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セイジャの式日 (メディアワークス文庫)
不格好だけど素敵な恋と旅立ちの物語。

 絵を一枚仕上げるたびに、絵にサインを入れるたびに、もうやめよう、これで最後にしようって、考える——
 それでも私は、あなたのために絵を描こう。

 かつて彼女と過ごした美術室に、彼は一人で戻ってきた。そこでは、長い髪の女生徒の幽霊が出るという噂が語られていた。
 これは、不器用な人たちの、不恰好な恋と旅立ちの物語。(裏表紙より)

由良三部作の三巻目。二巻登場のハルは今回、夏休みの彫刻家のアトリエでのボランティアに由良を誘う。そこで起こる事件。そして、最終エピソードとなる、由良があの場所に戻ってくるお話。この二つが収録。
最初のエピソードは、ぞわぞわとする。そうなんだよ、創ることに対して身を削れてしまう、何かを削ってしまう人っていうのは必ず存在するんだよ。犀のことは、責めるべきなんだけれど、一概にそうとは言えない何かがあって。でも「ちがうんだよ」と泣きながら言えたハルは、すごくいい。
Aのその後がちらっと語られていたけれど、彼女は手に入れたのかな、と思う。
『プシュケの涙』ほどの衝撃はなかったけれど、最後の話がよかったなあ。いつでも、ああいう青春を送った人たちはいるのかもしれないな、と思わせて。地上から絹川さんを見上げた由良は、きっとすごく心から嬉しかっただろうな。そう思うと、長く高校生の頃の傷を抱えてきた由良がようやくその時代から抜け出すことのできたというのがこのお話の結末なのかもしれない。
ああ、いい話だったな。
オススメされた本でした。三部作楽しかったです。ありがとうございました!
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