読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

身のうちに病を飼い、未来を望まぬヤクザ「藤堂」、記憶を喪い、未来の鍵となる美少年「穂」、未来を手にせんとする男「沖」、沖と宿命で結ばれた異能の女「蛭雪」、未来を望まずにはいられぬ少年「誠」、誠と偶然で結ばれた異能の女「戊」——縁は結ばれ、賽は投げられた。世界は、未来は変わるのか?
本屋大賞作家、冲方丁が若き日の情熱と才能をフル投入した、いまだかつてない異形のエンタテインメント!!(裏表紙より)
ヤクザと異能もの。伝奇というのかな。ヤクザの抗争に、異能を持つ集団が関わって、この世界の裏側に存在する不可思議な力を交えて戦うことに。
主人公たちの中でメインの藤堂。刑務所に行ったこともあるヤクザで、ずっしりした大人かと思いきや、作品全体がすごく若々しい雰囲気になっていて、重くもなく軽くもなく、っていうバランスが不思議だ。穂が無垢というか、まっさらゆえに最強っていうところがすごく好きです。
この作品が原点として、これ以降の冲方丁作品をみていくと、いろいろ要素が見えて面白いなあ。
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物心ついた頃から“ブス”だったわたし。子供の時に参列した結婚式に憧れて、せめて誰かの幸せな瞬間を演出したいと、ウェディングプランナーの職に就いた。様々なお客様が人生の門出を祝おうとホテルを訪れる。そんなわたしが、やり手の美形上司・久世課長に求婚された!?「香澄さん、ずっと探していました。あなたのような…絶世のブスを」「はぁ!?(怒)」
ここでは、誰もが人生の主人公になれる。
受賞後、コバルト文庫の公式サイトで公開されていた試し読みを読んで「なんだこれめっちゃ面白い」と思って買いました。読みやすくて面白くて、でもちょっと痛くて、泣き笑いになってしまう物語だった。
何せヒーローがひどい。「あなたはブスだ」とことあるごとに言う。ギャグかと思ったら周りの反応から香澄が本当に、お化粧でも変身させることができない絶世の不美人だということが分かる。それが読んでいて常に刺さるので、痛いような泣きたいようななんとも言い難い気持ちになる……。お話としては、ウェディングプランナーというお仕事ものなので、成功や大きな失敗を経て「この仕事が好きだ」と感じるものになっています。絶世の不美人っていう言葉が嘘だと思うくらい、もう本当に香澄が性格がよくて仕事ができるいい子なので。頑張れ、私も頑張る、という気持ちになりました。

安渓村の水華は、紡ぎ場で働く一介の紡ぎ女。繊維産業を誇る白国では、少女たちが天蚕の糸引きに従事する。検番に怒鳴られながら過酷な作業を繰り返す日々のなか、墜死をとげた友の真相を探るかのように水華に接触してくる謎の青年。だが運命の日は突然やってきた。千人を超す紡ぎ女が集められた広場に現れたのは、この国の若き王。機織りの腕を買われた水華は、神に仕え、王のために布を織る巫女に任ぜられる。(裏表紙より)
貧しい村の家の出身で、真面目で決して器用ではない性格だけれど、友人を大事にし、しかし時には揺れることもある、本当にごく普通の少女、水華が主人公。普通というのは正しくは違うかもしれないんですけれども(家族が冷たいとか、贅沢を知らないとか)この子は正しく、まっすぐだけれど危うい、強いヒロインだよなあと思いました。
糸紡ぎに関するいろいろなところが分かりやすく書き込まれていて、糸引きや機織りというモチーフにどきどきしました。いやあ、機織りの巫女姫っていいなあ。そこに王様がふらっとやってくるっていうのもときめきです。
その王様は第一印象が最悪なんですが笑 ここから男前なところが見られるはずなのに、続きが出てないのが悲しい……。友人の死の真相を握っているらしい人物が出てきたところで引きなので、じれじれします。
面白かったです! 続きが読みたいー!

