読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
小学校の頃やってきた転校生、その母親の秘密「仁志野町の泥棒」。年齢と立場、恋愛と結婚に言いようのない苛立ちを覚えていたある日、不審火が起こる「石蕗南地区の放火」。かつて付き合った男との思い出を回想しながら旅をしている「美弥谷団地の逃亡者」。恩師が殺されたことを聞いた彼女の元にかつて付き合っていた男から電話がかかってくる「芹葉大学の夢と殺人」。やっと欲しかった子どもを授かったものの育児に疲弊していく「君本家の誘拐」。五つの短編集。
まさに「鍵のない夢」というか、答えが見つからないまま、行き場を失ったり、自分の立っているところがわからなくなったり、どうにもならなくなってしまっている人たちの話だったなと思いました。どの話もいたたまれない読了感なんですけど、辛かったのは「芹葉大学の夢と殺人」でした。
口ばかりで、社会を知らないまま、「嘘がつけない」という言葉を武器に夢を見ている大学生が出てくるのですが、この男がもう……もう……。その言動のいちいちがもぞっとしていたたまれない。
同時に「石蕗南地区の放火」ももぞもぞもぞーっとしました。結婚の気配もないまま三十六歳になった女性が主人公。なんとなくデートらしきものに出かけた年上の男性がいるものの……という話で、このふたり、それぞれのこじらせ感が胸を掻きむしってしまうくらいしんどい。これ「マウントとりたい」って話なんですよね。ああー。
後味がとても悪いんですが、この身をよじってしまう居心地の悪さがたまらないなあとも思いました。
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