読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

こんな男のどこがいいのか。
それぞれに魅力的な5人の女性を振り回す、伊藤誠二郎。
顔はいいが、自意識過剰、無神経すぎる男に抱いてしまう恋心、苛立ち、嫉妬、執着、優越感。
ほろ苦く痛がゆい、著者会心の成長小説。(帯より)
伊藤くんなる男との出来事を、五人の女性それぞれから描く短編連作。千葉の地主の坊ちゃんだけれど、自意識過剰で、無神経で、人を小馬鹿にした言動をする伊藤。ろくに就職もせず、口だけで自分はシナリオライターを目指しているという。何故かそれに振り回され、傷つき、周囲との関係もだめにしてしまう女性たち。もう胸に痛くて痛くて……。特に、友人との関係を壊してしまうところが辛い。
しかし、最後の「伊藤くん E」の章を読むとぎょっとする。仕事もプライベートもうまくいかず腐っていく女性が、時間をかけて呪いをかけたところに言いようのない気色の悪さを覚える。そうして、伊藤の抱いていたものが明らかになった瞬間、頭を掻きむしりたい不快感が……。
すべてのことに冷めている現代っ子やニートを理解できない側から描くとこうなるのか、と思った話でした。面白かったけれど、ちょっと苛立ちが残るところがあるのが、また味なのか。
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帝に特別愛された薄幸の女性に端を発して物語は進んでいきます。
死んだ母に似ているという父の新しい妃に対する思慕。山里で源氏はその妃の面影を持つ少女を垣間見ます。紫の上との出会いでした。(カバー折り返しより)
源氏物語を現代訳して、読みやすい平易な文章に仕立てたもの。すごく読みやすいし、分かりやすい。原文を最後まで読んだことがないけれど、これは「源氏物語」を読み通すのにいいきっかけになりそう。花鳥風月、四季とともに、様々な恋と宮中の出来事が描かれるのは優雅で、その時代の人たちが夢中になったのも分かる気がします。
しかし、私は光君が嫌いなのだった。どれほど容色にすぐれ、才覚のある、細やかな人物でも、女癖が悪かったら何もかもアウトだと思います。この本を読んでますますこいつはなんというだめんずだろうと思った。女性が離れようとすると惜しいと思って、文を送ったり会いに行ったりするところが嫌いだ!
そういう感想を抱けるくらいにとても読みやすい本なのですが、一つだけ。読みやすさを重視して、作中の和歌の部分も意訳にしてあるのが惜しい! ここは雰囲気が分かるようにうたで読みたかったかも。かっこ書きにして訳を載せるとかで!
![鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星【通常版】 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51TU5Oj4LBL._SL160_.jpg)
己の身体を取り戻すため、旅を続けているエドワードとアルフォンスは、脱獄した囚人メルビンが不思議な錬成陣を用いたことに興味を引かれ、彼を追う。その途中、同じく囚われていたジュリアという少女に出会った兄弟は、谷底に住むミロス人の状況を知ることになり……。
ど派手なアクションと、劇場版だというのに骨太なストーリーで、思ったよりも面白かった……。エルリック兄弟の罪と罰はそれほど描かれず、この世界に存在する錬金術師の業が、人と国を巻き込んで、呪いのように取り巻いているという話。その呪いに囚われた人を、今そこから逃れようともがいている兄弟が助ける、というストーリーだったでしょうか。
すみません、見た時期が悪かったと思うのですが、谷(底)の街、人々特に子どもから慕われ、戦う人々の旗頭になっている少女、飛行装置という小物がどうも姫姉様を思い出してしまいました(ちょうど金曜ロードショーの日だった)。ちょっとした言動(機械鎧技師のゴン爺や、ジュリアにお守りを渡す女の子)や、ジュリアの描き方(戦いに赴く前の膝抱えポーズ、怒り狂って剣を振り回すところ、力を得た時に膨らむ髪)などが、狙ってませんかという……。ジュリアが若すぎるせいでカリスマが足りない姫姉様だわ……と思ってしまった。
しかしそれにしてもアクションが派手で、うまいこと動くのでわくわくした! 最後は駆け足だったけれど、一つのお話になっていて面白かった。ジュリアを大事にしすぎて他のヒロインたちがちょっと唐突でしたが、みんな可愛いのでよし。
予告にありましたが、緑色の光を放っている兄妹のシーンが好きです。あの光の放ち方がすごく切なくて、どこのシーンか楽しみにしていました。
自身の行ってきたことを背負い、過去を負って生きているエドとアルが、自分たちと同じところに落ち込まないよう、人を助ける。二人らしいところがたっぷり見られて面白かったです!

