読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
一年の半分近くが冬となる極寒の地を治める伯爵リツハルドは、夜会で出会った男装の麗人、元軍人のジークリンデに目を奪われ、思わず告げる——「自分と結婚してください!」と。一目惚れから始まった、オーロラが空を彩る地での、一年間のお試し婚。トナカイを狩り、解体&仕分け&熟成。摘んだベリーは保存食に。伝統工芸品を作る合間に、凍結湖で魚釣り。自給自足の狩猟民族的スローライフを通して、奥手な二人は無事、正式な夫婦となれるのか?(裏表紙より)
小説家になろうの書籍化作品、の文庫化。第一巻。なろうで少しだけ読んでいて「これは本で読もう」と思っていたものだったので、文庫になって嬉しい(コンパクトな方が保管しやすくてありがたい……)
辺境の雪男という蔑称を用いられる、銀髪碧眼、小柄でほんわかした性格ながらもたくましい狩人でもあるリツハルドと、元軍人の男前女性のジークリンデ。二人の雪国暮らしのお話。一年間はお試し結婚と言いながら、その結末は続きで、という感じで、雪国での暮らしのいろんなことが詰まっていて面白いです。巻末の参考資料の数がすごい。
物慣れないリツと不器用なジークが可愛くて、距離を少しずつ詰めようとするのにもだもだする。続きが気になる!
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一杯のハーブティーが心を豊かにしてくれる
親を亡くし、親戚中をたらいまわしにされる不幸な少女、勇希。夏休みの間だけ身を寄せることになったのは、横浜に住む、会ったこともない伯父の家。勇希が恐る恐る訪ねると、意外なことに、その伯父は可愛いカフェのオーナーをつとめていた。同居するにあたって、勇希が約束させられたのは——
「魔女の後継者として、真摯に魔法の修行に励むこと」
不思議なカフェを舞台に紡がれるのは、ハーブティーをめぐる、心癒される物語。(裏表紙より)
孤独な少女がハーブティーを出すカフェにたどり着き、その店長と同居しながらやってくる人たちと出会い、自分を見つける物語。とても可愛くて優しいお話でした。
店長が多分伯父さんじゃないんだろうなっていうのはすぐに察せられるんですけれども、『先生』(魔法の師匠なので)がすごく優しい人なので心配いらないというか、ほっとするんですよね。不安やいろんなことで押しつぶされそうになっている勇希を助けてほしいって読みながら思ってました。
魔法が本当に「魔法」なのかどうかは置いておいて、自分を知ること、他人をよく知ること、信じることで見えるものがある。それはきっと魔法だよなって思いました。
ニューヨークに暮らす20代の私は、ある朝、突然FBIに逮捕された! 麻薬密売組織に協力したという、身に覚えのない容疑だった。無実の訴えもむなしく、絶望と不安を抱えて、連邦刑務所への入所日を迎えた私。だが、米刑務所の意外なシステムの下、次第に様々な人種の囚人仲間と友情を育みはじめて――。日本人の女の子が実際に経験した、過酷ながらもポジティブなプリズン・デイズ。(裏表紙より)
ロシアン・マフィアの恋人が麻薬密売容疑で逮捕され、クレジットカードを貸したなどの共犯で逮捕された有村さん。アメリカの連邦刑務所に二年間入っていた、その時の出来事を書いたもの。
刑務所の中がどうなっているのか、それも外国のことってまったくわからないので興味深く読みました。そんなに適当でいいのかっていうことと、人主の坩堝のさらに坩堝という感じの服役者たちがすごいと思いました……。
麻薬関係で取り締まられて捕まった女性たちが多いので、黒色人種の人やヒスパニック系がほとんど。威丈高に振る舞う人もいれば、親切に色々教えてくれたり、こっちが教えてあげたりということもある。男性がいないので男性役をする女性がいて、擬似的なレズビアンカップルになる人もいれば、手術をしたので女性であるとして収監されている元男性もいる。刑務所内での仕事のこと、日々の生活のことが書かれています。
罪を犯した人がその後それを一生背負うべきなのかどうかという点で見ると、多分この本に書かれている思いっていうのは甘いと切り捨てられるものだと思うんですが(殺人や強盗を犯した女性たちがいるので)、でも罪を犯したばかりがその人ではないんですよね。そんな風に考えさせられてしまった。
初夏の北海道から始まる青春タイムトラベル物語
この街は壁に囲まれている。札幌を襲った天災から十六年、復興という名の再開発事業のせいで、街は厚く高い壁の中にすっぽり収まっていた。
そんな街で育った十五歳の少年・駆は外の世界への憧れを抱いている。怖いもの知らずの彼は、街一番の秀才・勇夢と幼なじみの夏月を巻き込み、無謀な脱出作戦を計画するが……ある夏の日、放課後の屋上に“過去へ駆ける少女”が落っこちてきて——!?
