読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

ひょんなことから、英語の先生の家で書生として暮らすことになった探偵小説好きの少年。
癇癪もちで、世間知らず。その上、はた迷惑な癖をたくさんもつ先生の〈変人〉っぷりには辟易するが、居候生活は刺激でいっぱいだ。なんせ、先生のまわりには、先生以上の〈超変人〉と、奇妙奇天烈な事件があふれているのだから……。
夏目漱石の『吾輩は猫である』の物語世界がよみがえる、抱腹絶倒の連作ミステリー短編集。(カバー折り返しより)
連作ミステリー短編集は大好物。探偵役は書生の少年、パートナーは変人の先生。
こういう小説でコンビを組む場合、どちらかが率先して情報を集めて、もう一方が解決策を提示するというのが筋だと思うのだけれど、この小説はそのどちらも主人公一人でやってしまう。
でもこの主人公、どうにも格好よさが足りなくて、へたれな印象が拭えないなあ! 笑ってしまった。そして先生が変人すぎて愛しいです。「春風影裏に猫が家出する」で「あれ」を言った先生、すべてを持っていってそっぽを向いた先生の愛しいこと!
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旧友の招きでスタイルズ荘を訪れたヘイスティングズは、到着早々事件に巻き込まれた。屋敷の女主人が毒殺されたのだ。難事件調査に乗り出したのは、ヘイスティングズの親友で、ベルギーから亡命して間もない、エルキュール・ポアロだった。不朽の名探偵の出発点となった著者の記念すべきデビュー作が新訳で登場!(裏表紙より)
綺麗な印象のミステリー。なんだかとてもシュッとしているのに、じっくり読まされた。
視点は名探偵ポアロではなく、親友のヘイスティングズ。彼の私感が入るのが面白いなあと思った。犯人指摘はとてもびっくりした。色々疑いつつ読んでいたのに、ええそうなの!? という。
ラストはとても素敵だなーという感じだった。誰かと誰かがくっつくのってとてもチャーミングでかわいいなあと思った。

嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、正確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった……はうzが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ! 奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス!(裏表紙より)
面白かった! 元気出るなあというテンポの良さと気持ちいいストーリー!
ひとつひとつが綺麗にはまっていくのがいいなあ。最後、本当にだめなの、だまされちゃうの、とどきどきしてしまったけれど、気持ちのいい終わり方をした。
楽しくて、なんかちょっと壊れてる人たち。というのは、素晴らしい才能を持っていたり、特に銀行強盗に罪悪を抱いていない様子だったりするから。そのネジの抜け具合が、読んでいて楽しいのかも。雪子さんが一番弱そうに見えてキレるとすごかった。あとの三人はなんとなく自分でやっていける感じがするけど、文中にもある通り、安定感の良い四角であることがとてもいいなと思った!

涙も凍る冬の山脈に雪蟷螂の女が起つ。この婚礼に永遠の祝福を——。
長きにわたって氷血戦争を続けていたフェルビエ族とミルデ族。その戦に終止符を打つため、ひとつの約束がなされた。それは、想い人を喰らう”雪蟷螂”とも言われるフェルビエ族の女族長アルテシアと、永遠生を信仰する敵族ミルデ族長オウガとの政略結婚だった。しかし、その約束の儀は、世代を超えて交錯する人々の想いにより阻まれる。
果たして、山脈の地に平和は訪れるのか。そして、極寒の地に舞う恋の行方は……。
『ミミズクと夜の王』『MAMA』に続く”人喰い物語”最終譚。(カバー折り返しより)
人喰い物語三部作の最終譚。主人公は、愛した者を喰らうと例えられる情熱を秘める強い女たちのいるフェルビエ族族長アルテシア。冒頭から凄まじい寒さと吹雪が感じられて、同時にとても熱かった。世代を超えて交錯する想い、というのがとても素晴らしく冷たく熱く描かれていたように思う。見開きの挿絵はぞくぞくした。
恋というと抱きしめあったり隣り合ったり、背中を合わせたりするイメージがあるけれど、誰の姿も見えないような吹雪の中で隣にあることを信じている恋、みたいだったこの話。
これ一気に読んで正解だった。風みたいに駆け抜けるように読まなきゃならない気がした。

「漫画の王国」に生れた小説家の乙女な日常生活。バンドを追っかけ上方へ、愉快な仲間と朝まで語り、わきあがる妄想の楽園に遊ぶ……色恋だけじゃ、ものたりない! なぜだかおかしな日常はドラマチックに展開——日本の政局も、家族の事件も、人気のTVドラマも、考え始めたらいつのまにかヒートアップ! 「読んで楽しく希望がモテる」、笑い出したら止まらない、抱腹微苦笑ミラクルエッセイ。(裏表紙より)
冒頭のスーツを買いに行く話からくすくすしてしまったが、オタクネタにうっかり反応してしまった。「陰のない帝国」で触れられる某週刊少年漫画雑誌の話。ある海賊漫画の某船長とその部下に目をやるしをんさん。やっぱりそこに目がいくのかー! と思った。
「人生劇場 あんちゃんと俺」の妄想話が好きです。というか読み返したら、最近「西洋骨董洋菓子店」を読んだのでよしながさんの絵でがーっと通り過ぎていくんですが……。
「暴れ唐獅子の咆哮を聞け」も面白かった。人の妄想を覗くのってどうしてこう楽しいんだろう。しかもしっかり物語が作れてるのがすっごく面白い。日々も考えていることをひとつひとつ取り上げていくと面白いなあと思う。

