読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

罵倒に耐えて長年姑を介護してきた順子には、その死後も杖の音が聞こえたり、他に誰もいない家の階段で肩を掴まれたりし……(「火焔」)。死んだ姉を偏愛していた母親が他界。辛い思い出の募る実家を整理するため、ツルバラで覆われた、庭の小屋に入ると……(「茨姫」)。建物で怪異が起これば営繕屋・尾端が呼ばれ、家屋に宿る想いを掬いあげる。恐怖と郷愁を精緻に描いた至極のエンターテインメント全6篇収録。解説・漆原友紀(裏表紙より)
あるレストランの窓辺で手を招く女がいる。その女が招いているのは……「待ち伏せの岩」。
姑の介護を終えたはずが、まるでいまも生活をしているかのような物音がする「火焔」。
手作りのドールハウスを作る度にお焚き上げしてもらっていたが、ある日、そのドールハウスの人形たちが次々に奇妙かつ惨たらしい動きをするようになり……「歪む家」。
薬箪笥のある納戸に女がいる。けれど見えるのは家の男だけ……そんな古い家を離れ、新居に妊娠中の妻と母と移り住んだが、その女が妻に危害を加えるようになり……「誰が袖」。
海に沈む死者が居場所を知らせにやってくる、それを知らせるのがかつての家業。だがいまは……近隣住民から白い目で見られながら家を手入れもできず暮らす女性の話「骸の浜」。
母が亡くなり、実家に戻ることになった。蔑ろにされた思い出を片付けるように家の整理を始め、そうして母に偏愛されていた姉が自死した小屋で見たものは「茨姫」。
最初の頃はわりと、その後どうなったかを描かれていたように思うんですが、この三巻目は家を直すことになった、おしまい、という終わり方が多いですね。
どこかでこういうことがありそうという嫁姑と介護問題にも関わる「火焔」と、もしかしたらこういうことがあるかもしれないという拝み屋の家と近隣住民の現代の関わり方を描く「骸の浜」が一冊に収録されているのが面白いなあ。「骸の浜」は本当にきつくって、住む場所を整えることもできないのか……とすごく辛かった。
どれも本当に面白かったです。単行本で4巻が出たはずなので早く読もう。
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「ごめん、愛してる。どうか幸せになって」
魔王と戦い、フローライトを助けたことで、カーネリアンは死んでしまった。
私が弱かったから──そう後悔しながら後を追ったフローライトは彼と婚約したばかりの十歳に戻っていた。
今度こそ彼を死なせない、戦わせないとフローライトは誓う。
愛を深めながらも、恐ろしい未来を変えたいフローライトと「私も君を守りたい」と言うカーネリアンは度々衝突。
まだ力が足りない。焦るフローライトの前に魔王が現れたかと思うと!?
お互いしか見えない二人の最強愛の行方は──?(裏表紙より)
上記内容紹介がオチだけ書いてないほぼ本文という、やり直しもの。
今度は愛する人を死なせないと、魔王にさらわれることのないように戦う術を身につけたら、学園生活を送ることになるなど前回とまったく違う人生になっていき、最終的に魔王すらも退けてハッピーエンド。
話が終わっているはずなのに全体的にさらーっと表面をなぞっているような印象の物語なのは、大きな起伏がないからなのかなあ。カーネリアンがフローライトに隠れて最強化しているのはすぐ予想がつくので、もうちょっとやり直しものらしい必死さが欲しかった。

ゾンビウイルスが蔓延した世界で生き残り、偶然出会って、力を合わせて生き延びてきたコロンバス、タラハシー、ウィチタとリトルロックの四人。それから十年が経ち、それぞれの関係も変わりつつあった。コロンバスはウィチタにプロポーズするも受け入れてもらえず、リトルロックには彼氏ができ、そんな彼女を追いかけて生き残りのいる街へ向かうことになる一行だが……?
「ゾンビランド」の続編。引き続きおバカ系ゾンビ映画で楽しかった。
ゾンビ世界でホワイトハウスに住んでるっていいよなあ笑 四人が本当に擬似家族的に暮らしていたらしいのが微笑ましい。タラハシーがリトルロックに対して完全にお父さんなのが笑う。彼氏ができたで大暴れするタラハシーを眺めている二人よ……。
こうやって生き残り続けるんだろうな、と思わせるラストでよかったです。
あとまたビル・マーレイを使うんかい!笑 おまけ映像もよかった。

幼女の中で目覚めた現代日本人のチヒロは「金色の王」として、蜜蜂のクイーン・メルダの助けを借りつつ、家族たちと今日も元気に毎日を送っている。そんなチヒロが次に遭遇したのは、米! 醤油! 味噌! どうして懐かしいあの味が? キルファン帝国とは? そんなチヒロたちの前に、異世界転移者が現れ……。
幼女になった元現代日本人が知識と能力で異世界を快適に生きるためにやりたい放題するファンタジー。
この世界にはちょっと特殊な領域があって、また違った理でもって異世界人が関わっていて……と複雑な設定が明らかに。しかし異世界転移者と協力体制じゃなく敵対というかお説教対象になったのはちょっと残念だったなあ。まあ帝国の設定を思えば不可能か。
しかしこの第2巻、チヒロの奇声が読んでいてめちゃくちゃ辛かった。「にょ」「にょん」って中身がアラサーの現代日本人女性が言ってるんだよね……というのと、お説教モードのときに一人称「アタシ」で達者な喋り方をするんだからつまりわざと口調を変えているってことだよね? と思ってしまって。それこそ見た目は子ども頭脳は大人な名探偵のように、わざとそう言ってます的な描写があったらまた違ったのかもしれないけれど、あの語尾はきつい。

城の片隅で命を落とそうとしていた幼子として目覚めた日本人の千尋。これって異世界転生? このままでは死んでしまうと、なんとか動き出すと……料理人が養父になったり、王弟殿下と繋がりができたり、実はこの幼子はただものではなかったりと色々あるけれど、現代日本人の知識でもって美味しいごはんと優しい人たちと異世界を駆け回る!
現代日本人女性が3歳程度の幼女に転生(憑依っぽいかな?)して、周囲に可愛がられながら、ただものではない子どもムーブをしつつ、魔物を従えたり、王族にすらも頭を下げさせたりする、王道転生もの。
冒頭こそハードモードですがあっさり乗り越えて、みんなに愛されまくり書いているとなんかこう、こういうのがみんなの理想なのか……となんとも言えない気持ちになる。面白いんですけれどね!