一人の少女が巡る三つの暦。壁に秘められたナゾを紐解く、青春のロスタイムストーリー。(裏表紙より)
壁に囲まれた街、札幌。壁を越えて外の世界へ行くために飛行機を作った駆、勇夢、夏月の三人だったが、そこへ空から少女こよみが落ちてくる。彼女は高いところから落ちると過去へ飛ぶことができる能力者だという。
過去へ駆けることができるのはこよみだけで、他の三人は未来に向かって進んでいく。大人になった彼らは街を囲む壁と、やがて街を飲み込むほど巨大な塔の秘密を知るようになる。青春ものかと思いきや終末世界もの。四人だけの話というのがちょっと残念なくらい、奥行きのある話だと思うんですが、いやあ落下する少女っていいなあ。
小学三年生のぼくのクラスでは、マキが女王として君臨し、スクール・カーストの頂点に立っていた。しかし、東京からやってきた美しい転校生・エリカの出現で、教室内のパワーバランスは崩れ、クラスメイトたちを巻き込んだ激しい権力闘争が始まった。そして夏祭りの日、ぼくたちにとって忘れられないような事件が起こる——。伏線が張りめぐらされた、少女たちの残酷で切ない学園ミステリー。(裏表紙より)
ルルル文庫の「横柄巫女と宰相閣下」シリーズなどで知られる鮎川はぎのさんの別名義の作品。解説で知ったんですけれども、高瀬ゆのかさんも別名義なんですね。
降田天さん名義の本作は、小学三年・四年生のある教室での女子の争い(スクール・カースト)から端を発した、夏祭りのある事件をめぐる話。第一部子どもたち、第二部教師、第三部真相の三部構成です。
第一部のマキとエリカの争いが描かれる一方、小競り合いにきっかけになる行動を起こしているのは誰か、語り手の真意はなど、いろいろと仕掛けている感じだなあということがわかるのですが、第二部、第三部と読んでそこまでしてしまったか! と嫌な気持ちになったのはすごかった。なんらかの方法でマキの口封じをしたんだろうとは思ったんですが、そこで「クラス」という生き物が動くのか……ため息してしまったわ……。
そして大人になっても本当に幸せにはなれない人たちがいる。描かれてはいなけれども、四年一組の人たちは絶対どこかに欠陥を抱えて生きているんだろうな……。
戴冠式を目前に控えたルリタニア王国にただよう陰謀と邪恋の暗雲。王位の簒奪を狙う王弟ミヒャエル大公とヘンツオ伯爵。風雲急を告げる王国の渦中に、偶然とび込んだ国王に瓜二つの英国の快男子ラッセンディルの数奇な三カ月の大冒険。〈剣と恋〉〈義侠と騎士道〉の華ひらく絢爛たる世紀末の宮廷大絵巻。正編と併せて、続編『ヘンツオ伯爵』を収録する。(標題紙より)
ルリタリアの国王戴冠式の前日、ラッセンディルは同じ名前で血のつながりのあるルドルフ国王と交流を持つ。だが酒に薬が混ぜられており国王は昏倒。ラッセンディルは周囲と協力して国王の身代わりを務めるが、その後国王が王弟に囚われて再び入れ替わることができなくなってしまう。という国王を救出して入れ替わりを終了する「ゼンダ城の虜」
その「ゼンダ城の虜」において王妃フラビアと密かに恋仲になっていたラッセンディルだが、二人のやりとりを証明する女王の手紙を、王弟ミヒャエルの側近であったルパート・ヘンツオに奪われてしまう。その手紙を取り戻すために、身代わり劇に加担したフリッツとサプトは奔走し、ラッセンディルもやってくるが……という「ヘンツオ伯爵」。
評判的には「ゼンダ城の虜」の方が有名で評価も高いようなのですが、私としては「ヘンツオ伯爵」までも含めて好きです。悲喜劇として面白いなあと思いました。「ヘンツオ伯爵」でまさか国王がああなるとは……。そして最後にもまたばったんと裏返って、「おおー……」しか声が出なかった。いろいろと予定調和なところがこういう作品は面白いと思っているので、最後まで興味深く読みました。
一部の富める者たちが謳歌する快楽都市・東京。カメラマンの雑賀は、友人の依頼で秘密倶楽部の潜入取材を行うことになった。そこで謎の儀式と遭遇、少女・天王寺神楽と出会った雑賀は、彼女によって特殊能力に目覚めてしまう。元に戻りたいという思いと神楽の境遇を知った雑賀は彼女とともに逃亡。能力者たちから追われることになるが……。
自由を知るアウトローなカメラマン。不遇の立場にいる財閥の令嬢。二人の逃避行と特殊能力。これだけのワードが揃っていて、おじさんが女子高生を連れて逃げるっていう時点でたいへんおいしい。セクシャルなシーンも多いのですが、それがまた退廃的で享楽的な世界観を表していて面白いなあ!
