読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
戦前に沈んだ謎多き難破船の回収品調査のため、豪華客船に乗り込んだ鷹栖晶と相棒の音井、そして森木。調査開始早々悪魔の気配を感じ、回収品がかつて日本に存在した悪魔研究機関・ファウスト機関が密かに日本に持ちこもうとしていたものだったことを知る。
奇しくもバチカン、WMUA、そして秘密結社が船上に集結、ファウスト機関の遺品を巡り、三つ巴の抗争が勃発した。そして明らかにされていく回収品の秘密。「晶。僕はまだ君のことが好きだ」音井を尻目に、悪魔交渉人・晶の最後の事件が幕を開ける。(裏表紙より)
人らしさを忘れた青年と、親友の姿をした悪魔のバディもの。第四巻で完結巻。最後まで彼ららしく、悩んで間違ってぐるぐる考えて、答えを見つけたと思ったら掴み損ねて、大事なものが何かを考えて守ろうと足掻いて……どこまでも人間らしいなあと思った巻でした。人間くさすぎる欲望を持った人間ややくざ者として一般的な社会から背を向けた人々よりも、強く。
音井を呼んで「違うよ?」って言われて「知ってる」って答えたところがものすごくよかった。音井じゃないって言い聞かせていたいままでがあって、ここに辿り着けたんだなあ。とても面白かった。
PR
横浜の外れに佇む寂れた美術館に勤める怠惰な学芸員・鷹栖晶には、もうひとつの顔がある。それは悪魔を視認できる唯一の人間として、彼らと交渉し悪魔にまつわる事件を調停すること。
悪魔交渉人として、ある幽霊マンションの調査を託された晶は、相棒である人間の肉体を着た悪魔・音井、晶の健康管理を担当する森木と3人で現地へ向かう。そこは、悪魔の罠が張り巡らされた違法建築マンションだった。内部で出会った哀れな配達員や五得会の霊能者と共に、悪魔が仕掛ける「脱出ゲーム」に挑む晶だが——。(裏表紙より)
歪な迷宮と悪魔と脱出ゲーム。怖くないはずがない! 普通に死んでる!
こういう状況でヒステリックな人間がいるのは騒がしくてどきどき感が増して良いですね。実際にいたら迷惑この上ないんですけれど。
迷宮の主と生贄が、実は他にも色々な形で関わっていて、謎も迷宮じみて入り組んでいて面白かったなあ。人の気持ちもまったく複雑怪奇で、なのに最後に晶の心の話が出てきて「嘘だろ!?」と爆笑してしまいました。ここにきてまっすぐ。この場でどストレート。音井も悪魔も意表をつかれて当然だわ。
しかし色々気付きがあった晶と音井の関係性。すでにお互いが結構大事にしか見えないけれど、この拗らせが続巻でどう落ち着くのか気になります。
死んでしまいたいと思うとき、そこに明確な理由はない。心は答え合わせなどできない。(「健やかな論理」)尊敬する上司のSM動画が流出した。本当の痛みの在り処が写されているような気がした。(「そんなの痛いに決まってる」)生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。(「籤」)等鬱屈を抱え生きぬく人々の姿を活写した、心が疼く全六編。(Amazonより)
離婚し、アプリで知り合った恋人がいて、孫の話題ができずに気を遣う母親と会い、事務員として漫然と勤める佑季子の心を慰めるのは、事故や自殺のニュースで目にした死亡者のSNSアカウントなどの痕跡を突き止めること。「健やかな論理」
かつて二人一組の漫画家であった豊川。だが行き詰まりを感じたある日相方から逃げるように妊娠した恋人と結婚し、保険会社に勤めるようになる。だが妻とのすれ違い、仕事での転機を迎えた現在、その胸にあるものは……「流転」
