読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

リスカは花を媒体としないと魔術を使えない〈花術師〉。魔術師のあいだでは〈砂の使徒〉と呼ばれ蔑まれていた。
リア皇国の辺鄙な町オスロルで魔力を込めた花びらを売って、細々と暮らしていたリスカは、強盗に襲われボロボロになって森に逃げ込む。そこで傷ついた魔剣を見つけ治癒を施した。
翌朝、自宅のベッドでリスカが目覚めると、見知らぬ男がいた。彼こそは、伝説の〈剣術師〉セフォーだった。
そのころ皇国内では〈死にいたる媚薬〉が売られ、被害者が続出していた。リスカとセフォーは、不穏な世界に否応なく巻き込まれていく……。(帯より)
ずっと存じ上げていた、iaさんのネット小説の書籍化作品。落ちこぼれ魔術師と、正規の魔術師ではないながらも伝説にうたわれる剣術師の、波瀾万丈の物語。
ところどころR15なのにどきどきしつつ、この話ですごく印象に残ったのは、魔術師という存在は賢者の素質を持っているのだなあ、ということ。作中でかなりそういった教育を受けている話が出てきていましたが、そういう素質がないと魔術師は名乗れないのでしょうね。リスカが語るシーンが、なんだか私のイメージする賢者の風格で、おおっと思いました。
セフォーがちょっと不思議で、なのにかわいらしい人で好きです。最強のくせに犬みたいだわー笑 かと思うと揺るぎない考え方を持つ人であり、何故この女だけ特別なのだ他とどう違うのだと問われたときは、リスカ以上にどきん! としました。セフォーの問いかけは、実に真理だと思う。
続きがネットにあるんですよね。時間を見つけて読みたいなあ! この二人はどこへ落ち着くんだろうか。
ところで内容とは直接関係ないんですけれど、この本の装丁が。帯で隠れるとはいえ表紙絵をこう加工するとか、本文の場面転換改行とか両側にもう一行あってもいいんじゃないかとか帯デザインもうちょっとがんば! というか、ここまで見てしまう私が細かいのか……。
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『精霊王の巫女』に選ばれたアイシャと、国王代理を務めるカファス王子の活躍により、かつての平和を取り戻したカダル王国。結婚まであと少しというふたりに、邪悪な陰謀が忍び寄る。突然現れた、魔眼を操る男に幽閉されたカファス。記憶を失い、身も心も囚われてしまったアイシャ。ふたりは偽りの楽園から目を覚まし、奪われた愛の記憶を取り戻すことができるのか——砂漠と精霊の王国を舞台におくる、ドラマチックファンタジー!(裏表紙より)
シャイターンの花嫁の第二巻。一巻から続き、平和になったカダル王国でのアイシャとカファスのその後。あ、あ、あ、あまーーーーーい! アイシャもカファスも相手を好きすぎるだろー!
記憶を失って他人に囚われてしまったアイシャの、心の底にまだ住んでいる人がいるシチュエーションがときめきすぎて動悸がしました。忘れてもまだ好き、というのはほんとおいしいな! それに対するカファスの態度が、もうカファスでしかなくて、多分一人の時すごくもどかしい思いをしているだろうに何にも覚えてないアイシャの前ではちっともそんなそぶりを見せないところが! この! ってなりました。相変わらず人たらしだし。
ナーギもアイシャ好きすぎで、198ページで涙ぐんでしまった。なんだろうなあ、この、カファスではどうしようもできない繋がりみたいなものが二人にはあって、そのつながりが悲しい気もするし嬉しい気もするし、切ないし、けれど優しい。ナーギの株が噛ませ犬以上に上がったんですけれどナーギほんといいやつ……!(ぶわっ)
面白かったです!

