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読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
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星兎
夜、眠るユーリの目を覚ましたのは、夢から掴んできた氷のかけら……ではなく、「うさぎ」が投げ込んだ氷のかけら。深夜訪れたうさぎとともに、夜遅くにドーナツ屋さんに出掛けるユーリ。彼とうさぎの物語。

『夢見る水の王国』が好きだったので読んでみた。
夢の中から自分の部屋へ、そこから夜の街の、ぼんやり光るドーナツ屋さんにいたかと思えば、いつの間にか幻想的なお祭りの中にいて、海の音を聞き、気付けば宇宙にいた……という旅をするような不思議なお話でした。文章が心地よくて好きだなあ。ひたひたと夜と星のにおいがする。物語に登場する星といっても、銀河の星も、太陽の光もあって、うさぎがいなくなった後の光は、さあっと世界に朝がやってきて、視界が白く染まったように思いました。茫漠とした宇宙にいたと思ったのに、いつの間にか大地に、この地球に立っていた、という感じで、はっと目が覚める思いがした。
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ハウスメイトの心得 (MIRA文庫)
作家志望のジャッキーは、いとこの仲介でフロリダの一軒家に3カ月間間借りることにした。想像以上に執筆がはかどり、ごほうびの泡風呂につかりながら夢見心地でいると、構想中の西部劇のヒーローそのものの男性が呆然と横に立っている。家の持ち主のネイサンが、もう帰ってきたのだ! 人生を楽しみのが得意なジャッキーとつねに慎重なネイサン、正反対の二人が繰り広げるハッピーなラブストーリー。ベストセラー『砂塵きらめく果て』の姉妹作。(裏表紙より)

ハーレさん三冊目。
餌付けしました、という馴れ初めだー。
最初、ネイサンは、がんとした男性かなと思っていたんですが、あっという間にジャッキーに胃袋を掴まれて、二週間とりあえずお試し期間を了承してしまう。ヒロインのジャッキーが押せ押せ、にっこり微笑んで、するっと相手の懐に入って自分の思い通りに物事を動かしている人で、見ていてなんだか楽しかった。ネイサン、ジャッキーにたじたじ。
お互いのことを思い、思い通わせるのですが、ネイサンの方が頼りなくて(過去のことがあるから仕方がないとは思うんですが)、「いい加減早く認めろ君なしではいられないって!」などと思いました。そしたらちゃんと認めてたのでここはちゃんとヒーローなんだな、と思う。襲われそうになっても。
あれ、でもよく考えると、甘い台詞がなかったぞ!? ヒーローがヒロインに語りかける愛の言葉が少なかった気が。
姉妹作として、ジャッキーが作中で書いていた小説が『砂塵きらめく果て』、ハウスメイトで登場したネイサンのパートナー・コーディが登場するのが『アリゾナの赤い花』。
こういう小説は、小説を書いていたり、小説を読んでいたり、恋に落ちたり恋をすることを楽しく笑う、メタ構造があって面白いな。
プリンセスの復讐〈上〉 (MIRA文庫)プリンセスの復讐〈下〉 (MIRA文庫)
お父様がお母様をレイプしている。ジャキール王国のハーレムに生まれたプリンセス・エイドリアンは、寝台の下で耳をふさいだ。王の寵愛を失い虐待されていた母は、幼い彼女を連れて祖国アメリカへ逃亡した。傷ついた母が麻薬と酒に溺れて死んだとき、エイドリアンは復讐を決意する。王宮の金庫から父の権威を象徴する《太陽と月》を盗み出すのだ。美しく成長し、社交界の華となったプリンセスの隠された素顔——それは、憎しみに燃える宝石泥棒だった。(上巻・裏表紙より)

