読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

さて皆様。その夜珈琲店(カフヴェ)を訪れた翠緑と紫の双眸をもつ歳若い物語師(ラーウィヤ)が、楽器(タンブール)を爪弾き紡ぐは、常ならば、名高い神話に英雄譚。「なれど今宵は……天上に咲ける薔薇の物語を」
ラスオン帝国の後宮(ハレム)には、帝王(スルタン)位を望めぬ皇子の幽閉所《鳥篭(カフェス)》がある。側仕えの小姓イクバルとともに鳥篭に住まうナイアードは、その心根と美貌を皆に愛されていたが、ある日、国を揺るがす陰謀に巻き込まれて——。篭の鳥は、檻から飛びたてるのか?(裏表紙より)
異国情緒溢れる物語でした。王宮もの、ライトな政略ものの印象でした。登場人物が結構たくさんいて、主人公たるナイアードが外に出て行けない人物なのと、歴史を描くことを重視しているような感じだと思いました。
病弱な皇子ナイアードは、非常に心優しい人物で、右足が不自由で病弱であると自分の不甲斐なさを責める少年です。彼が非常に澄んでいるのです。汚されないというか。一生懸命で繊細な空気が常にあって、でも今にも脆く壊れそうな気もしてはらはら。
展開が早くて、人物も多いので、もっとじっくり読みたいかもと思いつつ、色んな設定が幻想的でした。イクバルの正体にはちょっとびっくりしたけれども……! そしてところどころ男性同士であやしいところにびびっていました(免疫があんまりないので……)
異国の雰囲気で、作中のような幻想があるっていうのは、なんだかとても新鮮で好きだなあと思いました。
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容姿が醜いために村人たちから蔑まれ、苦しい毎日を送る秀瑛は、ある日、不思議な鏡を拾う。人の言葉を話し、ときに妖しいほど美しい青年に姿を変える鏡は、「願いの重さの分、命を差し出すなら、どんな願いも叶えてやる」と誘う。悩んだ末に、秀瑛は寿命10年と引きかえに、絶世の美貌を手に入れるのだが…!? 不思議な鏡を手にした少女の波乱の人生を描いた、2009年度ノベル大賞受賞作!(裏表紙より)
友人が貸してくれた本。中華風ファンタジーで、鏡と少女と願いを巡る中編二編が収録されています。
恋愛的な盛り上がりは薄いなあという印象で、願いと代償の辺りがちょっとダークな感じだなあと思いました。シリアスだし、落ち着いて進むし、中編らしい展開の早さでもありましたが、受賞作でこんな雰囲気のお話って珍しい気もして面白かったです。
できれば「傾国の美姫」で一冊読みたかった。文章はとてもきれいで、しっとりしていて、好みの文体だったので、是非長編で。
余談ですが、友人が「どうしてこうなったの!」と言った『気になるところ』も、ああなるほどなあと納得……。段階踏むのって大事だね>友人

カシュヴァーンの誕生日に盛り上がるライセン屋敷。『好き』のプレゼントを要求する暴君夫にアリシアの「おなかが痛い」も最高潮!! しかし、幸せなひとときは甲胄の使者が訪れて一転、なんとライセン夫婦は国王陛下より緊急招集を受けたのだ。めくるめく伏魔殿の王宮にアリシアは興味津々だが、そこにジスカルド侯爵や傭兵バルロイも召集されており、カシュヴァーンたちは激しく牽制し合う。さらには【図書館の幽霊】と呼ばれる”怪物ゼオ”の登場で歯車は狂い始めて——!? アリシア大活躍、混迷の第6弾!!(裏表紙より)
登場人物がめいっぱい多くなってまいりました。糖分も急上昇です。照れるようになったアリシアがかわいくて、それにいちいち反応してしまうカシュヴァーンもかわいいです。嬉しくてたまらないんだろうなあ。
〈翼の祈り〉教団関係のごたごたは今回はおやすみ。今度は国内関係の事件ですが、謎が謎のままでした。王子ゼオルディスは何者か、彼に付き従う兄妹はどうしてそうなっているのか。
それぞれ風変わりな人々がどこか傷を負って集まって支え合うようになるまでの物語になっているような気がするので、カシュヴァーンとよく似たゼオルディスも救われることを祈ります。
ところで一方で夫婦のいちゃいちゃがものすごくて、アリシアのように「いま何の話してたっけ……」となってしまいます。キスは自然になってきましたね……。子どもの話も出たりして、にやにやが止まりませんでした。