全世代の女子に捧げるハイテンション学園コメディ
女子校に憧れた和実は、猛勉強のすえ中の丸学園に合格。だが入学すると、学園は共学になり、「大奥」と呼ばれる生徒会に牛耳られていた! 憧れの「上様」はまるで雲上人。クラスメイトは外部入学者に冷たい。さらに、大嫌いな幼馴染み・鼻くそギルバートに愛を告白されてしまい……。子どもから大人まで全ての女子をときめきと笑いの渦に巻き込む、学園ラブコメの決定版!(裏表紙より)
すげーおもろかった。読んでてすごく楽しかった! ハイテンションの上にラブコメでボケとツッコミばっかりなんですが、そこのへんの元ネタが分かるとかなり読んでて面白かったです。マリみてネタが分かれば大体オッケーだと思います。文体がノリのいいブログみたいだなーと思う。
舞台設定や学園の様子はまったくの非日常なんですが、書かれている人間模様がどう読んでもごくありふれた中学生なのがすごい。友達同士のささいなこと、相手のことを思ったり心配したりとか、特に鼻くそギルバートの事情は現実に本当にあることで、リアルとファンタジーの差みたいなものがすごいバランスで配置されてるのがすごい。
本当に面白かった。楽しかった。ラストのきらっと光る希望みたいなものがいいなと思う。子どもだから、という言葉は強いな。

「ファンの正体を見破れる店員のいる店で、サイン会を開きたい」——若手ミステリ作家のちょっと変わった要望に名乗りを上げた成風堂だが……。駅ビルの六階にある書店・成風堂を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘の鋭いアルバイト・多絵のコンビが、書店に持ち込まれるさまざまな謎に取り組んでいく。表題作を含む五編を収録した人気の本格書店ミステリ、シリーズ第三弾!(裏表紙より)
久世番子さんのコミカライズをすでに読んでいるせいで、読んだか読んでないか覚えていなかったという。そして原作第二弾読んでないよ!
ともかく。不審な本の取り寄せと事件の「取り寄せトラップ」。小学生の少年の不審な行動の理由は……「君と語る永遠」。融通のきかないバイト金森君の「バイト金森くんの告白」。表題作の「サイン会はいかが?」。忘れ物はどこへいったのかという「ヤギさんの忘れもの」の五編。コミックはかなり忠実に描いていたな、と原作を読んで思いました。
じわっとしてしまった「君と語る永遠」。こういう、約束事に私はすごく弱いんだ……いつか、という、その「いつか」を胸に抱いた人が好きなんだ……。「ヤギさんの忘れもの」もとてもいい話でした。こういう交流ができるっていいなあ。
本と書店と書店員とお客と、そのつながりがとても綺麗に描かれていて、杏子たちの台詞ひとつひとつにそれが滲み出ていて、読んでいていいなあという気分になれるお話だと思います。すごく好きです。

サアラは退屈だった。コルドン伯爵家へ嫁いで2か月、夫のジェイクに恋したサアラは、やや一方的な新婚生活を心から満喫していた――10日前までは。仕事で領地を離れたジェイクに、サアラの機嫌は日に日に悪くなり……ついに領地を飛び出して!? 一方、首切り魔の幽霊を捕縛しに来たジェイクは、傍にいないサアラが何故か気にかかり? 「どうやら私はきみが好きらしい」暴走する花嫁と恋を自覚した夫の、予測不能な夫婦関係の行方は!?(裏表紙より)
今までにない真っ黒な性格のヒロインと、何を考えているのかいまいち分からない墓守伯爵の、幽霊と結婚生活の話の第二巻。サアラが相変わらずで何よりです。ここまでよく動く子だと話がくるくるして楽しいなあ!
今回はコルドンの領地を離れ、幽霊を捕縛する話。なのでショタでツンデレ要員のエリオスの影は薄いですが、夫婦! 夫婦の交流がなんてかわいいのだろう!!
突然のハグとか、二人で一つのベッドに寝転がってるのとか、本当にきゅんきゅんしました。ジェイクのキャラが好きなんです。あんまり表情が出ないくせに、結構色々考えていたり頭がよかったり強かったりするところがもうほんと好き……!
サアラとアシェリーゼが仲良しなのもすごく好きです。この信頼できる女友達感(実際は嫁と姑だ)。
首切り魔幽霊事件の真相は、ミミもレニーも切なく感じられました。結末は、サアラとジェイク、この二人じゃないとこの結論は出せないかなあ、と思う。確かにサアラの中では幽霊なんて些細なものなのだなと思いました。