そなたの答えがノーでも、彼女の答えはイエスだ。わたしは〈人質の墳墓〉から花嫁を連れていく。フィンダファーの寝袋もろともさらいあげると、妖精王は塚山から去った。
タラの丘の〈人質の墳墓〉でキャンプした夜、別の世界にあこがれるいとこ、フィンダファーが妖精王にさらわれる。翌朝からグウェンのいとこを連れもどす旅がはじまる。妖精たちとの絶妙な出会いに助けられながら。だがケルトのフェアリーランドは、グウェンにとっても魅力ある世界だった。
カナダの青少年がその年、一番おもしかった本を選ぶルース・シュワッツ章の1994年受賞作。(カバー折り返しより)
黒い服のよく似合うフィンダファーが、美しい青年に出会うところから物語は始まる。フィンダファーのあれこれがあるのかなあと思ったら、そのいとこグウェニヴァーの冒険譚だった。寝物語に語るお話という感じであっさり読めた。フィンダファーを取り返すというのが物語なのかなと思ったら、いきなりRPGな世界に入っていくのでびっくりした。最後の戦い辺りは聖書関係なのかな。
ひとつひとつの表現がフェアリーテイル的でいいなあ! バンシーめいた声でむせびなく、とか。短い草の草原とか石舞台とかなんだろうなあと勝手に想像するのが楽しかった。
冒頭のある言葉に感動したので、ラストの締め方はものすごく背筋がぞくっとして感動した。


ニーベルンゲンの宝を守る竜の血を浴びて不死身となったジーフリト。だが妃クリエムヒルトの兄グンテル王の重臣ハゲネの奸計により殺されてしまう。妃の嘆き、そして復讐の誓い。こうして骨肉相食む凄惨な闘いがゲルマン的忠誠心の土壌のうちに展開する。均衡のとれた美しい形式と劇的な構成をもち、ドイツの『イーリアス』と称せられる。(全2冊)(上巻表紙より)
某窓が出てくる少女漫画にこれが載っていると聞いて、漫画も一緒に読んでいます。
ジーフリトがクリエムヒルトを妻とし、殺されるまでが前編。ジーフリトが殺されるきっかけとなる、クリエムヒルトがプリュンヒルトと言い合いをするのは「どっちかいい加減に折れろ」と思わず呟いてしまった。でも事情の理解が浅いプリュンヒルトの方が悪いかなあと思ったり。配下になったら主君より身分の高い王でも、主君に尽くせっていうのは、ちょっと難しいかなあ。
後編から復讐劇開始。エッツェル王の求婚を受け入れたクリエムヒルトは10余年も復讐を望み続け、自身の地位を利用して復讐を遂げようとする。あっちこっち色んな人が出てきて相関図を思い描くのが大変だった。
とても復讐心の醜い話だったように思う。ハゲネの友情も人を殺しておいてなんだお前はと呟いてしまった。なんだかすべて遠い出来事のようだった。
![西の魔女が死んだ [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51Tpxaqwa4L._SL160_.jpg)
「西の魔女が死んだ」を見ました。号泣しました。冒頭から涙流すのってどうなのーと思いながら、亡くなった祖母のことを考えて、大好きって言いたかったなあと思っていました。映画には銀龍草のくだりがない代わりに、郵便屋さんが登場。郵便屋さんと息子の話の意味は、まいが進まなければならない未来の暗示だったのかなと思いました。
それにしてもとても綺麗な場所。映画公開した頃におばあちゃんの家見学ツアーやってた気がするんですが、すっごく行きたかった! 日々の中に在るものがとてもいいなあと思うのです。西の魔女は、家が好きです。そこで生み出されるサンドイッチや、ジャム、まいの着るスモッグやエプロンがとても素敵。思わず見終わった余韻で泣きながらリンゴジャムを作ったぜ! 甘かったぜ!


「殺し屋が来て、兄さんを殺してしまったんです」—江戸、深川の鉄瓶長屋で八百屋の太助が殺された。その後、評判の良かった差配人が姿を消し、三つの家族も次々と失踪してしまった。いったい、この長屋には何が起きているのか。ぼんくらな同心・平四郎が動き始めた。著者渾身の長編時代ミステリー。(上巻・裏表紙)
短編集かと思ったら、実は短中長編でひとつの物語。
ぼんくらの同心、とあるけれど、そんなぼんくらに感じなかったのは、もっとへたれでニートな「僕僕先生」(仁木英之)の王弁を知っているせいかなあ。
上巻は長屋の面々の事件と楽しさみたいなものなんだけど、「長い影」という話に近付くと暗雲が立ちこめてきた。しかしこの話の清涼剤は、美少年で測量という特技を持つ弓之助の存在だなあ! この子、かわいいぞ……! 疲れた親父と合わさると最強じゃ! 平四郎&弓之助コンビ超良い……! 疲れた親父と賢い美少年いいなあ。この美少年には弱みがあって、そこが子どもらしくてかわいくていい!
しかし話は段々と人間関係の複雑怪奇なところへ落ちていく。なんか色々やるせないなあと思う幕切れ。でも上巻一話の話から見ると、この終わりはこの小説の決められていた形だったんだろうなあと思ったり。人情とか、人間とか、そういうもの。
とても面白かった!

夜、森の中で開かれる市『夜市』。異界の住人たちが行き来するこの場所に行こうと言い出したのは、同級生の裕司だった。親切な老紳士と話し、彼に案内された場所で買い求めるものとは。「夜市」「風の古道」の二編。
ホラーに馴染みがないのでよくわからないけれど、しっとりとしたいい文章だなあと思った。個人的にはもっと書き込みが欲しい感じがしたけど、それは私感。
夜市の意外な結末と、風の古道の結末の流れがどうも似ている気がするけれど、私は風の古道の法が好きだなあ。ラストページの締め方がとても好きだ。
これは成長の物語ではない。
何も終りはないし、変化も、克服もしない。
その後も続くのが感じられる。物語後の諸々の事情はどうなったんだろうなあ。