読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
もはや、少年少女が出会うような、初々しい恋じゃない。変わらない恋心なんてない、そんなのとっくに知っている。だけど……。大人になっても「こんなの初めて」ってあったんだ。すれ違いや別れをくり返してきた彼らだけが知る、「最初で最後」のかけがえのない瞬間たち。8人の作家が描き出す、経験してきたすべての恋を肯定したくなる珠玉のアンソロジー。最後の恋、それはつまり、自分史上最高の恋。(裏表紙より)
最近アンソロジーで短編を読むのが好きなので読む。
三浦しをん「春田の毎日」谷村志穂「ヒトリシズカ」阿川佐和子「海辺食堂の姉妹」沢村凛「スケジュール」柴田よしき「LAST LOVE」松尾由美「わたしは鏡」乃南アサ「キープ」角田光代「おかえりなさい」この順番に掲載。
すごいいい味わいの短編だなあと思ったのが角田さんの「おかえりなさい」、ラストがよかった柴田さんの「LAST LOVE」、初めて読んで阿川さんいいなあと思った「海辺食堂の姉妹」、予想通り面白かった「春太の毎日」という印象です。
最後の恋、で引っ張ってくるのが皆さん結婚と離婚だというのが面白いなあ。その中で「ヒトリシズカ」や「わたしは鏡」「キープ」がいい案配で挟まっていて、それぞれの短編が味わい深い。面白かった。
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“カオルコ少女”が5〜10歳の頃夢中になった、昭和40年代の少女漫画。『なかよし』『りぼん』『マーガレット』、舟木一夫モノや、王道の恋愛&スポーツ、初めて見たヌード……驚異の記憶力と共に、鮮やかに甦る漫画たち。知らない人でもなぜか懐かしく笑える、不思議なノスタルジック・エッセイ。〈文庫オリジナル〉(裏表紙より)
少女漫画論ではなく、著者が読んできた少女漫画の思い出を綴るエッセイ。作品、作家だけでなく掲載誌を読んだ思い出なども綴ってあり、読者目線の「あの頃の少女漫画」を知るにはいい一冊かもしれない。研究には向かないけれど。なので、文の内容がちょっと独特で主観的でしたが、あんまり少女漫画論で触れられない作家に焦点を当てていたりもして、面白かったです。
この僧衣を剥ぎ取ってしまえば、コンスタンティンが【黒い羊】かどうか確かめられる——美貌の司祭ユリエルに助祭の美少年コンスタンティンへの疑いが生まれる。だけど強引に【黒い羊】にキスをして傷つけた手前、コンスタンティンに「肌を見せてほしい」のひと言が言えない。そんな中【黒い羊】の偽者が現れたことで事態は急展開し!? 「怖かったか? 俺に会うのが。なあ、シスター」禁断のトリニティ・ラブ・ファンタジー第3弾!!(裏表紙より)
【黒い羊】の偽物が現れた。しかも悪人から金品を巻き上げているという。女伯グロリアの【黒い羊】追及の手も伸び、コンスタンティンは女性であるという疑いと【黒い羊】の正体ではないかと追いつめられる。あっちこっちから疑いの目を向けられ、すっくとしているコンスタンティンが怖さのあまりに震えているシーンはこちらもはらはらどきどきでした。勇ましい彼女が怖がっているのは珍しい。悪魔の心境も徐々に変化し、なのに猫の姿だというのが、コンスタンティンも言っていましたが本当にずるい! 勝ち逃げみたいな状態! 大事なところで手を貸してくれる悪魔は隠れイケメン(いや、人間型は超絶美形なんですが)
結局全部困難をクリアしちゃって、かつ残った問題は「正義」についてかーと思ったら! ニコラスが戻ってくるのが楽しみです。
漆黒の悪魔にはめられた結婚指輪を壊すため、昼は男装し教会の助祭、夜は伝説の聖女【黒い羊】の二重生活を送る少女コンスタンティン。しかし、助祭の仕事中に事件に巻き込まれ、僧衣を切り裂かれてしまった彼女はドレスを着るはめに! さらにその姿を【黒い羊】を追う司祭ユリエルに見られてしまい!?「あなただとわかっているのに、女性に見えて…」司祭の懊悩と悪魔の猫化が加速するトリニティ・ラブ・ファンタジー第2弾!!(裏表紙より)
女性は男装、男性は女装する、キリスト教以前から行われている街の祭りの日がやってきた。でもキリスト教の助祭であるコンスタンティンにはあまり関係のないこと……と思いきや、祭りのせいで魔力が高まるため、悪魔がコンスタンティンと結婚式を挙げようと企んでいると知る。更に、突発的な出来事で、コンスタンティンはドレスを着たところをユリエルに見られてしまった。
ラブコメ部分はにやにや、バトルシーンは熱く、そして、正義と悪の対立を描くところは切なくて、このシリーズにはまりはじめている! とはっとしました。面白いー面白いーごろんごろん。分かってたけど、分かってたけどやっぱり結婚式の無効化の方法って萌えたわー!
