読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
レティシアは至って気楽に声を掛けた。
「よう、ニコラ。久しぶりじゃん」
はじかれたようにニコラが飛び上がった。悲鳴を上げなかったのが不思議なくらいの過剰反応だった。
ニコラがこれほど恐怖を覚え、緊張しているのには理由がある。レティシアは小柄で陽気で気さくな性格で、まさにどこにでもいる典型的な少年の一人だが、その正体は殺人鬼である。
「その……誰か紹介してもらえないかな。こういうことに慣れていて、秘密厳守でうまく処理してくれる人」
「ひょっとして俺を犯罪組織の構成員かなんかと勘違いしてねえ?」
ニコラの眼が丸くなる。「…違うの?」
連続猟奇殺人事件の犯人(!)だったニコラが、被害者(!?)だったレティにまことに大胆な頼み事を??」
クラッシュ・ブレイズ、これにて終幕。(裏表紙より)
二巻目の『スペシャリストの誇り』の関係者だったニコラ少年が、父親を助けてほしいとレティシアを尋ねてくる「レティシアの場合」。特に殺す理由がないから、暇つぶしに、と手を貸してくれるレティシアは本当に気まぐれだけど、いいやつだ。好青年を演技しているところがすごく好きなので、楽しく読みました。
もう一本は「ヴァンツァーの場合」。ヴァンツァーは、第二の人生を歩むようになってからどんどんやりたいこともやっているし、友達も出来て我がことのように嬉しいです。年上で尊敬できる女性が好きなヴァンツァーは、その娘であるビアンカと継母であるブリジットと親しくなる。二人とも、ヴァンツァーの美しさに大きな反応をせず、あるがままに受け入れてくれる。ビアンカはある特殊な事情からだけれど、最後のシーンを見るかぎり、いい友達になってくれるようだ。
さて、ゆっくり読んできたクラッシュ・ブレイズシリーズもこれでおしまい! 続刊は課外活動やトゥルークの海賊などがあるようですが、私は一旦ここまで。楽しかった!
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ケリーはのんびりと言い出した。「ダイアンも休暇を取るそうだ。ものすごい勢いですっ飛んでったぜ」
宇宙船においてきぼりにされる操縦者も珍しいが、こうしたことは初めてではないので、ジャスミンも落ち着き払ったものだった。
「では、ダイアナが戻ってくるまで島流しだな」
「気合いを入れて遊ぶとしようぜ」
惑星バラムンディのパールビーチ——白い砂浜と青い海、珊瑚礁が魅力の保養地での出来事である。
どこにでもいるただの人だ(と、本人たちは固く信じている)が目立つことこの上ない二人に、にぎやかで一方的な危ないお誘いが続々とかかる。
どうやら、この惑星のカジノ王の一人娘オディールが関係しているらしいのだが……(裏表紙より)
『逆転のクレヴァス』にて、ダイアナが置き去りにしていった「バカンス中の二人」パート。夫婦! 夫婦! 前半夫婦ばっかりですっごい楽しかった! 最強の人たらし夫婦が当然という顔をして過ごしているのが本当に好きだ。この二人、若返ってから更に生き生きとしている。後半から、クレヴァス後のリィとシェラも参加。宇宙最強の船乗りかっこいいいいいい。親子で飛べてよかったね!! というところもあり、楽しかったです。
「出撃なんて、実力試験みたいなもんじゃない?」敵弾が体を貫いた瞬間、キリヤ・ケイジは出撃前日に戻っていた。トーキョーのはるか南方、コトイウシと呼ばれる島の激戦区。寄せ集め部隊は敗北必至の激戦を繰り返す。出撃。戦死。出撃。戦死——死すら日常になる毎日。ループが百五十八回を数えたとき、煙たなびく戦場でケイジはひとりの女性と再会する……。期待の新鋭が放つ、切なく不思議なSFアクション。はたして、絶望的な戦況を覆し、まだ見ぬ明日へ脱出することはできるのか!?(裏表紙より)
ミリタリとSF。ループもの。という前情報で読むことに。
人類の敵ギタイによる襲撃を受けているその世界。やつらは「溺死した蛙」の姿を持っている。最貧国や技術を持たない国々は制圧、後に砂漠化。日本は偶然、辛うじて助かっているに過ぎない。日本が落とされれば軍の技術が低下するため、防衛は必至。そして、主人公のキリヤ・ケイジは死ぬ。
一人称視点で進み、一人称が「ぼく」なので、ループを繰り返すごとに段々とすれてきて疲弊していく感じがとてもいい。ループの原因がそれだというのはまあまあ納得がいった瞬間、オチが見えてしまい嫌な予感を抱きつつ、ラスト。やっぱりそれか! もっと救いが欲しかった! と思いながらも、キリヤは本当のループに巻き込まれたのかもしれないと思いました。戦い続ける、終わらない、孤独な戦いの日々。
