読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
医学的に脳死と診断されながら、月明かりの夜に限り、特殊な装置を使って言葉を話すことのできる少女・葉月。生きることも死ぬこともできない、残酷すぎる運命に囚われた彼女が望んだのは、自らの臓器を、移植を必要としている人々に分け与えることだった——。
透明感あふれる筆致で生と死の狭間を描いた、ファンタジックな寓話ミステリ。
第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作。(裏表紙より)
特殊な暴走族のリーダーだった少年・昴が、脳死状態ながらも不思議な奇跡で装置越しに話すことができる少女・葉月と出会い、彼女の望みである臓器を必要としている人に彼女の臓器を分け与えるための助けをする、という物語。物語にはオスカー・ワイルドの「幸福な王子」が下敷きにされている部分があります。
出会いと結末以外は移植を必要とする患者たちの物語で、最初の章、主人公・昴のお話からは血なまぐさく荒んだ陰を感じ取ってちょっと萎縮してしまったのですが、語り手が代わっていくごとにぐいぐいと引き込まれてあっという間に読んでしまいました。
人の生きる死ぬを常に問いかけられ続け、物語の中でその人自身の生きることとは、が提示されていく。印象的だったのは哲郎の話でした。哲郎がああも言い切れた思いというのは不思議ですが、章タイトルが「鉛の心臓」だからと考えると、溶けずに残った思いの固まりを取り出すのは無理だった気がします。哲郎も、葉月も。
冷たい空気と冴えた光、そして青い闇を感じる作品でした。オススメされた作品でした。面白かったです。ありがとうございました!
PR
この記事にコメントする