読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
仕事も恋も上手くいかないつき子は、ある晩、ガラクタばかりの骨董品屋に迷い込む。そこは古道具に秘められた”物語”を売る店だった。未亡人を未来へと導いた時刻表、母と娘の拗れた関係を解いたレース、居場所のない少女に特等席を与えた椅子……。人生の落し物を探して、今日も訳ありのお客が訪れる。つき子もまた、ある指輪を探していた。(Amazonより)
ガラクタばかりの骨董品店、ブロカントと呼ばれるものを売りながら品物に秘められた物語を語る店主。それはつき子とその周囲にとって、悩みや変化を解消しより良い道へと導くようなものとなっていく。
とはいえそれが大きく人や人生を変えるわけではないという塩梅がいいなと思います。つき子も天地も、新しい一歩を進めるようになっただけ、でもそれが本当に長らく待ち望んだ一歩だというのがいい。
作中で結構あるあるなのかな? と思ったのが、子どもの頃に友達に合わせて好きな人を作ったという一文。もしかしてみんな周りに合わせて好きな人? あの子かなみたいなこと言うの? と思って覚えがある身だけにちょっと嬉しかったのでした。
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かつてカルト集団として批判された団体の敷地から子どもの白骨が発見された。
弁護士の法子は、遺体は自分の知る少女のものではないかと胸騒ぎを覚える。
三十年前の記憶の扉が開き、幼い日の友情と隠された罪があふれだす——。(帯より)
独自の理念を抱いて集団生活を送る団体「ミライの学校」。それに関わった人々と、隠された事件。教育学部で学んでいていまお子さんのいる辻村さんだから書ける作品だったように思います。
『クローバーナイト』が保育園問題、すなわち子どもの教育の光と影を描いたもので、この『琥珀の夏』は同じ問題を取り扱いながら当事者、子どもの視点に立つ内容。学校や集団に放り込まれた子どもたち自身が何を見て、感じて、心を揺らしているか。人と人とが関わる上での嫌な雰囲気を描き出すと本当に辻村さんはお上手で、思い出して心臓がぎゅっとしました。
大人になった子どもたちがいま、自分が親になって何が思うか。その葛藤と、「正解なんてない」というのは、『クローバーナイト』のときも思いましたが、辻村さんが描きたいものなんだろうなと思います。子育ても教育も、何がよくて悪いかなんて本当に誰にもわからないからなあ……。
最後の最後に最初のエピソードが活きてくるのが上手い。上手すぎる。うっかり涙が込み上げてしまった。上手く思いを言い表せない子ども同士だったからこそ、このときの触れ合いは三十年後になってもずっと強く心にあって、彼女を支え続けていたんだろうな……。
正直さと誠実さ、大人たちがミカに行った仕打ちについて考えだすと止まらなくなる。心に響くものを読んだなあ。
降嫁して自由な生活がしたい王女フレイは、恋愛に興味のなさそうな冷徹宰相ハイネと都合良く結婚し、仮面夫婦となった……はずだったけれど!? 「あなただけは特別です。ずっと愛していました」溺愛されすぎて身動きがとれない新婚生活に♡ 夜ごと抱かれ、思考がトロトロになりながらも、想いを伝えてくるハイネへの愛情が湧いてくる。気づけばオシドリ夫婦になっていて……!(裏表紙より)
ヒロインのきっぱりさっぱりした性格が魅力的なTL作品。結婚によって自分の時間がなくなるのは嫌だ、と考えた王女フレイが自分を溺愛してくれている兄に、それらしい提案を理由にお願いに行ったら、まったく接点がなかった冷徹宰相が最適だということになり、という、ちょっと考え無しなところのある王女が色々企ててみたら、うっかり自分がすっ転ばされました、という溺愛もの。
あくまで自国内、お城と結婚後の自宅と狭い範囲でのお話に終始するので、フレイとハイネの関係性の変化や思いの進展がじっくり描かれていてときめきましたし、やっぱりフレイの性格がすごくよくって。愛されてどうしよう、ではなく、興味なかったのに困った……となりながら、溺愛ぶりに流されたり、呆れたり、ときには諌めたり、というやり取りがフレイのさっぱりした性格を表していてとても素敵だなあと思いました。