派遣切りにあったその日後輩への引き継ぎを終える依里子は思い出す。自分もかつて同じように契約を切られた先輩から引き継ぎを受けたあの日のこと。あの日先輩である佳恵の思いがけない姿。「七分二十四秒めへ」
パートに出て働く由布子。どこにでもいるありふれた家庭、いつもすぐやってくる明日のことを考える毎日。正しさはいつも、蔓延る不正や強権という風に負ける。「風が吹いたとて」
夫婦共働きの小杉は、しかし妻の方が収入が上だと知って以来、夫婦の関係を持てなくなってしまった。子どももおらず、仕事も上手くいかない。セフレを相手に日帰り旅行する彼の胸に去来するのは、かつての上司の醜聞。「そんなの痛いに決まってる」
劇場スタッフのみのりは現在妊娠六ヶ月。だがある理由で夫は姿を消し、頼るべき母親はすでに亡く、仕事では不出来な新人に手を焼いている。休日ながら出勤したその日大きな地震が発生し……「籤」
どれもだいたい後味が悪い!!! と胃の中がぐるぐるしてしまう短編集。けれどここに描かれている心の闇は、きっとみんな何かしらの心当たりがあるんじゃないかなと思う。アカウントの特定とかね……慣れているとできちゃうからね……。
なんだかきつくて泣けてしまったのが「七分二十四秒めへ」。文句らしい文句を言うのは引き継ぎを受ける明日美なんですが、依里子や佳恵が馬鹿馬鹿しい動画を見て勤めている間はどうしても食べることのできなかったラーメンをすするのが……。どうかしてる、差別だ、不平等だと叫ぶこともできないで、動画配信者が騒いでいるのを眺めながら一緒になっている気持ちでラーメンを食べているの、本当に切なくってだめだった。
その中で最後の「籤」は、はずれ籤をひかされているような描写をしながらも、賢く強く地に足をつけて生きていた人間の尊厳みたいなものがある気がしてとてもよかったです。当たりくじを引いたところで努力を怠り慢心すればはずれくじよりももっとひどい。身が引き締まった。
城に帰還した父王アンドラゴラスの命により、事実上追放の身となったアルスラーン。五万の兵を集めるまでは帰れぬ運命となった。つき従うのは、ダリューン、ナルサスをはじめとしたわずか七人の側近のみ。一行はパルス随一の港町ギランへ——。そこで待ち受けていたのは、海上商人を脅かす海賊たちとの戦いだった。新たな冒険の始まりに胸躍るシリーズ第六弾!(裏表紙より)
そういえばこの辺りはアニメで見たな? という第六巻。久しぶりに続きを読んでも魅力的な登場人物が息づいているのですぐに誰か思い出せるのが素晴らしい。
アンドラゴラスにより事実上追放されたアルスラーンは再び側近たちと旅に出る。港町に落ち着き、ここから再び決起するときをわくわくしながら読み進める。けれど真の黒幕の動きもちらちらしていてだいぶ気になるな……。
そういえばアニメを見たときはなんとも思っていなかったんですが、ファランギースの過去に何かあるのかな? みんなが何故神官になったか気を使って尋ねないでいたという描写があったのが妙に気になる。
長い黒髪と物静かで真面目な性格のせいで「貞子」とあだ名をつけられて遠巻きにされている黒沼爽子。周囲ともっと仲良くなりたいと願っていたある日、見た目や評判など気にせず接してくれるクラスメートの風早翔太の爽やかさや気遣いに憧れるようになる。その出会いは爽子の高校生活を素晴らしく楽しいものに変えるものになって……。
あまりにも眩しく爽やかな高校生と周りの大人たちの学園青春もの。やっぱりすごくいい話で泣けてしまう。
最高のエピソードはやっぱり、不名誉な噂を流された爽子が、千鶴とあやねのために噂を否定して訂正してと頼むところ。怖いとか何かあったらどうしようとかじゃなく、なんとかしなきゃって行動する爽子と、そこに駆けつけた二人の、気付いたら友達になってるんだよっていうあのシーン。抱きしめずにはいられないよなあと感動して泣いちゃうのでした。
