読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
1986年、ドイツ。日本人の脳外科医ドクター・テンマは、天才的な技術に加え、院長の娘エヴァとの婚約も決まり、未来を約束されたも同然だった。しかし本人は真面目で正義感が強く、患者たちに慕われる性格で、出世のために他人を蹴落とすことに忌避感を覚えていた。そのため院長命令を無視し、重要人物の手術よりも緊急性の高い少年の処置に当たったことでテンマの人生は転落を始める。同時にテンマを蹴落としたライバルたちが次々に惨殺されるという事件が起こるが、それはここから始まる怪物との長い戦いの始まりでもあった。
めちゃくちゃ暗いし長いし面白かった! この時代のドイツ周辺の状況、思想、文化、そういったものを綿密に調べた上で描かれたんだろうなあ。面白くないはずがなかった。
ある医者が事件に巻き込まれるだけの話かと思いきや、謎の連続殺人事件と、犯人と思しき少年の謎、人体実験と、ミステリーとサスペンスが盛り沢山で、次々に登場する人々と情報が少しずつ関わりをもって最後の局面で集結していく様は見事としか言いようがない。ストーリーが進むごとにぞくぞくして見るのを止められなくて大変でした。
生き残れるか、逃れることができるのかというはらはらもよかったですが、脱落していく人たちの悲哀もまたいいんだよなあ。グリマーのこと、好きになっていたから切なかった……。マルティンも、エヴァに振り回されていたのに好意を抱いていた話、よかったなあ。
全体的にはルンゲ警部な! あの人が「すまなかった」と言ったシーン、万感の思いがありました。ここにたどりつけたんだ、と思って。
多くの人の人生が狂わされたけれども、それぞれに決めた道を進んで、人生を終えることを願わずにはいられない。面白かった。
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