読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

——僕は佐藤さんが苦手だ。地味で、とろくて、気が利かなくて、おまけに大して美人でもない佐藤さんと隣の席になった、ひねくれもの男子の山口くん。何気ない高校生活の日常の中で、認めたくないながらも山口くんは隣の席の佐藤さんに惹かれていく。ある時、熱を出して倒れた佐藤さんの言葉をきっかけに二人の関係は急速に変わっていく………。甘酸っぱくてキュンとくる、山口くんと隣の席の佐藤さんの日常を描いた青春ストーリー!(裏表紙より)
小さなお話が連続する構成の、甘酸っぱい恋物語。日常系の四コマ漫画とかショート漫画みたいなお話だなあという印象。
人の本質や、見た目に表れていないかもしれないけれど純粋で優しい気持ち、そうしたものに惹かれてしまう、という感じの山口くんも愛おしい。佐藤さん、いい子だよねえ。佐藤さん視点なら普通の恋愛小説なんだろうけれど、あえて山口くんの視点で、最初はさほどいい印象を持っていなかったのが変わって、というのがとてもいい。ぴゅあぴゅあで浄化される。可愛らしいお話でした。
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「自分が食べるためにこそ、おいしいものを作らなきゃ」菜の花食堂の料理教室は今日も大盛況。オーナーの靖子先生が優希たちに教えてくれるのは、美味しい料理のレシピだけじゃなく、ささやかな謎の答えと傷ついた体と心の癒し方……? イケメンの彼が料理上手の恋人に突然別れを告げたのはなぜ? 美味しいはずのケーキが捨てられた理由は? 小さな料理教室を舞台に『書店ガール』の著者がやさしく描き出す、あたたかくて美味しい極上のミステリー!(裏表紙より)
おおー面白かった! 人間関係や人のいやらしいところが描かれたものって、嫌な気持ちにもなるんですけれど面白いなあと思う。
退職後、新しい職を見つけられないまま、靖子先生の厚意に甘えて料理教室の助手をしている優希。教室に来る生徒さんたちの様々な謎を、食を通じて紐解く。探偵役は、料理上手で観察眼の鋭い靖子先生。
優希自身の人格性があんまり表に出ず、距離を取っている感覚があって(自分のことを語っていないわけじゃないんですが)入り込みにくいところがありますが、この独特の距離感がいかにも現代っぽい。優希が新たな一歩を踏み出す話、続きで読めるのかなあ。

名家に生まれた美世は、実母が早くに儚くなり、継母と義母妹に虐げられて育った。嫁入りを命じられたと思えば、相手は冷酷無慈悲と噂の若き軍人、清霞。大勢の婚約者候補たちが三日と持たずに逃げ出したという悪評の主だった。
斬り捨てられることを覚悟して久堂家の門を叩いた美世の前に現れたのは、色素の薄い美貌の男。
初対面で辛く当たられた美世だけれど、実家に帰ることもできず日々料理を作るうちに、少しずつ清霞と心を通わせていく——。
これは、少女があいされて幸せになるまでの物語。(裏表紙より)
ここまで徹底した薄幸ヒロインはずいぶん久しぶりに見た気がします。虐げられて育ったせいで儚げな雰囲気で、あまり強く前に出ることもないか弱い少女。そんな彼女を放っておけなくなってしまった、冷酷無慈悲と評判の異能家系の大家の当主の、儚い系大正風ファンタジーロマンス。
美世の境遇がもう本当にかわいそうで、序盤半泣きで読んでました。胸が痛いよ。どうしてこんなに虐げられなくちゃいけないんだ。
清霞が優しい人であることは最初からわかっていたので、これまで追い返されたというお嬢さん方はよっぽどよっぽど……な人柄だったんだろうなあ。しかし縁談を持ってくるという先代が謎めいている。ラストでこの人との対峙があるかもと匂わされていましたが、美世に戻ったかもしれない異能も含めて、二人がどう頑張って乗り越えるか楽しみだ。

油野池鈴子、31歳。ちなみに処女。現在3クール目に突入した人気特撮シリーズ「ワンワン戦隊犬ファイブ」にどハマリ中。しかし、お気に入りのレッドに似た職場の同僚・岡島のことが気になるようになって——?(「犬っぽくなかったです」宮木あや子)
気心の知れた幼馴染み、隣の席のクラスメイト、職場の上司、マンネリ気味の恋人、長年連れ添った夫婦——。いろんな「恋」を集めました。
人気作家の書き下ろしも収録した、頁をめくるごとに「好き」が溢れる20人の恋物語。(裏表紙より)
天沢夏月さん、霧友正規さん、宮木あや子さんの短編を収録しつつ、カクヨムの公募で受賞した短編を集めたもの。
宮木さんの「犬っぽくなかったです」は他作品の関連作ですね? 是永是行は『校閲ガール』、途中でアイドルの追っかけが出てくるのは『婚外恋愛に似たもの』かな? 婚外恋愛はちょっと手元にないので確認できないんですが。オタクものとしてとても面白かった。
短編といっても手法や物語は様々だなあと思って楽しかったです。