くるみちゃんのあれこれはこの頃はだいぶきつかったので、後々のエピソードでけじめをつけられたのが最高にいいので……新しいNetflixドラマ版で最後まできっちり描いてほしいなあと思うのでした。
「世界で一番殺された女」
1930年代のパリ。奇怪的でグロテスクな描写で人気を博したグラン・ギニョル劇場で、看板女優のポーラは劇の性質ゆえに常に殺される役だった。日々猟奇的な役を振られるポーラだが、実生活では過去の影とストーカーに悩まされており……。
美女が無残に殺されるというシチュエーションに興奮する人々がこぞって集まる劇場。時代の雰囲気を感じますね。舞台の脚本や演出、観客の評判も、何かがおかしく歪んでいる感じ。
美女と、グランギニョルと、グロとスプラッタと、という描写に注力している感じがあってストーリーはさほど強さがない感じ? 非現実的な舞台のせいか、時系列が無茶苦茶に思えて、っていうのはポーラが生きている世界が過去も現実も幻想も入り乱れているっていう描写だったのかな。
1930年代のパリ。奇怪的でグロテスクな描写で人気を博したグラン・ギニョル劇場で、看板女優のポーラは劇の性質ゆえに常に殺される役だった。日々猟奇的な役を振られるポーラだが、実生活では過去の影とストーカーに悩まされており……。
美女が無残に殺されるというシチュエーションに興奮する人々がこぞって集まる劇場。時代の雰囲気を感じますね。舞台の脚本や演出、観客の評判も、何かがおかしく歪んでいる感じ。
美女と、グランギニョルと、グロとスプラッタと、という描写に注力している感じがあってストーリーはさほど強さがない感じ? 非現実的な舞台のせいか、時系列が無茶苦茶に思えて、っていうのはポーラが生きている世界が過去も現実も幻想も入り乱れているっていう描写だったのかな。
片田舎に暮らす少年・江都日向(えとひなた)は劣悪な家庭環境のせいで将来に希望を抱けずにいた。
そんな彼の前に現れたのは身体が金塊に変わる致死の病「金塊病」を患う女子大生・都村弥子(つむらやこ)だった。彼女は死後三億で売れる『自分』の相続を突如彼に持ち掛ける。
相続の条件として提示されたチェッカーという古い盤上ゲームを通じ、二人の距離は徐々に縮まっていく。しかし、彼女の死に紐づく大金が二人の運命を狂わせる──。
壁に描かれた52Hzの鯨、チェッカーに込めた祈り、互いに抱えていた秘密が解かれるそのとき、二人が選ぶ『正解』とは?(Amazonより)
身体が極めて金に近しいものに変質する難病に侵された女性と出会った少年。サナトリウムの反対派の母からは見向きもされず、再婚した義父は心を病み、この閉塞的な場所からどこにも行けないと思っていたが……。
本当のことを教えてくれない語り手という感じ、江都の性格を表しているようで寂しいな……。一つ何かが動き出せば、あっという間に崩壊するような空気感のある話で、相続の話からの周囲の掌返し、その後の逃亡劇などはもうどきどきしてたまらなかった。それがふっと、ようやく力を抜くことができる瞬間の読み心地がとてもよかったなあ。
最後に彼が手にしたものは。それもまた、ロマンチックでした。
スペイン、マドリード。十五歳のベロニカは母に代わって三人の弟妹の面倒を見ている。その年は日食があり、その日ベロニカはクラスメートのロサとディアナと学校の地下室でヴィジャボードを使って降霊術を行う遊びをする。するとそれからベロニカとその周辺に不思議な現象が起こり始め……。