正義を行う【黒い羊】だけど、悪には悪の苦しみがあるというのが切ない。取り締まる側の女伯、代官側も乗り出してきたし、三巻が楽しみです。
まだ世界が平らだったころ、地底では妖魔の都が栄えていた。その都を統べる妖魔の王、絶大な魔力と美貌を誇るアズュラーン公子は人界に遊び、無垢なものたちを誘惑して愉しんでいた。育て上げ寵愛した美青年、残虐非道な女王、生まれる前にふたつに引き裂かれた魂……闇の公子の気まぐれないたずらは、あまたの人間の運命を変え地上を災いの種で満たしていく。傑作ファンタジイ〈平たい地球〉シリーズ第1作、待望の復刊(裏表紙より)
神のごとき力を持っている妖魔の王が、人界のものの運命を狂わせていく。人と妖魔と魔法が絡みあうすべての物語が伝説の幻想に満ちていて、文章が美しくてエロい! なんという美文だろう! と思いながら読みました。うっとりと酩酊してしまう。
人の世界と妖魔の時間は異なるので、遥か過去に起こったことが後の世の人に関わってきたり、人の恨みの一瞬が遥か未来へつながってしまったりと、繋がる物語が好きとしては好みドンピシャでした。アズュラーンが関わると一気に物語が耽美めいて、妖しい雰囲気を醸し出し、人間が悪に誘惑され引きずり込まれていくところがはらはら、興奮しました。
クライマックスのシーンは荻原規子さんの解説にも抜粋されていましたが、なんて美しいんだろうとどきどきした。それまで妖しく美しい魔のものだった存在が、逆転する瞬間に感動する。そうしてラストで、次なる世界へ繋がっていくところは、読み終えるとほっと溜め息になりました。
面白かった。シリーズ続きも読みたい。
若美谷中学1年5組の塚原マチは、自分の意見を主張できない、頼み事を断れない、そんな性格を直したいと思っている。ある日、図書室で本をめくっていると、一枚の紙が滑り落ちた。そこには、丁寧な文字で『サクラチル』と書かれていた。貸出票には1年5組と書いて、消された跡がある。書いたのは、クラスメイト? その後も何度か同じようなメッセージを見つけたマチは、勇気を振り絞って、返事を書いた。困っているはずの誰かのために——(「サクラ咲く」他2編収録)(カバー折り返しより)
中学生から、と書いてあるちょっと児童書っぽい雰囲気の辻村作品。いつものぴりっとした刺々しさはなく、すいすいと読める話が三編収録。「約束の場所、約束の時間」「サクラ咲く」「世界で一番美しい宝石」これらにはすべてどこかに繋がりがあるというのが、いつも通りで嬉しかったです。
SF、真面目で気弱な中学生が大きく成長する友情もの、そして青春ものと、心にすとんと落ちてくるような素敵な中編ばかりで、やっぱり好きだなあ……と思いました。「サクラ咲く」は長編になるともっとずっと痛い話になるんだろうけれど、春が来る、花が咲く、生き生きとした、未来への展望が感じられるいい話で、すごく好きです。
そして、みんなちゃんと大人になって、友人との繋がりを持ったままなのがすごく嬉しかった。
16歳の誕生日、むりやり漆黒の悪魔の花嫁にされた助祭の少女、コンスタンティン。彼女は、悪魔にはめられた契約の指輪を壊すため、正体を隠して伝説の聖女【黒い羊】に変身し悪人を倒すことに!! だけど、異端者と見なされて美貌の司祭ユリエルにまで追われることになってしまい!? 「これは吾が花嫁だ」「違う。私の獲物だ」——悪魔との離婚が先か、ユリエルに捕まるのが先か。禁断のトリニティ・ラブ・ファンタジー開幕!!(裏表紙より)
