読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

あなたの人生は退屈ですか? どこか遠くに行きたいと思いますか? あなたに必要なのは見栄えのよい仕事でも、自慢できる彼や彼女でも、おしゃれな服でもない。必要なものは想像力! 家出の方法、ハイティーン詩集、競馬、ヤクザになる方法、自殺学入門……。時代と共に駆け抜けた、天才アジテーターによる100%クールな挑発の書。(裏表紙より)
読み始めは「ん?」と思ったのに、中盤になるとぐいぐい読まされていました。しかし中盤を過ぎるとなんだか洗脳されているような気分でちょっと休み休みして。濃かった……。
初版が昭和50年。時代を感じると私のような小娘は思い、完璧に同意するわけではないけれど、何故か覗き込んでしまった新しい世界に、魅力を感じています。色々衝撃的な世界だ……。
初めはその世界の有様など、中盤過ぎてから段々競馬とお馬さんの話になりますが、また戻ってきて若者に語りかけるような内容になります。印象的だったのがストリッパーの話(p91)、「二人の女」(p122)、「馬の性生活白書」(p195)。第三章ハイティーン詩集も当然すごかった。
こういう世界の話を、一度でいいから書いてみたい。
「エンピツじゃ人は斬れないが、ことばじゃ、人は斬れる」(p181)
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「どこに行っても忘れない。あなたの思い出を胸に生きていく」
頭上を飛び交う矢。燃え上がる炎。そして少女は、握りしめた少年の手を離した——。
異能の力を持つ故に《業多姫》と呼ばれる少女・鳴。如月のある日に最愛の母を殺され、それと同時に鳴自身にも迫る刺客の魔の手。追っ手から逃れながら母の死の謎を解こうと奔走する鳴は、颯音と名乗る不思議な存在感を漂わせた少年と出逢う。
戦の行方を左右する業多姫の存在を巡り交錯する様々な思い。
戦乱の世を舞台に描く、第二回ヤングミステリー大賞準入選作。惹かれ合う二つの魂が、歴史を、運命を変えていく——。(裏表紙より)
和風、歴史、ファンタジー、ミステリーの要素がたっぷり詰まってました。ライトノベルかと思ったらミステリーの比重が大きくて、それが更にライトノベルの要素と絡み合って、すごく面白かった!
鳴の天真爛漫さと業の深さ、にはちょっと納得がいきかねたのですが、魅力ある女の子というのは十分伝わってきたので満足! 颯音も刺客にしてはちょっと揺らぎすぎな気もするけれど、鳴に惹かれているのが分かってかわいかった! この二人それぞれの一人称で話が進むというのも、結構意表をつかれました。またそれが、好意を感じているのに踏み切れないというのが分かってかわいいのです。お互いが孤独で、でもようやく見つけた人。信じることを止めないで前を向き続けること。たくさん眩しかったお話でした。

生まれて初めての合コンで『新選組!』を語る、クリスマスイブに実家でイモの天ぷらを食す、非常にモテる男友だちの失恋話に相槌を打つ——思わず自分でツッコミを入れてしまう微妙さに懊悩しつつ、それでもなぜか追求してしまう残念な感じ。異様にキャラ立ちした家族や友人に囲まれ、若き作家は今日もいろいろ常軌を逸脱中。爆笑と共感がこみ上げる、大人気エッセイシリーズ!(裏表紙より)
クウガとオダギリと漫画とバクチク、がこの本の構成要素と言えるかと(それ以外もちゃんとあるけれど)笑った笑った。エッセイが読みたいなーと思うときは、大体この方の本を読みたくなるんだ。裏表紙の紹介の「キャラ立ちした家族や友人」というのが絶妙すぎて、これを書くために打ちながら噴いてしまった。
面白い日常もいいけれど、本の紹介が素敵で読みたくなる。

