読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
1924年、春。ヨーロッパの小国ソヴュールに、極東から留学してきた久城一弥は孤独である。不慣れな環境、言葉の壁、クラスメイトの間で囁かれる不吉な言い伝え〈春やってくる旅人が死をもたらす〉……そして噂どおり起きてしまった殺人事件。容疑者として絶対絶命の危機に陥った一弥に気まぐれな救いの手をさしのべたのは、図書館塔に篭もる謎の少女だった——。世界を変える出会いの瞬間を描く、名作ミステリ外伝短編集。(裏表紙より)
一巻を読んだのがだいぶと前だったので、出会いの話から読むのは案外よかったのかもしれない。
留学してきて馴染めないでいる久城と、図書館塔のてっぺんにいるヴィクトリカの出会い、そして連続する小さな事件のお話。
殺人事件だったり大泥棒だったり人形だったりと、ちょっとどきっとするホラーなシーンがあるのがいいなあ。
二人の出会いを別の人の視点から見ているのも新鮮でした。ヴィクトリカの秘密ってなんなんだろう。
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文武両道でカーストの上位に位置する桐島が、男子バレーボール部を辞めた。その噂は彼を知る同級生たちに衝撃をもたらした。なぜ言ってくれなかったのかと動揺する友人、恋人、そして彼らを取り巻く生徒たちは、何を思うのか。
原作は読了済、なんですがだいぶと前なのでほとんど忘れてしまった。
カーストの描写がリアルできつい。女子グループの華やかさと、映画部男子二人の地味さの描写がなあ……。教師の無神経さが描かれているのもあるけれど、一生懸命作ったものを笑う高校生の幼さに、見ているこちらが傷ついてしまう……。
神木隆之介さんと松岡茉優さんの演技が、私の中では特におお……と思ったかなあ。松岡さん、ああこういう子いるわ……って感じのしゃべり方や無神経さで、すごい。神木さんは明らかに人慣れしてない感じがいつもと違って、すごいなあって。
本当の自分を探している感がすごくて、最後の屋上のシーンなんてみんなが心の中に持っている「桐島」の集大成みたいな感じで。それが爆発してあのシーンになるのは、なんとか当てはめていた「自分」という枠から思わず飛び出した感があって。そこでかかっている音楽がまた大層でいい。
その後の夕暮れの屋上のシーンも、まったく別の世界で生きていたはずが本当は同じ世界なんだよ、君がいるそこはまだ狭いんだよって言われている気がしました。閉塞感とかすかな希望が感じられて、いいなと思った作品でした。
いまどきの恋愛についていけない、所帯染みた女子高生のまい。よく遊びに来る兄の友達、西野壮太と恋人同士。しかしお互いにうぶな二人はなかなか進展せず、思い悩む。周囲を巻き込んだピュアラブストーリー。全4話。
映画の補足話、という感じなのかな? 原作はたまに読む程度ですが、絵が好きなのと話がしっかりしているので楽しいと思っていて。……実写化になるといまどきの若い人をターゲットしたイケメンと可愛い女優さんの作品になるんだなあ……と遠い目をしてしまう。
とりあえず、なかなか進展せずお互いに「どうしよう……」となっているのを、バイト先のドッグカフェの店長(福山潤・本人)に相談して、この状況をどう乗り切るか!? を楽しむ十分間です。
私が想像するよりだいぶとふわふわした主人公カップルだなあという感じでもうちょっとしっかりきびきびしてほしかったんですが、改めて可愛い話だなあと思いました。
映画の補足話、という感じなのかな? 原作はたまに読む程度ですが、絵が好きなのと話がしっかりしているので楽しいと思っていて。……実写化になるといまどきの若い人をターゲットしたイケメンと可愛い女優さんの作品になるんだなあ……と遠い目をしてしまう。
とりあえず、なかなか進展せずお互いに「どうしよう……」となっているのを、バイト先のドッグカフェの店長(福山潤・本人)に相談して、この状況をどう乗り切るか!? を楽しむ十分間です。
