青年に助けられた鶴は、娘に姿を変えて恩返しに現れた。夕香と名乗った娘は、演劇の世界でもがいている黎の助けになろうと、その力で女優としての才能を開花させていく。だが、当然、その不可思議な力をいぶかしむ者がいないわけではなかった……。
「鶴の恩返し」をモチーフに、昭和っぽい時代の、演劇青年と鶴の哀しい恋の物語。とても叙情的で、歌うような文体がとても物悲しい。人に近しく、理解しようとしながら、黎を表舞台に押し上げようとする夕香が、最後の最後でやっぱり異形であった、という行動が、異種婚姻譚好きにはたまらんです。結ばれないのもいいよね……!
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