愛する相手を思う、”強さ”を描いた物語。
怠惰な生活を送るティーのもとに、
三年前に別れた恋人、極上の美女アールからかかってきた一本の電話。
「アタシの酷い噂話や嘘をたくさん聞くことになると思う。
ティーにだけは知っておいて欲しいと思って。アタシは変わっていない」
街に出たティーが友人たちから聞くアールの姿は、
まるで別人のように痛々しく、荒んだものだった——。
彼女が自らを貶め、危険を恐れずに求めたものとは……。(裏表紙より)
『スロウハイツの神様』に登場したチヨダ・コーキのデビュー作。
かっこよかったよー! すごかった。すごかった! 物語の展開は読めるけれど、なんだか言いようのない感動がある。いいことばかりじゃないし、別れた女の噂を追っていく話であるはずなのに、どうしようもないなあと思いながら、すごく「好き」って気持ちが色んなところに溢れている気がする。もう何を言っているのか分からないくらい、この話がすごく好きだ。
チヨダ・コーキはいつか抜ける、という言葉はきっとここから来たんじゃないかなあという文章があったり、ティーが誰も差別せず平等に友人たちを愛している眼差しや、友人たちが友人たちを大切にしている様子が、ああ辻村作品だと幸せな気分になれる。
面白かった!

魔物のはびこる夜の森に、一人の少女が訪れる。
額には「332」の焼き印、両手両足には外されることのない鎖。自らをミミズクと名乗る少女は、美しき魔物の王にその身を差し出す。
願いはたった、一つだけ。
「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」
死にたがりやのミミズクと、人間嫌いの夜の王。
全ての始まりは、美しい月夜だった。
——それは、絶望の果てからはじまる小さな少女の崩壊と再生の物語。
第13回電撃小説大賞〈大賞〉受賞作、登場。(カバー折り返しより)
何度目かの再読。いつ読んでも、幸せで、なのに切なくて、胸がいっぱいになる。
登場人物のみんな愛おしいこと。豊かな表情をしているのが浮かびます。文章は平易で簡単なのに、それがいっそう物語の優しさを引き立てている気がします。素晴らしいお伽話だなあと、何度読んでも思います。
合わせて、何度も本を開いてしまう理由はあとがきにもあります。あとがきの、静かに語る文章。物語の力を信じている者にとっては、何度も開いてしまうのでした。
オススメされた本でもありました。
これを読んだ直後くらいに。
同世界の続編が、11月に刊行されることが、紅玉さんの個人サイトで発表されました。(ttp://red.s137.xrea.com/dk/dk.html)恋物語とのことなので、すごく楽しみです!

明治時代の後半。東京には新しい文化が芽吹いていた。新しい乗り物、職業、学問、娯楽……。それらは古き武家のしきたり、華族の傲慢さを劇的な勢いで瓦解させていく。
その様は、美しいガラス細工がいくつも砕かれ、重なり合うかのように、儚くも幻想的な空間を作り出すのだった。
そんな混迷期、《探偵屋をクビに成り立て》という風間竜介に、やっかいな話が舞い込む。それは上野の森での、少女の首吊り事件の調査依頼だった。
彼女の過去を追う内に、複雑に絡み合う人間模様が浮かび上がってくる。そして、事件は意外な様相を表し始める——。(裏表紙より)
明治期の日本を舞台にしたミステリー。面白かった。疲れた空気の中年のおっさんが、あちこちを回り、理不尽に合い、女子供に振り回され、というのは探偵小説の定番だと思うのですが、やっぱりすごく好きでした。
中盤くらいまでは誰がどの事件に関係して、というのが全然見えてこなくて、どう決着をつけるんだろうと思っていたのですが、紹介にあるように、本当に万華鏡のような複雑に絡み合う人間関係の話でした。そして、それがしっくりと馴染む世界観と空気のある素敵な物語でした。

