読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

僕が使者だと打ち明けようか——。死者との面会を叶える役目を祖母から受け継いで七年目。渋谷歩美は会社員として働きながら、使者の務めも続けていた。「代理」で頼みに来た若手俳優、歴史の資料でしか接したことのない相手を指名する元教員、亡くした娘を思う二人の母親。切実な思いを抱える依頼人に応える歩美だったが、初めての迷いが訪れて……。心揺さぶるベストセラー、待望の続編!(裏表紙より)
死者との面会を叶える使者「ツナグ」。若くして祖母の役目を引き継いだ歩美はもう社会人。生者と死者を引き合わせる歩美だが、彼もまた迷っていた。
第1巻にあたる「ツナグ」は死者との再会を望む生者のミステリーも含んでいましたが、この続巻は人と人の繋がりの方を重視して描いている印象。「ご縁」で繋がる依頼は確かに生きている人たちに必要なものだったと実感するエピソードが多かった。
「歴史学者の心得」「母の心得」が特に好き。
「歴史学者の心得」は生きているうちはたった一度のはずの死者との面会に、直接関わりのない遥か過去の人物を指名した人物の話。未来の人物に「あなたに会って、過去のことを聞きたい」と言われたら、死んでなお自分の人生に意味があったと実感できるんだろうなと思うと、ぐっときてしまった。
「母の心得」は母と娘二組の話。それぞれ違う後悔を抱えている世代の違う母親が、ほんのひととき邂逅する瞬間がとてもよかった。
PR

マンガ家デビュー後、上京時に待っていた「缶詰」という極限状況。のちに「大泉サロン」と呼ばれる東京都練馬区大泉のアパートで「マンガで革命を起こす!」と仲間と語り合った日々。当時はタブーだった少年同士の恋愛を描ききり、現在のBLの礎を築く名作『風と木の詩』執筆秘話。そして大学学長として学生たちに教えてきた、クリエイターが大切にすべきこととは。『ファラオの墓』『地球へ…』などベストセラーを連発し、少女マンガの黎明期を第一線のマンガ家として駆け抜けた竹宮惠子が、「創作するということ」を余すことなく語った大ヒット自伝、ついに文庫化!(裏表紙より)
再読。初めて読んだとき「創作者として身につまされることばかり書いてあって、読んでいて苦しかった……。」「空回りしている感じとか、焦りばかり募るとか、才能のある人を前にしてもやもやしてしまったりとか」と感想をつけてあるんですが、今回は苦しいというより、そこで何もかも嫌になって投げ出さなかったことやむしろ失うまいとしがみついたことに思いを馳せました。そこまでして本当に欲しいものは手に入ったんだろうか、いまもまだ苦しいけれどなんとか折り合いをつけているんじゃないかな、って。才能や創作の世界で生き続けるってそういうことなのか。

ずっと一人ぼっちだった。黒狼王(あなた)に、出会うまでは。
妾腹ということで王妃らに虐げられて育ってきたゼルスの王女エデルは、戦に負けた代償として義姉の身代わりで戦勝国へ嫁ぐことに。相手は「黒狼王」と渾名されるオルティウス。野獣のような体で闘うことしか能がないと噂の蛮族の王。しかし結婚の儀の日にエデルが対面したのは、瞳に理知的な光を宿す黒髪長身の美しい青年で――。
やがて、二人の邂逅は王国の存続を揺るがす事態に発展するのだった……。激動の運命に翻弄される、波瀾万丈のシンデレラロマンス!(裏表紙より)
妾腹の王女として長らく虐げられてきたエデル。王妃には誰も逆えず、父王は見て見ぬふり。敗戦の代償として王女を、と求められ、嫌がった姉の名前を名乗って結婚する。結婚してもなおエデルにつきまとう憎悪を断ち切ってくれたのは、蛮族と蔑まされている王だった。
結婚した先でもいじめられる、その壮絶さ。文化や価値観が違うと嫁ぎ先でもやられてしまうのか……。しかも最後までそれが尾を引くという。
どこまでもか弱いエデルなので今後どう王妃らしくたくましくなっていくのか想像がつかない。オルティウスがすでにめちゃくちゃ甘いので、是非とも彼を翻弄していただきたいな!