大きな障害となるエピソードも二人の関係性や人柄についてだったのも、この作品が描こうとしているものが感じられて面白かったです。だって原因がヒーローの性格や振る舞いって! 溺愛もこういう弊害があるよなあと苦笑い。
騎士団最強の女騎士ユディト。そんな彼女に女王から世継ぎをもうけるため「王子の子供を産め」と命令が下される。忠義一筋のユディトはこれも職務だ! と受け入れるが、気難しくて人間不信なアルヴィン王子は断固拒否。「私は陛下を信じる! 私と子をお作りになれ!」「俺は絶対嫌だからな!」相性最悪で決闘まで挑む二人だったが、王家の圧力であっという間に外堀埋められて婚約披露パーティーまで一直線。そんな時、王女の誘拐事件が勃発し!?(裏表紙より)
あらすじから想像する内容よりもずっとシリアスで真面目な話。女性騎士の、この世界での在り方、生き方、自分らしさを考えるお話で、とても面白く読みました。
ばりばりの騎士であるユディト。口調は勇ましく、剣の腕もなかなかのもの。そんな自分を誇る一方、規格外の自覚もあって、結婚を喜ぶ両親に胸がちくちくする感覚には共感を覚えずにはいられない。そう、自分はいいと思っていても周りを見るとやっぱりな、と悲しくなることはしょっちゅうある。
そんな感じで結婚を強制されたユディトとアルヴィンですが、二人がぎこちないながらも二人らしく距離を縮めていく展開にはきゅんきゅんしました。なんというか、やっぱり犬が好きなんだなって(身も蓋もない)。
面白く読みはしたものの、一つだけどうしても納得できないところが。「キリスト教」の表記や設定、変えた方がよかったと思うんですよ。あの辺りの時代のあの国くらいの話なんだろうなーとぼんやりわかるんですが、多分実在の宗教が出てくるとはっと冷めてしまうので……。
文芸部に峰岸舞耶も加わり、今日も文集『芝姫』の編集に勤しむ文芸部メンバー達。
ある日、名瀬美月と栗山未来がふたりだけで妖夢退治に行く計画を立てていることを知る。
怒る博臣に聞く耳を持たない美月。
結局、妖夢退治には舞耶もふくめた秋人、未来、美月、博臣の文芸部全員で行くことに。
どうやら妖夢は遊園地にいるらしい。
小物の妖夢だからと高をくくっていた美月だったが——!?(裏表紙より)
第3巻なので決戦めいたことがあるのかと思いきや、とても日常。ゲストキャラとはいえ死者が出てしまいましたが、ほとんどがみんなでわちゃわちゃボケとツッコミを繰り返しています。
名瀬家に立ち向かう兄と妹と、秋人と未来の関係もわずかながら進展あり。この先彼らが大きく変わるとすればやはり妖夢絡みなんだろうなあ。
虚ろな影を倒し、平穏な日常を送る神原秋人だったが、白銀の狂犬——峰岸舞耶と出会ってしまう。
彼女は異界士殺しの罪で異界士協会から追われていた。
そんな中、未来は真城優斗行方不明の重要参考人として協会の査問官である藤真弥勒に拘束されてしまう。
未来を助けたいなら、峰岸舞耶を拘束しろと弥勒から取り引きを持ちかけられるのだった。
未来を救うべく、秋人、博臣、美月の3人は行動を開始するが…。
しかし、これは大きな陰謀の序章にすぎなかった——。(裏表紙より)
人外の少年と異界士の少年少女の、青春と戦いの異能ファンタジー。
多少読みづらさはましになった気がするのですが相変わらずボケとツッコミが多くて話が進まないのがなあ……。大人の事情だの家の格だの、ラスボス的身内の存在とか美味しいところがいっぱいあるのに、一ページに一回ボケツッコミがあるくらいの頻度なので……。
秋人の秘密と、ラスボスの存在がはっきりした巻という感じかな? 名瀬泉という人がやばいというのはわかるんですが、パーソナルな話がほとんどないので謎めいている。3巻まで読み終わったらアニメも見てみたらいいだろうか……。
きっかけは偶然だった。
人間と妖夢の間に生まれた少年——神原秋人はある日、学校の屋上で今にも飛び降りそうな少女——栗山未来と出会う。
異界士のなかでも特異な”血”の能力をもった少女は、孤独のなか戦い続けていた。
「私は——普通の人間に見えますか?」
その少女と自分を重ねてしまった少年は、彼女を助けることを決意する。
だが、そんななか、少年たちの周りで不穏な事態が起こりはじめる…。
