読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
「ギタイ」と呼ばれる異星人からの侵略を受けている近未来の地球。統合防衛軍の報道官だったウィリアム・ケイジ少佐は、自身の保身によって失敗し、前線へと送られる。仲間の協力も得られず、訓練すらまともに受けていないケイジは命を落とすが、その直前、青いギタイを倒すことができた。そしてケイジが目覚めると、それは、自分が死ぬ前の日。ケイジはタイムループしていたのだった。
原作は読了済。絶望的な異星人との戦いにおいて、タイムループに巻き込まれた青年の戦いを描くSF作品。とってもハリウッドな味付けで、これはこれで面白い改変だったと思うんですが、やっぱりさ、ループものの悲哀を味わって終わりたかったぜ……!
キャラクターの魅力という点ではすごく入り込みやすかったです。保身のために戦場を避けていた男が、左遷された挙句命を落とす。もうぐっだぐだな男なんですが、ループに戸惑い、理解し、リタという救いを見出し、協力し合いながら失敗にへこたれたり絶望したり、最後には仲間を得て、勝利をつかむ。人間的成長がすごくわかりやすい。わかりやすいストーリーになっているのはいいけれども、私は、原作の気が狂いそうなループと失敗の数々と、どうしようもないところに行き着いてしまった絶望と、喪失を抱えながら生きていこうとするラストがもうすっごく好きだったので、ちょっと残念な気持ちではありました。
これはこれで面白かったですけどね!
記憶喪失の画家リンと出会った錬金術師見習いのセツリは、神殺しを目的とする深淵派のカルヴァスに追われ『世界画廊』に逃げ込む。異界への扉が絵の数だけ存在するその場所で、白い王女アイカの絵に心惹かれたセツリ。リンの不思議な力によって絵の中に入り、アイカの悲しい境遇を知って額縁の外に連れ出そうとするが…。やがて辿り着く、世界の禁じられた真理。その先にあるものは——!(裏表紙より)
おお! 陰鬱なんだけど希望を描くファンタジーだった! めっちゃ栗原さんらしい。確かどこかで、この作品はそれまでと書き方を変えている、ということをおっしゃっていたように思うんですが、確かに、より演劇っぽい台詞まわしになっていた気がするし、キャラクターも舞台映えしそうな性格だった。
錬金術師として認められるための論文を提出したセツリではあったけれど、それは異端と見なされ、神殺しを目的とする新興宗教組織に狙われることになる。それも、暗殺者をともなってきたのはかつての兄弟子イカイ(カルヴァス)。偶然助けた男は画家だというが、その日、謎の「お告げ」とやらで、セツリは世界画廊の管理人に任命される。
このまとめから想像できる物語があると思うのですが、多分これから九十度くらいひねったのがこの話の本当の物語です。ところどころ、読んでいて、おかしいな? と首をひねるところや引っかかりを覚えていると、あるときにそれに手をかけてぐるっと物語が回転する感じ。すごかった。おおー! と思いました。
最終的に神に挑む物語でしたが、ヒロインのアイカがとても可愛いです。栗原さんの書くこういうヒロインが、もうめちゃめちゃ好きです。
ソルヴェール国の第一王女・レティーツィアは、将来自分が“女王になる”ことを知っていた——。結果、優秀な兄たちの“おこぼれ”で王位が転がり込んできたレティは、王の専属騎士団を作るべく、漢の中の男と評判の騎士・デュークを強引に勧誘。けれど彼は「『おこぼれ姫』の愛人と呼ばれるのは願い下げ」と一刀両断!! ますます彼がほしくなったレティは……!? 第13回えんため大賞優秀賞作!!(裏表紙より)
面白いよーとおすすめされて読みました。面白かったー! めちゃめちゃキャラが楽しい!
兄王子たちの後継争いを憂慮した父王によって、次期国王の位が転がり込んできたレティ。だが、彼女は自分が王になることを知っていた。「知っていたって、どういうことだ!?」というところに掴まれた人は多分すごく楽しい。この『王の間』のシーン、めちゃめちゃ好きだわー。そのネタ、私大好きです。
レティは自分が美しいということも、長所も短所も理解した上での言動をするので、ちょっぴり傲慢ですが、自信に裏打ちされたその振る舞いにところどころ見え隠れする、若いところ青いところが可愛いです。振り回されるデュークは、そうかと思いきや人たらしの才能が見え隠れしているような……。それから、兄王子たちは跡目争いをしていたわりに、やっぱり賢い人たちなので自分たちの距離について正確に把握した上での、距離を取っている感じがすっごくよかった。三兄妹、なかよししてほしいなー。
すっごく面白かったので、続き読もう。
古書店アルバイトの大学生・菅生芳光は、報酬に惹かれてある依頼を請け負う。依頼人・北里可南子は、亡くなった父が生前に書いた、結末の伏せられた五つの小説を探していた。調査を続けるうち芳光は、未解決のままに終わった事件“アントワープの銃声”の存在を知る。二十二年前のその夜何があったのか? 幾重にも隠された真相は?
米澤穂信が初めて「青春去りし後の人間」を描く最新長編。(帯より)
伯父の営む古書店に居候している芳光は、その客として現れた可南子の依頼で、結末の伏せられた五つのリドルストーリーを集めながら、その作者、叶黒白が何のためにそれを書いたのかを探っていく。これだけ書くと米澤さんのいつものミステリなのかなと思われそうなんですけれど、主人公の芳光からして設定があれなので救われない部分が見えるというか。「父が事業に失敗し、学費が払えなくなった」「その父が病死した」「母が郷里に戻ってこいという」ものが、何も解決されずに終わるという、大変後味の悪いあれに。いやでも、小説をめぐる物語はいちおう解かれるんですけどね!
小説を集め、その内容を読みながら、事件「アントワープの銃声」の真相を明らかにしていく。謎の中に謎、というのは、この本の表紙にあるような感じで、とても面白かったです。後味は悪いけど!