読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

一目見ただけで人間の王子に恋した人魚の姫は、王子とともに暮したいばかりに、美しい声と引換えに魔女から薬をもらったが……。あまりにも有名な表題作をはじめ、世界じゅうで今なお読みつがれるアンデルセン童話から、『すずの兵隊さん』『ナイチンゲール』『のろまのハンス』『イーダちゃんのお花』『モミの木』『雪だるま』『アヒルの庭で』『いいなずけ』など16編を収録。(裏表紙より)
「ナイチンゲール」のナイチンゲールがけなげでかわいい。
「人形つかい」からもなんとなく感じ取れる気がするのだけれど、やっぱり西洋の宗教観が盛り込まれているのだなあと。「人魚の姫」にそれは顕著だと。人魚姫の話は、再編集された簡単な幼児向けのものや、でずにーの物語のイメージが強すぎているので、この原本たるものを読んで、なるほどなあと思ったりした。特に、幼児向けのものでも人魚姫のラストではどうしても納得できていなかったので(多分でずにーの影響もあるだろうけれどそれ以前にも)、ちゃんとこうして、空気の娘たちの存在や、神様のお許し、といった要素が描かれていると、物語にきちんと納得ができた。読んでよかった。
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瓢簞をこよなく愛した少年と、周囲の無理解なおとなたち。少年が永遠に失ってしまったものは何か? 表題作「清兵衛と瓢箪」ほか、深い人間観察と鋭い描写力で短篇小説のおもしろさをあますところなく伝える”小僧の神様”志賀直哉の代表的短篇13篇。(裏表紙より)
「菜の花と小娘」「荒絹」「清兵衛と瓢箪」「城の崎にて」「赤西蠣太」「小僧の神様」が特に好きだ! 子どもと、幻想と、恋愛と、というものが大体っぽいな。
「荒絹」の退廃的な色っぽさはすごい。女神様の狂気すごい。ごちそうさまでした。
「赤西蠣太」は楽しい。思ってもみなかったことによってどんどん転がってしまう自体がおかしい。
この中で一番を決めるのなら、私は「荒絹」を推すかなあ。はっきりした終わりが呈示されているわけじゃないけれど、ものすごく伝承的、神話的な神秘的な要素があって、女神と蜘蛛というモチーフもなんだか土地に根ざした何かを感じるせいか、すごく力があるような。
専門家じゃないので読み方は好きなように読んでいるのだけれど、志賀直哉はやっぱり好きだ。

「進むべき道を選べ——ノヴィア」
ジークは、淡々と言い放った。
波の音が、空の青さが、迷うノヴィアへと静かに語りかける。
お前はどこへ向かうんだ——?
彼女はある決断をする。
ジークと別れて旅を続けることを。そして、レオニスに会うために、聖地へと向かうことを——。
ある激突へ向けて、闇の中、静かに動き出すドラクロワ、それに対抗すべく血に染まりながら前に進むジーク。戦う魂たちが、ひとつの戦場に集う!
伝説の円環がいまここに閉じられる。大人気ファンタジー書き下ろし長編!(カバー折り返しより)
最終巻ではありますが、ここから無印に繋いでエンドマークとなります。
冒頭のほのぼの(「すまん。つい」)ににやにやしている暇はなく、物語は環の閉じるための階段を駆け上っていく。民衆の狂気が、今までの敵の中で一番痛かった。だからか、毅然と立ち向かっていくジークも、ノヴィアも、レオニスも、トールも、たくさんの人々がとても素晴らしく格好良かった。
萌えポイントとしては、ノヴィアとレオニスがそれぞれの立場からそれに相応しい言葉遣いで、意志を告げるシーンだと思う。それからジークの到着! 「ただ一人の——軍団(レギオン)……」の盛り上がり方は異常だ。
とても楽しかった。いい戦いの物語だった!