生まれたときに悪魔の花嫁に選ばれてしまい、十六歳になったその日に悪魔からの迎えが来ると言われ、教会に預けられた少女はコンスタンティンと名乗り、助祭として生きていた。しかしその生活は、夜歩きする、酒場に行く、賭博はする、と聖職者にあるまじき放蕩ぶり。そんなことが許される悪徳の都サクスで、コンスタンティンと、悪魔、そしてわけありの司祭ユリエルの三角関係が始まる。
おもしろー!(じたばた)男装して暮らすコンスタンティンは、しっかり者でちょっと捻くれた子なれども、許しとは、愛とはというものにきちんと自分の考えを持っているところがすごくいい! ただではいかない女の子、というよりもちょっと少年の気配が強いですが、これから恋していくのだとしたら楽しみだなあ!
猫化していく悪魔と、ふにゃーんとしている司祭ユリエルとの一つ屋根の下というところもときめきです! 悪魔もユリエルも、大事なところできりっとしてすごくかっこいいので、きゅんきゅんしてしまいました。私はユリエルとくっついてほしいなー! 聖職者は恋ができないとは思いますが、だめだだめだーって思い悩んでくれないかなー!
引きこもりニートの耶居子の生き甲斐は、インターネットで美しい女たちの集まる場所を潰すこと。ブログ主を中傷し、ブログを炎上させてきた耶居子は、サイト「嘆きの美女」に行き着き、そのオフ会現場を撮影した画像をネットに流出させようと企む。だが、何の因果かサイト主の自宅に居候することになってしまい……。
だんだんお気に入りになりつつある、柚木麻子さん。オタ女子の繊細な心をがりがりと削るの止めて! でも楽しい! な作品でした。面白かった……。
ディープさは描かれていないもののそれなりのオタクと推測できる主人公耶居子。自撮りやファッション、フード、スイーツ、コスメなどの話題で盛り上がっている美しい女たちを妬み嫉み、中傷することに喜びを見出している卑屈な女性。何度も出てくる美女なんて嫌いだ! という台詞にうんうんと共感。本当に、綺麗な女の人=リア充に対するイライラ感分かる……。
引きこもり、運動不足、レトルト、インスタント、スナック菓子、というこれは太るしかないだろうという環境の中、突如、薬膳料理や低カロリーな手作りお菓子、怒りを原動力にした運動で変化していく。そして精神面も変化が。この変化は緩やかに思えて結構大きく、耶居子の物語が引きこもりから大きく動き出したのが分かる。こんなのないだろーというのはあるんだけれど、でもあってもいいじゃん気持ちいいし! というストーリー。本当に面白かった。ちょっと抉られるけれど。
他の作品も読んでみたい。
早坂紫は、母親の望みどおり有名進学校の生徒となったが、心のどこかで自分の人生に不安と疑問を抱えたままだった。ある日、紫はピアスだらけの派手な少年に声をかけられ、追い回される。彼は自分の学校で行われるショーのモデルを探していた。そして紫は、デザイナー志望の天才、ジョージと出会った。
テレビ放映されていたものがすっごく琴線に触れてしまい、盛り上がって原作を買い、映画も二度目の視聴です。……当時りぼんっ子だったくせに矢沢作品は幼い自分には取っ付きづらく、ほとんど読んでいなかったので、多分パラキスが最初にきちんと読み通した矢沢あい作品です。映画、原作、映画という触れ方だったので、原作は原作、映画は映画のいいところが感じ取れていい見方をしたと思いました。