聖鏡女学園中等部二年の範子は、仲良しグループで地味ながらも平和に過ごしていた。ところが、公開裁判に掛けられ地位を失った滝沢さんを迎えることとなりグループの調和は崩壊! 範子達は穏やかな日常を取り戻すため「プリンセス帰還作戦」を企てるが……。(帯より)
女子中学生のグループ抗争。スクールカーストは、自分が遠く離れたから笑って読めるんだけれど、今は今でなかなか(以下略)と思いながら読む。似たような子たちが集まって、その固まりをそっと眺めている気持ちはよく分かる。気持ちがころころと変わって、残酷な自分に気付いたり、自分のしたことを否定されると腹が立ったり、分かる、分かるよ……! という部分がたくさんありました。
そしてラストがとても綺麗でうっかり涙が出そうになった。一番苦しい時期を乗り越えると、何もかもが楽しくて、きらきらし始めるんだよなー。大人になるってそういうこと。
![青の祓魔師 劇場版【通常版】 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51o-S0DhKEL._SL160_.jpg)
十一年に一度の祭りを前にした聖十字学園町。燐、雪男、しえみの三人は、ファントムトレイン討伐任務にあたっていた。しかしその任務の最中とある祠を破壊したことで、封印されていた悪魔が姿を現してしまう。幼い少年の姿をした悪魔を監視する燐だが、うさ麻呂と名付けて親しくなっていく。
青エクでお祭り騒ぎするよ! という話で、とにかく燐を愛でようという映画だった気がしました。兄弟の険悪さはちょこっとだけ。仲間周りも薄く、しえみも特に目立ったことをするわけでもなく。燐が主人公らしい男前さと無謀さで、やっぱり彼が好きだなーと思いました。悪魔と友達になるという燐らしさと、悪魔は悪魔なんだという雪男の真っ直ぐさがきっちり描かれているので、燐が燐らしいところをとことん描いた劇場版という印象です。
よく動いて戦うし派手だし、背景美術が美しくて好きだ! 本編は和洋折衷な、洋風寄りの現代日本的な世界観だったように思うのですが、劇場版はアジア系で赤い色が素敵ですごく好み! 雑多な感じがすごく好きだー!
何故これを見ようと思ったのかというと、サントラがすごく好きで、音楽が聞きたかったせいもあったのでした。やっぱりいい曲だった。
![ラブ・アクチュアリー [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51hX96SuUoL._SL160_.jpg)
近付くクリスマス。数組の男女がそれぞれその日を迎える群像劇。
マーティン・フリーマンが出ているので見ようと思ったのと、ちょうどクリスマスイブだったので!
楽しかった。ロマンチックだしくすっとできるし、幸せなカップルはよいものです。恋がうまくいかなかったり、頑張ってみたり、切ない気持ちを抱いて笑ってみたり。それぞれの方法で恋をしているところがいい。幸せな気持ちになりました。
役者さんの豪華さがすごい! この人見たことあるー! という人がいっぱい出ている。ビル・ナイさんの弾けた演技がすごく好き! 吹き替えもすごくぴったり。それから首相がめちゃくちゃかわいいー!! 政治家なんだから有能でしたたかなはずなのに、可愛いってどういうことやねん! とにやにやもだもだしてしまった。それからそれから、サム役のトーマス・サングスターがこれでもかという美少年でもう、もう……!! 走っていく男の子はすごくいい。大好きだ。血のつながらないお父さんとの関係もにこにこして見てしまった。
楽しかったです!

