読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

①CDショップに入りびたり苗字が町や市の名前であり③受け答えが微妙にずれていて④素手で他人に触ろうとしない——そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。解説・沼野充義(裏表紙より)
伊坂さんのイメージは淡々とした語り口なんですが、これもやはりそんな感じ。でも淡々としているのは語りだけで、実際の物語は結構いろんな事象があって読むのが楽しい。語りと物語の差が面白いのかな?
死神・千葉が、「ミュージック」が関わると目の色が変わるのが面白い。すぐに口に出すところが、すごい好きなんだなと思わせる。
「恋愛で死神」と「死神対老女」が好き。「恋愛で死神」は最後やるせない気持ちになって、揺らがない死神がちょっと憎らしくなるけれど、「死神対老女」では救いが見れて良かったなと。でもやっぱり全部いいなと思う。少しずつリンクしているのがとても好きなので嬉しい。この短篇六つも少しずつリンクしているけれど、伊坂作品でもリンクがあって、「旅路を死神」で出てくる絵描きの人は、もしかして『重力ピエロ』の弟か? と思っていたらやっぱりそうだったらしい。
これ確か映画化していたと思うのだけれど、評判はどうだったんだろう。
PR

東京、下町の古本屋「東京バンドワゴン」。この老舗を営む堀田家は今は珍しき8人の大家族。60歳にして金髪、伝説のロッカー我南人。画家で未婚の母、藍子。年中違う女性が家に押しかける美男子、青。さらにご近所の日本大好きイギリス人、何かワケありの小学生までひと癖もふた癖もある面々がひとつ屋根の下、泣いて笑って朝から晩まで大騒ぎ。日本中が待っていた歴史的ホームドラマの決定版、ここに誕生!!(裏表紙より)
すっごく面白かった。大好き! ホームドラマすっごくいい。
家族構成からしてもうこれはドラマでしょうというくらいの人たち。頑固じいさん勘一、その息子伝説のロッカー我南人、フリーライターの紺、その妻で元スチュワーデスの亜美、息子の研人、画家で未婚の母の藍子、その娘花陽、妾腹の美男子の青、それからご近所の人やら押し掛けてきた女性やらですごい家族。さらに、物語の語り部は亡くなった勘一の妻サチ。古本屋と家族の営みと、日常の事件がすごくいい。
食事風景のところが、とても映像的。「明日だよね」「そうね。あ、お祖父ちゃん、それソースです」「ソースぅ?」「ハワイでカード買ってきてくれるって」「まずそー」みたいな感じでわいわいがやがやしているところ、映像で見たいなあ。
話もすべてあったかで、みんな笑って受け入れてくれるような心の広さがにじみ出てるようで、読んでいて幸せな気持ちになる一冊でした。

保健室登校の女友達とのぎこちない友情。同級生と馴染めない、音楽ライター志望の偏屈な女子に突然訪れた恋。大好きな彼とさよならすることになっても、どうしても行きたかった、東京——。山と田んぼに囲まれた田舎の高校を舞台に、「あの頃」のかっこ悪くて、情けなくて、でもかけがえのない瞬間を切ないまでに瑞々しく綴る、傑作青春小説。(裏表紙より)
すごく染みた……。高校生っていいなあ、青春だなあという一冊だった。
秋元さん関連の話が切なかった。好きだけど、好き、だけど、っていう思いが胸にくる。
みんな生きるのに精一杯という感じで、無意識に今を生きようとしていて、その上で経なければならない出来事に、泣いたり笑ったり怒ったり悲しんだりして、そういうの、すごくいい。
あとがきにもあるように、「地味な人なりの青春」っていうものが感じられて、とても引き込まれて読んだ。「こういうドラマ、あるよなあ」っていう私のイメージなのだけれど、いいなあ、いいなあ、とずっと思いながら読んでいた。
とても素敵な一冊でした。これは人に勧めたいです。

気鋭作家の身辺雑記、だけに終わらぬ面白さ! プレーンな日常を「非日常」に変えてしまう冴えた嗅覚。世間お騒がせの事件もサッカー選手の容貌も、なぜかシュールに読み取ってしまう、しをん的視線。「幸せになりたいとも、幸せだとも思わないまま、しかし幸せとはなんだろうと考えることだけはやめられない」。美しい男を論じ、日本の未来を憂えて乙女心の複雑さ全開のエッセイ。(裏表紙より)
ゆるくて妄想たっぷりのエッセイ。にやにやして読んでしまった。
しをんさんも色々あれだけれど、周りにいる人も濃いなあ。いっつもそんな会話をしているんだろうか。
「ユートピアに消える老人たち」に笑いつつもちょっと寒くなった。我が地元はここまで田舎ではないが、我が家の近辺には老人ばかりなので孤独死もありうる。実際、冬場はお葬式が多い。そして日曜の昼間に歩くと、どこの道でものど自慢を聞くことが出来ます。ちなみにうちはネプリーグ派。
「主役は一人でもいいだろう」のカップルに爆笑した。何だお前らツンデレかよ!
ちょうどこのエッセイが連載されていたのは「ロード・オブ・ザ・リング」の頃らしく、アラゴルンの話が出てきて(*゚∀゚)=3でした。アラゴルンは今でもかっこいい。そして同系統だと思われる「ハムナプトラ」のアーデス・ベイをしをんさんにオススメしたいところです。