私が想像するよりだいぶとふわふわした主人公カップルだなあという感じでもうちょっとしっかりきびきびしてほしかったんですが、改めて可愛い話だなあと思いました。
生まれたばかりの赤ん坊・雪を抱え途方に暮れていたシングルマザー山野珊瑚、21歳。「赤ちゃん、お預かりします」の貼り紙の主で年配の女性くららと出会ったのをきっかけに、果敢に人生を切り拓いてゆく。どんな絶望的な状況からでも、人には潜在的に立ち上がる力がある——様々な助けに支えられ、心にも体にもやさしい総菜カフェをオープンさせた珊瑚の奮闘を通して、生きること食べることの根源的な意味を問いかける。(裏表紙より)
シングルマザーが頼れる女性を見つけて赤ん坊を預け、やがて知り合った人たちとカフェを経営するようになる。お話を簡潔に説明するとイマドキなストーリーなんですが、丁寧に描かれている調理、料理、風景、人の言動、それを受け止める珊瑚がすごく優しくて暖かくて、梨木香歩作品だなあというのをしみじみ感じました。
だからこそ美智恵の手紙には、読んでいてさあっと血の気が引くような思いがして。なんて……なんて人なんだろう。何がそんなに許せないんだろうとぐるぐるしてしまう。だから「施されるもの」「施すもの」の話などは印象的で、そういうもやもやしたものを抱えながら毎日を生きる、からこその、食のお話なんだなあと思いました。
初恋の幼馴染み・ノランにひどい言葉で傷つけられて以来、人間不信になっていたシンシア。それから5年、憎むことも忘れることもできなかった恋は、シンシアをずっと苛んでいた。一方、ノランは軍部で功績をあげ、社交界の寵児となっていた。彼はシンシアと再会するやいなや、過去のことなど忘れた様子で独占欲を露にし、他の男を牽制する。さらには、半ば強引に彼女を連れ去り、無垢な身体に快楽を刻みこむと、結婚まで強要してきて……!?(裏表紙より)
すごく歪んだ愛情を持つヒーローによる、誘拐と軟禁結婚。ヒロインを自分のものにしたいからと周到に準備し、ヒロインの心に傷までつけて、彼女をものにする。いやあ歪んでるなあ! ここまで突き抜けるとすごい。
愛情をたっぷり受けたヒロイン、シンシアは甘やかされた結果、傲慢でわがままな太った女の子になっていて、ノランの一言をきっかけに深く傷つき、五年かけて美しくなったのはお見事。しかし傷ついたせいで卑屈な性格になっているというのはとてもリアルだなあ。
しかし最後に人死にが出たのにはびっくりしました。撃たれた瞬間に「ええええぇええ」って言っちゃった。家族のことを思うとなんともやるせないんですが、向こうも武器を持ってきたし仕方ないよね……。
京橋中央税務署を揺るがす大事件が発生した。あの、悪質な滞納者から隠し財産を差し押さえまくり “京橋中央署の死に神"と恐れられる、特別国税徴収官(略してトッカン)の鏡が訴えられるかもしれない。しかも背後には、税務署の天敵・勤労商工会のお抱え弁護士がついていた。鬼上司のピンチにぐー子(トッカン付き徴収官)が立ち上がる! 面白くって、ためになる、大好評の税務署エンターテインメントシリーズ第2弾。(裏表紙より)
滞納者が首吊り自殺してしまい、担当者だった鏡を訴えるという事件が発生。背後には勤労商工会。トッカン付きを外れて一人で仕事を回すようになっていたぐー子は、勤労商工会側の弁護士の吹雪に粘着されて、鏡の危機を知る。鏡の過去を知る親友(?)二人も登場して、ぐー子は事件のきっかけとなった滞納者の自殺とその直前の動きを調べ始め。
社会人になって四年め、税務官になって二年、自分の仕事としてのスタンスや居場所を求めるぐー子の気持ちがリアルで苦しかった……。もがいている感じが自分の経験と重なって、どうすればいいのかなあと読みながら悩んでしまった。ぐー子はその悩みを突破できるのかな……。