初ハーレクイン。有名作家さんということで、タイトルに惹かれて上巻を読んでみた。原書タイトルが『Sweet Revenge』ってかわいいな!
面白かったです。愛を交わすシーンもこざっぱりして詩的だったような。ただお互いの気持ちを感じ始めてからの絡みは、もうちょっと情緒を! と思わないでもない。
第一部は幼少期の色々が描かれてロマンスはないものの、アラブ圏に対するアメリカ的な考え方が見えるようで興味深いです。
躁鬱になってしまった母親の医療費を稼ぐために、エイドリアンは宝石泥棒に。そのうち亡くなってしまった母のために、復讐することを決意したアディ。投資が成功して、彼女が華々しく社交界にいる姿はかっこいい。
対するヒーロー、フィリップもまたかつては宝石泥棒。普通にいい男だった。特別に暗いところを抱えているわけでもなく、ひたすらにいい男だった。そのことがちょっと物足りない気がしないでもないけれど、ヒロインを甘やかしてくれる男性ということでおいしかったです。
下巻はアディの盗みがばれた! から、その後、二人が協力し、ジャキールの《太陽と月》を盗み出して、その結末。
宝石泥棒(一方は「だった」)として共通し、理解しあうアディとフィリップの反面、彼女の母親と父親の悲劇の対立が面白いなあと思ったり、主人公たちは甘いのに、両親はそうではなかったのだなあということがあったり、甘さと辛さがいい感じに混ざっていて面白かったです。
夢見る水の王国 上 (カドカワ銀のさじシリーズ)夢見る水の王国 下 (カドカワ銀のさじシリーズ)
少女マミコは、渚に漂着した木馬と壊れた角を見つける。気がつくと彼女は、時の止まった海岸にいた。マミコの真っ黒な影が立ち上がって分身となり、悪魔の子マコを名乗る。角を抱き「世界の果てに名前と角を捨てに行く」と言い、水平線の彼方へかき消えてしまうマコ。だが、角をとられた木馬が、白毛の馬となって現れる。少女と白馬は、マコを追って時の止まった海へと駈けだして——。
美しく幻想的な世界を旅する二人の少女。
泉鏡花文学賞作家が描く、壮大なファンタジーの幕開け!(上巻・カバー折り返しより)

水が揺らぐことのないように、雲母が何層にも重なっているように、様々な人々、美しい物たちが立ち現れては、次のことへ波紋を投げ掛けていく、幻想と不思議に満ちたファンタジーだと思います。すごい。圧倒的な幻想の力、というのかな。これを読み解くのはすごく面白そうだけれど、読んだ感想を言うと、圧倒的な幻想、という言葉しか出てこない。不思議で、澄んでいて、迷ったりもするけれど、光を目指していくお話という感じ。
少女マミコとその祖父の生活は温かく、郵便配達夫が時折訪れる優しい世界。けれどもう一つの世界での登場人物が提示するのは、それが歪んでいるのではないかという描き方だったりして、現実のことと異界のことが交互に描かれ、やがて比重が変わり、異界のことと現実のことが描かれていく。主人公のマミコだけでなく、その分身であるマコはただの影ではなく、確かな存在として視点を持っていることがすごく印象的。彼女たちを中心にいくつもの人やものやことが互いに影響しあいながら細く、けれど確かな糸で物語を紡いでいる印象。
描写の美しさが好きだ。文体もお話も幻想的でふわふわするけれど、時折はっとするようなシーンがあってどきんとする。晶洞のシーンとか、雲母箱のシーンとか、舟人の少年とマコのシーンとか。
繰り返し水を飲む描写が出てくるのが印象的。水は旅には絶対に必要なものだけれど、このお話にとってはそれだけじゃないと思う。鉱夫も、村長も、大長老も、それぞれおじいさんの何かを象徴していると思うし、ヨミもヌバタマも何からの暗喩があるだろうし。考えるとすごく深いお話……。
読み終わった後、頭の後ろでもうひとつの世界がぶわっと広がっている感じがして、なんだか言い様のない不思議な読後感でした。
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Author:月子
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