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幻坂 (角川文庫)
雨の坂道で出会い、恋におちるも、自意識のために、愛する女を死に追いやってしまった作家の苦悩が哀切な「愛染坂」。坂に棲みついている猫たちの写真を撮るために訪れた女子高生が、その夜から金縛りと奇妙な悪夢に悩まされる「口縄坂」。大坂で頓死した松尾芭蕉の最期を怪談に昇華した「枯野」など9篇を収録。大阪の町にある「天王寺七坂」を舞台に、その地の歴史とさまざまな人間模様を艶のある筆致で描く。解説・河内厚郎

大阪と坂と怪談の短編集。こういうホラー系、幽霊や怪異がメインの話って普段あまり読まないのですが、味があって面白いなあと思いました。土地に由来する話って、思い入れがあればあるほど深みがあるなあ。というのは、この辺りをうろうろしていた時期があったからで、ああ、あの辺、すごく絵になる坂が多かったなあ、なんて思い出したから。
一番好きなのは「口縄坂」。猫の写真を撮影していた女子高生が「なにか」に見初められてしまうという話なんですが、女子高生同士のキスと、あやかしに見初められるっていう妖しい、ちょっとエロティックな短編です。私は頭の中がファンタジーなので、そういう見初められ方をすると今後どうなるかなっていうのを考えてしまいます。
どの短編も、ちょっと怖かったり、優しかったり、悲しかったりで、とても面白かったです。
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