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アヤンナの美しい鳥 (メディアワークス文庫)
「僕のすべてが、君のものだ」
 わたしはアヤンナ。醜い娘。
「おまえのような娘を妻にする男はいないよ。市場で夫を買ってこなきゃなるまいね」
 亡き祖母はわたしに向かってよくこういったものだ。
 だからいまでもわたしは市場が大嫌い。家畜を買うように夫を買わなければ、だれも愛してくれないほど醜いといわれたことを思い出すから。
 けれど、魔女のわたしが見つけた美しいひとは、奴隷市場で出会った“彼”だった——。
 醜い魔女の娘と美しい奴隷の王子。瓦解する帝国の辺境で二人は数多の物語を紡ぐ。(裏表紙より)

インカ帝国を下敷きにした民族系ファンタジー、というのか。雷神の存在があり、魔女がいて、奴隷が売り買いされるワカの国。アイユと呼ばれる血族の共同体に、お荷物として一人暮らす少女、アヤンナ。顔の半分にやけどの跡を負い、祖母からは「市場で夫を買ってこなきゃ」と罵られるみにくい娘。そんなアヤンナが出会うことになった青年リリエンは、金髪碧眼、白い肌の、美しい異人の青年。辺境で潰されてしまうはずだったアヤンナの人生に、光が与えられる。そういう物語。
かたくなに、一人、誰にも手を伸べられず生きていかなければならない運命だったアヤンナと、一人で生きることを知らなかったリリエンの不和、理解、寄り添い合いがとても丁寧で、苦しくて優しくて、すごくいい物語でした。
上辺だけで優しい言葉をかけられるヒーロー、は確かにとても甘くて素敵なんですけれども、リリエンのように傷ついてみにくいものを抱えているがゆえに、ひたむきに言葉を、アヤンナの言うようにそんなことありえないというような言葉を用いて伝えようとする、リリエンのまっすぐさに感動する。傷ついている二人が一緒にいるところが、すごく素敵だ。
結末に向けてはちょっと急展開でしたが、ラストがとても満足でした。そう、この物語は、まだ神様の存在を語れる時代の話だった。
表紙も素敵だし、帯もすごく素敵で、書店で一目惚れしていつか絶対読もうと思っていたので、読めて本当によかった。私の嗅覚も鈍ってないな! と自賛する。
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