「ノヴィア、そんなに吠えると、ジークに嫌われるぞ。蔵の番犬みたいだぞ」
「い、犬……。泥棒猫みたいな人が、何を言うのっ!」
あの頃の私たちは喧嘩ばかりだった。今ならその理由がわかる。キリが私にないものをたくさん持っていたからだ。自由で、強くて、誰とでも仲良くなれて。それでも、私にとって初めての同い年の仲間だったし、本当はキリと一緒に行ってみたかった。
ジーク様が言っていた「全てが終わり、全てが始まる場所」——そう、海へ……。
大幅加筆で生まれ変わった、大人気ファンタジー長編!!(カバー折り返しより)
ガールミーツガールの04。一方でのレオニスの狂気が恐ろしいです。
レオニスは何らかの形で弾圧されるんだ、と思って読んでいて……こう書くのが冲方さんなんだろうなあ……すごいなあ……。
ノヴィアとキリのやり取りは微笑ましかった。女の子同士の喧嘩調ってあんまり見ない気がするので。それを「放っておけ」と言うジークは、言葉だけでは冷たいように見えるけれど、実際気付かないところでにっとしてそう。
そしてやっぱりジークとドラクロワの絆が泣けて仕方がない。
だからかなあ。エピローグに少しだけ描かれた、ノヴィア、アリスハートとレオニス、トールとキリの遠くで、ジーク、ドラクロワ、シーラの三人が語らっていて……というシーンで、何故だか分からないけれど涙腺が崩壊した。ぼろっぼろに泣いた。絶対……な時間だからかなあ。多分全編を通して一番好きなところだと思う。

31歳の若さで夭折した著者の残した作品は、昭和文学史上の奇蹟として、その声価はいよいよ高い。果実の異常な美しさに魅惑され、買い求めた一顆のレモンを洋書店の書棚に残して立ち去る『檸檬』、人間の苦悩を見つめて凄絶な『冬の日』、生きものの不思議を象徴化する『愛撫』ほか『城のある町にて』『闇の絵巻』など、特異な感覚と内面凝視で青春の不安、焦燥を浄化する作品20編を収録。(裏表紙より)
記録から洩れていたので今更ながら感想を。
「Kの昇天」「桜の樹の下には」「冬の蝿」が特にお気に入り。一番を決めるとしたら「冬の蝿」かなあ。
冬の、白々した光が汚れで曇った窓硝子越しに射している、という状況がなんだかありありと浮かんだ気がした。
桜の樹の下には、はこれかあと思う。同じ桜を使った作品で安吾の「桜の森の満開の下」があってあれがとても好きなのだけれど、「桜の樹の下には」のウスバカゲロウの屍体がすごく、つやっぽいというか、色っぽいというか、なんだか底知れぬ恐ろしいもののようでちょっとびくっとわくっと二つ来た。

赤き騎士は、ふと目覚めた。
だが、頭の中に白い靄でもかかっているようで、何も思い出せない。手には鞘のない剣。辺りは静まり返り、花の甘い香りが微かに漂っている。
(斬らなければならない——)
ふいに強い決意が胸をつく。誰を? なぜ? その時、男は壁に刻まれた名前を見つけた。
「……ノヴィア」
騎士——ジーク・ヴァールハイトは一人立ち尽くすのだった。
霧深い古城。レオニスの刺客によって、ジークとその従士のヴィアは離れ離れに。しかも、お互いに記憶を失って……忘却の果てに二人が辿り着くのは!?
追憶が遠い過去を呼び醒ます——。
書き下ろし大巨編第三弾!!(カバー折り返しより)
この巻もものすごい濃かった! 敵を打ち砕く時の爽快感がたまらなくよかった巻でした。もちろんそうだということは、物凄い困難があるわけで。
魔術とかではなくて、絶対的にも思える香りの力で記憶をなくす。でもそれをどうやって打ち砕くんだろう、とどきどきしながら読み進めました。
カオスレギオンは、ジークが秘めた深い悲しみと思慮があるのに、とても力強く大地を歩み勧めている気がしていいなあと思う。
ティアに対してのジークの宣言が、震えが走るほどの強さに満ちていて、うるっとしてしまった。

どこまでも荒れ果てた大地が広がっていた。大地は人々が踏み締める足音でいつまでも揺れていた。
二万人の民衆たちが荒野を進んでいた。
永遠に消え去った故郷を胸に。
遥かなる新天地へ向かって。
彼らを守るため、赤き黒印騎士(シュワルツ・リッター)ジークは孤軍奮闘の戦いを続ける。それはかつての友ドラクロワと共に抱いた理想を証明するため。だが、行く手には忌まわしき過去の残像が立ちはだかる。その果てに待つものとは!?
失われた故郷を夢見て、全ての終わりが始まる——。
書き下ろし軍勢ファンタジー巨編!!(カバー折り返しより)
二万人の群集と共に歩き続けるのがこの巻。
難民とも言える人々が、各地で受ける扱いと、襲撃から身を守りながら進む。襲撃を指示しているのは、あの少年なのだけれど。
どっしりと歩んで行く印象で、とても面白い巻だった。これ下手すると単調でつまらない気がするのだけれど、やっぱり冲方さんだなあ……!
そういう、長く険しい道程を辿り着いた先にある未来は、セグレブの民の受け入れによって明るい光が射したんじゃないかな。セグレブの民の代表の言葉がなんだか染みる。
なんだか不穏な気配、刺客が三人集結したところで幕。