親から召使として扱われているマリーの誕生日パーティー、主役は……誰からも愛されるマリーの姉・アナスタジアだった。パーティーを抜け出したマリーは、偶然にも輝く緑色の瞳をしたキュロス伯爵と出会う。2人は楽しい時間を過ごすも、自分の扱われ方を思い出したマリーは彼の前から逃げ出してしまう。そんな誕生日からしばらくし、姉とキュロス伯爵の結婚が決まったのだが、贈られてきた服はどう見てもマリーのサイズで――!?「小説家になろう」発、勘違いから始まったマリーと姉の婚約者キュロスの大人気あまあまシンデレラストーリー!(Amazonより)
小柄で愛らしい姉アナスタジアと比較され、長身で知識欲と好奇心の強いマリーは両親に虐げられて使用人のような日々を送っていた。自身の誕生会を姉の結婚相手を見繕うために父母に利用され、姉は結婚が決まる。しかし姉は事故死、マリーは両親によって姉の婚約者キュロス伯爵のもとへ送り出されるも、実は彼が本当に結婚したかったのはマリーの方で……というシンデレラストーリー。
……なんですが、物語は1巻で終わりません。両親は何故マリーだけをひどく扱ったのか。キュロスたちは何を調べようとしているのか。ここまで来るとアナスタジアの事故って偽装じゃないのかと読者的には疑ってしまうんですが、1巻はマリーが恋心に向き合いつつ、キュロスに大事にされようとしていることを受け止めるまでです。続きが気になるー!

宝塚歌劇団の“とある場所”に貼られていた「ブスの25箇条」。「清く、正しく、美しく」の教えが「男性にも参考になる」「就活で役立った」と大反響、現代人必読の一冊が待望の文庫版で登場! *本作品は2008年5月に小社より刊行された単行本『宝塚式「美人」養成講座――伝説の「ブスの25箇条」に学ぶ「きれい」へのレッスン』を文庫収録にあたり改題し、再編集したものです。(Amazonより)
宝塚歌劇団と宝塚音楽学校の厳しい諸々を交えつつ、人として美しいとはどんなことかをまとめたもの。
読むとどうしてもハラスメント事件のことが頭をよぎってしまうんですが、無茶苦茶な決まり事はともかく、挨拶をしたり、ありがとうと言ったりなど、人として当たり前のことが書いてある。
わかっていても実践できるかどうかは別ですが、それでも少し心がけるだけで自分も相手も気持ちがいいものなんですよね。

本当は2016年の出来事だった。元軍医のジョー・ワトソンがベイカー街221bに帰ると、同居人の半電脳探偵シャーリー・ホームズが珍しく慌てている。なんとジョーは9カ月前に結婚して、221bを出ていたというのだ。だが、ジョーには結婚の記憶がなく、現在を2015年と勘違いしていた。まもなく、覚えのない求婚をしたという〈クラブ・ボヘミア〉のオーナーが依頼人として221bを訪ねてくる。オーナーは、婚約以前に付き合っていた異性装着者のエイレネことアンドリュー・アドラーから脅迫を受けていた。オーナーとジョーの記憶欠落に伴う婚姻のケースは極似している。その原因を作っているのかもしれないエイレネは、ロンドン市内で、会員制のマッチング・キャンプを主催しているらしい。さっそくシャーリーは現地潜入を試みるが、その後、連絡が途絶えたまま221bで帰りを待つジョーに、とある結婚式の招待状が届く。それは、英国を揺るがす一大スキャンダルの端緒に過ぎなかった……大好評の登場人物全員性別逆転&現代版ホームズ・パスティーシュ第3弾。(カバーより)
百合ホームズ第三弾。原典でいうワトソンの結婚絡みのお話とアイリーン・アドラー登場のお話ですね。性別が変わっているのでここでは彼女は彼になっています。
このジョーの語り口がいいんだよねえ! 民族だのお国柄だのロンドンのあれこれがにじむ文章がとてもいい。これは取材しないと書けないよなあと思う。
ジョーの結婚というか離婚の話から、シャーリーとエイレネにはらはらさせられたりとか、どこで決着がつくのかわからなくてどきどきして楽しかった。最後の最後に彼女と彼女と彼でビーチにいるシーンがすごくよかったなあ。

僕、ダックスフントの"フンフン"。
春。わくわくの新しい季節。藍ちゃんもついに大学生……ってどうしたの藍ちゃん、なんか毛皮が爆発してるよ!!
片想いの相手、鴨井から動物園に行こうと誘いを受けた藍。これってデート?
はりきってパーマをかけてイメチェンを狙ったはいいが、失敗してボンバーヘッドになった藍。落ち込む藍に、心晴が知り合いの美容師を紹介してくれた。彼女は鴨井の実の妹、燿里だった。
藍は燿里から、鴨井家ではいまだにキャロルの死についてわだかまりがあることを聞く。鴨井が家族の猫だったキャロルを連れて就職してしまった上、ひとりで死なせてしまったことを下の妹、陽咲が怒っているというのだ。
キャロルの死の遠因である藍は動揺する。この関係、本当に進んでいいの……?
あと一歩が踏み込めない、両片想いの二人に本物の春は来るのか?(Amazonより)
拙者、くっつこうとしている二人に家族の話が絡むのが大好物侍。
そんなわけで最終巻、大学生になった藍と距離を縮めようとする鴨井ですが、キャロルのことや、大学デビューに失敗しかけたり、デートが上手くいかなかったり、真面目で一生懸命な二人は色々と苦戦。けれどフンフンやプー子の努力もあって、ついにおまけの十年後の話にたどり着くという、最後までほんわかと優しいお話でした。それでも動物と暮らす難しさだったりが、ごく自然と描写されているのがとてもいい。「暮らしている」って作品の雰囲気がすごく感じられて。