同じ学校に通う、ケイト、ローズ、レイチェル、クレア。それまで接点のなかった彼女たちは、前日の記憶がないことに気付く。彼女たちを繋ぐのは、死んでしまった友人リーズ。そしてルーラと名乗る女が現れ、告げたのは、彼女たち四人がすでに死者であり、その命はかりそめのもので、戦わなければならないということだった。
体温が低く、傷を受けてもすぐに治癒する、生者と死者の中間の存在になった四人の少女たちが、共通の友人の死の真相と、自分たちがいる島に続く呪いと戦いに身を投じていく物語。舞台は合衆国の島、ルーズベルト島。アニムスと呼ばれるよみがえりの女性たちと、死ぬと狂人と化して獣のようになる一族ドロルが存在しています。ゾンビものかと思いきや、さほどゾンビしているわけではなく、死者でありながらも学校や恋や家族、友人をどう大事にしていけばいいのか、と思い悩む少女たちの心の動きがメインかなあ。
接点のなかった四人が、自分の死を乗り越えて戦って、仲たがいしたり思いやったりしながら仲良くなる、っておいしすぎます。その中でそれぞれ大事なものがあるっていう描き方もすごくいい。彼女たちのかりそめの命は、戦いの終わりとともに永遠の命となり、それまでの記憶を失うという真実が明らかになるのですが、それでも生きていたいと願う彼女たちが尊すぎる。女の子の、生き汚いかもしれないけれども強い願いを持って戦う姿は、かっこよくて素敵だ。「何度でも殺してやる」と言われて「何度でも生き返ってやる」の台詞は熱かった……。
作中、登場人物たちが突然歌い始めるのにはびっくりしましたが笑 群像劇って感じで面白かった。

自ら体験した不可思議な話、求む。高額報酬進呈。ただし審査あり。——新聞の募集広告を目にして酒場を訪れた客は、奇談蒐集家を名乗る男と美貌の助手に、怪奇と謎に満ちた体験談を披露する。鏡に宿る美しい姫君との恋、運命を予見できる魔術師との出会い……。しかし、不可思議な謎は、助手によって見事なまでに解き明かされてしまう。安楽椅子探偵の推理が冴える、連作短編集。(裏表紙より)
「自分の影に刺された男」「古道具屋の姫君」「不器用な魔術師」「水色の魔人」「冬薔薇の館」「金眼銀眼邪眼」「すべては奇談のために」の七つの短編が連作になっています。
奇談、と呼ばれるような不思議な話をしたら、男とその助手に真相を解き明かされる、という流れなのですが、語り手が違うとこうも、文体から見るものから印象から違うものになるのだなあ、というのがよくわかって勉強になりました。
謎自体は読んでいて結構簡単に解けるのですが、最後の最後、「すべては奇談のために」で謎が解けてすっきり、という気持ちをひっくり返されるのが意外で、えーって思ったんですけど、なんというか、オチと一緒に、そういう不思議があってもいいかなあ、なんて思いながら読み終わりました。

