもと、幻想と、恋愛と、というものが大体っぽいな。
「荒絹」の退廃的な色っぽさはすごい。女神様の狂気すごい。ごちそうさまでした。
「赤西蠣太」は楽しい。思ってもみなかったことによってどんどん転がってしまう自体がおかしい。
この中で一番を決めるのなら、私は「荒絹」を推すかなあ。はっきりした終わりが呈示されているわけじゃないけれど、ものすごく伝承的、神話的な神秘的な要素があって、女神と蜘蛛というモチーフもなんだか土地に根ざした何かを感じるせいか、すごく力があるような。
専門家じゃないので読み方は好きなように読んでいるのだけれど、志賀直哉はやっぱり好きだ。
カオス レギオン05 聖魔飛翔篇 (富士見ファンタジア文庫)
「進むべき道を選べ——ノヴィア」
 ジークは、淡々と言い放った。
 波の音が、空の青さが、迷うノヴィアへと静かに語りかける。
 お前はどこへ向かうんだ——?
 彼女はある決断をする。
 ジークと別れて旅を続けることを。そして、レオニスに会うために、聖地へと向かうことを——。
 ある激突へ向けて、闇の中、静かに動き出すドラクロワ、それに対抗すべく血に染まりながら前に進むジーク。戦う魂たちが、ひとつの戦場に集う!
 伝説の円環がいまここに閉じられる。大人気ファンタジー書き下ろし長編!(カバー折り返しより)

最終巻ではありますが、ここから無印に繋いでエンドマークとなります。
冒頭のほのぼの(「すまん。つい」)ににやにやしている暇はなく、物語は環の閉じるための階段を駆け上っていく。民衆の狂気が、今までの敵の中で一番痛かった。だからか、毅然と立ち向かっていくジークも、ノヴィアも、レオニスも、トールも、たくさんの人々がとても素晴らしく格好良かった。
萌えポイントとしては、ノヴィアとレオニスがそれぞれの立場からそれに相応しい言葉遣いで、意志を告げるシーンだと思う。それからジークの到着! 「ただ一人の——軍団(レギオン)……」の盛り上がり方は異常だ。
とても楽しかった。いい戦いの物語だった!
カオス レギオン04 天路哀憧篇 (富士見ファンタジア文庫)
「ノヴィア、そんなに吠えると、ジークに嫌われるぞ。蔵の番犬みたいだぞ」
「い、犬……。泥棒猫みたいな人が、何を言うのっ!」
 あの頃の私たちは喧嘩ばかりだった。今ならその理由がわかる。キリが私にないものをたくさん持っていたからだ。自由で、強くて、誰とでも仲良くなれて。それでも、私にとって初めての同い年の仲間だったし、本当はキリと一緒に行ってみたかった。
 ジーク様が言っていた「全てが終わり、全てが始まる場所」——そう、海へ……。
 大幅加筆で生まれ変わった、大人気ファンタジー長編!!(カバー折り返しより)

ガールミーツガールの04。一方でのレオニスの狂気が恐ろしいです。
レオニスは何らかの形で弾圧されるんだ、と思って読んでいて……こう書くのが冲方さんなんだろうなあ……すごいなあ……。
ノヴィアとキリのやり取りは微笑ましかった。女の子同士の喧嘩調ってあんまり見ない気がするので。それを「放っておけ」と言うジークは、言葉だけでは冷たいように見えるけれど、実際気付かないところでにっとしてそう。
そしてやっぱりジークとドラクロワの絆が泣けて仕方がない。
だからかなあ。エピローグに少しだけ描かれた、ノヴィア、アリスハートとレオニス、トールとキリの遠くで、ジーク、ドラクロワ、シーラの三人が語らっていて……というシーンで、何故だか分からないけれど涙腺が崩壊した。ぼろっぼろに泣いた。絶対……な時間だからかなあ。多分全編を通して一番好きなところだと思う。
檸檬 (新潮文庫)
31歳の若さで夭折した著者の残した作品は、昭和文学史上の奇蹟として、その声価はいよいよ高い。果実の異常な美しさに魅惑され、買い求めた一顆のレモンを洋書店の書棚に残して立ち去る『檸檬』、人間の苦悩を見つめて凄絶な『冬の日』、生きものの不思議を象徴化する『愛撫』ほか『城のある町にて』『闇の絵巻』など、特異な感覚と内面凝視で青春の不安、焦燥を浄化する作品20編を収録。(裏表紙より)

