読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
試験召喚システムを採用する文月学園高等部。そこは振り分け試験の結果で学力順にクラス分けされる超実力社会的な学校。吉井明久属する最下位のFクラスに、学園トップクラスの成績であるはずの姫路瑞希がやってきた。なんでも試験中に途中退席したせいで零点扱いされたようで……。
原作は一巻を読了済。学校の成績は最底辺だけれど、明るく心優しく元気な高校生たちが大人たちの思惑を叩き潰すように全力で日々を楽しむ学園ラブコメ。コメディの部分が強烈で突っ込みどころがない回が一つもないという。
少年向けライトノベルのあからさまなお色気や下ネタや、胸や裸の描写の強さがあまり好きではないのですが、この作品くらい突き抜けてオープンだと馬鹿な子を眺めるような生温かい気持ちになるから不思議。いや実際バカなんだけれど(いい意味で)。
「試験の成績がすべてじゃない」ということを全力で教えてくれる作品だなあと思いながら、第二期も見ます。
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美貌の青年・藍沢結人は、ひとつの街ではひとつの恋しかしないと決めていた。なぜなら、恋をした相手の首に縄をかけ吊るすことを最大の愛情表現だと考えているから。このあかつき町でも、ひとりの劇団員の女性を自殺にみせかけて吊るしたので、別の街へ移ろうと考え…? 連続殺人者と犯罪被害者家族たちが入り乱れ、誰もが傷つけ、傷つけられる復讐の因果が回り始める!
罪が罪を生み、復讐は流転する。(裏表紙より)
藍沢が好きになるのは一つのことに情熱を向ける創作者が多い。この街でも劇団員の女性を愛し、睡眠薬を飲ませて首を吊るして殺した。だが財布をうっかり落としたことで、その拾い主の夕真に接近する。夕真は脚本家で、藍沢が殺した女性を脚本の変更で降板させてしまったという繋がりがあった。脚本に打ち込む夕真に藍沢は惹かれ。
好きになると殺しちゃうサイコパスの話、と思いきや物語は中盤から思いもよらない方向へ向かう。誰かに殺された人の被害者たちが協力し合って復讐を果たす会員制コミュニティサイトで繋がった人たちが藍沢や夕真に近付いてくるという、やばい人たちに復讐者たちが迫るびっくりな展開。
後半は種明かしからの怒涛の展開なんですが、夕真の設定はちょっと都合がよくてそこまで盛るー!? という気持ちに。そして最後の最後に、えええ? という真実も明かされて、最後はちょっと置いていかれたような気がしました……。前半が心理的にもはらはらさせられる感じだったので後半の勢いについていけなかったんですが、こういう作品がオレンジ文庫で出たのはすごいなあと思いました。
世界にゾンビウイルスが蔓延し、多大な犠牲を出してから七年。いまではゾンビはすっかり少なくなり、とある島に隔離され、安全な場所からハントされる獲物となっていた。父親をゾンビに殺されたメラニーは、そのトラウマを克服するため、カウンセラーの勧めでその島に向かう。だがその島のセキリュティシステムがダウンし、脱出しなければ空爆を受けるという状況になってしまい……。
ゾンビを狩るリゾートなんて悪いことしか起きないじゃないか。
というタイトルとあらすじからお馬鹿映画を想像していたんですが、思ったよりもちゃんとしていて面白く見てました。ゾンビというものを「作る」のと、それを消費して、補充して……という地球に末期感を覚えましたし、生き残る人間が(リゾートでも地球においても)最低な人間ばかりという印象で、けれどラストはちゃんとその呆れの気持ちも回収していってくれたのがよかった。海を渡るのは新しいな!
地獄に落としたい相手を、午前零時になるとアクセスできる地獄通信に書き込む、すると地獄へ落とすことができる、という都市伝説があった。女子高生の美保は、話が合わないクラスメートたちと過ごすのに疲れつつ、自分の好きなアーティスト・魔鬼のライブへ行く。そこで痴漢にあったところ助けてくれた遥の奔放さと魅力に惹かれていく美保。やがて美保は遥のために地獄通信に書き込むが……。
アニメは視聴済み。地獄少女の扱い方がちょっとアニメと違う気がしますが、これはこれで面白かった気もします。
ちゃんと少女漫画雑誌のホラー作品の映像化っていう印象なのは、地に足ついた設定と突飛な設定が上手く組み合わさっているからかなあ。クラスや友達に馴染めないというリアリティと、ライブに行った先で知り合った子と友達になって、彼女がアーティストと接近して、そのアーティストが実は悪人かつ狂信者でというもりもり設定。地獄通信によって人が死ぬものの、本当に怖いのは人を呪う人間であるという描き方も面白いと思いました。閻魔あいちゃんは求められるままに地獄に落としているだけなのでね!