第二回京都アニメーション大賞奨励賞受賞作の学園バトルファンタジー!(裏表紙より)
劇場版のみ視聴済み。
現代日本と異能力、古い家と血といったものに縛られる少年少女のファンタジー、なんですがアニメと全然印象が違ってびっくりしました。どうでもいいボケとツッコミが多すぎて、話が進まなさ過ぎるのに疲れてしまい……バトルの緩急どこいった!? みたいな進行具合なのに終盤が怒涛すぎて。当時の流行だったのかな……。
秋人のあわいのものらしい孤独、未来の異質な能力と失ったものゆえの孤独、身内すら疑わなければならない家に縛られる博臣の孤独、前線で戦えず遠ざけられてしまう美月の孤独、といったものをもっと読みたかった。もっとぎすぎすしてよかったのよ……。
澪が大坂に戻ったのち、文政五年(一八二二年)春から翌年初午にかけての物語。店主・種市とつる家の面々を廻る、表題作「花だより」。澪のかつての想いびと、御膳奉行の小野寺数馬と一風変わった妻・乙緒との暮らしを綴った「涼風あり」。あさひ太夫の名を捨て、生家の再建を果たしてのちの野江を描いた「秋燕」。澪と源斉夫婦が危機を乗り越えて絆を深めていく「月の船を漕ぐ」。シリーズ完結から四年、登場人物たちのその後の奮闘と幸せとを料理がつなぐ特別巻、満を持して登場です!(カバー折り返しより)
本編後の番外編集。つる家をはじめとした関係者の人たちがいろいろありながら元気そうなのが嬉しく、救われた野江が次なる一歩を踏み出そうとしているのに涙し、大坂に戻ってもやはり苦労に見舞われ、それでも料理人として人を支える澪らしさが失われていないことがわかるお話など、読めて本当によかったと思いました。
最後の「月の船を漕ぐ」、最後の最後に声をあげて泣いちゃった。最後にその話題が出たからまさかな、と思っていたら。再会できたことも、お店にやってくる最初が澪の運命を変える三人だったことも嬉しくて、思い出すいまも泣いています……。本当に素敵な物語でした。
起業した妻と二人の子どもという四人家族である会計士の悠。保育園のママ友、仕事の関係者、友人知人との話題は『子育て』について。しかしそれぞれに様々な選択と困難があって……。
保育園落ちた日本死ね、が根底に流れている国の問題を切り取った作品、というと大袈裟かもしれないんですが、全部リアルなんだよなあ……と思うなど。
比較的裕福な一般家庭である鶴峯家。それでも子どもを保育園に入れるか幼稚園に入れるかという問題や、入れるかどうかの問題、仕事、家事のこと、交友関係と生きていく上で様々な問題に直面する。こうした事情を乗り越えるためには、やはり家族の協力や助けがなければ不可能なんだなあと強く思いました。主要視点を担う悠がすごくできた人で本当によかった。作中でいろんな人が助かった。
いろいろきつい話題ばかりだったんですが、最後の毒親問題、実母が介入してくるのはだいぶきつかったな……。どうしても親を拒絶できないという子どもの気持ちが。ここでも悠の存在に救われた。
しかしこういう人の闇と苦しみを描いてくれるのはさすが辻村さん。よき読書でした。
僕、ダックスフントの"フンフン"。大好きな藍ちゃんには気になる人がいるの。相手はいかにも好青年ってかんじの人間のオス、鴨井。動物病院の待合室で毎週会う、いつもいじわるな白猫キャロルの下僕なんだよ。
気にくわないけど、藍ちゃんの気持ちも応援したい。ただ僕は、鴨井が藍ちゃんと仲良くできない重大な秘密も知っているんだ……!
飼い主たちの関係は、顔見知りから友達へのステップアップもまだみたいで!? 可愛い犬猫たちに見守られるなか、年の差ふたりの間にライバルまで登場してーー?(裏表紙より)
転勤族で友達を作るのは下手、だから一生懸命に勉強している真面目で律儀な高校三年生の藍。近くの高校で生物教師をしている鴨井。お互いの気持ちを隠しつつ、飼い犬と飼い猫も交えて少しずつ距離を縮める二人の、両思いになるまでのじれじれを楽しむお話。かーわーいーいー! 真面目な藍もですが、大人が純粋な欲求を隠して「大人」してるの大好きなんですよね!
犬と猫の豆知識やちょっとしたごはんの描写も楽しかったし、だからこそ最後のエピソードは悲しくて、でも嬉しくて。二人の関係性の発展も含めて、続きが読みたいと思いました。