進学校として知られる天智高校。春休みのある日、人気者だった春日井奈々が校舎から転落死する。自殺と思われたが、転落前、彼女の背後に人影を見たという証言もあり……。奈々が所属していた部活は、部員の名前に偶然、春・夏・秋・冬の文字があることから「四季の会」と呼ばれ、憧れる生徒も多い。だが、奈々の死後、部員たちに異変が起きて…。危うく儚い青春ミステリー。
ねぇ、知ってる? 日本の女子高生って——。
少女たちが少女たちたる黒い側面、黒い水の中で目をらんらんと光らせているような彼女たちの、憎しみのお話。青春ミステリーっていうほど爽やかじゃないんですが、なるほどなあと思わせるお話だったと思いました。
だからこそタイトルが惜しいという気がするなあ。みんな見えないところで「号泣」しているのかもしれないけれど、真相に関わった人のことを思うと「慟哭」という気もするし、もっと鮮やかな「殺意」というものだった気もするし。
探偵役の周と冬姫の存在に救われたなあと思いました。
早くに両親を亡くしてからずっと二人で暮らしている、より子と進の姉弟。お互いにいい歳だけれど浮いた話もなく、つつましい暮らしをする仲のいい姉弟だけれど、二人はお互いにコンプレックスと罪悪感を抱いていた。しかしゆるりとした日常に、恋がやってきて……。
いい歳した姉弟の、所帯じみてゆるりとした日常の話。日常といってももちろん仕事や、出会いや、恋があるわけで。
寂れた眼鏡屋に勤めているより子と、香りを作る仕事をしている進という、普通とはちょっと違う二人、というのがすごくリアル。きっとこんな姉弟いるいるって思う。描かれる風景がすごく身近で、私これ知ってるっていう空気に満ちている。先生のエピソードがすごくいい。
長く一緒にいる分、お互いに罪悪感を抱いているのも、兄弟がいる身としてはわかるなあと思いました。
朝のワイドショー「グッドモーニングショー」。司会の澄田は、とある災害現場でのリポートの際、不適切な行動をしたとされ、非難を浴びていた。息子からは信用されなくなり、同僚の女性キャスターからは謎のつきまといを受け、番組は落ち目で終了が予告されている。そんな窮地に立たされていたはずの澄田は、とある立てこもり事件の犯人から警察を通じて名指しで呼び出されることになる。もちろん番組はそれを中継するが……。
マスコミは怖いという話かと思いきや、視聴者が怖いという話だったな……。マスコミがぎりぎりのところで暴走する視聴者を止めたという印象で、この作品を作っている人の良心を感じました。
人間関係が入り組んでいてそれぞれの思惑があるのと、立てこもり事件を解決するというはらはらする展開が混じって、緩急がすごくてどきどきしてしまった。また立てこもり犯役の濱田さんの演技がすごくてなあ! めちゃくちゃ心臓に悪かった。あとサブキャスター(スポーツ担当)の志田さんが、いるいるそういうアナウンサー! って感じの見た目やファッションで、感じもよくて面白かった。
「新婚旅行に行かないか?」——とある事情で身代わり花嫁中のフェルに、突然鬼畜な策略家の旦那様・クロウが言い出した。彼とは離婚大前提の(仮)結婚なのに冗談じゃない! と抵抗するフェルだったが、どうやら旅先にはクロウの“陰惨な過去”が関与しているらしい。仕方なくラブラブ夫婦を装うフェルにさらに襲いかかったのは……げっ、旦那様と同じ寝台!? フェルのニセ新婚生活第3弾!(裏表紙より)
新婚旅行と称して、呪毒を流していると思われるとある一族を訪問することになったフェルとクロウ。結婚おめでとうと祝福される二人は夫婦のふりをした結果、同じベッドで寝ることに。そして前巻から匂わされていたクロウの過去が明かされ、振り切ったような変人で超有能な兄皇太子が登場。最後にはフェルの気持ちもはっきりし……と読み終わってみれば盛りだくさんだし転機の巻でした。
ともかく「お手洗いは、どこですかぁ——ッ!!」がお腹痛くなるほど笑いました。最高でした。
フェルの出自に気付いているセタンタ王と謎の行動を起こすシレイネ姫、妖精の伝承なども関わり、ここからどうなるんだ……?