たったひとつの願いを、少女は胸に抱いている——。
騎士ダニエル・フォーネッカーと旅を続けて一年半、訪れたウェイミス王国でミオーニはダニエルの盟友ラドリと出会った。そして、その青年によってミオーニが示唆されたのは、二人でいることがダニエルの騎士としての名誉を汚す可能性だった。ひとり思い悩むミオーニ。そしてダニエルと心がすれ違ったまま、王国の政治闘争にお互いが思わぬ形で巻き込まれた時……。
「瑠璃色の夜、金の朝」のほか、書き下ろし「薄荷色の貴婦人」を収録。ガールズ・ファンタジック・ロマン完結篇!!(裏表紙より)
よく噛んで食べるんだぞ、と浮浪児だったミオーニに優しい言葉をかけてくれた、美しくて強い金色の騎士ダニエルとの旅。ミオーニは少年に間違えられるほどの幼い容姿、ダニエルも彼女を子ども扱いして、時々女の子であることを忘れている風だ……という拾われ少女と騎士の物語、完結巻。
ミオーニはダニエルと一緒にいたいという気持ちが強くて、恋人同士という雰囲気ではなさそうな気がしていたんですが、一年半の間に「女の子扱いされたい」という気持ちが強まったようです。あんまりじたばたする様子はないのですが、一緒にいたい、離れたくないという気持ちは強くなっている。そして、ダニエルはついに、手放したくない、と思う。きゃー! と叫んでしまいました。でもやっぱりどうも保護者な感じが。いつか他の人を選んだら仕方がない、と思っている様子でしたが、もうちょっとその辺りの葛藤を詳しく! お願いします! と思ったけれどこれでおしまいなのだった。うー続き読みたい。ロマンスで!
“日本一おもろい旅人OL”てるこのルーツ、ここにあり! 50歳を過ぎて、腹話術師になったおかんとの爆笑バトル。石仏の如く動じないおとん。「ガンジス河でバタフライ」の前に泳いだ元祖は淀川だった! ハチャメチャで痛快な、抱腹絶倒の日常エッセイ第一弾。〈『お先、真っ白』に新作エッセイを加え、改題〉(裏表紙より)
関西弁満載なエッセイ。破天荒なおかんと石仏のようなおとんと、たかのさんのやり取りが、こんなの本当にあるの? というおかしいやり取り。大阪のおかんの無茶苦茶さは知っているつもりだったけれど、これはちょっと迷惑レベルでは! なんて思いながらも楽しく読みました。おかんの無謀さに恥ずかしい思いをする時期って、あるよね……。
友人たちのキャラもすごく、特にいい間違いはすごい。コントでしか見ないよ!
かと思えば、青春時代のきらめきと静かな影の出来事を書いていたりして、しんみりもする。
食事だと言われて居間へ移ったリィは、その瞬間、顔をしかめた。
部屋中に強烈な甘い匂いが漂っている。ドーナツ、デニッシュ、パイ、マフィン。数種類のケーキ。トーストの類もあるが、用意されているのはピーナツバターやジャムなど、見事に甘いものばかりだ。さらにスナック菓子や炭酸飲料が並んでいる。
男は髭もじゃの顔で笑っている。
「おいしそうだろう。きみの好きそうなものばかり用意させたんだ」
「ヴィッキー?」と声をかけられて振り向くと、銃口が突きつけられた。だが怪しい風体の男からは、敵意も害意も感じられなかった。「頼むから一緒に来てくれ」と言う口調には、困惑した様子がうかがえた——
これが、この奇妙この上ない誘拐劇の発端である。(裏表紙より)
怪獣夫婦から離れて、天使組の話。「追憶のカレン」に関わったある少女との約束を果たすため、シェラとリィは、ルウを保護者にしてその場所を訪れていた。リィが離れたところで、声をかけられるも、銃口を突きつけた男からは敵意を感じない。興味を引かれてついていったリィ。この誘拐劇はいったいなんだ? という、今回は常識人がなかなか出て来ず、むしろリィとシェラが振り回されたりもするので、大変。しかも専門的な話は二人ともからきし、なせいで余計に話がこんがらがってくる。
しかし、登場するヴィッキー少年はなんだかいい感じに友達になれそうで、ちょっとほんわか。リィもシェラもこういう子には好感を持ってくれるので、ちょっとわくわくしました。普通の子がもっと二人に絡めばいいのになー。学校のみんなは、二人のことちょっと特別視してるから。
人はあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。(本文より)
——西洋との本質的な総意に眼を配り、かげや隅の内に日本的な美の本質を見る。(裏表紙より)
日常にある、日本的な陰翳と明るさを西洋のものと比較した随筆。昭和初期から半ばくらいにかけてのものなので、西洋に傾きつつある日本、開発されていく日本の町の風景が覗く。
