読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
娘ざかりを剣の道に生きたある武家の娘。色白で細面、けして醜女ではないのだが父に似て口がいささか大きすぎる。そんな以登女にもほのかに想いをよせる男がいた。部屋住みながら道場随一の遣い手江口孫四郎である。老女の昔語りとして端正にえがかれる異色の表題武家物語のほか、この作家円熟期の秀作七篇! 解説・桶谷秀昭(裏表紙より)
「鬼ごっこ」「雪間草」「寒い灯」「疑惑」「旅の誘い」「冬の日」「悪癖」「花のあと」の七編。商人だったり武士だったり町人だったり、尼さんだったり、出てくる主人公は色々な立場の人。ちょっとした陰謀や事件の話もあるんですが、人と人が交流することで生まれる、不和や優しさみたいなものが、すべての話に漂ってる。「冬の日」の男女や、「花のあと」の哀愁めいた過去の恋と現実のおかしみみたいなものが、すごくいいなあ。
時代小説はまったく初心者なんですけど、面白かった。
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日本政府は、東南アジア連合SEAUnの首都シャンバラフロートに、シビュラシステムの輸出を開始。長く内戦状態が続くこの国で、海に浮かぶシャンバラフロートは、安全を保障された都市であるはずだった。だがその国からの密入国者が、テロリストとして日本に潜入。取り調べの結果、彼らは逃亡した狡噛慎也と接触した可能性があるとされ、常守朱は彼を逮捕すべく、シャンバラフロートに向かう。
時系列は鹿矛囲事件後か。この平和は日本だけというのがテレビ版ではところどころで暗示されてましたが、はっきりと日本の外側がどうなっているかが描かれる劇場版です。この世界の混沌さが垣間見えた気がして、ちょっとうっとなってしまった。
とにかく狡噛さんが出ます。ほんっっっとこのひと悪い男だなー!! そしていい男だわー……。ずるい。かっこいい。ずるい。思わず優しくしないでって叫びたくなる。お前相手が常守だってわかってて戦ってただろとか、上着渡したんかいとか、一緒の部屋で寝るんかい! とか。んでお互いに眠れなくて、自然と二人で喋ってるあれってもうさー。もうさー!!
ギノさんがすっかり丸くなって、涙出る。狡噛さんとしばらく一緒にいてほしい。お互いの話をしてほしい。なんだか、狡噛さんが甘えられるのはもうギノさんしかいない気がするんだー……。ひたすら、狡噛さんに「ひとりにならないで」って言いたくなってくるんですよね。
霜月ちゃんがもう完全に嫌な子になってしまっているので、できれば続きを作って救済してあげてほしい。もう無理なのかなー。取り返しつかないのかなー。彼女が喋るたびに空気が凍るのが、もう彼女自身を傷つけているのも分かるので、なんとかしてほしい。
幼馴染みと十年ぶりに再会した僕。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、僕には計り知れない過去を抱えているようで——その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる! 誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさもすべてつまった完全無欠の恋愛小説。(裏表紙より)
中学時代の幼い思いが大人になってもう一度、というところも、恋人同士のやりとりも、結婚してからのことも、ぎゅっと詰まったいい恋愛小説だと思って読み進めてたんですが、最後のオチ。最後の、オチ。これは、ない。あえて言うけど、それはないだろー!!? めちゃくちゃびっくりしました。ええー。伏線っちゃあ伏線だけど、ええー……?
