読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

江戸から明治に入って二十年。時が時ならば若様と呼ばれていたはずの長瀬たちは、これからの暮らしのため、巡査となるべく、教習所で訓練を受けることを決意する。その学舎では、長瀬たち若様組、薩摩組、静岡組、平民組と様々な派閥が生まれていた。果たして若様たちは無事に巡査となることができるのか。
面白かった! 『アイスクリン強し』の前日譚で、真次郎から離れて若様組が巡査になるまでのお話。明治の警察学校を舞台にした学園もの、という表現でいいのかな。
時代が変わり、人の身分が代わり、士族と平民など派閥が教習所にも生まれている。それぞれの身の上から巡査を目指す青年たち。若様組の個性も光っているけれど、教習所の同窓たちや、教師陣まで個性的で面白い。特に無能な所長や、理解のある教師、嫌味で贔屓があるくせに底知れないナンバー2の存在が楽しい。派閥を越えて訓練生たちが結束するところもすごくよかった。最後の大乱闘はすごく楽しかったし、学園ものとしてすごく楽しかったと思う。
個人的に沙羅ちゃんが好きなので、もっと出て! と思ったんですが、若様組もすごく楽しくて、続きがあれば読みたいなあと思いました。
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彼の妻は小説家だった。彼は妻の最初の読者だった。しかし妻はある日「思考すると寿命を削る」原因不明の奇病にかかる[Side:A]。彼女は小説家だった。夫は彼女の読者だった。しかし夫はある日交通事故に遭ったことで膵臓に腫瘍が見つかり、寿命がわずかだと判明する[Side:B]。
ものすごい話だった……。読み終わった後、ため息をついてしまった。凄まじかった。
二種類の夫婦を追っているだけなのに、ものすごいドラマとストーリーが詰まっていて、すごかった。小説家と読者を執拗に描いていて、その二つが結びついた(恋愛や男女という関係で)瞬間すごく嬉しいんだけど、一気に一方の喪失という形で落ちていく(もしくは高みに登っていくのか?)のが面白いけど怖い。容赦ない。けどすごく面白いというアンビバレンスが。
自分が書き手であるということを考えると、AもBもなんだか親身に感じてしまう。受け入れてほしいし、丸ごと受け入れてくれる人が欲しい、とよく感じているなあと確認した。

フランダースの貧しい少年ネロは、村人たちから迫害を受けながらもルーベンスの絵に憧れ、老犬パトラシエを友として一心に絵を描きつづける。しかし、クリスマスの朝アントワープの大伽藍に見いだされたものは、この不幸な天才少年と愛犬との相いだいた亡骸だった。虐げられた者への同情を率直素朴な表現でつづった少年文学の傑作。他に「ニュールンベルクのストーブ」を併録。(裏表紙より)
ちゃんと読んだことがないので読んでみようと思って。ネロが十五歳の少年である。パトラシエ視点の文章もあって、人間と同じように考えているのに、犬ということが強調されているので、西洋圏のお話だなあとぼんやり思う。
「フランダースの犬」の話の流れはみんなに認知されている話の流れのままだと思う。
面白いなあ! と思ったのが「ニュールンベルクのストーブ」。偶然家にあったある芸術家の傑作のストーブが父のせいで売られることになり、その中に潜り込んで一緒についていく少年の話。行方にどきどきしたり、幻想的なシーンがあったりして、最後に少年オーガストが出会ったストーブの買い手……! その他にも、二編とも芸術家というものを掘り下げようとしたり、畏敬していたりして、すごく好きだった。


友衛遊馬、18歳。弓道、剣道、茶道を伝える武家茶道坂東巴流の嫡男でありながら、「これからは自分らしく生きることにしたんだ。黒々した髪七三に分けてあんこ喰っててもしょうがないだろ」と捨て台詞を残して出奔。向かった先は、大嫌いなはずの茶道の本場、京都だった——。
個性豊かな茶人たちにやりこめられつつ成長する主人公を描く、青春エンターテイメント前編。
〈解説・北上次郎〉
(上巻・裏表紙より)
マイナー茶道お家元の長男が、茶道が嫌いだと言って家出し、しかし何故か本場京都に行って、なんだかんだと茶道をやっているお話、というのが上巻。なんだか独特の文体というか語り口な印象でした。人が喋って説明することを、地の文で説明するというのが多かったり、過去の話を現実の時点でのことのように書いていたり。ちょっとめずらしかったので気になった。
家出したもののお金もない、何の夢も持たない遊馬が、それでも少しずつ頑張っていくところがいい。自然と出てしまう茶道の作法のシーンがちらほらあって、思わずにやっとしてしまいます。遊馬はだめな子だけど、ちゃんと持っているものがあるんだなあ。いいなあ。
解説があるのですが、解説が下巻の内容にちょっと触れているので注意が必要。
下巻はお話の収束で、何かを見出しつつある遊馬が眩しい。自分を受けいれたというか、落ち着きが出たので安心して読めました。お茶をしたり、剣を持ったり、弓を引いたり。志乃さんの遊馬評である「身体で覚えるタイプ」というのがしっくり来て、最後の最後でおおっと思いました。弟・行馬の出来過ぎっぷりにはなんだか可哀想な気もしましたが、遊馬はちゃんと何かを見出そうとする気持ちが出たみたいだし、大団円でとてもよかった!