襲撃に遭った村から自分を助けてくれた、若く美しい騎士を求めて少女は旅に出た。気が強くてがさつな少女——ジャンヌ・ダルク。だが『フランスを救う神の使者』という噂がなぜか彼女につきまとい、我知らずジャンヌは、聖女として祭りあげられていく。勇将ジル・ド・レは、嘲笑を浴びせながらも、そんなジャンヌを懸命に守ろうとするが、そこにはある秘密があった……。少女ジャンヌの数奇な運命を描いた、波瀾万丈の大河ロマン。(裏表紙より)
ジャンヌ・ダルクの解釈が面白くて、楽しかったです。この本に登場するジャンヌは、ただがさつで自分の目指すものを手に入れようとするだけの、普通の少女。だからフランスを救う、神の声を聞いた、なんてことはなく、ただ自分の前に時々現れる美しい騎士を探しているだけ。それだけに、突然神がかったように戦いの中へ身を投じたり、機転が利いていたりするのは、ちょっと、ん? となりました。悪魔のせいだったんでしょうか。
一文が短く、読む呼吸が切れてしまうのがちょっと残念でした。
古い古い昔語りのひとつ、という余韻が素敵でした。

夢をかなえるために入学した高校で、希望に燃えていたみかげだが、気の合うともだちもみつからず浮かない日々。京都の高校に進んだ瞬と心を通わす手段は、メールでのやりとりだけ。人間関係も、恋愛も、うまくいかないもどかしい気持ちを携え、みかげは夏休みの間を京都で過ごすため旅だった——。
少女の成長と淡い恋の行方を瑞々しく描いた、ピュアな青春ストーリー!!〈解説・藤田香織〉(裏表紙より)
前作は家族ものでしたが、今作は少女たちと女性たちの物語の印象が強かったです。
主人公のみかげと、元クラスメートのエリサ。少女のような継母の洋子。京都のサワと涼。彼女たちの人生が、ゆるやかに絡み合いながら、サワ、涼、洋子が、みかげとエリサ二人の少女を大人へと導いていく、というお話であったように思います。
一人称で書かれているものの、作者の暖かなまなざしが感じられて、光丘さん自身が涼さんたちと一緒になってみかげたちを導いている気がするなあと思います。ふわふわと温かなお話でした。
そんな感じなので、恋の行方というほど瞬が関わってくるわけではなくて。それでも、心穏やかになれました。

あわく血の色を透かした白い頬、わずかに褐色をおびた大きな瞳——ひとりの美少女が暴君・煬帝の親征に従事していた。病父に代わって甲冑に身を包んだ、少年兵として。その名を花木蘭。
北に高句麗を征し、南に賊軍を討つ。不敗の名将・張須陀の片腕として万里の戦野にかけるも、大隋帝国の命運は徐々に翳りはじめ……。
時を越え民衆に愛された男装の佳人を、落日の隋王朝とともに描きだした中国歴史長篇(裏表紙より)
花木蘭の物語を、随王朝の滅亡とともに見る物語。すごかった。朗々と語るような歴史物語だった。
風景の描写がすごい。6章最初の文章に衝撃を受けた。ここでタイトルの「風よ」の意味が分かってきたして、すごく感動した。
一国の栄華と滅亡に、人が何を思い、何をなし得たのか。完全に読み解き、証明することはできないけれど、この一冊にはある一定の答えがあると思います。
語彙が貧弱なのでただすごかったとしか言えないけれども。読み終えたときに、静かに吐息するような一冊でした。

中3のみかげは、亡くなったママのことを忘れられない。父親の再婚で兄妹になった同い年の瞬とはソリが合わない。でも、「ぶっきらぼうなやつ」としか思っていなかった瞬の存在が、だんだんと心の中で大きくなり始めて——。
少女の揺れ動く感情を縦糸に、じれったい「初恋」と家族の再生を横糸に織りなされた、純粋すぎるほどの青春模様。文庫書き下ろし。〈解説・小手鞠るい〉(裏表紙より)
思ったほど血のつながらない兄妹ものではなく、思った以上に家族の再生が描かれた話でした。
みかげの視点から語られる物語。みかげは、中学二年生にしてはちょっとだけ大人びていて、けれどママに執着する様は幼くて。その奇妙なギャップというのか、すんなりと納得して、周囲に対応したかと思えば、思いもがけないところで反発したりむっとしたり声を荒げたり。不思議な感じでした。
元々児童文学として書かれたものを下敷きにしているとあとがきにあったので、この純粋さはそうなのだろうなあと思いました。