最初の「陰翳礼讃」の章がすごくて! そうそう、そうなんだよ! と頷くことしきり。読んでいて思い出したのは、自分の塗り物に関する記憶。私は、塗り物があんまり好きでなくて、どうしてこうぎらぎら光を跳ね返すものがもてはやされるんだろう? と思っていたのですが、多分蛍光灯の下で見ているせいでしょうね。元々、蝋燭や灯籠の側で見るものだから、もっとしっとりと影に触れるようなものであると思うのです。建物や内部の濡れたような黒さや、灯りに照らされる闇という言葉。そういうものを知っている人がいるんだ! と思いました。
東京、下町の老舗古書店「東京バンドワゴン」を営む堀田家は、今は珍しき四世代の大家族。店には色々な古本が持ち込まれ、堀田家の面々はまたしても、ご近所さんともども謎の事件に巻き込まれる。ページが増える百物語の和とじ本に、店の前に置き去りにされた捨て猫ならぬ猫の本。そして、いつもふらふらとしている我南人にも、ある変化が……。ますます賑やかになった大人気シリーズ、第5弾!(裏表紙より)
東京下町の古書店の大家族物語。どんどん子どもたちが大きくなるのでほわーっと思う。時が流れていくのが、優しくて、でも時々寂しくて、いなくなる人もいるのかなあ……と遠くに思ったりする。今回はある人物の病気にも関わってきます。
「秋 さよなら三角また会う日まで」の花陽まわりのエピソードが可愛い! 本の謎と、双子の男の子。じっくり見てみたいなあと思いましたが、家族のエピソードが中心なので……。そして、研人の成長ぶり! この子は将来いい男になるぞー。
ハリウッドで若手カメラマン、ジャックのアシスタントになったベッキー・リンは、やがて彼に恋するようになる。しかしジャックには、父親でファッション写真界の巨匠ジョヴァンニ・トリアーニと異母兄カルロを見返すという野望があった。彼女を襲う新たな裏切り……。美貌と才能を開花させ、瞬く間にスーパーモデルへの階段を駆けのぼったベッキー・リンは、真実の愛をつかめるのか。心を揺さぶるドラマティックなノンストップ・エンターテイメント。(裏表紙より)
面白かったー! ドラマティックで、サクセスストーリーでもあり、ロマンスでもある。様々な裏切りやすれ違いがあって、とても面白かったです。特にベッキー・リンの成功は面白かった! 思ったところとは違う形でも実現して、おおっと思いました。
ジャックのアシスタントになったベッキー・リンは、ある出来事から彼に過去を告白し、彼に愛され、それ以上のものを望むようになる。けれど、父親への復讐に取り憑かれた他を顧みないジャックはベッキー・リンを遠ざけようとする……。作中では公然と枕営業が当然だという話をしているんですが、それでもベッキー・リンの境遇がそれを真っ向から否定してくれる。そして彼女は成功する。
様々な親と子の関係も描かれており、最後にベッキー・リンが対峙するのはそれなのですが、彼女はきっとうまくいく、という確信めいたものを感じます。強くなったヒロインに拍手をしたい。
兄の友人たちにレイプされ、絶望のどん底で故郷の町を出たベッキー・リン。行くあてのない彼女は、雑誌の中でいつも輝いていた憧れのハリウッドへ向かった。そしてひとりのカメラマンとの出会いが、16歳の貧しい少女を宿命的な愛憎劇の渦中へ巻き込んでいく……。運命にもてあそばれながらも夢と真実の愛を追いつづける少女を描いたドラマティック・ラブストーリー。待望の文庫化。(裏表紙より)
私が読んだのは前の版。
貧乏な白人のくず、である少女ベッキー・リン。そのせいで誰も信頼できる人はいない孤独な日々。父親はアル中で暴力をふるい、母親は父に怯え娘を見ない。兄は学校の花形生徒の言いなりになって、妹がレイプされるのを見逃した。あまりにも過酷な生い立ちと始まり。最初の辺りはきりきりと「暴力をふるうやつはみんな」と怒りに震えながら読みました。絶対起こりえない、と言えないのが悲しい。
物語はもう一つの視点、カメラマンのジャックのパートを備えている。有名カメラマンいわゆる『大先生』ジョヴァンニの私生児。認められない子どもであるジャック。才能を確信しながら、父親と異母兄を見返してやろうと、カメラの世界へ。そんなジャックとベッキー・リンの出会いによって物語が動いていく感覚がとても気持ちいい。ヒーローがヒロインに「なんか気になる子だな」と考え始めるところはハーレクイン系の定番ですね!笑 けれど、ベッキー・リンの方に男性恐怖症があるのでうまくいきそうにない……と思ったところで気になる一文での引き!