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夢見る水の王国 上 (カドカワ銀のさじシリーズ)夢見る水の王国 下 (カドカワ銀のさじシリーズ)
少女マミコは、渚に漂着した木馬と壊れた角を見つける。気がつくと彼女は、時の止まった海岸にいた。マミコの真っ黒な影が立ち上がって分身となり、悪魔の子マコを名乗る。角を抱き「世界の果てに名前と角を捨てに行く」と言い、水平線の彼方へかき消えてしまうマコ。だが、角をとられた木馬が、白毛の馬となって現れる。少女と白馬は、マコを追って時の止まった海へと駈けだして——。
美しく幻想的な世界を旅する二人の少女。
泉鏡花文学賞作家が描く、壮大なファンタジーの幕開け!(上巻・カバー折り返しより)

水が揺らぐことのないように、雲母が何層にも重なっているように、様々な人々、美しい物たちが立ち現れては、次のことへ波紋を投げ掛けていく、幻想と不思議に満ちたファンタジーだと思います。すごい。圧倒的な幻想の力、というのかな。これを読み解くのはすごく面白そうだけれど、読んだ感想を言うと、圧倒的な幻想、という言葉しか出てこない。不思議で、澄んでいて、迷ったりもするけれど、光を目指していくお話という感じ。
少女マミコとその祖父の生活は温かく、郵便配達夫が時折訪れる優しい世界。けれどもう一つの世界での登場人物が提示するのは、それが歪んでいるのではないかという描き方だったりして、現実のことと異界のことが交互に描かれ、やがて比重が変わり、異界のことと現実のことが描かれていく。主人公のマミコだけでなく、その分身であるマコはただの影ではなく、確かな存在として視点を持っていることがすごく印象的。彼女たちを中心にいくつもの人やものやことが互いに影響しあいながら細く、けれど確かな糸で物語を紡いでいる印象。
描写の美しさが好きだ。文体もお話も幻想的でふわふわするけれど、時折はっとするようなシーンがあってどきんとする。晶洞のシーンとか、雲母箱のシーンとか、舟人の少年とマコのシーンとか。
繰り返し水を飲む描写が出てくるのが印象的。水は旅には絶対に必要なものだけれど、このお話にとってはそれだけじゃないと思う。鉱夫も、村長も、大長老も、それぞれおじいさんの何かを象徴していると思うし、ヨミもヌバタマも何からの暗喩があるだろうし。考えるとすごく深いお話……。
読み終わった後、頭の後ろでもうひとつの世界がぶわっと広がっている感じがして、なんだか言い様のない不思議な読後感でした。
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