読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
憧れだった彼の無理難題に応えようとした少女の一大決心。雪の日助けられた少年が心を込めて作る贈り物。冬休みの宿題と大人の恋愛成就に奮闘する姉弟。新吉原の花魁・玉扇が見つけた本当の愛。密かに想うショコラティエは姉の恋人……かけがえのない気持ちといつも一緒。チョコレートにまつわる愛と涙と笑顔に満ちた珠玉の短編集。甘くほろ苦い秘密の5粒をどうぞ。
いちばん大事なこの思い、このひと粒に託して。(裏表紙より)
姉と別れたというショコラティエの元彼の店に通いつめる少女の目的は。櫻川さなぎ「プラリネ」
カカオからチョコレートを手作りする、無理難題に挑むことにした少女と、それをふっかけた少年のお話。今野緒雪「かぐや姫のチョコレート」
美形である自覚を持つ少女趣味で女装癖のある弟とともに、悩める男女の縁を結ぶ。我鳥彩子「ちょこれと六区〜うちの悪魔で天使な弟が〜」
新吉原の花魁・玉扇が見る吉原の風景と人々と、彼女自身の恋物語。はるおかりの「花わずらい」
家出少年は、保護してくれた男性の温かさに癒され、やがて自らの道を見つける。岩本薫「2/14」
どれもいい甘さ、ほろ苦さのある短編でした。みんな方向性が違って面白いなあ。個人的にストレートにチョコレートに絡めて少女の恋を描いた「プラリネ」と、どう絡むのかわからないまま読んで新吉原の空気を感じさせてくれた「花わずらい」がすごく好きでした。
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東京で暮らす風花/アネモネは、亡くなった父が所属していた特殊機関「アシッド」のメンバーとして、人類の敵である「七番目のエウレカ/エウレカセブン」と戦うため、ダイブを試みる。そこで風花はAIコンシェルジュであるドミニクが青年の姿で案内してくれることに驚きつつも、やがて世界の秘密に触れることになり……。
だいぶと話が違うな!? ハイエボ1作目が大掛かりな伏線だったという話なのか。
かつて誰にも救われなかった、でも最後に救われた少女が、今度はもう一人の少女を助ける話、という感じ。ぐるっと回った感がありますね。いやでもだいぶと込み入った話になってきたぞ……。
スカブコーラルの存在する世界と地球が地続き? というか関連するのはテレビシリーズでもハイエボでも話していたと思うんですが、どちらが本当の世界なのかという話をするのは野暮かもしれない。風花にとってはエウレカによって危ぶまれている東京が本当だし、エウレカにとってはレントンがいる世界が本当で。
結局レントンが特異点なんだな。これどう落とすんだろうというところにすごく興味があります。
玄武書房で新しく刊行される辞書『大渡海』の作業が進められる中、営業部員の馬締はコミュニケーション能力に欠けながらも言語学専攻と言語に対する感覚を見抜かれ、辞書編集部に異動することになった。一冊の辞書が完成するまでにかかる時間は長く、その間に人や思いは少しずつ変化していって……。
原作は読了済。静かに、じわじわと熱く、言葉と辞書への思い、そしてそれを用いる日常の大切さが感じ取れるような作品だと思いました。堅実かつ、丁寧で面白い。文章だと想像するだけだった作業風景が本当に細かくて、おお……と感動しました。そしてまた俳優さんたちがいい。すごくいい。仕事に打ち込んでいる感がすごく見えた。
ただやっぱり活字で読むjからこそ「言葉」「辞書」というものがぐんと迫ってきているように感じられたのは確かで、映画はわかりやすくはあったんだけれども、私がこの作品を好きだと思った感情の熱や色がちょっと違っていて、その異なりも面白いなあと思いました。
戦時中のアメリカ。ニューヨーク社交界のトップに位置するマダム・フローレンスは、夫と音楽をこよなく愛していた。だが彼女は歌の才能には恵まれていなかった。妻のため、夫のシンクレアは仲間内での音楽会を開き、批評家たちを買収、新聞に好意的な論評を書いてもらい、関係者には真実を告げないよう奔走していたが、ある日マダムはカーネギーホールで歌うと言い出して……。
1944年。実在の出来事を下敷きにした作品です。これ、本当に行われていたのだとしたらすごいな。買収でなんとかなるものなのかと思うと興奮してしまう。そこまでして妻を守りたかったし、夢を壊さなかった夫や周りの人たちの愛情が、なんともいえず染みる。演じているのを見ているだけでも愛嬌のある人だと思ったし、世間ずれしてなかったんだろうなと思いました。
愛するものを愛したままでいさせてあげたいという、その気持ちが最も尊い。最期まで夢を守り抜いた人たちに拍手を送りたいです。
「嫁いできてくれ、雪緒。……花の褥の上で、俺を旦那にしてくれ」
幼い日に神隠しにあい、もののけたちの世界で薬屋をしている雪緒の元に現れたのは元夫の八尾の白狐・白月。突然たずねてきた彼は、雪緒に復縁を求めてきて——!? ええ!? 交際期間なしに結婚をして数ヶ月放置した後に、私、離縁されたはずなのですが……。
薬屋の少女と大妖の白狐の青年の異類婚姻ラブファンタジー。(裏表紙より)
おおー美学の世界だなあ! 糸森さんの書きたいものやこれが面白いでしょうという要素がいっぱいに詰め込まれた和風もの。しかも甘いだけじゃなくて怖い。ホラー要素めいた民俗学的なものもあって、あと「嫁」は「夜女」という意味で、という言葉のあれそれが好きな人にはたまらない世界観だと思いました。
ここに異類婚姻譚のときめきと怖さが入っていて、面白すぎる……と唸ってしまった。会話のテンポや次から次へと起こる事件という緩急が独特で。最後の種明かしが、雪緒自身が「こういうことなんだろうなあ」と思うに止まったのがちょっと残念だったのですが、とても楽しく読みました。
東京出身のカイは、ひなびた港町で父と祖父と暮らしている。ある日趣味で作った打ち込み動画をアップしたところ、同じクラスでバンドを組んでいる水産会社の一人娘・遊歩と、神社の跡取り息子・国夫にメンバーに誘われる。練習に参加したところ、不思議な歌声を聞いたことがきっかけで人魚のルーと出会うカイ。ルーは、音楽を聴くと鰭が足に変わるのだった。
独特の描写が癖になる。水とか、踊る動きがめちゃくちゃいいと思いました。
一人の少年が自身の将来やいま自分が置かれている環境をどのように受け入れ、乗り越え、決めて歩み出すかまでのお話なので、登場人物がカイに投げかける言葉が見ていて結構きついものがありました。都会のことをまったく知らないまま語る遊歩と国夫が特にきつい。十五歳ってこんなものかなあ。もうちょっと情報が入ってこないものかな……とぐらぐらしてしまった。
とにかくルーが可愛らしかったのですが、犬人魚が……笑 マスコットキャラ的ですごく可愛かったです。