“ホテル・ウィリアムズチャイルドバード”、通称〈鳥籠荘〉には、普通の社会になじめない一風変わった人々が棲みついている。衛藤キズナ(17歳の少女。バイト・絵のモデル)、浅井有生(新鋭画家。ほぼ外出しない)、井上由起(有生のイトコ。超美形で女装癖あり)。彼らを中心に、妄想癖の美女、ゴスロリ小学生、ネコの着ぐるみ、不気味な双子の老人たちも加わり、繰り広げられる——ちょっとおかしな、けれどいろいろフツーの日常がつづられた物語。今回は、キズナを慕う後輩の女子高校生の話、浅井有生と井上由起の子供の頃のキュートなヒ・ミ・ツのお話、キズナと由起のハプニングな1日の話を収録。(カバー折り返しより)
1を読んでからかなり間が空きましたが、2巻を読んでもさほど違和感はなく、2話目の有生と由起の話が新鮮で面白かったと思いました。変人ばっかりだけれど、なんだか童話めいていて愛おしい。
「ザリガニ/万引き/スケッチブック」は、オチと、その次の「彼女と彼の気まずい日曜、彼女と彼女?のハプニングな土曜」で明かされる由起の台詞に、そういうことか! と噴き出した。そうか、だからどちらも一生懸命だったわけだな!
でも「ザリガニ〜」で気持ち悪いところがあるのは変わらないな……とそこだけ後味が悪いと思いつつ。
「ザリガニ〜」で登場した、海の底から謎の巨大甲殻類が云々は、きっと有川浩さんの『海の底』だろうと思ってにやっとしました。

携帯電話の数だけ自分を使い分けている孤独な少女、さちみ。
職場でお局となりつつ、ロリィタ趣味を隠し続ける29歳OL、リョウコ。
子育てを終え、もはや母親でも妻でもなくなった女、史緒。
結婚できないまま人生の終盤を迎えようとしているサラリーマン、臣司。
そして、定年になる横暴な夫に復讐を誓う妻、初恵。
心に抱えた秘密をカミングアウトするとき、人はどう変わるのか?
人気作家、高殿 円が現代ものに初挑戦、注目の清涼ストーリー。(裏表紙より)
私が読んだのは新装版じゃなくて、ヴィレッジブックスの方。
世界観人物リンクの連作短編。それぞれのお話が別のお話に繋がって、一番最後の章で「カミングアウト」するストーリー。面白かったー。それだけじゃなくて、みんな何かしら秘密を抱えている、その秘密は本当に秘密にすべきことなのか、そのルールは誰が決めた? と問いかけているところも、深いなあと思う。
臣司のお話がいいなあ。四十六歳と十七歳女子高生。最後にさちみが乗り込んでいくところは、やっぱり青さっていいなあと思う。世界に問いかけるのは何故かいつも未成年なのだ、と思ったりする。
新装版の徳間文庫のものも貼っておく。


「好きだよ、私の特別な人……」
ごく普通の高校生・友則が出会った謎の美形外国人は、なんと宇宙からやってきたエイリアン。
しかも、友則に「殺してくれ」と頼んできて……。
困惑しつつも彼に “サミア”と名付けて一緒に暮らすうち、サミアを好きになってしまう友則だが——。
『サミア』『いつか地球が海になる日』『ミルク』ほか、書き下ろし『ミルクの後で』を収録。(裏表紙より)
実は初BL小説なのである。新しい扉に手を掛けてしまいました。ある四コマ同人誌を読んでいてどうしても気になったので読んでみたら、「サミア」のあまりの切なさにきゅんとしてしまい、(負けた……)と思いました……。
「サミア」は宇宙からやってきたエイリアンで、主人公・友則だけが唯一彼を殺せる存在である、という設定なのですが、このエイリアンの孤独や、緑豊かな田舎風景、そして一夏の物語というのがあまりに胸を揺さぶるお話で! あれなシーンに言葉を多く割いていないところも、しんみりとした繊細なお話を作り出しているように思います。シーンひとつひとつとっても美しいのだ……。
「いつか地球が海になる日」や「ミルク」も、明るさの中にどことなく優しさが流れているようで好きなお話でした。

