読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
アイルランドの田舎で漁師をしているシラキュースは、ある日引き上げた網の中に女性が入っているのを発見する。何か事故にあったのかと慌てるシラキュースだったが、彼女は人に会いたくないと拒絶する。謎を持った彼女を仮にオンディーヌと呼ぶようになり、シラキュースと病気の娘アニーはおとぎ話に登場する海の精セルキーだと冗談交じりに言い合って……。
謎めいた美女を釣り上げてしまった、バツイチで娘がいる男性。少し風変わりな彼女に名前を与えると、娘がセルキーだと言って興味を持ち始めた。北国の海と突然現れた美女とどこか運のない男という取り合わせは、とても文学的で幻想的。ちょっともの悲しい雰囲気もあるのがまたいいなあ。中身は結構、人間として泥臭いというか田舎っぽい絵なのがまた雰囲気が出ていていい。
果たしてオンディーヌは本当に海の精なのか? という謎解きはラストで明かされるのですが、まあそういうことだよなあと思いながらも、オンディーヌをセルキー扱いするアニーが可愛くてしょうがない。こういう、幻想の生き物(と思っている)を現代で一生懸命お世話する女の子の図が大変好きなので、オンディーヌとアニーの絆は見ていて楽しかった。
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オリンポスの神々の一柱ポセンドンと人間の間に生まれたハーフゴッドであるパーシーは、安全であるはずの訓練所で魔物に襲われる。結界を守るタレイアの木を復活させるために黄金の羊毛が必要だと知った彼らは、仲間たちとともに魔の海へ漕ぎ出した。
前作あったのか見てないわ! と思いながらも最後まで見ました。
ハーフゴッドでありながら父に愛されていない、見放されているのではないか、という現代版ヘラクレスみたいなお話だったなあ。
オリンポスの神々の落とし子であるハーフゴッドたちは人知れず人間社会に食い込んでいるという状況には、なんとなくイギリスの魔法使い少年を思い出します。神々が現代社会を歩いているという設定はやっぱりみんな好きなのかもしれない。
神や神代の種族が混じり合って存在しているところがめちゃくちゃファンタジーみを感じさせて好きだなあと思いました。こういうところでの学園ものが楽しいと思います。
かつてフォーミックと呼ばれる宇宙生命体の襲撃を受けた人類は、世界中から子どもたちを集めて士官教育を施していた。エンダーもまた稀なる才能を見出されてバトルスクールに引き抜かれるも、天才的な頭脳や観察眼を持った彼はつまはじきにされる。それでも才能を認め合った同年代の少年少女たちと切磋琢磨しながら、指揮官となるべく進んでいくエンダーだったが……。
原作は未読。
宇宙からの侵略者と戦うために養成されたエンダーが類稀なる才能を発揮して指揮官となり、大人たちに使われてとある「ゲーム」に挑む。ラストの直前までエンダーは大人たちの駒でしかないのですが、「選ばれた子ども」の描き方が面白いなあと思いました。こうやって人はコントロールされ、本当の意味で天才というのはそこで自ら歩み出す者のことをいうのかなあと。
兄姉の存在が示唆されていましたが、深く関わってくるかと思ったらそうでもなく。アイコン的なものなのかなあ。夢の中でとあるものと置き換わるヴァレンタインは面白い表現だと思いました。
『送り人の娘』『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』で注目を浴びる、気鋭の著者が贈る時代ファンタジー。
茜は跡継ぎ鷹丸の遊び相手として、豪商天鵺家の養女となる。数々の謎めいたしきたり、異様に虫を恐れる人々、鳥女と呼ばれる少女の姿をした守り神。奇妙な日常に茜がようやく慣れてきた矢先、屋敷の背後に広がる黒羽ノ森から鷹丸の命を狙って人ならぬものが襲撃してくる。それは、かつて魔物に捧げられた天鵺家の娘、揚羽姫の怨霊だった。
このままでは鷹丸が犠牲になってしまう! 一族の負の連鎖を断ち切るため、茜は魔物に立ち向かう決心をするが……。(カバーより)
明治時代、とある田舎にある因習に満ちた家の養女となった少女と、後継の少年、その守り神である不思議な少女のお話。ファンタジーなんですが文章も厚みもだいぶまろやかで、ホラー要素のある児童書みたいな印象でした。
長男のために他の子どもを犠牲にするお家と、後継のそばにつく世話役兼呪術師の静江の存在がたいそう怖い。特に静江は何かにつけて邪魔をしたり企みを持っていたりするので、ものすごい脅威に感じられる。主人公が子どもたちなのでまた抗いようがないんだよなあ。
物語の最後にこの家がどうなってしまったのか。鷹丸は善き家を作ることができたのか気になりました。じい様と両親は身の破滅を招いていてほしいんですが、そうなると鷹丸がちょっとかわいそうだよなあと思いつつ。
魔獣が跋扈する森の奥。一匹の火吹き竜が、猫たちと暮らしていた。永きにわたり猫を守り育てる竜を、猫たちは「羽のおじちゃん」と呼び、人間は畏怖と敬意を込め「猫竜」と呼んだ。竜の庇護を離れた後に、人間と暮らす猫もいる。冒険に憧れる王子と、黒猫の英雄。孤児院の少女に魔法を教える白猫。そして森では、今日も竜が子猫に狩りを教えている。
