読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
王都エクバターナを巡る最後の決戦の火蓋が切られた。パルス軍十万に対して、王都東方で迎え撃つルシタニア軍は二十万。しかし、勢いの違いは明らかだった。侵略者は撃退され、王都城門が開かれる。だがそれは、アンドラゴラス王とヒルメス王子との雌雄を決する対決の始まりでもあった——。ついにアルスラーン出生の秘密が明かされる、感動の第一部完結編。(裏表紙より)
おー……お? ん? ぅええええ!? ああ……ふぅ……と感情を揺らされる第一部完結巻でした。
長らく謎だった(アニメから入った勢だったので)アルスラーンの出生の秘密、ヒルメスとアンドラゴラスの因縁の決着ときて、ルシタニアとの戦いの最後がこれかー! と唸らされました。
いやあアンドラゴラスがまさか……ねえ……。ナルサスの台詞にしみじみしました。こういうのが歴史の面白さではあるんですが、これ、アルスラーンたちにも後々適用されない? されるよね? 物語の結末がすでに怖い。
ともかく、アルスラーンの王太子としての戦いは終わり、ここから王として、運命づけられた蛇王なるものとの戦いが待っているわけですよね。よりファンタジーらしい話になるのかどうなるのか、楽しみに読んでいこうと思います。
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祓いにきた。この家は、殺させない。
「うちのクラスの転校生は何かがおかしい――」
クラスになじめない転校生・要に、親切に接する委員長・澪。しかし、そんな彼女に要は不審な態度で迫る。唐突に「今日、家に行っていい?」と尋ねたり、家の周りに出没したり……。ヤバい行動を繰り返す要に恐怖を覚えた澪は憧れの先輩・神原に助けを求めるが――。身近にある名前を持たない悪意が増殖し、迫ってくる。一気読みエンタテインメント!
最終章、あなたが感じた恐怖は反転する。(帯より)
優等生、お人好し、そんな風に揶揄まじりに言われることもある委員長の原野澪。ある日やってきた転校生は、初日から何故か澪を見つめ、誰とも関わらないのかと思いきや突然「家に行っていい?」などと言い始める。恐怖を覚えた澪は部活の先輩の神原に相談するが、この神原の言動も、何故か少しずつ奇妙な形に歪み始め……。
「闇祓」と「闇ハラ」をかけた、ハラスメントをテーマに描いたホラー作品。
本当に、こういう人のずきずきする言動を描くのが圧倒的に上手いんだよ……。学校でのあり方もそうですが、ご近所関係や会社での人間関係の引っ掛かりが、もうあるある、これ知ってるという頷きの連続で。一番うぐっとなったのは「第二章隣人」のご近所付き合いのマウンティング。しんど……となりましたが、そう思ってしまうのはこれがどこにでも当たり前に転がっている状況なんだからなんだろうなあ。
しかし闇ハラ家族の制度が非常にホラーとして気持ち悪くて(褒めています)よかったです。こういう風に誰かが入れ替わっているの、実にホラー。怖くていい。
強面で知られる青年騎士ダグラスには、忘れられない相手がいた。
敵国の捕虜時に出会い、己の体に強烈な“体験”を刻み込んでいった黒髪黒目の“少年”だ。そんなダグラスは、少年瓜二つの奴隷の少女チカを買い、夜な夜な奉仕させるも彼の“モノ”は沈黙を保ったまま……。
一方、チカは自分のご主人さまが過去弄んだ男だと知り、冷汗モノ。どうぞ、このまま不能でいてください、と“愛玩奴隷なのに処女”ライフを決意するのだが、思いのほか優しいダグラスに気持ちが揺れ動く。
そして、ついにダグラスはチカと“少年”の影を重ね合わせるようになり……。
“ご主人さま”復活の日は近いのか――!?
ワンコ系筋肉騎士と処女奴隷の誤解が織り成す異世界ラブコメ&エロライフ!(Amazonより)
異世界トリップによりこちらにやってきたチカはある国で性別を偽っていた過去がある。性奴隷として仕込まれたチカを買ったのは、なんとそのとき辱めたダグラス。あのときの少年とは気付かれないまま、いまでは不能となってしまったご主人様の家政婦扱いとして平和に暮らしていたけれど……というエロコメ? コミカライズを読了済み。
チカの視点と、彼女の知識以上のものの情報を出さないようにしているらしい話運びですが、結構この異世界の決まり事がきつそうな描写がちらほら。いまではそれなりに異世界生活を楽しんでいるみたいだけれど、読んでいるとだいぶチカが心を折って、諦めている感じがあるよなあ。
ただのTL小説ではなく、ヒーロー側がいじめられたりなんだりする展開が多め。こういう多様性のある作品がもっと読みたいな。
僕、ダックスフントの"フンフン"。
大好きな藍ちゃんは、動物病院で顔見知りになった猫の飼い主、鴨井と両片思い。でもこの前やっと“お友達”になれたんだ!
