読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

小学4年生になっても、ぬいぐるみの「くますけ」と片時も離れられない成美は、交通事故で突然両親を亡くして、ママの親友の裕子さんに引き取られた。裕子さんはとても優しい人だけれど、成美には誰にも言えない秘密があるから、くますけ以外を信じることができない……。正常と異常、現実と非現実の境界にある閉ざされた少女の心の内面をモダン・ホラーの手法で描く異色の長編。(裏表紙より)
ぬいぐるみの「くますけ」と意思疎通が出来る10歳の成美。ぬいぐるみを抱えて幼いと思いきや、考え方が非常に大人びていて、異常と言われるほど。
両親の死に負い目を感じ、引き取ってくれた裕子さんとその旦那さんに気兼ねして、という少女の葛藤も描かれ、ホラーなんですが、最後はほっこり終わってくれそうで……。
と思っていたら……! ぬいぐるみって恐いと思う終わり方でした。幸せを望むが故の狂気。ぬいぐるみと女の子の絆は時に恐ろしい。
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法皇に呼ばれ、聖都へとやってきた〈黎明の使者団〉一行。姫総長シーカに夜這いをした上に断られてしまった団長ハルは、少々落ちつかない。そしてついに謁見の日がやってきた。しかし、現れた法皇は偽物。それは、ミトラーダ勢力の増長を恐れた枢機卿の企みだった。改めて法皇から内密の会見の場を設けられた使者団だったが、その最中、法皇暗殺未遂事件が! 容疑は使者団に向けられてしまい!?(裏表紙より)
最後の戦いへの序章、みたいな感じ。
シーカの願いがようやく口にされて、安堵すると共に不安に思う。消えてしまいそうだーとか。
謎の襲撃でばらばらにされてしまった使者団。シラスの過去が明らかになりますが、彼の理由が明らかになってもなんか、みんなに文句を言われたり小突かれたり、でも笑い飛ばされそうな雰囲気が漂っていて、寂しいと共にちょっとだけ温かくなった。多分、いい終わり方をするんじゃないかなと。
収録されている短編は、やっぱり笑いました。そういえば樹川さんだっけ、B級映画が好きでキラートマトとかなんとかいう映画の話を、楽魔女かなにかのあとがきでしていたような? だからトマトなんだろうか。
ラストに数年後〜と書かれていますが、使者団がそれだけ長い旅をしているのか、それともすべてが終わった数年後なのか、気になるところです。

精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者/サイコセラピスト。だが、彼女にはもうひとつの秘密の顔があった。他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢探偵パプリカ。人格の破壊も可能なほど強力な最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」をめぐる争奪戦が刻一刻とテンションを増し、現実と夢が極限まで交錯したその瞬間、物語世界は驚愕の未体験ゾーンに突入する!(裏表紙より)
頭の中がえらいことになりました。どこからが現実でどこからが夢なのか段々分からなくなっていく後半で、ラストがラストなので、え!? と叫びました。
作中で、美貌の女性である敦子(パプリカ)は様々な男性から愛を寄せられるわけですが、やっぱりこれって男性の妄想の具現化だよなあと思うなど。あとがきにもありましたが、知性的な女性もいいけどキュートな少女もいいなという感じだなというのは結構感じました。
前半、中盤、後半と分かれている感じ。前半は夢探偵パプリカの活躍、中盤はDCミニを巡る争奪戦、後半は夢と現実にカオス感がすごかった。
今敏監督の「パプリカ」がまた見てみたいなーと思いました。よくこれを映像化できたなあ。
10/4「ころころろ」
10/7「ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺〈2〉」
10/8「鳥籠荘の今日も眠たい住人たち〈1〉」
10/8「図解雑学 手相」
10/10「氷菓」
10/11「鷺と雪」
10/12「星間商事株式会社社史編纂室」
10/16「パプリカ」
10/16「児玉清の「あの作家に会いたい」」
10/18「グランドマスター!折れた聖杖」
10/18「くますけと一緒に」
10/26「お菓子手帖」
10/27「真紅の式使い幻影の帝、寵愛の君」
10/28「宵山万華鏡」