母の再婚によって、中東アルラート国の王族となった坂下雪彦。血の繋がりのないことで、義兄弟たちにいじめられる日々を過ごしていた雪彦を救ったのは、第二王子のサリフだった。ある日、サリフへの想いが恋心であることに気付いた雪彦だったが、身分違いだと諦めようとしていた。だが、サリフが20歳の誕生日を迎えた日の夜、屋敷にやってきたサリフに雪彦は無理やり抱かれてしまう。この関係はサリフの為にならないと思いながらも、逢瀬に溺れていく雪彦。そして、ある事件をきっかけに日本への帰国を決意したのだが…。(裏表紙より)
血のつながりがないながらも王族になった雪彦は、義兄で次期国王と目される本当の王族サリフ王子と交流を深めていく。一度結ばれながらも逃げる受け、というのが珍しいなと思いました。まじで日本に帰るとは思わなかった。でももうちょっと日本でどたばたしてくれてよかったのよ。連れ戻された後は監禁の上に溺愛という定番のコースで、相手にはもうちゃんと妻と子が……自分をいじめていた義兄が……とすれ違いと愛の確認でした。なんかだんだんこの系統が分かってきたぞー!
アラブの王子様は強引で俺様で楽しいですね。飛行機止めたところはちょっときゅんとした(監禁フラグなのに……)。

4歳年下の上司・藤堂と晴れて恋人同士になった果歩。だが、藤堂は今、二人が勤める灰谷市役所を改革しようとして、周りから大きな反感を買っていた。彼の立場をこれ以上悪くしないために、期間限定で距離を置くことを決めたはいいものの、不安ばかりが募っていって……
果歩の元彼や、藤堂に恋心を寄せる若い女の子たち。様々な人間の想いが交錯する中、二人の恋はどのように進展していくのか?
ちょっともどかしい大人のラブストーリー、第2巻。(カバー折り返しより)
第2巻。二人の関係がちょっと進展? ……進展、してるのかなあ……? と不安になる巻でした。面白かったんですけれど、大丈夫か二人とも! と叱咤激励したくなる。
流されやすい果歩が揺れたり、素直になれなかったり、新しい発見や出会いをしたりしていくところがはらはらどきどきなんですが、とにかく藤堂さんが全然本心を明かさないせいで色々こじれてる気がするよ!笑 果歩と晃司の決着はとてもよかったんですが、この二人が元鞘に戻ってもある意味面白そうだなあと思いました。変わっていく男を見る楽しみがあると思うとかちょっと偉そうなことを考えた。それから、後輩ができたところは大きいなあと思いました。男所帯でただ一人のお茶汲みだったので、果歩は望めるところを望めないようになって閉じこもった感があったような気がします。
今回はお父さんや上司組もにぎやかで、那賀さんの「ツンデレ」発現に噴きました。今回そういうのないと思ってたのでやられたー笑 おやじかわいいよー!