非常にウケたのが、神泉が神楽に対して「男をたらしこんで」の流れから銀座が神楽に対して放った「泥棒猫!」です。言っている本人たちにブーメランだよ! って笑ってしまった。
それから「半期決算報告」の回が面白い。話の前半まとめが爆発等による費用を表示しながら進められるんですが、壊しまくりで笑うし、会費まで細かく収支つけてるの真面目で噴く。他にはめちゃめちゃお金使ってるくせに、神泉の密葬代が安くて切ない……。
アウトローなおじさんが、余命半年の少女にほだされて「生きろ!」と叫び、「愛している」と告げるのに胸が熱くなります。雑賀に執着してヤバそうだった銀座も最後にはイイ女で……。そうだよなあ愛した男が別の女のために命をかけて、あまつさえその男から「そいつを連れて逃げろ」って託されちゃうんだぜ……。この辺りアツいわー。
最後はちょっとどたばたした感はあったけれども、かっこいい男の人の話でした。
人理継続保障機関・カルデアより、マスターとしての素質ありと見なされ一般枠として採用された藤丸立香は、カルデアに所属する少女マシュ・キリエライトと出会う。最初の任務のメンバーから外された立香だが、その任務中にカルデアで爆発事故が発生、無事だったがマシュを救出するために火に包まれ崩れ落ちた部屋の中に飛び込む。二人とも命を失くすと思われたその時、気付けば崩壊した街に立っていて……。
スマートフォンゲームのFate/GOのアニメ作品。序章に当たる、特異点F冬木市の部分をアニメーションにしたもの。
男主人公です。言動がまったくぶっ飛んでいなくて普通なのでびっくりする笑 Fate系によくある、本当に普通の一般人(だけどどこか壊れているところがあるであろう)の少年だなあ。
冬木市での出来事なので、stay nightの知識がないとわからない台詞が多かったかなという印象なのですが、クー・フーリンはやっぱりかっこいいです。本当にかっこいい。キャスターとしての現界の方が能力的には高いのかなあなんて思いました。派手な技がたくさんあった。
それからロマニがちゃんと仕事してる感が見られて嬉しかった。こう、ゲームを積み重ねたせいかこの時点でのなんでもない台詞にきゅうんとしてしまった。
何部作になってもいいので、全話アニメーションになって見られたらいいなあと思いました。
西暦22世紀。天才宇宙飛行士アーノルドは、宇宙船のクルーとして大活躍している。
しかし、誰もがあこがれる彼の仕事には、大きな副作用があった。ひとりだけ時間の流れからとり残されてしまうという、とても悲しく、つらい副作用が…。
肉親との絆をも断った彼は、ある少女と出会った。そして…。
時空を越えた、感動SFロマンの決定版!(裏表紙より)
須賀しのぶさんのデビュー作。「惑星童話」と「惑星童話 オイディプスの惑星」の二本を収録。秀逸っていう言葉が浮かぶほど、丁寧で読みやすいSFです。
雷光船と呼ばれる超高速移動宇宙船のクルーになるには素質が必要。そしてクルーになると、その宇宙空間移動の影響で浦島効果と呼ばれる、地球とクルーとでは時間の流れが異なるという現象が起きてしまう。アーノルドがたった四十日宇宙を旅している間に地球では十五年の月日が流れ、航行を繰り返す度に知った人がいなくなっているという。
そんな中、姉の子どもで姪であるクレアと出会い、少女だった彼女は再会した時には妙齢の女性になっていて、あなたに会いたくてクルーを目指してきたという……もうロマンしかない。ロマンしかないよこれ! 叔父と姪という禁断の関係ではあるんですけれども、宇宙に引き裂かれる二人というシチュエーションはすごくいい。
さらっと書かれていますがアーノルドの親友コジマもいい男で、アーノルドが知らない間に生まれた子を養子にして育ててるんですよね。いい男すぎる。
「オイディプスの惑星」はその養子となったアーノルドの子ども、リチャードの話です。この二つの話には共通の話題として「氷の王様の物語」と「惑星アドラス」があるのですが、最後には二つが綺麗につながって、とてもよかったです。
しかしあとがきのテンションの高さにちょっと笑ってしまった。「ブラック・ベルベット」でも「流血女神伝」でもこんなテンションは高くなかったように思ったので、大学四年生であとがきを書く当時のテンションってこんなだったのかあと思いました。