中三の凜は「えらい子」だ。身体の不自由な姉がいて、母は彼女にかかりっきりだから、良い子でいるしかなかった。小さな胸にひそむ寂しさをなぐさめてくれたのは、ただ、小さな花と、“神主さん”の白尾だけだった。だから、進学のため町を離れた彼が教師として目の前に現れてから、凜はまた昔のように神社の境内を訪れるようになったけれど——。真夏の宵に花開く、せつない初恋物語。(カバー折り返しより)
沖原さんだいすきだー! 持っているのは『勿忘草の咲く頃に』『桜の下の人魚姫』『黄金を奏でる朝に〜セレナーデ〜』と、今回の本で刊行された本はすべて揃えたことになるのですごく嬉しい。繊細な筆致と物語がとてもとても好きなのです。新作出されないかなあ……!
中学三年の凛が寂しさを押し隠しながら過ごす一夏を描いただけ、なのに、切なくてたまらない。大人びた少女の凛は、かつての初恋を自覚して、恋未満だけれど柔らかい感情を、“神主さん”の白尾に覚えている。この細かな心とか、凛が追っていく光景が、すごく綺麗なのだ。
普通のライトノベルより、地の文も多くて、細やかなので、すごくオススメです。が、もうすでに絶版なのかな……?

成人して自らの性別を決められる日が来たら、男を選んで宇宙飛行士になることを夢見る、海王の末っ子・イル。以前イルにプロポーズしてきた陸の王子・エアリオルとは、友人としてのつき合いが続いている。ところが、エアリオルに恋する財閥令嬢が出現! しかも彼女がイルにも一目惚れをしてしまったり、海賊の略奪行為が頻繁になったりと、騒ぎは絶えない。イルとエアリオルの関係は? そして海賊を追う二人が見たものとは…?(裏表紙より)
『月の人魚姫』の続編。相変わらずかわいいお話だ。特に関係性に前進はなく、イルとエアリオルの十惑星連合加盟の夢への物語に、恋に恋する乙女とヴィンセントが絡んでどたばたする、というアニメの一話を見ているようなのが今回のお話。
イルが一生懸命な少年という感じなのに、美少女の姿というのがいいなあ。女の子になったら男前美少女になるに違いないので、女の子になってほしいんだが!
読まないときはぱったり読まないのですが、最近は漫画の方がよく読んでいます。
名作漫画ブームで、萩尾望都から始まって、ちょくちょく色々なものを集めています。

『砂の城』(一条ゆかり 文庫版全4巻)
名家に生まれた令嬢ナタリー。彼女が生まれた日に彼女の家の前に捨てられた少年フランシス。二人は兄妹のように育ち、お互いに恋心を自覚するように。しかしナタリーの両親が亡くなり、結婚を反対されることになった二人は手に手を取り合って逃亡し、海に身を投げた。しかしナタリーは助かり、フランシスの遺体は見つからなかった。
ある日、ナタリーは死んだはずのフランシスが、記憶を失った状態で新しい家族を作っていることを知る。事故のためにフランシスとその妻が亡くなり、残された子どもに、ナタリーはフランシスと名付け引き取った……。
……という年上女性と少年の年の差と愛を描く壮大な恋愛ドラマなのですが、これが、最終巻の文庫版四巻目になっても幸せにならない! すごい!
次から次へとすれ違いや新しい登場人物、環境や心境の変化で、別れ別れになるナタリーとフランシス(子どもの方)。女性ならではといった感じの衝撃的な事件で物語は幕を閉じる。やるせなさと壮大さに、読み終わった後、ぼうぜんとしました。
『デザイナー』もこれでもかと女性のプライドとかっこよさとメロドラマで面白かった。