驚異的な力、奇跡の復活、無から有を生み出す能力、強力な幻、人の姿や運命まで変えてしまうほどの呪いなど、いろいろなパワーを秘めた魔法や魔法のアイテムを多数紹介した本です。神話や伝承、童話に登場する魔法や魔具を取り上げている一方で、陰陽術や錬金術など現実に存在した魔術も扱っています。この一冊を手に取って、人間の想像力が生み出した深奥なる世界へ踏み込んでみましょう。(Amazonより)
古今東西の驚異的な力、存在、道具などを逸話に絡めて紹介する一冊。
有名なあれそれってどういういわくがあるの? という入門ですが、あまり詳しくないインド神話やケルト神話のこともわかったし、そういえばそうだったと思い出した話もあって、読んでいて楽しかった。こういう本にのっている逸話にわくわくしたからいまがあるんだよなあ。
流れで覚えていることもあるので、道具ひとつだけピックアップして読めるのは勉強になったな。

まもりの妊娠が分かって、幸せいっぱいの葉二。同時に新居や出産など、やることは盛りだくさん。
ところが葉二は育休を取れないと判明——! 二人は里帰り出産と新居の準備を分担して乗り切ることを決める。
決意のもと、まもりは妊娠中も飲めるお茶や、葉二が収穫したての素材で作る天ぷらに元気をもらって、着々と準備を進めていく。
しかし新居のリフォーム案で波乱!? これじゃあ庭や書斎に声が届かなくて、葉二さんが熱中したら出てこなくなっちゃいます…‥!大幅なプラン変更で、準備は逼迫!?(裏表紙より)
ベランダ菜園でのおいしいご飯の話がとても軽やかで楽しいシリーズ。今回は就職、結婚と見届けた栗坂まもり改め亜潟まもりの出産と新居のお話です。
そんなばたばたせんでも……と思ったんですが、いやでも流れがきて一気にばたばたばたーっと決まることっていうのはあるもんなあ。家のことって特にそうだよなと思ったり。
保活の話が出て、あのきつい話になるのかと思ったんですが、考え方や発想の仕方がまもりと葉二らしくてちょっとほっとしました。保育園に関する現実は確かに厳しいけれど多分この話には似合わない、気がする。
作って食べる、も大事だけれど、暮らす場所を作ることも大事だとわかる「家」の話も交えた番外編、とても楽しかったです!

海外転勤となった両親と離れ、ライトノベル作家になるという夢を抱えたまま、高校入学と同時に一人暮らしをはじめた久坂縁。そんな彼が引っ越し当日に出会った美少女は、辞書と正しい日本語を愛しすぎる変人で!?(Amazonより)
海外を飛び回る母について外国で暮らしていた縁は、そこで出会った日本の漫画やアニメ、ライトノベルに傾倒し、心から愛するがゆえに、次の転勤を拒否して高校は寮生として通うことになる。そして同じ新入生に「言葉」を心から愛し、辞書を愛読する蒼井葉留がいた。そんな鳩居寮で暮らす個性豊かな生徒たちの、新学期が始まるまでの賑やかな日々と事件のお話。
ライトノベル作家になる、というところで、またこの手のやつなのかなあ? とぼんやり想像していたものとは違う方向に舵を切ってくれて、面白く読みました。葉留とのきっかけは未熟な原稿に、彼女が興味を抱いて無断に赤を入れたこと、というシーンはあるものの、この巻ではさほど作家になる話は掘り下げられず。ただただ縁が、未熟ながら小説を書くことを愛し、のめり込んでいることが伝わってきます。
事件解決や謎解きのきっかけが「日本語の使い方」になるのが面白いな。新学期が始まる前のことなので学校生活が見えないところも、非日常感が感じられて好きな雰囲気。
ところでこの本、2014年の発行なんですが、あとがきにあった竹岡さんが最近ご飯作りがブームになっている話。もしかして……と思ったら、その翌年に「おいしいベランダ。」シリーズが出ているんですね。なるほどなあ。