的場果歩、三十歳。彼女が働く灰谷市役所はいまだ前時代的な男性社会で、女性はサポートや雑用ばかり。身勝手な恋人は仕事に夢中で、結婚話をしても冷たい態度。
——私は大丈夫。何があっても、笑っていられる。
自分にそう言い聞かせる彼女を、さりげなく守り、いたわる四才年下の係長・藤堂。その優しさは年上への気づかいか、それとも——?
お互いになかなか踏み出せない、ちょっともどかしい大人のラブストーリー。(カバー折り返しより)
初アルファポリスである。前々から気になっていたんですが、こういう、現代社会の大人の女性の恋愛小説というのはちょっと踏み出すのに勇気がいりました。いやでも面白かったです!
悩みとか周囲の環境がリアルでえぐられた気がしました。しかし果歩は笑って仕事ができる人なのにあれほど抱え込んで悩んでいるとかうじうじしているというのは、色々辛かったんだなあ……と思います。一つ疑うと本当のところが見えなくなる、という感じで、中盤まで胃がぎりぎりする話でハッピーエンドで終わるのだろうかとちょっと疑いました。
そんな果歩を救うのは、年下の上司・藤堂。ちょっと何を考えているのか分からない、不思議な空気感のヒーローは、優しく、時に厳しく、しかし果歩の心を守ってくれようとする。「森のくまさん」という表現がかわいくてツボでした。そういうヒーローすきすき。
二人が恋も仕事もちょっと進展したところで終わっているので、2巻を楽しみに読みます。

「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまでは——。しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。
「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった……!」
恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。(裏表紙より)
ちょーきゅんきゅんした。なんだろう、私はこの子たちを知っている感! どこかでこういう子がいるっていうことを知っている気持ちにさせられてしまった。コミュ能力が低くて、自分に自身が持てなくて、それでも息をひそめながら生きていた感じが、もう懐かしくって、恋が絡むとさらにきゅんきゅんしてしまいました。
特に表題作「百瀬、こっちを向いて。」の、「自分のような薄暗い電球がどうこうとそのころはまだ悩んでいて」という部分が、特にぎゅっときたのは、十代の彼らが持つ悩みや痛みは全部その時のほんの一時的なものだという希望が見えるからです。きっとそんなことに悩まないでいい日は来ると思う。
この文庫に収録された全作が好きです。「あの日の海」に取り残されたままの年上女性と年下男子、先生と女生徒、自分を不細工に偽る美少女と飾らない男子。特に先生と生徒もの「キャベツ畑に彼の声」はジブリの映画とかみたいだったなあ。身体を丸めて座っている女の子が見える気がした。「なみうちぎわ」の閉塞感と切なく純粋な恋は染みたし、「小梅が通る」は気持ちよかった。
すごく面白かったです。

頼まれた荷を届ける「走り屋」の少女リンディは、ある日、王城の竜術師から荷を託される。それは、ドラゴニア王国の命運を左右するという王竜の卵だった!! 走り出したリンディを次々と襲う困難、そして後を追う竜騎兵——。竜術師見習いのアッシュ、謎の男ゼオンに助けられながら、リンディは荷を届けるため、王国の未来のため、命をかけて走りつづける!!(カバー折り返しより)
竜と人が共存する国、ドラゴニア。人は竜術をもって竜を従え、竜を生活に役立てている。しかし王竜と呼ばれる過去現在未来を見通すことができる竜は、国王である聖竜王としか交感できない。王竜の卵は、王位継承者の数だけ産み落とされ、王位に就く者の卵しか孵化しないのだ。
腐敗した王国と無能な王の時代、密かに産み落とされた二つ目の卵をめぐる物語。
竜と暮らす王国なんて、食いつかない方がおかしいだろう! という私好みの設定がちりばめられていました。本当に目的地まで走るだけのお話なんですが、この困難をくぐり、人に助けられ、もしかしたらこの人は……? と読みながら、最後に辿り着くのが本当に待ち遠しかった。一緒に旅をした気分だなあ。このお話、ちょっとした道具とか品物に世界観が見えるようで、どこか知らない世界の風を感じられたように思います。
リンディがもう、本当にどこにでもいる女の子で、使命感とか誇りとかたくさん持っているんだけれど、やっぱり折れてしまうところもあって。かわいいなあ。勇敢で気高い女の子は大好きだ。「お前が走れば世界は変わる」って、すごくいい台詞だった。受けたリンディが走り出すのも無理はないよ!
面白かったです。