オープンリー・ゲイである歌人の鈴掛真が、LGBT、特にゲイについての素朴な疑問に答える。初恋はいつ? ゲイだと自覚したのはいつ頃? もし友達にゲイだと打ち明けられたら? などLGBTを考える入門書。
非常にわかりやすくて面白かった。文章が柔らかくて優しい。心地いい文を書く人だなあ。
「いつゲイだと自覚した?」とか「初恋は?」など定番の質問にも答えつつも、「それは男女間だったらこういう理由なので失礼」など言い換えてくれるのがわかりやすい。セクシャリティの問題って同性間でもやっぱり不用意に踏み込むべきではないから、ちゃんときっちり言ってくれるのがすごくよかった。
LGBTの人に特権を与えるのではなく、マイナスのものをゼロに戻そうしているだけだという言葉には深く頷いた。差別とか平等化ってそういうものだと思う。でもそれを特権だと考える人が多いんだよな……。

地域、国、宗教から「食べてはいけない」「食べない」とされるものがある。では何故食べないのか? 何故他の地域で食べられていないものが食べられているのか? を考える。
わかりやすい文章で、考えてみようと提起する本。十代から向けなのかな? 文体がブログみたいで不思議な読み心地だ。なので著者の私見が入っているところがたくさんあって、うーんとなるところもあり。
インド人が牛を食べないのはどうして? アメリカなどでは鯨を食べないけれどどういうこと? 日本でもカイコやハチノコを食べるところと食べないところがあるけれどどうして? そういう不思議を、宗教性や地域性、いうなれば国民性などに絡めて推測しています。
価値観の共有を表したものが食であるという考えは面白いなあ。

夫と別れ、離婚を話し合っていた著者は、出会い系サイト「X」で出会った人に本を薦めるのはどうだろうかと考えた。30分間会って話し、相手にぴったりな本を探してお勧めする中で見えてきた自分の気持ちとは……。
すごく面白かった! エッセイなんだけど小説みたいな構成だったなあ。すごくリアルで、身近で、この感覚知ってるという気持ちになった。
出会い系サイトだからまあそういう、ヤリ目とか変な人の闇みたいなものに遭遇しつつも、この人と仲良くなれるかもと思って実際にやり取りが続いたり、新しい世界の扉が開けていく感じがすごくいい。出会いの母数が増えると世界がちょっとずつ広がるんだよなあ、わかる。
出会い系サイトから始まって、出会いが別の形で繋がって、イベントをやってみたりなどして、と普段の自分の世界にないことが次々と展開されていったのがすごく素敵だし羨ましい。ささやかでも変化を楽しめるっていいことだ。大きな問題に区切りをつけるには、そうしたところで力をもらうといいのかもしれないなと思った。

宦官とは、去勢された男子で宮廷に仕える者をいう。その歴史は古く、日本以外の世界各国に広がったが、特に中国史上での活動は有名である。その驚くべき実像を克明に描いた点で、いまも比肩するものがない名著。(カバー折り返しより)
2003年3月改版のもの。宦官とはどういうものなのか、歴史的にどう関わってきたのか、皇帝や皇后との関わりも含めてまとめたもの。
以外と中国系の資料って読んでいなかったので、とても興味深かった。こういうのをたくさん読んで中華ものや歴史ものを読むとまた違うんだろうなあ。宦官というと悪者か、とてつもなく有能な側近というイメージだったんですが、時代によってその役割もあり方も変わっているんだな。

14歳で欧州一人旅、17歳でイタリア留学。住んだところは、イタリア、シリア、ポルトガル、アメリカ。旅した国は数知れず。ビンボーも挫折も経験し、山も谷も乗り越えて、地球のあちこちで生きてきた漫画家をつくったのは、たくさんの本と、旅と、出会いだった! 古今東西の名著から知られざる傑作小説に漫画まで、著者が人生を共に歩んできた本を縦糸に、半生を横糸に綴る地球サイズの生き方指南!(カバー折り返しより)
人生の山と谷にはいつも傍らに本があった……という「テルマエ・ロマエ」のヤマザキマリさんの半生を書いたもの。ものすごい経歴というか、グローバルだなあ! 孤独に磨かれた感性という言葉が浮かぶんですが、音楽家のお母様の存在と子どもの頃の寂しさ、外国に渡ってから自分を助けられるのは自分だけと思って暮らしてきた強さ、他の芸術家の卵たちとの触れ合いで得た孤独と気高さという、すごく芸術家の人生を送っているという感じがする。いやそれにしてもすごい。たくましい。図太いんじゃなくて、すごく考えて生きてるって感じがしました。面白かった。