音楽家、俳優、文筆家とさまざまな顔を持つ星野源が、過剰に働いていた時期の自らの仕事を解説した一冊。映画連載エッセイ、自作曲解説、手書きコード付き歌詞、出演作の裏側ほか、「ものづくり=仕事」への想いをぶちまける。文庫化にあたり、書き下ろしのまえがき、ピース又吉直樹との「働く男」同士対談を特別収録。(裏表紙より)
星野源さんのエッセイ集。自作解説などもあり、この人全力で仕事を楽しんでいる人だなあと思いました。読んだのは文庫で、2015年の発売なんですけれども、この後めっちゃ忙しくなるんだよなあ。楽しすぎて振り切れるんだろうか……。
欲望丸出しというわけではなく、淡々と自らの願望をしたためる、そのテンポが好きです。
というか、自筆の字がかわいいな!? 絶妙なヘタレ字です。
![この男子、 石化に悩んでます 。 [DVD]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/61KcTbJgDzL._SL160_.jpg)
ストレスを感じると石化する体質の男子高校生、田万里。それを「綺麗だ」と言った男性教師、穂仁原は、石が好きだという変わり者。クラスに馴染めない田万里は、自分を恐れずに近づいてくる穂仁原に惹かれていく。
「この男。」シリーズの第四弾、だそうで、他の話は、宇宙人だったり人魚だったりするみたいです。ファンタジーでBLのシリーズみたいです。
体質に加えて、もともとコミュニケーションが苦手な男子高校生と、鉱物好きでそっけないように見えて面倒見のいい男性教師、というBL的な台詞回しや表情には、ちょっとむずむずするんですが……笑 これ、連載とか長編とかだったら、クラスメートと三角関係になるやつですね。
人間関係に思い悩む田万里が、見ていて苦しいです。世界が狭いだけなんだけれど、その時、その世界がすべてなんだよなあ。けれど、実は世界が狭かったのは大人である穂仁原の方で。
エンディングで、一年どう過ごしたのかが分かって微笑ましかったです。
![ブタがいた教室 (通常版) [DVD]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/513FNY3vYCL._SL160_.jpg)
4月。6年2組の担任教師は、生徒たちに子ブタを見せ、「一年間、みんなで飼育して、最終的に食べましょう」という授業を開始する。しかし、卒業が近づくにつれて、クラスは「食べる」「食べない」に分かれ、決着がつかなくなってしまう。
原案は『豚のPちゃんと32人の小学生 命の授業900日』。作品とは諸々設定が異なりますが、実際に行われた授業を元にしてあります。
作中の台詞であり、キャッチコピーに「命の長さは、誰が決めるの?」というものがあるのですが、本当に、そうだよな……。食べる、食べないって、何が基準なんだろう、と思う。生かすのか、殺すのか。それを握っている自分が怖いとも思う。というか、名前をつけた時点でもうだめだ……と思いました。
正しい、正しくない、というものはないディベートは緊張感に満ちていて、子どもたちのやるせなさや苛立ちがリアルに感じ取れて、自分の心臓もギリギリしました……。

湖西の騒動は収まったものの、事後処理に追われる文林。隣国も怪しい動きを見せるなど、悩みは尽きない。
そんな疲れを癒やしてくれるのは、帳簿と不本意ながら小玉……と思ったら、「娘子の貞節に問題あり」!? 突如持ち上がった小玉の不義疑惑。紅霞宮を巻き込み蠢く陰謀——文林にないがしろにされた司馬淑妃の父親・司馬尚書の謀略か。それとも……。
推移を冷静に見つめる小玉は、ある夜文林のもとを訪れる。そして二人の関係にも変化が——。それぞれが出した答えとは!?(裏表紙より)
今回の戦いは後宮。女の戦いですが、次は血が流れる大きな戦いになりそうです。
ちょっと深酒が過ぎるようになった小玉。そのお酒が、後半になってあんなことになるとは思いませんでした。わーぜんぜんおめでたくなーい。むしろ不穏だー。とか思ってたらえらいことになってしまい。明らかに文林がずれているというのも分かり、小玉と文林の間に埋まらない断絶ができたことを自覚して、次巻という……。わあああもぞもぞするー!

栗坂まもりが一人暮らしを始め、お隣住まいのイケメン改め園芸男子の亜潟葉二と知り合って、はや半年。葉二の元カノとケジメもついて、秋のベランダ収穫ごはんで人心地……
と思いきや。「この際だから付き合うか」葉二からの告白で二人は恋人同士に。って見切り発車すぎじゃありません!?
恋の実りに動揺するまもりと、仕事が多忙を極める葉二。ベランダ菜園にも虫が付くしで、目まぐるしい日々に二人の関係は……?
大好評・園芸ライフラブストーリー。ベランダも、恋人も、お付き合いって難しい。(裏表紙より)
「おつきあい」のベタなやつじゃなくてストレートなやつだったー!! という始まり。しっかり確保されてしまったまもりさん。この辺り、亜潟さんの方が大人だなあ、とにやにやします。年の差ものの悩みもあってとってもおいしい。
大きな事件は起こらないけれど、日々の大事件(気持ちとか体力的にとかいろいろ)をこなしながら過ごしている感じが、ほのぼのとするところがあって、読み終わったあとほっとした気持ちになります。毎日のちょっとしたことが悲しかったり楽しかったり、なんだよなあ……。
最後のオチは意外で、でも可愛くて、にやにやしました。