それまでが本当に幸せな二人の、近づいてくる終わりへの焦燥も含めた恋愛ものだったので、どきどきしながら読み進めていたけれど、いきなりその展開はどうなんだ! こっちに来ると思ってたボールが明後日の方向に投げられて見えなくなった、みたいな感じで呆然としました。うーん、そこで何もかもなかったことにはなるのは……物語として驚きは必要だったかもしれないけど……別の終わり方にしてもよかったのでは……とか。
いやー、こんなにぶん投げられた感覚は久しぶりだったので、たいへん面白かったです。オチがたいへんアレなので簡単にお勧めはできませんが、映画見てみようかなあ。
かすみの秘密は、頬をぴしりと打つと涙をこぼす等身大の男の子の人形。学校で嫌なことがあると、彼の頬を打つのだ(「ぽろぽろドール」)。美しい容姿のあきらは事故で顔に酷い火傷を負う。事故前と全く違う人生を送る彼は、醜い恋人と別れた後、昔の恋人によく似た美しい人形に出会う(「僕が人形と眠るまで」)。人形に切ない思いを託す人々の物語。(裏表紙より)
人形といけないことをする、という危うい人たちが多いんですが、その中でも「手のひらの中のやわらかな星」は、中学デビューに失敗し、クラスでも浮いてしまった、田舎の女の子の話で、中学生の痛々しさと必死さと自分が何かになれるかもしれないっていう希望の危うさが、本当に好きで!!!!! ドール愛好家の人たちはこういうところから始まる人もいるのかなあ、と想像してみたりした。
「サナギのままで」は昔探偵ナイトスクープでやってた、マネキンと結婚式を挙げた女の人を思い出した。
親方さまと邇々玉さまが奉公人とひっそりと住む山峡の隠れ里。皆んなが命を賭しても守りぬかねばならない重大な秘密——それは邇々玉さまの血脈を流れる不思議な遺伝子にあった。宿命の子、邇々玉、またその血を受け継ぐ子……。転生の命に繰り返しあらわれる悲劇の因子の消えるときはない。数奇な生涯を運命づけられた女たちの足跡を幻想の翼を伸ばして描く感動のSFロマン(カバー折り返しより)
隠れ里に住まう邇々玉(ににぎ)は、双子。だが、様子がおかしい。あちらの彼女が傷つくと、こちらの彼女が傷つく。まるで残像のように分かれる二人。
この不思議な少女が、庇護者である親方さまの子どもを身ごもる。生まれたその子を守ろうとする館の人々。だが、秘密を知られる危機のたびに、一人、二人と減っていく。ねえやの多瑞は、残された子を守るため、一生を捧げる。
秘められた娘と、彼女を理解し愛する男と、娘を託す庇護者と。三者の輪がくるくる回る、はっきりとは書かれてはいないけれど転生の物語。過去の人々が、亡霊のようにして子孫を守るために立ち現れるところは、因果というかすでに呪いに近いかもなあ、と思ったり。
佐々木丸美作品でも、だいぶと文章に癖があるんですが、単語の選び方やリズムがよくて、なんだか浸ってしまった。
女性初のノーベル賞受賞者、マリー・キュリーが18歳のときに落ちた許されない恋。夫と子を捨て、27歳でワーグナーに走ったコージマのその後。愛人300人といわれたエカテリーナ2世が、45歳にして初めて出会った真実の恋。66歳のマルグリット・デュラスを復活させた、27歳の青年の献身的愛。古今東西、歴史に名を残す女性たちが織り成す、さまざまな恋の形。圧倒され、やがて切なさが胸に迫る歴史エッセイ。(裏表紙より)
歴史的に有名な、古今東西の女性たちの、恋愛遍歴を短くまとめたものです。アン・ブーリン、マリリン・モンロー、絵島、ヴィクトリア女王などなど。短くさくっとまとまっているので、読みやすい上に分かりやすく、これ参考にしようなどと妄想力が働いてしまう。
男性に振り回される人もいるかと思えば、権力を持っているせいで相手を振り回す人もおり、かと思えば自分の力で別れを乗り越える人もおり、と恋の多種多様性を感じました。っていうか、みんな命がけで恋し過ぎじゃないのか。だから身を滅ぼすのでは……と思うこともしばしば。
とても面白い本でした。オススメありがとうございました。
休暇中のセラピスト、ディオンヌが新たに依頼を受けた患者は、海、空、山をこよなく愛し、どんな冒険にも勇敢に挑む男ブレイク・レミントンだった。登山で大怪我を負い、再び歩くどころか食べる気力さえ失って衰弱の一途だという。渡されたレントゲンを見るかぎり、傷は癒えている。承諾を迷うディオンヌは添えられた写真を手に取った——鍛えあげた肢体をあらわにし、深いブルーの海をバックに生き生きと微笑む事故前の彼。ディオンヌの心がうずいた。(裏表紙より)
有能なセラピストのヒロインと、歩けなくなって衰弱した若きエンジニア。最初はまったく立場が違っていて、ヒロインであるディオンヌは自らの仕事をてきぱきとこなし、心理的にも身体的にも有利に立っているのですが、だんだんと二人の関係が変わっていくにつれて、心理的な優位がブレイクに移り、ディオンヌは迷い悩み傷つく……という話展開が面白かったです。何より、冒頭の、ブレイクを手玉にとるセラピストとしてのディオンヌの働きぶりがよかったなー。相手は病人とはいえ、腕相撲して勝っちゃうんだもんなあ(そしてウエイトリフティングの元選手だったりもする)。