幸代が出世コースから外れて飛ばされたのは、六十年の節目に間に合わなかった社史を作る社史編纂室。姿の見えない幽霊部長。やる気がなく頼りない課長。同僚の矢田とみっこちゃんはなんでも話を下に振る。そして幸代は、ひっそりとBL小説を書いて同人活動をしているオタク。ある事件(とても重要!)をきっかけに、編纂室メンバーでが社史の作成の他に手を出したのは、同人誌だった。
同人誌を作る話、というのを聞いていたので「どうするの!?」とか思ってたら見つけたので読んでみました。まごうことなき同人誌を作る話でした。
作中作とか、会社でコピー本の印刷とか、スパコミ、夏冬コミの話、創作にかける意欲、とってもオタクには覚えがありすぎていやーんでした。笑いましたが! うっかり主人公が同人者だからか、イベントの描写がリアルでとても楽しかったです。それに合わせて、サークル活動の大変さもあって。恋人との関係や結婚と、オタクの両立についてっていうのは、オタク女子にとってはきっと永遠のテーマになるんだろうなあと。
物語自体は、会社の歴史の穴にある陰謀を巡る話なのだけれど、なんだかこの人たちとても楽しそうだな……と思うくらいの明るさでした。結局どうなったのかが気になるんですが、まあいっか! 大丈夫大丈夫! という気分。読んでいて気持ちよかったです。ラストもよかった! ドラマになったらいいのにーとか思うけど、オタクの生態を面白可笑しく書かれるのは嫌だなあと思う。しをんさんの小説はそんなことは全然なくて、リアルで楽しかったです。

ベッキーさんシリーズ第3巻。昭和十年六月から翌年二月までの三つの短編を収録。子爵の神隠し事件を描く「不在の父」。小学生が深夜出歩いた理由の謎「獅子と地下鉄」。鷺の面で踊る能を見たあの日のこと、そして雪の降る日の記憶「鷺と雪」。
とてもしっとりとした素敵な文章でした。しんしんと降り積もるような。
英子の物事を確かに捉える視線がとても好き。周囲の移り変わりに、心動かされるのもとても少女らしい。優しいことばかりに満ちていないし、特に「鷺と雪」ではちょっとした悪意(それをいたずらという)が描かれているのだけれど、やっぱり心静かに読みたくなる本だなあと。
「鷺と雪」の奇蹟は、北村薫さんらしくてはっとした。
「いえ、別宮には何も出来ないのです——と」
「…………」
「(略)何事も——お出来になるのは、お嬢様なのです。明日の日を生きるお嬢様方なのです」
このシーンの前に、年齢を重ねた人の言葉を英子が否定して、ベッキーさんがやんわり諌めるというシーンがあるから、余計にぐっときた。

いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実——。何事にも積極的に関わろうとしない”省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ・登場!
期待の新星、清冽なデビュー作!!(裏表紙より)
ミステリ好きの方とお知り合いになって「米澤穂信いいよー」という話になった折り、古典部を読んだことがあるかどうかという話になって、読んだことないなあと思ったら実は本棚にささったまんまになっていた、という前振りがあって読みました。
米澤さんはもっとじっくり話を書かれるのではと思っていたので、導入があっさりでちょっとびっくりする。でも、すぐに入り込める感じはしたかもしれない。音楽で一緒だったか、と尋ねる奉太郎の台詞が、彼の推理力を表しているのだな。
日常ミステリは大好物なのでとても楽しかった。飄々とした探偵役の少年と、真面目な謎提供役の少女、情報屋の少年に、ムードメーカーの少女。灰色という言葉が度々使われるけれど、物語の色はそう灰色ではなくて、学校らしい埃っぽい陰影があるなと思いました。
楽しかった。

”ホテル・ウィリアムズチャイルドバード”、通称〈鳥籠荘〉には、普通の社会になじめない一風変わった人々が棲みついている。妄想癖の美女、ゴスロリ小学生、ネコの着ぐるみ、不気味な双子の老人、そして響き続ける正体不明の金切り声。そんな〈鳥籠荘〉の住人の一人・衛藤キズナが、5階に住むひきこもり美大生・浅井有生と知りあったのは16歳の冬。そして、誘われたバイトは、絵のヌードモデル。やってみることにしたキズナは、油絵具の匂いがこもる雑然としたアトリエで浅井と一緒に過ごすうち、その時間が自分にとって次第に大切な日常の一部になっていくのを感じて……。
〈鳥籠荘〉のちょっとおかしな住人たちの、ちょっとおかしな、けれどいろいろフツーの日常をつづる物語。(カバー折り返しより)
ずっと「ぼんやり明るい」印象の物語でした。
短編連作。キズナをメインに置いて、住人たちの日常を描いたお話。
きっと〈鳥籠荘〉はちょっと薄暗いところで、昼間はぼんやり明るくて、夜もぼんやり明かりが灯っていて、というのを想像していました。
ヌードモデルと画家、という設定も大変おいしい上に、一方でほとんど甘くなくてちょっとあったかくて、というのがとても心地よかった。関係は変わるのかなあとちょっとどきどきしていました。パパと華乃子の話がとても温かでしたが(ラストの脱ぎ捨てられたあれがとてもよかった……!)、キズナの話はどうなるのかなあと続きがとても読みたくなりました。