高度な科学力を有する帝国。魔女の国と呼ばれる能力者の国ネビュリス皇庁。長く戦い続ける二国にそれぞれ所属する少年兵イスカと王女アリスは出会った。中立都市での交流を経て、お互いを好敵手とみなしながら、自分自身が望む世界平和のために行動していく。
原作は一巻を読了済。「ロミオとジュリエット」的な境遇の二人ですが、イスカは強さと優しさを備えた素直な少年、アリスは王女ながら感情豊かで情にもろい少女。二人と周囲の濃いキャラクターの関係性と、世界観と、各国が隠す建国あるいは世界の秘密が魅力的なファンタジーですね。原作が未完結なのでアニメも途中まで。
やっぱり一巻に当たるエピソードが絶妙に楽しい。反目し合う国に生まれついた二人が、中立都市で、友人未満ながらもデートのようなものを楽しみ、お互いを知って認め合い、ついには共闘する。なんて素晴らしい展開なのか。
左遷された軍人ウリセスは、嫁レーア、家出してきた妹ジャンナとともに、ゆっくりと田舎の生活に馴染み始めていた。そこへ舞い込んだ、部下エルメーテとジャンナを巡る騒動。静かな日々が、にわかに騒がしくなっていく——(帯より)
強面の最強軍人ウリセスと、生まれも育ちも田舎で純朴ながら芯に強さを秘めたヴァレーリア、ぎこちないながらも夫婦になっていく二人の物語、第二巻。
これを読むと、家族になるって難しいなあと思うと同時に、微笑ましいなあという気持ちになります。お互いの大事なものを理解し、心を尊重し、一緒に生きるってとてもとても難しい。血の繋がりがあるからうまくいくわけでもないけれど、いろんな縁が繋がっていって主役夫妻以外の人たちの世界も広がるのが読んでいてすごく楽しい。
今回は以前敵対した相手と再び剣を交える展開があり、そう遠くないうちにウリセスが都のごたごたに巻き込まれそうな気配を感じました。でも乗り越えられるって信じてるよ!
塩の霧で立ち枯れした木々と、狂暴化した動植物に囲まれた地、キヌーヌ。創造主パナードの手で最強の異形へと変えられ、殺人を強制されていた青年・金目は、彼を騎士と呼び慕う少女シエラと出会ったことで自我を取り戻す。主への復讐のため、異形のものたちに戦いを挑む金目。しかしシエラに内在する、進化に繋がる世界の秘密が、二人を想像もし得ない運命に導こうとしていた。(裏表紙より)
ファンタジーSF作品。どこかの世界で、不思議な力を持つ者たちと支配される人々がいて、という世界観に、「小さな生き物」と呼ばれる進化の本能、あるいはナノマシン的な特殊な生命体。あっという間に成長する不可思議な少女と、洗脳から目覚めて自我を取り戻し守るものとしての誇りを得る男。善良だが無力ゆえに迷える村娘、放浪の身ながらも洗練された立ち居振る舞いをする謎めいた青年。
これらの組み合わせが美味しくないわけがない! 特にラチータとロウゼルが! 正義を貫きたいと願いつつも迷ってしまう村娘に、身分を隠した青年が手を差し伸べる展開、とてもいい。また金目とシエラの関係性も素晴らしくいい。恐ろしさすら感じる特異な少女が成長して女神的になるのが神秘的。おぞましい面を持ち合わせているというのもきっちり描写されているのがいいなあ。SFらしくグロテスクなものも描かれているのもよかった。
定番の氷室冴子や折原みと、みんな大好き小野不由美・須賀しのぶ、直木賞作家の知られざる傑作からマニアックな逸品まで…目利きが選んだ珠玉の名作が勢揃い!(帯より)
「少女小説」あるいは少女を主人公とした成長や冒険、恋などの物語を紹介するブックガイド。どちらかというと多くの人に知られている作品や、いま手に入りやすい作品の紹介が多かった気がします。私でも読んだことのある作品がすごく多かった。
いやあ、自分が「面白い」と思って手元に残している本が紹介されているとすごく嬉しいですね! こんなマイナーどころに来たか! みたいな。
で、ですね……このブックガイドの何がすごいかというと、冒頭の津原泰水先生や若木未生先生のインタビューだと思うんですよね……。特に若木先生の話、怖くて辛くて震えました。なんというか、そういうランクの作家、作品として考えられていたってことかなって……。