少女は思わず、言葉を発していた。
「あなたが、歩いている姿が、見えます(・・・・)」
一度も会った事のない相手だった。だが、奇妙なことに懐かしさを感じていたまるで過去の自分と再会したような。
すると、車椅子に乗った少年は返す。
「見える(・・・)んだな」
彼は生まれつき、足が不自由だった。それでも、何度も立ち上がろうとしていた。世界を自分の手にするために。
領主継承に揺れる聖地シャイオン。その地で、黒印騎士(シュワルツ・リッター)ジークと旅を続ける聖女——ノヴィアは一人の少年と出会う。それは遠く失われたはずの絆と、新たなる戦いを呼び醒ますのだった……。
書き下ろし長編に連作短編を収録した、衝撃の新章突入!!(カバー折り返しより)
記録から洩れていたので日付変えて突っ込む。
短編が一本と長編が一本。
短編は、ノヴィアが称号をもらうための試験の話。目上の人に対するジークの態度がなんだかかわいい。きっちりした好青年なんだなあ。
対決の話は胸の中にぶわあっと波が押し寄せたみたいに感動した。ノヴィアの覚悟の矢と、その決意。ジークならもしかしたら。そうでなくとも。と考えるのは、ノヴィアがジークを信頼している証なんだな。
長編では、まさか新しく、それも少年が登場するなんて思わなかったのでびっくりした。なんとなく、ジークとノヴィアの道行きには、出会いと別れがあって、こうして深く交流を深めるとは思わなかったから。
レオニスの並々ならない力が濃く描かれていて、愚かに見えることはあんまりなかった。何か大きな流れを作り出す予感があったからかもしれない。ロムルスの「これが命だ」にはぞくぞくした。かっこよかった。
トールとアリスハートの交流は、お約束っぽいけれどなんだか凄惨な印象の話を少しだけ慰めてくれて、和んだ。

少女は待ち焦がれていた。閉ざされた視界の向こう側に祈りの歌を捧げながら。
戦乱が続く混沌(カオス)の大地で、盲目の聖女ノヴィアは、ただ一心に願い続ける。
亡き母が全てを託した男——自分の目を開かせてくれるかもしれない、最後の希望が訪れることを。
だがそんな少女の前に現れたのは、シャベルを担ぐ一人の墓掘り人だった!
「貴方様のお名前を……お聞かせ下さい」
「黒印騎士団(シュワルツ・リッター)ジーク・ヴァールハイト」
無垢な魂と孤独な騎士が出会う時、二人の運命は激しく動き始める!
書き下ろしを含む初の短編集!!(カラー折り返しより)
この0が、発行順に関係なくした場合、本編第一巻に当たる。短編集と書かれるとややこしくて。
盲目の少女ノヴィアがずれてるんですがたいそうかわいいです。ジークもぶっきらぼうで無口だけれど優しい雰囲気があって。ジークの戦闘シーンでの格好よさが異常すぎて滾りました。それに対して、ジークの力に驚く敵、あるいはそれに答える誰かの『レギオン』という言葉が痺れる。
純粋に楽しかったです。熱かった。

北村薫の特集、ムックというやつだろうか。読んでみると、結構以前の発行物らしく、ベッキーさんシリーズが『街の灯』しか書かれてない。
それはともかく、北村薫の作品、シリーズの紹介が一番嬉しかったなあ! 私と円紫さんシリーズが特に! 覆面作家は集めたので今度読もう。時三部作の紹介もありました。
最初の方のページに、名言特集があるのだけれど、はっとするものばかりだった。
作品世界体感ツアーのページがあって、行きたくて行きたくて仕方がない! 蔵王とか鎌倉とかいいですね。ちょっと歩いてみたいです。あと、ベッキーさんのシリーズの舞台である戦前東京のマップがあったりとか。さすがに写真は模型だったり、現在も変わらぬものの写真なんですけれどね。
しかしおいしい本だった。