読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
恋人由美子の心変わりの相手が兄貴でさえなかったら、ここまで苦しくはなかったのかもしれない。傷心の祐介は、大学生活から逃れるように、信州菅平の宿「かむなび」で働き始める。頑固だが一本筋の通った園主、子連れでワケありの瞳子……。たくましく働く明るさの奥に、誰もが言い知れぬ傷みを抱えていた。(上巻・裏表紙より)
兄貴に恋人を奪われた大学生の青年が、田舎暮らしで再生する物語。一人称で語られます。単純に宿でアルバイトするだけかと思いきや、少しずつ、問題を抱えている人々が現れる。ここではそれほどはっきりと問題と解決が行われるわけではないけれど、そういった人たちが、お互いを思いあいながらゆっくりと生きている感じ。大きな事件はそうは起こらないけれど、ひとつひとつのエピソードが同じだけの大きさでいくつも繋がっている感じがあって、マイペースに読める物語だった気がする。
農業の話が出てくるところに、色んなところで納得した。季節のものをその季節にありのままに食べているのが、人間の普通なんだよなあ。
主に動きは肉体労働なのだけれど、作中で問題となっているのは『心』の問題なのだな、と。みんなどこか心の中に問題を抱えて、寄り添うように集まって来ている。ストレートだったのは不登校になってしまっている桜のエピソード。若者たちが不器用ながらも理解しようと、優しく見守っているのが心地よかった。
園主の言葉がいちいち的を射ていて、ストレートに生きている感じがして、とても羨ましかった。
「(略)人と違てるもののことだけやのうて、人とつながれるもの、人と共有できるものをどれだけ沢山持ってるか、いうことも立派な個性やないかと思うねん」
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