記録から洩れていたので今更ながら感想を。
「Kの昇天」「桜の樹の下には」「冬の蝿」が特にお気に入り。一番を決めるとしたら「冬の蝿」かなあ。
冬の、白々した光が汚れで曇った窓硝子越しに射している、という状況がなんだかありありと浮かんだ気がした。
桜の樹の下には、はこれかあと思う。同じ桜を使った作品で安吾の「桜の森の満開の下」があってあれがとても好きなのだけれど、「桜の樹の下には」のウスバカゲロウの屍体がすごく、つやっぽいというか、色っぽいというか、なんだか底知れぬ恐ろしいもののようでちょっとびくっとわくっと二つ来た。
カオス レギオン03 夢幻彷徨篇
 赤き騎士は、ふと目覚めた。
 だが、頭の中に白い靄でもかかっているようで、何も思い出せない。手には鞘のない剣。辺りは静まり返り、花の甘い香りが微かに漂っている。
(斬らなければならない——)
 ふいに強い決意が胸をつく。誰を? なぜ? その時、男は壁に刻まれた名前を見つけた。
「……ノヴィア」
 騎士——ジーク・ヴァールハイトは一人立ち尽くすのだった。
 霧深い古城。レオニスの刺客によって、ジークとその従士のヴィアは離れ離れに。しかも、お互いに記憶を失って……忘却の果てに二人が辿り着くのは!?
 追憶が遠い過去を呼び醒ます——。
 書き下ろし大巨編第三弾!!(カバー折り返しより)

この巻もものすごい濃かった! 敵を打ち砕く時の爽快感がたまらなくよかった巻でした。もちろんそうだということは、物凄い困難があるわけで。
魔術とかではなくて、絶対的にも思える香りの力で記憶をなくす。でもそれをどうやって打ち砕くんだろう、とどきどきしながら読み進めました。
カオスレギオンは、ジークが秘めた深い悲しみと思慮があるのに、とても力強く大地を歩み勧めている気がしていいなあと思う。
ティアに対してのジークの宣言が、震えが走るほどの強さに満ちていて、うるっとしてしまった。
カオス レギオン02 魔天行進篇
 どこまでも荒れ果てた大地が広がっていた。大地は人々が踏み締める足音でいつまでも揺れていた。
 二万人の民衆たちが荒野を進んでいた。
 永遠に消え去った故郷を胸に。
 遥かなる新天地へ向かって。
 彼らを守るため、赤き黒印騎士(シュワルツ・リッター)ジークは孤軍奮闘の戦いを続ける。それはかつての友ドラクロワと共に抱いた理想を証明するため。だが、行く手には忌まわしき過去の残像が立ちはだかる。その果てに待つものとは!?
 失われた故郷を夢見て、全ての終わりが始まる——。
 書き下ろし軍勢ファンタジー巨編!!(カバー折り返しより)

二万人の群集と共に歩き続けるのがこの巻。
難民とも言える人々が、各地で受ける扱いと、襲撃から身を守りながら進む。襲撃を指示しているのは、あの少年なのだけれど。
どっしりと歩んで行く印象で、とても面白い巻だった。これ下手すると単調でつまらない気がするのだけれど、やっぱり冲方さんだなあ……!
そういう、長く険しい道程を辿り着いた先にある未来は、セグレブの民の受け入れによって明るい光が射したんじゃないかな。セグレブの民の代表の言葉がなんだか染みる。
なんだか不穏な気配、刺客が三人集結したところで幕。
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Author:月子
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