『ひらひらひゅ~ん』(西炯子 全4巻)
最近西炯子さんにハマっていまして、色々読もうと集めています。これは、よく拝読しているブログの某さんが部活ものとして紹介されていた本。西さんだということが頭から抜けていたので、発見してびっくりしました。
高校の弓道部に所属している男子高校生たちの恋愛模様が1巻で、その後は部活とは、勝つということは、弓道とはを問い、その後は段々話がニアホモ(というのでしょうか)の方向に行くのでびっくりしましたが、なんだか高校生たちがかわいくてきゅんとしたのでお気に入りになりました。


『ひみつの姫君 うわさの王子』(可歌まど 全2巻)
深窓の姫君アルディーナには政略結婚が決められた。それもガルニア国の良い評判の聞かないイジー王子と。せめて相手を一目見て覚悟を決めたいと、外交官の孫の少年アルとしてガルニアに潜入したアルディーナは、そこでその当人イジー王子と遭遇してしまい。
最近連載されている『狼陛下の花嫁』の方をオススメされる方が多いような気もします(実際に友人からは『狼陛下~』がオススメだと貸してもらいました)。でも、私はこっちの方もずどんときたよ!
よくある姫と王子のファンタジー設定ながら、何故だかすごくかわいらしくてお話が素敵なんですよね! 基本一話完結のはずなんですが、二巻で大きなお話が出来上がっているからなのかな。アルは可愛らしいし(少年姿も!)、イジーはさほどイケメン王子様っぽくなくても不器用で素朴な優しさの男性です。派手じゃないけど、堅実で優しくて素朴なお話でだいすきだ! と思ったので、お気に入りにする。
名作漫画ブームで、萩尾望都から始まって、ちょくちょく色々なものを集めています。

『砂の城』(一条ゆかり 文庫版全4巻)
名家に生まれた令嬢ナタリー。彼女が生まれた日に彼女の家の前に捨てられた少年フランシス。二人は兄妹のように育ち、お互いに恋心を自覚するように。しかしナタリーの両親が亡くなり、結婚を反対されることになった二人は手に手を取り合って逃亡し、海に身を投げた。しかしナタリーは助かり、フランシスの遺体は見つからなかった。
ある日、ナタリーは死んだはずのフランシスが、記憶を失った状態で新しい家族を作っていることを知る。事故のためにフランシスとその妻が亡くなり、残された子どもに、ナタリーはフランシスと名付け引き取った……。
……という年上女性と少年の年の差と愛を描く壮大な恋愛ドラマなのですが、これが、最終巻の文庫版四巻目になっても幸せにならない! すごい!
次から次へとすれ違いや新しい登場人物、環境や心境の変化で、別れ別れになるナタリーとフランシス(子どもの方)。女性ならではといった感じの衝撃的な事件で物語は幕を閉じる。やるせなさと壮大さに、読み終わった後、ぼうぜんとしました。
『デザイナー』もこれでもかと女性のプライドとかっこよさとメロドラマで面白かった。

『ひらひらひゅ~ん』(西炯子 全4巻)
最近西炯子さんにハマっていまして、色々読もうと集めています。これは、よく拝読しているブログの某さんが部活ものとして紹介されていた本。西さんだということが頭から抜けていたので、発見してびっくりしました。
高校の弓道部に所属している男子高校生たちの恋愛模様が1巻で、その後は部活とは、勝つということは、弓道とはを問い、その後は段々話がニアホモ(というのでしょうか)の方向に行くのでびっくりしましたが、なんだか高校生たちがかわいくてきゅんとしたのでお気に入りになりました。


『ひみつの姫君 うわさの王子』(可歌まど 全2巻)
深窓の姫君アルディーナには政略結婚が決められた。それもガルニア国の良い評判の聞かないイジー王子と。せめて相手を一目見て覚悟を決めたいと、外交官の孫の少年アルとしてガルニアに潜入したアルディーナは、そこでその当人イジー王子と遭遇してしまい。
最近連載されている『狼陛下の花嫁』の方をオススメされる方が多いような気もします(実際に友人からは『狼陛下~』がオススメだと貸してもらいました)。でも、私はこっちの方もずどんときたよ!
よくある姫と王子のファンタジー設定ながら、何故だかすごくかわいらしくてお話が素敵なんですよね! 基本一話完結のはずなんですが、二巻で大きなお話が出来上がっているからなのかな。アルは可愛らしいし(少年姿も!)、イジーはさほどイケメン王子様っぽくなくても不器用で素朴な優しさの男性です。派手じゃないけど、堅実で優しくて素朴なお話でだいすきだ! と思ったので、お気に入りにする。