十代の頃から、大切な時間を共有してきた女友達、千波、牧子、美々。人生の苛酷な試練のなかで、千波は思う。〈人が生きていく時、力になるのは自分が生きていることを切実に願う誰かが、いるかどうか〉なのだと。幼い頃、人の形に作った紙に願い事を書いて、母と共に川に流した……流れゆく人生の時間のなかで祈り願う想いが重なりあう——人と人の絆に深く心揺さぶられる長編小説。(裏表紙より)
ミステリじゃない北村作品を読むのは久しぶりだ。
不思議でもなんでもない日常と、女性たちに主軸を置いた絆の話です。『月の砂漠をさばさばと』関連だったのかー! とさばの味噌煮が出てきてようやく気付く。
不思議なんてどこにもなくて、人が生きていく、ただそれだけの話なのに、根底に流れているのは優しさと慈しみと思いやりの目だ、と感じました。物語としては普通に、ありふれた形で日常が進むのに、柔らかい。最後にいくにしたがって、包まれているような気持ちになる。
ただ、他の北村薫作品を読んでいると、素っ気ないなあと思うことも確かです。ミステリの方が私は好き。でもいつものようにきゅんとすることはなくても、読みながら、うんうんと頷いてしまう本だなと思いました。
「人が生きていく時、力になるのは何かっていうと、——《自分が生きてることを切実に願う誰かが、いるかどうか》だと思うんだ。(後略)」