長女だからと母に顧みられず、弟妹は幼いせいで理解してくれず、同級生は子守のせいで付き合いが悪いからと離れていき……そんな状況で悪霊を呼び出して襲われたら、戻ることはできないよね、だってよすががないもんね……と冒頭から理解できてしまうホラー作品。
孤独な人間がこの世ならざる者に接近してしまうのはありがちなのだとしても、誰も助けてくれないんだろうと想像できる状況で見ているのはだいぶきつかった。ベロニカが弟妹を必死に守ろうとするのを、どうか全員無事でいてくれと祈ることしかできなかった。実話を元にしているのだとしたらどこまで実話のまま描かれているかわからないけれど、可哀想な子どもたちがいたんだと思うとやるせないな……。
深刻な干ばつに見舞われた国を救うため、王は占術に頼り、王女ソンファ姫の結婚相手を迎え入れることで陰陽の均衡を正すことにした。占術を使う監察官ソ・ドユンは王女の花婿候補を四人にまで絞り込むが、自ら婿を見定めようとお忍びで街へ繰り出した王女に付き合うはめになってしまい……。
自分の花婿をこの目で確かめてやろう! と行動した王女様と、そんな彼女に付き合うはめになった監察官のラブコメディ。
めちゃくちゃファンタジー少女漫画・小説で見たことあるやつ!!!
王道なのですが、韓国が舞台というのが面白い。韓流ドラマは面白そうなものがたくさんあるのですがいかんせん長くて見ていなくて……なので映画一本でこういう恋愛ものを見られるのは嬉しいし面白い。もう一捻りあったらなあという感じではあるんですが、朝鮮王朝の王宮や街の風景が見られるのはいいな。
「エルマーのぼうけん」
母と二人で暮らす少年エルマー。希望を持って移り住んだ新しい街では貧しい暮らしに母はどんどん心を荒ませて息子を顧みなくなり、街の暮らしにも馴染めずエルマーはどんどん孤独を深めていく。だが人の言葉を喋る猫に導かれ、竜の子がいるどうぶつ島に渡ることに。そこは恐ろしい動物たちが暮らす不思議な場所で……。
現実世界で居場所を見失いつつある少年が、不思議な冒険を経て、種族の違うものたちと友情を育み、成長して元の場所へ帰っていく。行きて帰し物語の形はちゃんとあって、登場する動物たちはエルマーも含めてそれぞれの考えや望みを持って行動している。それは立場が違えば、ずるであったり自分勝手であったりするけれど、それが現実。戻っていったエルマーの世界は変わらないけれど、彼自身の見方が変われば身近な人々とそれなりに上手く暮らしていける……ってところなんだろうな。
『エルマーのぼうけん』である理由はあったのか? と子どもの頃原作を繰り返し読んでいた身としては思うのですが、しかしアニメーションとしてはちゃんと個性があって美しいんだよな。
母と二人で暮らす少年エルマー。希望を持って移り住んだ新しい街では貧しい暮らしに母はどんどん心を荒ませて息子を顧みなくなり、街の暮らしにも馴染めずエルマーはどんどん孤独を深めていく。だが人の言葉を喋る猫に導かれ、竜の子がいるどうぶつ島に渡ることに。そこは恐ろしい動物たちが暮らす不思議な場所で……。
現実世界で居場所を見失いつつある少年が、不思議な冒険を経て、種族の違うものたちと友情を育み、成長して元の場所へ帰っていく。行きて帰し物語の形はちゃんとあって、登場する動物たちはエルマーも含めてそれぞれの考えや望みを持って行動している。それは立場が違えば、ずるであったり自分勝手であったりするけれど、それが現実。戻っていったエルマーの世界は変わらないけれど、彼自身の見方が変われば身近な人々とそれなりに上手く暮らしていける……ってところなんだろうな。
『エルマーのぼうけん』である理由はあったのか? と子どもの頃原作を繰り返し読んでいた身としては思うのですが、しかしアニメーションとしてはちゃんと個性があって美しいんだよな。