読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
天才ピアニストとして有名だったトム。あるトラウマによって表舞台から姿を消していた彼だったが、恩師の追悼コンサートを開くことになり、五年ぶりにステージに立った。恩師が遺した特注ピアノで超絶技巧曲を奏でていると、楽譜に「1音でも間違えたらお前を殺す」というメッセージが書かれているのを発見する。犯人の目的とは……。
分厚い短編漫画、という印象で、スリル感があってとても好きでした。色々無理があるよ! って感じなんですが、お話としての美しさがすごく好み。ロマンがある。犯人はいったい誰か。目的は。演奏を続けながら極限の状態が続くのではらはらし通しで、無駄なところがなかったように思えてまとまっていたなー。面白かった。
「愛している。もっとお前を独占したい」
強引に想いを伝えてくる兄の龍瞬。
「あなたを抱けるなんて、夢のようです」
優しく理知的な弟の寿峰。
二人から与えられる快楽に戸惑いながらも、心奪われていく晶蘭。
皇子兄弟に後宮で寵愛される夢のような日々。
周囲から隠れて行う悦楽の饗宴は、より激しくなるばかり。
ある日、宮殿内の陰謀に巻き込まれ、三人の関係が晒されてしまい!?(Amazonより)
敗戦国の公主(しかも妹)が幼い弟を守るため、戦に勝った国の皇子たちに命乞いをした。その行為が気に入られ、公主・晶蘭は皇太子・龍瞬の妃として迎え入れられる。愛し合う幸せな日々が続いていたが、ある日託宣によって晶蘭は『神后』に選ばれてしまう。この役目は建国神話に基づいて、「太陽」と「月」それぞれを愛し、受け入れるというもので。
というわけで女性主人公に対して男性二人という内容です。主人公は最後まで意思と矜持をしっかり持ちつつ二人を受け入れる選択をしたので、あまり読んでいて辛い気持ちにならなかったです。龍瞬と寿峰もそれぞれきちんと自分の愛情を示してくれたのもあったかもしれない。
しかし割と真面目な内容なのにこの紹介文だとただのエロ小説にしかならないよな……。その方が買ってもらえるんだろうなあと思うと寂しくなる。TL小説も読み応えがあってほしい。
サルシッチャ王国のティシエナ姫は、生まれたときに受けた呪いのせいで、食べても食べてもお腹がいっぱいにならない。ティシエナ姫も懸命に我慢するけれど、食材調達のために国庫は逼迫。亡国の王子で、今は近衛隊長のアルフィアスが、大量の食料を安く調達したり、食材を節約しつつ食べでのあるレシピを研究したりと日々奔走中。そんなある日、二人の前に呪いの主である魔女が現れて…!?(Amazonより)
かなりギャグ色の強いコメディ。ラブコメというにはちょっと恋愛色が弱いでしょうか。
美少女なのに常にお腹を鳴らしているティシエナ姫。公国の出身ながらも国を追われ、姫の従者をしているアルフィアス。この二人を中心にしたドタバタ劇で、そのほか、イケメンが好きな魔女、豊満な胸が好きな王子、結婚できない魔法使いなど、だいぶと振り切った内容でした。
よく考えたらここまでギャグをやるコバルト文庫をあんまり読んだことがなかった気がします。いままで読んできたものとはだいぶと方向性が違っていて戸惑いました。
母が死に、小玉、義姉の三娘、甥の丙、従卒として当然という顔をした清喜と四人での生活が始まった。そして、その家に頻繁に出入りする文林……。
三娘は訝しむ。副官とはこんなに距離が近いものだろうか。小玉に好意を持っているようにしか見えない。そんな彼女の脳裏を、幼き日に告げられた予言が過る。
「あの娘は高き御位にのぼるだろう。しかし、彼女を愛する四人の男によって不運へ進む」
元許嫁を含め、四人の男はすでに現れている。では、この五人目の男はいったい——?(裏表紙より)
後の皇帝だよ……という気持ちで読みましたが、話のメインは小玉の腹心である清喜です。本編では有能だけれど変人という彼にどんな過去があったのか。
話の流れを大きくしていく感じでなく、個々のエピソードをつなぎ合わせて人となりやその後を思わせる書き方になっているので、なんというか、もうちょっと気持ちを盛り上げて欲しい! と思いつつも、こうした些細な描写が人物におかしみを感じさせて面白いんだよなあ。
あとがきによると、じっくり書きたいというお気持ちがあるようなので、さらに厚みが出るのを楽しみにしています。
売れない作家と腹黒編集者の痛快! バディミステリー!!