魔法使いサウードの野望によって、シェーラの国は石に変えられてしまう。魔法使いの少年ファリードと共に、魔人の指輪を手にして砂漠の旅に出たお姫さまシェーラ。国を元に戻すため、アハマルの街に賢者を訪ねに行くのだが。
児童文学。小学校中高学年向けの一冊。挿絵は佐竹美保さんで絵がすごく可愛い。
世界観はアラビアンナイトの世界。悪い魔法使いサウードによって石に変えられた王国を救うべく旅に出たお姫さまと魔法使いの少年、協力することになった泥棒の少年、という、ファンタジー好き小学生にはたまらないのではと思える一冊。しかしやっぱり字が大きくて薄いので、プロローグ的なこの一冊だけでは全然物足りないのが大人の悲しいところ。
多分この先の展開には勧善懲悪が描かれるのだろうと思うのだけれど、村山さんは敵側の事情も描いたりするので、考えさせられる内容になっていそうだな、と読んでない私の予想。どうやら子ども世代編が出ているようです。どんな話なんだろう。

欲望の発露する瞬間を考察し、友人と特異な「萌えポイント」について語り合う。伝説の名作漫画『愛と誠』再読でその不可解な魅力を再検証。世界の名作『嵐が丘』を読み乙女のテイストを堪能し、女同士でバクチクライブ旅。独自の見所発見の映画評、旅先の古書店の謎を探索。物語の萌芽にも似て脳内妄想はふくらむばかり——小説とはひと味違う濃厚テイストのエッセイをご賞味あれ!(裏表紙より)
水が萌えポイントとか、墓場で妊娠とか、「将軍っていうのは孤独なものなのよ……」から始まるエッセイ。濃い。濃すぎる。私的に「孤独な将軍」と言い出したぜんちゃんに爆笑した。他にオムツのキャラクター、パンパにお熱を上げるあんちゃん。結婚式で花嫁の思い出(ひどい内容)をみんなで語ったり。
しをんさんの本棚をとても見てみたい。きっとえらいことになっているのだろうと思わずにはいられないから。それで、最も妄想を膨らませた作品について語ってもらう。一体どういう状況で執筆活動をしているのだろうと妄想してみることにする。

あらゆるテロや犯罪が多発する国際都市ミリオポリス。そこに「黒犬」「紅犬」「白犬」と呼ばれる三人の少女で構成される警察組織MBPの〈ケルベルス〉遊撃小隊がいた。「なんか世界とか救いてぇ――……」呟く「黒犬」涼月、スナイパー「紅犬」陽炎、歌い踊る「白犬」夕霧らによる、”死に至る悪ふざけ(オイレンシュピーゲル)”
かなり面白かった……。なんというテンポ。ぐいぐい引力を感じて、一気読み。
出てくるのはまさに表紙裏のあらすじ通り、クールでキュートでグロテスク。プラス、かなりブラックジョーク連発。しかしそれが妙に物語を彩っていて愉快。しかし三人それぞれの過去にはトラウマを覚えそうだった。
それでも格好良く強い三人の少女。貶し合っているようで、その実、絶対的な信頼関係で結ばれている辺り、とてもわくわくする要素だった。
ビジュアル的に三人ともかなり好みです。でも今後一番成長具合が大きく見られそうなのは涼月かな、と。でもやっぱりみんなが好きだー!

アドニスとの最終決戦、エピローグ。
「そんなに多くの人間は乗れないんだよ、あの船は!」
ベルの最初の記憶にある、悲しみみたいなもの。神代に何があったのか分かる気がする。
最終決戦後のアドニスが異様に優しくて泣ける。
この作品で好きなのは、言葉遊びみたいなもの。当て字、ルビ振りが、別の世界を見ているようでわくわくする。想像するのが楽しかった物語だった。
ベルがどんな種族の特徴も持ち得ない、という辺りにどんな姿かすぐに見当がつくけれど、それがどうしてこうなったのだろう、と探す物語だったのかなとか。とにかく、物語の今の「世界の形」を見る、という物語だったように思う。
濃い物語だった。しかしやっぱり鈍器に近いハードカバーも欲しかったなあと思うのだった。

シェリーとの出会いからベネディクティンとの別れまで。
好きなんだよなあ、キール戦とその前後。
「確かに私は介者だ。粗にして野ではあるが、しかし卑ではない。覚えておけ」
から始まって、ベルが飾り立てられる辺りが乙女心をくすぐる。言い寄ってくる人間に対して、「喰い殺すよ」と笑えるベルが本当にかっこいい。
そしてキティ=ザ・オールが大好きだ。あのベルをエスコートできる唯一の人間だと思われる。踊るシーンはときめき度数がぐーんと上がった。
シェリーが神言を口にして「ラブラック=ベル、ただ一名のみ!」と告げてから「逃げてベル、逃げてーっ!」と言う辺りが何故かとても好きだ。
しかしその盛り上がり(私の)に反して、後のアドニスとのことがベルを深く沈めて「ああああ」となる。アドニスは肝心なところでへたれで、だめなやつだ。