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しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)
俺は今昔亭三つ葉。三度のメシより落語が好きで、噺家になったはいいが、目下前座よりちょい上の二ツ目。自慢じゃないが、頑固でめっぽう気が短く、女の気持ちにゃとんと疎い。そんな俺に話し方指南を頼む物好きが現われた。でもどいつも困ったもんばかりで……歯切れのいい語り口で、言葉にできないもどかしさと不器用な恋を描き、「本の雑誌が選ぶ年間ベストテン」第一位に輝いた名作。(裏表紙より)

面白かった! 文章のひとつひとつが小気味よくて、読んでいてすごく気持ちがいい。ヒロインの十河を描写するとき「猫」とか「黒猫」とか「黒猫の凍死体」などと表現が幅広くて面白いなあと思う。
みんな何かしら自信がなく、傷を持っていて、けれど寄り添いあうのではなく、集まって自分でひたすらに何かを掴もうとする姿勢がいい。気が短い主人公の三つ葉が、情に厚くていい。劇的なことはなかなか起こらないし、みんな悩んでばかりだけれど、最後まで読むとほっと息がつける物語でした。
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