連載当時女の子がときめいていたものを、現代で映像にしたらこういう風に撮るのかーというきらびやかで鮮やかな画面と、キャラクター。他の作品に関わるところはだいぶと削除されており、私はそれが原作で好きだったのですが、映画は取っ付きやすくなっていて面白かった。ただ、男をいい感じに踏み台にするモデル出身の早坂紫という人の物語がすごく面白かったので、映画はちょっと安易かな……と思ったりしました。それから原作は、美和子、嵐、徳森くんというただではいかない幼馴染み関係と、紫とジョージの対比、そしてオチのつけかたが面白かったので……。
映画は、ちょっと歳食ってるキャストだなと思ったのですが、紫がやっぱりモデルとして輝いているのが感じ取れて素敵でした。室内の様子や、色味なんかも綺麗。漫画のゴージャスな洋服はちょっとおとなしめになっていましたが、役者さんたちに似合うのがもう楽しくて。人生に迷う高校三年生が、未来に向けて大きく踏み出し成功する、その最初の話としてとても面白かったです。こういうものが好き! って思うちょろい自分がちょっといやだなーと思ったくらいでした笑
いよいよ始まった〈戦国学園祭〉。泉水子たち執行部は黒子の衣装で裏方に回る。一番の見せ場である八王子城攻めに見立てた合戦ゲーム中、高柳たちが仕掛けた罠に自分がはまってしまったことに気づいた泉水子は、怒りが抑えられなくなる。それは、もう誰にも止めることは出来ない事態となって……。
ついに動き出した泉水子の運命、それは人類のどんな未来へ繋がっているのか!?(カバー折り返しより)
アニメの最後の部分に当たる、戦国学園祭の当日と終わり。真響、真夏、真澄の三つ子の関係性がより複雑であることが読み取れる原作。アニメでは結構唐突に思えた真響から深行への申し出も、前の巻からの流れを含めるとより自然で、やっぱりアニメは話数が足りなかった(でもうまくまとめたなあ……)という気がします。この五巻の重要なシーンは、アニメだからこそ響く声や音楽や美術背景などがあって、私はアニメの最終話がものすごい好きなのだ。ぼろぼろの綺麗な涙を流す女の子はいいものです。
深行がやっと頑ななところを解いて、「必要だって言えよ」ときた! しかし自発的なんじゃなく、真響の泉水子が深行の迷惑になるから付き合えないと言っていたと聞いたからだとするなら、本当に荻原作品のヒーローからとことん外れた現代っ子だなあと苦笑しました。最初からしっかりしていて器用なせいなのかな。ぼーっとしていたり若干不器用だったりする男の子に、主人公の女の子が手を引いてやるのが荻原作品には多い気がするので、だから正反対な二人は最初は噛み合ってくれなかったのか。
姫神がしばらく静かになっている分、泉水子の迷いや行動が物語の重要な部分にダイレクトに響いてしまい、ラストでは明確な未来の一手がさされたところで、幕。これで全六巻は、ちょっと短かったという気がしますが、最終巻を楽しみに読んでいきたいと思います。
荻原作品で出てくる「一生」とか「永遠」の言葉の重さって、すごいなと思う。荻原さんの書く一生ないは一生ないし、永遠に分からないことは分からない。