東城大学医学部付属病院の”チーム・バチスタ”は心臓移植の代替手術であるバチスタ手術専門の天才外科チーム。ところが原因不明の連続術中死が発生。高階病院長は万年講師で不定愁訴外来の田口医師に内部調査を依頼する。医療過誤死か殺人か。田口の聞き取り調査が始まった。第4回『このミス』大賞受賞、一気にベストセラー入りした話題のメディカル・エンターテインメントが待望の文庫化。(上巻・裏表紙より)
あまりにあまりに有名すぎて全然手が出なかったところでようやく読みました。これ上下巻にせずに一冊にしてよかったのではないかなあ。
非常に面白かったです! 上巻はどうなるのかなあと期待が六割くらいだったんですが(流行ものをそう見てしまう偏見が私にはあるので……)、下巻になって白鳥が登場した途端に、一気に面白くなりました。
上巻は田口が何を掴んだのかも分からないまま進んで、事件が起こる。謎が謎のまま、下巻に続く! となるのはちょっとずるい。一気に読みたい。
じっくり観察していたこと(上巻)が、下巻で鮮やかに切り開かれていくのは爽快でした。ただ白鳥のやり方にはちょっと不満もありますが。
医療小説というと、どっしり重い社会派なイメージがあったのですが、とても気持ちのいい小説でした。周囲の評判は全然だけれど、田口医師が一番したたかな気がする。それだけに桐生が自信に満ちあふれて輝いて見えるんでしょうけれど。
暁のビザンティラ〈上〉 (ログアウト冒険文庫)
暁のビザンティラ〈下〉 (ログアウト冒険文庫)
女武人ビザンティラの冒険が始まる
ふたつの月が巡る世界。そこでは人間と〈メブ〉と呼ばれる生物との、幸せな共生関係が営まれていた。人は16歳になったときにメブ選びの儀式を経験し、おとなへの一歩を踏み出す。しかしメブを得られないカイチスは村を離れ、麗しき女武人ビザンティラと巡り会うのであった……。’92年度の星雲賞日本長編部門受賞作家、菅浩江が挑む異世界ファンタジーが、ここに幕を開ける。(上巻・裏表紙より)
異世界とSF要素が入り交じった世界の物語。少女と女武人の冒険譚です。読みながら、多分女武人ではないんだろうなあと思ったり……。
非常にライトノベル的だなあと思いながら読みました。お約束たっぷりでした。色々考えていた展開を踏襲していったので、想像が当たってちょっと嬉しくてにやにやしていました。冒険と真実の探求に重点を置かれている感じがしたのです。創世時代の真実と、時代の覇者が行う歴史記述の改変など、ああ、やっぱり古き良き冒険ファンタジー! という印象が強かったです。
獣人や、人間と動物のメブという関係性、という設定がおいしかったです。ただその原因は非常にグロテスクでうわーっと思いました。こういうのもライトノベルファンタジーのお約束ですよね。ちょっといけない気持ちでどきどきした。
一生懸命なカイチスが可愛いんですが、もうちょっと見せ場! と思いました。ビザンティラが男前過ぎて霞みます。二冊分で、世界改革は無理があるかもしれません。
暁のビザンティラ〈下〉 (ログアウト冒険文庫)
女武人ビザンティラの冒険が始まる
ふたつの月が巡る世界。そこでは人間と〈メブ〉と呼ばれる生物との、幸せな共生関係が営まれていた。人は16歳になったときにメブ選びの儀式を経験し、おとなへの一歩を踏み出す。しかしメブを得られないカイチスは村を離れ、麗しき女武人ビザンティラと巡り会うのであった……。’92年度の星雲賞日本長編部門受賞作家、菅浩江が挑む異世界ファンタジーが、ここに幕を開ける。(上巻・裏表紙より)
異世界とSF要素が入り交じった世界の物語。少女と女武人の冒険譚です。読みながら、多分女武人ではないんだろうなあと思ったり……。
非常にライトノベル的だなあと思いながら読みました。お約束たっぷりでした。色々考えていた展開を踏襲していったので、想像が当たってちょっと嬉しくてにやにやしていました。冒険と真実の探求に重点を置かれている感じがしたのです。創世時代の真実と、時代の覇者が行う歴史記述の改変など、ああ、やっぱり古き良き冒険ファンタジー! という印象が強かったです。
獣人や、人間と動物のメブという関係性、という設定がおいしかったです。ただその原因は非常にグロテスクでうわーっと思いました。こういうのもライトノベルファンタジーのお約束ですよね。ちょっといけない気持ちでどきどきした。
一生懸命なカイチスが可愛いんですが、もうちょっと見せ場! と思いました。ビザンティラが男前過ぎて霞みます。二冊分で、世界改革は無理があるかもしれません。

ふわふわでフリフリがなにより大好きな愛らしいファナ。いつも無心で自分を求めてくれた最愛の友を喪ったキリは、その痛みからなかなか抜け出せない。それでもロキシー、神父ハルやグラハム、シュトラールに見守られながら穏やかに旅を続けていくうち、思いがけないハルの初恋を知ることになる。だがそれは、主教の座を巡る陰謀や、自らの過去とも向き合うための先触れでしかなかった……。(裏表紙より)
BB第4巻。この辺りからなんだか面白い気がしてきました。それまでも面白かったんですが、ここからどうなるんだろう! というわくわく感が盛り上がってきた。
親友のファナが亡くなり、打ちひしがれるキリ。そこでハル神父が突きつけたのは、あなたの考えは幼すぎるという言葉。色々考えさせられてしまいました。確かに、国家転覆の考えを持つからには次なる国の理想や、人々を導こうとする何かが必要なのだろうし、だからこそ事態が動いていく。でもキリは私怨なのではないか、力で解決しようとしていないか。
キリはキリで、きちんとした理由を持っているけれど、これはやっぱり私怨でしかないかも、と思います。すっごくすっごく、本人にとっては重要なことなだけに、言い切るのは苦しい。
ホワイトレジデンツ側のルヴィエと、ハル神父の過去と神父の語るルヴィエに、あまりにも差異がありすぎて、ハル神父の方を信頼しているだけあって彼の回想を信じていたのですが、本当は……。そう思うと、すっごく、うまい。私なんかが言ってはなんだけれど、すごく描き方がうまい。
次巻で打ち切りと聞いてしょんぼりですが、続きを見つけたら読もうと思います。