動物たちの王国プライド・ランドの王ムファサの息子シンバ。まだ幼く、物を知らないシンバは叔父スカーに陥れられ、父を喪い、プライド・ランドを逃亡する。遠く離れた土地で行き倒れたシンバは、ティモンとプンバァに助けられ、励まされながら立派な若者に成長する。そうしてある日助けを求めて彷徨っていた幼馴染みで婚約者のナラと再会し、荒れ果てた故郷のことを聞く。ナラは言う、王はあなただ、と。
実写と言っていいのかわかりませんが、二次元的アニメじゃない映像になった「ライオン・キング」です。
本物の動物として描いてあるのですが、びっくりしたのがスカーの痩せ具合。アニメだとわかりにくいですが、そうだよなあ、実際こういう感じで衰えるよな……と思ったのでした。
ムファサの父親としての言動、スカーに対して甘いところ、シンバ(大人になりたいと背伸びしたがる子ども)の気持ちをもう理解できないところが、この歳になって見ると胸が痛くてな……。
「Can You Feel the Love Tonight」のシーンはアニメでも好きなんですが、こちらも楽園のような豊かな土地の描写もあってとてもよかった。

十二支族を統べるゼインクロウ帝国の王、ヨルハに見染められ、隣国に嫁ぐこととなった伯爵令嬢のユフィリア。
ヨルハからの溺愛を一身に受けながら、結婚式の準備を頑張るユフィリアだったが、ある日たまたま錬金術で発明した『毛がふわふわに伸びる育毛剤』が獣人の中でまさかの大ヒット! 卯の一族の族長から、どうしても譲ってもらいたいと訴えられて!?
一方その頃、ユフィリアの家族たちが帝国に乗り込み、さらに国内のユフィリア反対派の動きも活発になってきて……。
「すごいなぁ、ユフィは。……俺も、頑張らなくちゃね」
今日も絶対強者は獰猛に嘲笑う——!
最強の嫁入りシンデレラストーリー、モフモフもトラブルも盛りだくさんの第二巻!(裏表紙より)
両思いになってさあ結婚式だ! という第二巻。ユフィリアが本当に家族と決着し、ヨルハも反対派を処分するという血生臭さが漂う溺愛ぶりは健在で、次巻の伏線的なものもちらちら見えます。どうあっても破談にならない(ユフィリアの意思がなければ)のは読んでいて安心。
楽しい作品ではあるんですが、世界観を壊す現代語や単語がちょっとなあ……とどうしても思ってしまう。スパダリって……わかりやすくはあるし笑ってほしいと思っての表現だと思うんですが、略していないならともかく略語を使うのはちょっと。そういう表現が多用されていて、さらに今回は誤字も多く、気になる部分が多い一冊でした。

雪海に沈んだ世界で、人類が軌道樹と限りある水を求めて争う時代。文字を読める少年・カイナとアトランド王女・リリハは、人々の求める水源の在処となる大軌道樹へと向かっていた。大軌道樹に建国された独裁国家プラナトはリリハやカイナのように精霊を見る者を欲していた。すべては人類を救うために、と告げるプラナト指導者・ビョウザンの狙いは……。
本編後の話にして、完結編。
人々を救うために旅立った先でついに目指していたものを見つけたものの、身勝手な人の欲が世界を滅ぼすことに。
最後まで見て、大地を持たない人々が主人公となる「天空の城ラピュタ」や「風の谷のナウシカ」のような作品だなあと思いました。そういうの大好きだよー!!!
後世に願いを託した人々と、その思いが失われたこと、途切れかけたそれを正しい意味がわからなくてもなんとか繋ぎ合わせたカイナたちが掴んだ未来は本当に素晴らしくって、あの「完了」の台詞は本当にぞくぞくしました。
誰もカイナをそうとは呼ばないけれど、きっと彼らが歴史に語られるときには賢者と呼ばれているんだろうな。とてもよい完結編でした。

それは雄英高校ヒーロー科の面々がインターン中だったときのこと。個性保持者の殲滅を目論む組織・ヒューマライズの爆弾の回収を行うため、生徒たちはそれぞれのインターン先の先輩ヒーローたちとともに世界各国に散っていた。デク、爆豪、轟の三人はオセオン国で活動していたが、デクは運び屋の少年・ロディを助けたことから指名手配されてしまう。
インターン中なのでいつものようにクラス全員で、というエピソードではなく、デク、爆豪、轟の三人がヒーロー活動するところがメイン。
ヒーローの卵になりつつある彼らがいま育てている信念をもって、それぞれの場所でそれぞれの役割を果たして戦う、まさに「インターン」的な、卒業後にばらばらになりながらもヒーロー活動を行うだろうみんなのことが想像できる作品だったように思います。
ロディの変化なんかまさにそうで、自分にとっての本物のヒーローに出会ったときに人生は変わる。そういう影響力を持ったのがヒーローだと思うので、本編中もそうですが、デクは本物のヒーローなんだなあとしみじみ思いました。
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