え、“恋人”じゃないのって? 女子高生の藍ちゃんは大学の受験勉強がすっごく大変みたい……! 鴨井も自分が高校の先生なのを気にしてるらしいんだ。そんな時、引き取った犬のことで悩む女の子と予備校で話した藍ちゃん。でも実はその子は鴨井の生徒で、しかも鴨井のことが好きみたいだよ……!?
可愛い犬猫に見守られ、受験に恋に大忙し! 年の差恋物語、待望の第二弾!(裏表紙より)
動物病院で知り合った二人。鴨井は飼い猫キャロルを見送るという出来事の後、藍の飼い犬フンフンが偶然見つけた子猫を引き取った。その後のお話。
動物と一緒に暮らすことはすべてが楽しいわけじゃない。人の生活があるし、弱者になってしまう動物はその影響を多大に受けてしまう……という色々が描かれていて、切なかったり悲しかったりほっこりしたり。特にいわゆる昔ながらの方法で買われていたジロさんは……。ひどい言葉をぶつけるのは間違いなく暴力。動物相手でもそれは変わらないと思う。
藍ちゃんが合格した大学、もしかしなくてもベランダシリーズのあの大学ですね!? このシリーズが続いたらあの二人や関係者がちょろっと顔を出したりするのかなあなんて思っています。
夢と希望。情熱とプライド。愛と敬意――何度でも心震える『ハケンアニメ!』のサイドストーリーを完全収録。(帯より)
本編中の主要以外の登場人物のエピソードであったり、本編後の話であったり。ハケンアニメとは別のところでアニメに対する思いを持って仕事に関わる人たちの話。
彼女たちはあのとき、まだその日がくることを知らない。「九年前のクリスマス」
若かりし頃の王子と『リデルライト』の音響監督の五条の出会いを描く「声と音の冒険」
アニメも漫画も禁止されていた太陽。塾通いで友達ができた彼は、捨て猫の飼い主を探して瞳の部屋にたどり着く。この世界は繊細さがないと言われて、初めて見たアニメは。「夜の底の太陽」
フィギュアやガチャガチャを作るブルト社員の逢里は、仕事で大失敗したその日憧れの原型師に出会う。「執事とかぐや姫」
シーズンごとに新作が発表されるアニメがある一方、子どもたちに愛され続けて何十年と続く長寿作品もある。そんな長く愛される作品を作る人々の物語。「ハケンじゃないアニメ」
本編の後、また次の仕事に挑む彼ら彼女ら。いつかあの人と、いつかあの人を、という思いを胸に。「次の現場へ」
「声と音の冒険」の、尖ってばかりでプロであることが難しかった王子と成長した姿に泣く。みんなで作るってそういうこと。
「ハケンじゃないアニメ」は忍たまっぽいなあ。長く愛され続ける長寿アニメの苦悩と喜びに感動し、長く続けることのすごさに納得。
そして本編後「次の現場へ」は、チヨダ・コーキの『V.T.R』の話が出てそうそうそうだったと思っただけだったので、環が出てきたことに「出るんかい!」って笑っちゃった。まあこれほどチヨダコーキ作品に救われた彼女が彼にまつわる仕事に妥協を許すはずがなく。
物づくりというのは苦しみも悲しみも怒りも含めて本当に良いものだ。最後まで本当に楽しかった。
【国民的人気を誇るガールズグループ『coc9tail』年内解散を発表】
さて、ここで国民のほとんどがある人物の動きに注目した。
──〈国民の王子〉柊美聖は、大丈夫か、と。
超絶美形の人気俳優、柊美聖(26)は『coc9tail』のトップアイドル、黛息吹(24)を激推しする、ファンも認める全力オタクなのだ。
息吹の芸能界引退宣言に案の定ダメージを受けていた美聖。更に息吹には結婚の噂も囁かれていて……?
超人気俳優は推しを射止められるのか!? 胸キュン必至の尊すぎる推し活ピュアラブコメ登場!(Amazonより)
推している側と推されている側、二人のラブストーリー。ちょっと変わっているのはこれが芸能界もので、推しているのは「国民の王子」こと俳優の柊美聖、推されているのは国民的ガールズグループのトップ、アイドルの黛息吹だということ。
SNSが当たり前の現代で、大抵の芸能系オタは美聖の重度のオタっぷりを知っているし、SNSアカウントが自分の仕事ではなく息吹のことばかり書いているのも把握している。二人の恋が進行する一方で、ファンはそれをどのように受け取るのか、というのを描いているのはこの時代ならではだなあと感じて、とても楽しかった。
もちろん二人のラブストーリーもじれじれもだもだ、はらはらどきどきで、とても甘くて楽しかった! 最後のいちゃいちゃまでありがとうございました!