廓遊びを知り尽くしたお大尽を相手に一歩も引かず、本気にさせた若き花魁葛城。十年に一度、五丁町一を謳われ全盛を誇ったそのとき、葛城の姿が忽然と消えた。一体何が起こったのか? 失踪事件の謎を追いながら、吉原そのものを鮮やかに描き出した時代ミステリーの傑作。選考委員絶賛の第一三七回直木賞受賞作、待望の文庫化。(裏表紙より)
面白かった! 謎が一気に明らかになろうとするところで、頭の中でじゃんじゃか三味線と鳴り物の音が聞こえてきて、うおおおおと叫んだ! すごかった!
吉原の花魁葛城が忽然と姿を消した。素晴らしい花魁だったと誰もが口する葛城が、決して抜け出ることができない吉原から消えたという前代未聞の事件から、しばらく経った頃。ある人物が、葛城に関わる者たちに聞き取りを始めた。本文は、その聞き取りを行っているので、誰かが聞かれるままに喋っている調子で書かれています。
全員に話を聞いてからが本番。がーっとラストまでの展開が始まるのでページをめくる手が止まらなくなった。
吉原が舞台だと普段読んでいるもののせいで、ちょっとファンタジーなイメージを抱いてしまったままだったのですが、ラストでぴしっと「時代小説!」と締めてくれたのが気持ちよかったです。

疏水に近い亡友の生家の守りを託されている、駆け出しもの書きの綿貫征四郎。行方知れずになって半年あまりが経つ愛犬ゴローの目撃情報に加え、イワナの夫婦者が営むという宿屋に泊まってみたい誘惑に勝てず、家も原稿もほっぽり出して分け入った秋色いや増す鈴鹿の山襞深くで、綿貫がしみじみと瞠目させられたもの。それは、自然の猛威に抗いはせぬが心の背筋はすっくと伸ばし、冬なら冬を、夏なら夏を生きぬこうとする真摯な姿だった。人びとも、人間にあらざる者たちも……。(帯より)
私『家守綺譚』は文庫で読んだので、この本の感想を書くにあたって調べたところ、『冬虫夏草』と『家守綺譚』の装丁が揃えてあることを知りました。単行本の装丁がきっちり揃っているのっていいよね!
『家守綺譚』シリーズ、と読んでいいのかな。今回は家を守るのではなく、不思議なものが少し混じっている田舎に分け入っていく話。家守の時も、ほんのり異界の空気、少し前、けれど遠い時代の出来事を描いていることに、しんと積もるものがあったのですが、冬虫は、それよりも不思議なものどもに近い作品だと感じました。でも家守を読んだのがだいぶと前なので読んだ感覚が違っているだけなのかもしれないけれど。
異界のものが何食わぬ顔で混じっているのに、多くの人がしれっとそれを受け入れている。その中で、綿貫が「おっ」と思う驚きが優しく、発見に満ちた「おっ」なので、読んでいて心地いい。あるものを否定しないという感覚が、優しくていい。

元飯田町に新しく暖簾を掲げた「つる家」では、ふきという少女を下足番として雇い入れた。早くにふた親を亡くしたふきを、自らの境遇と重ね合わせ信頼を寄せていく澪。だが、丁度同じ頃、神田須田町の登龍楼で、澪の創作したはずの料理と全く同じものが「つる家」よりも先に供されているという。はじめは偶然とやり過ごすも、さらに考案した料理も先を越されてしまう。度重なる偶然に不安を感じた澪はある日、ふきの不審な行動を目撃してしまい——。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第二弾!(裏表紙より)
新しい店を得て、嫌がらせを受けながらも着々と店を切り盛りし、名を上げていく澪。しかし、間者や、病や、大事な幼馴染みの負傷などが起こって。ただではいかない運命の持ち主だと分かっていても、はらはらするし、澪が笑ってくれたら心がほっとする。段々と澪のことが好きになってくるシリーズだと思います。
登場人物も少しずつ増えて、恋の予感もあったり……。秘めなければならない、という澪のいじらしいところに、もうハンカチを握りしめて身悶えしてしまいます。もだもだ!