二人の仲が決定的になり、ディオンヌが過去の傷からブレイクから遠ざかろうと試みるんだけれども、ブレイクの囁く台詞の甘いこと! 別れようとなるときも、自信がある様子なのがハーレクイン的に最高のヒーローなんじゃないでしょうか。
ラストの、子どもたちとのシーンが好きです。ちょっと予感めいたものも含ませているような気がする。
オススメありがとうございました。面白かったです。
ベリータは、現国王妃ファナに拉致されそうになった。自分の娘にカスティーリアの王位を継がせるため、無理矢理にでもポルトガルへ嫁がせようというのだ。
間一髪でアロンソに救出されたベリータは、束の間の安息を得るため、仲間と共にコルドバに身を寄せる。
起死回生の一手として、条件つきで隣国アラゴンの王子との婚姻を提案するベリータだが、心はアロンソへの想いに揺れていた。歴史ロマンの傑作、完結編!(裏表紙より)
全体的な印象だと、ダイジェストという感じの話の巻き方なんですが、完結巻です。
フェルナンド王子がすごくいい感じにおおらかで、ベリータとアロンソとフェルナンドで関係が成立するのがすごく、なんというか、面白いというかそれでいいのかというか!笑
ベリータとフェルナンドが初対面でかわした会話が、すっとぼけているようで真剣なのがすごく好き。
ラモンにまつわる事情が、物語ってこういうところがおいしいよなあ! というわくわくでした。
そしてやっぱりラストは悪者退治。きらめく歴史の大舞台に向けて、ベリータが一歩踏み出す。大きな歴史の、そこに生きた女王の、小さな一幕と冒険と恋の話だったと思いました。
カスティーリア王だった父の死後、幼い弟と別れ、母と二人、修道院に幽閉された王女ベリータ。その後、母とも引き裂かれ、孤独のなか誰も信じられずにいた。
16歳になったある日、ベリータは王宮からの使いだという男たちに外の世界へ連れ出される。訪れた館で彼女が再会したのは、死の床にある弟だった。
その日からベリータの運命は一変する……。王位継承を巡る策謀。そしてアロンソへの恋心の行方は?(裏表紙より)
カスティーリア女王イサベル1世をもとにした歴史物語。のちのスペイン王国の礎を築く人たちの、若き日々のお話。
修道院に幽閉され、ただ一人、孤独に、誰も信じずに心のなかの母の声に従ってきたベリータ。神がかりともいうような驚くべき直感力で、事態を切り抜けていく。でも、エンリケス家のアロンソを気にしたり、というところは本当に普通の女の子で、後々出てくる「ばかじゃない方のベリータ」と「ばかの方のベリータ」という表現はとてもいいと思いました。女の子のなかに、王族としての顔と、ただの女の子という二面性はよいねよいね!
上巻は、ベリータの結婚問題において、ベリータ側がポルトガルではなくアラゴンにつく方がいいと決めて、アラゴン王国のフェルナンド王子との結婚を取り付けられるよう、トレド大司教に助力を嘆願しようと決めるところまで。
闇の底から『魔神』が目覚めるとき、運命の神は六人の勇者を選び出し、世界を救う力を授ける。地上最強を自称する少年アドレットは、その六人、『六花の勇者』に選ばれ、魔神復活を阻止するため、戦いへ向かう。だが、約束の地に集った勇者は、なぜか七人いた。その直後、霧幻結界が作動し、七人全員が森に閉じ込められてしまう。七人のうち誰かひとりが敵であることに気づいた勇者たちは疑心暗鬼に陥る。そして、その嫌疑がまっさきにかかったのはアドレットで——。伝説に挑み、謎と戦う、圧倒的ファンタジー、堂々始動!(裏表紙より)
アニメ放送中の『六花の勇者』。長らく積んであったのですが、アニメを見ているとどうしてもたまらなくなったのでようやく読みました。読みましたが、本当にアニメは一巻のちょっとずつしか進んでないんですね!? 原作通りの決着にするのかなあ……。
六人しか選ばれないはずの勇者が、何故か七人いる。偽物は誰だ。……という話です。聖者の設定とか凶魔と人間のあれそれとか、ちらちら覗く世界観がよくて、狭いところで戦ったり推理しているだけでもとっても面白かった。シリーズ続刊では本格的に戦うようになるのかな。
本を読むだけだと、誰が怪しいかっていうのはあんまり分からなくなっている感じがしました。アドレット以外の全員が怪しい。それから、表紙になっているフレミーも多分違う、などと勝手に推理しておりました。そういう法則があるのかはしらん! アニメを途中まで見て原作を読むと「あー」ってなったので、あの演出はいかんかった気がする。
七人目の本当のところがまったくわからないので、これは最後まで読みたいなー。