猫と古本と古本屋との摩訶不思議な物語。古本一筋に生きてきた古本屋と、古本が放つ妖気に魅入られた古本世界の奇妙な人びととの交流を、抑えたユーモアで描き出す、はじめての作品集(裏表紙より)
猫と古本の話、ということで気になって読んでみた。
妖気……という空気漂う作品集でした。古本屋を描いた作品というと、人との交流があって明るいイメージがあっただけに、ずっしりと重苦しく文字や本の背表紙が迫ってくるような物語なので、びっくりする。物語の空気に、本のにおいがする。真新しい本屋さんではなくて、古書店の。
どれもさっぱりする、という作品ではなくて、人と本の繋がりがもたらす世界なだけに、どこか息苦しくてああもどかしい、という気分。なんだかその世界の中にいたのに掴み損なった気がする。
以前読んだ本に、火坂雅志『骨董屋征次郎手控』があって、同じ古物を扱っているためか、同じ空気がするなあと思う。人間が主人公じゃない感じ。

もしもあの時、別の選択をしていれば、全く違う人生を歩んでいたのだろうか……。平凡な会社員・元城一樹のふとした夢想が、すべての始まりだった。一人娘の和子の前に姿をあらわした不思議な少女沙羅。その名前が甦らせる、消し去ったはずの過去。やがて、今ある世界と、あり得たはずの世界とが交錯しはじめて——。表題作を含む、全10編を収録。珠玉のミステリ短編集。(裏表紙より)
数年前に読んだので、今回は再読。表題作がすっごく恐ろしい思いをした覚えがあったので、改めて読んで、やっぱりちょっと恐かった。
別の選択をした場合の世界が入り交じる。更にそこで殺人が、というのが恐ろしいのかも。どうあっても解決できない恐さというか。
この本は、解説にもあるように異界に触れているところが多々あって、それが偶発的でも人為的でも、読んでいて暗い穴からぶわっと風が吹いているような気がして、ちょっと恐い。きちんと解決している作品が少なくて、やっぱりそれも異界に触れるような何かを有した作品ばかり(収録作品の「天使の都」でも、その場所そのものとか)
あと読んでいて思い出したのが、「エンジェル・ムーン」。幻想的なことを突き進むのかと思ったら、最後の解き明かしが、残念で。そうそう、初読の時もここでがっかりしたよなあと思いました。でも、今なら思う。これは本当は、実は解き明かされていないかもしれない、と。
ミステリ短編集というより、日常と幻想の短編集、という感じがしました。

住みなれた浅草に別れを告げ、三浦半島の港町・三崎へと発作的に引越したのが2001年。買物かごを提げて毎夕おつかいにでかけ、おいしい魚、おいしい野菜を丁寧簡単に料理して食べる日々が始まった。三崎の人たちとの親戚みたいなつきあいと、間近に海を望む暮らしから、じっくり練られたいくつもの作品が誕生した。ごはんの話と創作秘話が一体となった人気のネット連載ついに文庫化!(裏表紙より)
かなり前に買っておいて、読みさしで本棚にさしたまま忘れていた、という本。
面白かった! エッセイ集です。その日あった出来事と、ご近所の話と、創作の話、お仕事の話、ご飯の話、が大体の内容成分。近所付き合いがものすごく濃い。みんなこんな身近でいいんだろうかっていうほど、みんな親しい。まるで別の世界みたいだ。
土地と、食べ物と、人を愛しているんだろうなあというのがすごく伝わってくる気がしました。どんな風に世界が見えているんだろう、とちょっとどきどきしたりも。いしいさんの本、私は実は未読で、でもすっごく丁寧に練られた世界観なんだろうというのが窺える文章でした。今度は物語を読みたい!