これは、猫と竜と人間の、温かく不思議で、ちょっと切ない物語。(裏表紙より)
ファンタジー界における猫のお話(竜もいるよ)という感じでしょうか。
文章は決して巧みではないんですが(一文ごとに改行している感じなので簡単ではある)、ファンタジーと猫と竜を愛しているんだろうなあと伝わってくるような気がします。
猫に育てられた「羽のおじちゃん」を主軸に、猫の兄弟やその子孫と人間の短いお話がいくつかあって、人と猫が寄り添って生きる王国があるのだと描かれる。その人間と一匹の猫だけで壮大な冒険譚を紡ぐことができるのですが、あくまでその出会いや一エピソードだけが連なっていて、いかにもなろう小説だなあという感じがしました。
失くしたものは、何か。
心を穿つ青春ミステリ。
11月19日午前6時42分、僕は彼女に再会した。誰よりも真っ直ぐで、正しく、凛々しい少女、真辺由宇。あるはずのない出会いは、安定していた僕の高校生活を一変させる。奇妙な島。連続落書き事件。そこに秘められた謎……。僕はどうして、ここにいるのか。彼女はなぜ、ここに来たのか。やがて明かされる真相は、僕らの青春に残酷な現実を突きつける。「階段島」シリーズ、開幕。(裏表紙より)
ファンタジー要素ありの現代ミステリ。
一人称って読みながら語り手のことを感じたり考えたりするんですが、この作品の語り手の七草少年、最初から「なんか信用できないなあ……」という感じが漂っていて。階段島の性質から自分のことを語れない人かと思ったんですが、ラストに向かうにつれて、なるほどそういうことかと。
「真辺由宇がここにいる」ことが犯人の怒りであり、犯行の動機だった。ファンタジックな設定ならではのロジックで面白いなあと思いました。
しかしその真辺さんのまっすぐな性格がちょっと読んでいて辛い。振り回されているわけではなく、七草は自分で彼女についていくかどうか選んでいるんだよという台詞がありましたが、それにしても真辺が考えなしに突き進んでいくのを七草がなんとかしてあげているように感じられて。
続巻で今後この二人の関係も変わっていくのかなあ。
心惹かれたあの声もやっぱり森川智之だった。多彩な声を演じ分け唯一無二の存在感を放つ人気声優でありながら、自ら声優事務所の社長も務める稀有な存在。アニメから洋画の吹替え、ナレーション、ドラマCDまであらゆるジャンルで活躍し、「帝王」とも称されるプロフェッショナルが語る、声優という職人芸の秘密。(カバー折り返しより)
声優の森川智之さんが、自分の経歴や仕事、演技についてなどを語る一冊。岩波新書、いつの間にこんなものを出していたんだ(2018年4月刊でした)。
森川さんがどのようにして声優になったのか。養成所の話。先輩、同期、後輩の話。演技についての話。自らの転機となった役や吹き替えの話など、声優さんについては知らないことが多いのでなるほどなるほどと楽しく読みました。
巻末にはお仕事されたタイトルが収録されているんですが、すべて網羅しているわけではないようで。はーすごいなあ。さすが日本中の女子をお世話している人だ。
弱小野球部の三ツ木高校は、エース月谷と主将笛吹のもとで確実に実力をつけていった。急成長を遂げるチームの中、捕手の鈴江は月谷の投球に追いつけず苦しむ。一方、ライバル東明学園の木暮も、思わぬ乱調でエースナンバーを剥奪される危機に。それぞれが悩みと熱い想いを胸に秘め、最後の甲子園へ向けて走り出す!! 感動の高校野球小説、クライマックス!
まばゆいほどにきらめいていた、あの夏。(裏表紙より)
雲は湧きシリーズの三巻目。三ツ木高校のメンバーで長編になっています。
いやあ本当に面白かった。高校野球の描写も人間関係も爽やかで、年頃の少年たちの悩みとか野球に打ち込むことの懊悩を気持ちよく書いていて、読んでいて楽しくなりました。やっていることは野球だけれど相手を思うこととかチームであることなど、個人としての立ち位置やスタンスがあるよなあとよくわかる。こういう「みんな違う」ことを描いている作品、大好きです。
マネージャーの瀬川さんに後輩が出来た話、嬉しかったなあ。自分のしてきたことをちゃんと見ていてくれる人がいて、後を継いでくれるってすごく嬉しいことだ。
県立三ツ木高校に赴任した庸一は、野球部の監督を任せられることに。初戦敗退常連チームに、野球経験のない素人監督。だが今年の選手たちは、二年生エース月谷を中心に「勝ちたい」という想いを秘めていた。やがて迎えた夏の甲子園地区予選。初戦の相手は名門東明学園。弱小チームと青年監督の挑戦が始まる…!! 少年たちの熱い夏を描いた涙と感動の高校野球小説集。
勝ち残りたい。一日でも長く。(裏表紙より)
「監督になりました」「甲子園からの道」「主将とエース」の三本。前の巻に当たる『雲は湧き、光あふれて』から引き続きの登場人物がいます。
この本は三ツ木高校を中心にした作品で、若杉監督、エース月谷、後に主将になる笛吹の三人がメイン。子どもたちの野球を見守る大人の視点も、野球をやる子どもの視点も、どっちもすごく説得力があってリアルで大変面白かったです。
読みながら心は大人側にあって、若杉の姿勢がいいなあと思ったり、記者の泉の見守りの視線に頷いたりと、甲子園という場所を目指す野球部員たちを応援する気持ちになっていました。三ツ木のみんなの今後がもっと読みたいなあ。