売れない小説家の白川照は、今日も愛と勇気と正義(と怖い担当編集者)のために、原稿執筆に精を出す。ところが、照がヒラめくのは原稿の展開ではなく日常に潜む“謎”の犯人ばかり。犯人しかヒラめかない謎が気になって原稿が進まない。そんな照に締め切りを守らせるため、担当編集者の黒澤は、その謎の過程を推理することになるのだが——。犯人だけ当てる作家とその過程を“校正”する編集者の、痛快バディミステリー!(裏表紙より)
何もかもすっ飛ばして「犯人は○○だ!」と言い出してしまうがために事件を引っ掻き回してしまう売れない小説家。そんな作家の手綱を握る、冷静沈着なイケメン編集者。二人の暴走や漫才っぷりが楽しい作品。
作家と編集者の面白コントという感じで、いちいち照の言動が楽しく、地の文もテンポよく読めて面白かったです。出てくる人みんなキャラ濃すぎなのに、ああーこういう人どこかにいそうーと思ってしまう謎。
彩はバイトで知り合った20歳年上の伊藤さんとお付き合いをしている。のんびりと一緒に暮らしていたある日、父親がやってきてここに住むという。頑固な父と、穏やかながらも将来性はあんまりない伊藤さん、そして彩という三人での生活が始まるが、次第に父と伊藤さんの間に不思議な絆が生まれ……。
邦画らしい、『人』を描いた作品だなあと思いました。原作があるんですね。
彩と伊藤さんの関係は穏やかとか惰性とか将来性がないとか言われるかもしれないんですけれど、本人たちのペースがあって、それが一般的には理解されにくいという雰囲気。教師をやっていて堅実を描いたようであっても問題を抱えている父親という人。同居の父を疎んじるというテンプレな兄。どこにでもいそうな人たちの、普通でもあり、異質でもあるごく当たり前の風景が、見ていてほんのりと沁みる、じわじわとした作品だと思いました。
恋人の心変わりが原因で別れたエリザベス。諦めきれないせいで、彼の家の向かいにあるカフェに通い、人気のないブルーベリーパイにアイスをのせて食べる日々。マスターのジェレミーはそんな彼女に次第に惹かれていく。だがエリザベスは元彼が新しい恋人といるところを目撃し、旅に出ることにした……。
傷ついた女性と男性が、一人は本物の旅に、もう一人は同じところで過ごし、変化を受け入れて再び出会うラブストーリー。地味なんですが嫌いじゃないです。人生にはそれぞれの旅があるというロマン的なものを感じました。
結構静かに描かれるんですが、エリザベスの旅がなかなか大きくて、これは彼女の行動力によるものなのか、それともアメリカという大国ではそれほど規模の大きい旅ではないんだろうか、と考えました。日本人としてはめちゃくちゃ距離のある旅をしているように思うんですが、ちょっと国内旅行みたいなノリなのかな、どうなのかな。
売れ残りのブルーベリーパイをキーアイテムにしているところがめちゃくちゃいいなと思いました。
大学で生命科学を専門にしている女子学生の津軽継実は、山の中の森に足を踏み入れた際、何者かに助けられる。付着していた茸を手掛かりに、再び森に分け入った津軽は、「僕は人間じゃない」と告げる謎の「怪物」に出会う。120年生きるという彼は、津軽との出会いによって人間社会で暮らしていくことになるが……。
見たのはオーディオコメンタリー版。ドラマのオーディオコメンタリーってめずらしいですね。ラジオ感覚で視聴できてこれはこれで面白い試みだなあと思いました。
老いることなく生き続け、謎の能力を持つ「怪物」と、命に限りを持つ人間の女性。二人の恋を主軸に、異形のものが人間とその優しさを知っていくストーリーで、役者さんたちの力がなければファンタジックすぎて見られなかった気がする、とてもおとぎ話めいた作品。とにかくみんなこんな風に演技してるんだなと感じられて、オーディオコメンタリーはすごくよかった。
想定された物語展開を大きく外さない、けれど丁寧な作品だと思いました。
麻里子は同棲している彼と上手くいっておらず、朝ごはんすら一緒に食べられない毎日に苛立ちを募らせていた。しかしある日「朝ごはんを一緒に食べよう」と友人たちと集まった。朝ならみんな集まれる。かくして美味しい朝ごはんと新しい一日を迎えるようと、麻里子、典子、里沙、栞はそれぞれの問題と向き合っていく。
いろんな立場やそれぞれの人間関係を持つ女子四人と、朝ごはんをテーマにしたドラマ。原作は未読です。
いかにも女子めいた設定なんだけれど、すごく地に足ついてるというか深夜に見たくなるトーンの話で、短編連作の漫画を読んでいるような心地よさが好きだなと思った作品でした。また四人が可愛いんだなこれが。朝ごはんを大事にするってすごくいいなあと羨ましくもなりました。みんな結構活動的、というか東京だからか開いているお店が多いからか? 朝早くから行動するってすごいなと別のところでも羨ましく感じたりして。
菅谷くんのいまどきっぽさがすごく合っていて、とてもよかったです。彼、突飛なところが目につくけどいい男なんじゃないかなー。