家出をして海沿いの駅に降り立った私は、花束が手向けられた夜の広場で、突然、不思議な女の子から声をかけられた。「ねえ、ひとり?」(Amazonより)
YOASOBIの楽曲を元にしたいろいろな作家の短編集、その一作の電子版。
学校生活で周囲をぎくしゃくし、もう死んでしまってもいいかと電車に飛び乗った少女。夜の海に心惹かれて途中下車し、そこで不思議な女の子に声をかけられる、一夜の物語。
辻村さんの描く生徒や学生たちは生きづらさを抱えているけれど、作品はいつも彼ら彼女らを大丈夫だよと励ましてくれる。学校でのあれこれが生死につながってしまうほどの辛さ、けれど離れてみるとその世界がいかに狭くてつまらないものだったかわかる感じ、そしてそれを「しょうもない」とか「馬鹿みたい」と言えるいまがある。幽霊の正体が最後にくるっと明かされる感じも辻村さんらしくてよかったな。
城に帰還した父王アンドラゴラスの命により、事実上追放の身となったアルスラーン。五万の兵を集めるまでは帰れぬ運命となった。つき従うのは、ダリューン、ナルサスをはじめとしたわずか七人の側近のみ。一行はパルス随一の港町ギランへ——。そこで待ち受けていたのは、海上商人を脅かす海賊たちとの戦いだった。新たな冒険の始まりに胸躍るシリーズ第六弾!(裏表紙より)
そういえばこの辺りはアニメで見たな? という第六巻。久しぶりに続きを読んでも魅力的な登場人物が息づいているのですぐに誰か思い出せるのが素晴らしい。
アンドラゴラスにより事実上追放されたアルスラーンは再び側近たちと旅に出る。港町に落ち着き、ここから再び決起するときをわくわくしながら読み進める。けれど真の黒幕の動きもちらちらしていてだいぶ気になるな……。
そういえばアニメを見たときはなんとも思っていなかったんですが、ファランギースの過去に何かあるのかな? みんなが何故神官になったか気を使って尋ねないでいたという描写があったのが妙に気になる。
学校での居場所をなくし、閉じこもっていた“こころ”は、部屋の鏡をくぐり抜けた先にある城に通うようになる。そこで出会ったのは、境遇の似た仲間たち。7人それぞれの事情が少しずつ明らかになるなか、城の終わりの日が刻々と近づいてくる。鍵は見つかるのか、果たしてこの中の誰の願いが叶うのか——。
ラストには驚きと大きな感動が待つ。本屋大賞受賞作。(裏表紙より)
3学期の初日に学校に来て、みんな会おう。そう約束したはずなのに誰一人として会えなかったこころ。それどころか、約束した日は3学期の初日の日付ではない。これはいったいどういうことなのか?
リオンの時差から始まり、今度は日付、そして、と散りばめられていた辻村作品らしい設定が少しずつ集まってくるラストは見事としか言いようがない。最後の最後に、思いがけない感動があることも。今回はさらに、こころたちと同じような境遇にいる子たちに贈るみたいな奇跡もあって。
映画ではわからなかった個々の事情がはっきりと読めてよかったなあ。特にフウカとスバルの家庭環境は、映画で見て感じ取ったものとは違っていたので原作を読んだ方が絶対いい。
スバルはグレて人生がめちゃくちゃにならなくてよかった……。他にもっと楽しいものがあるってこと、それを作る人生があるってことを選ぶことができて本当によかった。あなたのそれは将来たくさんの人たちを繋ぐツールになるんだよって思った。
最後、映画で何故だろうと思った、喜多嶋先生の描写。原作ではこうなのね。こういうことなのねということがわかってよかった。やはり原作を読まないとだなー。
学校での居場所をなくし、閉じこもっていた“こころ”の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはオオカミの面をつけた少女が待ち受け、こころを含め、似た境遇の7人が集められていた。城に隠された鍵を探すことで願いが叶えられるという。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。本屋大賞受賞作。(裏表紙より)
公開された映画を先に見てしまいましたので、この度ちゃんと原作を読みました(積んであった)。アニメがいかにデフォルメされていたのかわかりましたし、映画の表現の描写の理由もわかりました。わかりましたが、削られた細部が、辻村作品で好きなところなんだよなあ……。
とにかく。
学校に行けなくなった中学二年生のこころ。家族からの理解は薄く、こうなった理由が理由なだけに説明することも躊躇われ、毎日不安を押し殺している。ある日自室の鏡の向こうの世界で、同じような年頃の少年少女と巡り合うことで、お互いに未来への道を見つけ始める。
上巻は3学期が始まる直前まで。それぞれが抱えている問題、性格だったり言動だったり、家庭環境だったりがうっすらわかる上巻。ゲームでちょっとだけ距離が近くなるのがいいな。面と向かって喋らなくてもちょっとだけ、たとえば初めて話しかけるときの最初の一歩になってくれる感じ。知らない子同士も一緒に遊べる現代っ子ツール。