読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
"虐待死"の現実と向き合っている人たちがいます。どうしてその子を助けることができなかったのか、どうすれば二度とそのような事件を起こさずに済むのかと。(第1章前書きより)
——虐待を予防し、虐待死を見逃さず、生き延びた子どもたちを支えるために。日々奮闘する専門家たちからの提言と、最新の取材に基づく物語。(カバー折り返しより)
子ども虐待について書かれた『凍りついた瞳』から、さらに時間が経って、2020年の最新の取材に基づいて、専門家たちの意見をまとめ、現場を描く三つの物語を収録。
虐待死の一つの事件に突っ込んでいくのではなく、それを防ぐ専門家たちのまとめになっていて、こうやって人々は必死に悲しい死を防ごうと努力しているのだな、と思う。
ただ虐待から守った後も、その子たちに居場所がないという問題があるということが知れてよかった。ただの人である私に何ができるのかわからないけれど、知ることで少しでも力になれたらと思う……。
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マリー・ブライディは伯爵令嬢でありながら、社交界にも出ず、魔法石の研究に没頭している17歳。ある日、酔っぱらった父が「おまえの花婿を拾ってきてやったぞ」と、ひとりの青年をつれてくる。デューイというその青年は、なんとこの国の王子だった。デューイはマリーに求婚するが、独身主義のマリーは結婚する気などまったくない。だが、デューイは花婿として家に居座ってしまい……?
「僕はあなたの花婿です。異論は認めません」(裏表紙より)
『若奥様、ときどき魔法使い。』と同一世界観。魔法使いはみんな生まれ持った魔法があるというお話で、魔法石研究家の伯爵令嬢と王子が結婚するのかしないのか攻防を繰り広げつつも、魔法石にまつわる事件を解決する。
ほんわかとしながらもやると決めたことはやり通す王子殿下と、つんと澄ましているように見えてとても繊細で優しいマリーの、二人のやりとりがとても微笑ましい。マリーのお嬢様喋りが好きだなあ。
そして魔法石の美しいこと。どんな石なのか、実物を是非見てみたいと思わせるきらきら感。月翅晶、なんて美しい言葉の並び。
その昔、人は自分の病を治すために悪い部分と同じところを食べたという……とある一冊の本をきっかけに、クラスメートが膵臓の病気で余命いくばくもないと知った僕。彼女、山内桜良が死ぬまでにやりたいことに付き合わされるようになった僕は、その日々の中で少しずつ変化を始める。
原作は読了済。映像になると、より桜良の性格が際立って、とんでもなく自分勝手で臆病で魅力的な女の子だなあと思いました。いやでも振り回される方はたまったものじゃないなあ笑
原作を読んだときにはなんとも言い難い寂しさと儚さを感じましたが、映画だと十二年後に春樹と恭子がきっちり決着をつけるシーンがよりドラマティックに描かれていて、ちょっとだけ気持ちが晴れました。ちゃんと前に進めてよかった。
北宇治高校吹奏楽部三年、フルートの傘木希美とオーボエの鎧塚みぞれは、中学時代からの友人同士。希美がいるだけでいいと思っていたみぞれは、最後のコンクールと進路決定を控え、やってくる別れに恐れを覚えていた。コンクールの自由曲「リズと青い鳥」にあるフルートとオーボエの掛け合いがあるけれど、二人の心はすれ違っていて……。
多くを語らない作品。アニメの美しさ、十代の少女の繊細さを存分に描き出した、本当に綺麗な作品。
「響け! ユーフォニアム」と同じ舞台で、進級後。本編当時から希美とみぞれの関係にはいいようのないもだもだ感を感じていたんですが、クローズアップされると、なるほどなあと腑に落ちました。
初夏らしい色彩の画面や、女の子たちの仕草、学校生活のありふれたワンシーンと、ちりばめられている青春の光景にきゅんきゅんします。そして何より、吹奏楽部。「リズと青い鳥」を演奏する終盤のシーン、オーボエがめちゃくちゃ美しくて感動しました。その分、フルートの多少の未熟さも……。
とても素敵な作品でした。
「俺と結婚して欲しい。返事は『はい』しか聞かないぞ」
福引に当たって移住した異世界で、騎士隊長クリシュと恋人同士になった忍。ずっと孤独だった忍を、クリシュは温かな腕で抱え込み、愛で満たしてくれた。生命の木が枯れていき子供が生まれなくなった世界。大好きな人たちが生きるこの世界のために、できることならなんでもしたい…! そんな時、植物チート能力で生命の木の記憶を見た忍は「種」を託される。それは、この行き止まりの世界を救う最後の希望だった…!(裏表紙より)
命の樹を巡る出来事と、忍とクリシュの結婚という二つの大きな物語が決着。
命の樹にまつわる過去はきちんと丁寧に見せてくれたせいか、ネレとミエルのことが泣けて泣けて仕方がなかった。忍がいてくれてよかった。あの二人はきっと救われた。ついぼろぼろ泣いてしまいました。
その後のクリシュとの生活は、もう甘くて甘くて。かわいいなあ。恋人ととして仲を深めて、みんなに祝福されて夫婦になる。義両親や義弟もできて、一人の人間が幸せになるまでの過程を垣間見たようでとても充実しました。素敵な物語でした。
仙娥の懐妊が分かり、後宮は慌ただしい雰囲気に包まれる。その間「茹昭儀には手を出さない」と言っていたはずの文林から小玉への弁明はなかった。
そんな中、紅霞宮では小玉と女官たちを謎の体調不良が襲っていた。療養のため都を出た小玉たちと入れ替わりに、徐麗丹が紅霞宮に泊まり込み原因究明に乗り出していた。犯人かと思われた仙娥だったが、確実な証拠は何もなく、歯がゆい時間だけが流れていく。
しかし距離が離れている間、確実に小玉と文林の間の溝は深まっていき、ついには——。(裏表紙より)
おおー……と感嘆してしまった、妃嬪の懐妊と小玉と文林の溝の顛末の一端。いや多分弁明しないあたりそういうことなんだろうと思ってはいたんですが、最後の方で告白があってやっぱり色々と衝撃だった。これまで文林に抱いていたもやもやが同情に変わるくらいには。
世代交代の波、各国の動き、小玉の今後など続きもめちゃくちゃ気になる。いやでも小玉は多分上がってくると思うんだ。じゃないと伝説にはならないでしょう。
錦糸町、川崎、上野、大阪、呉、六本木。日本各地の旧軍都に発生すると言われる「裂け目」。かつてそこに生きた人々の記憶が形を成し、現代に蘇る。鮎観の一族は代々、この「裂け目」を封じ、記憶の化身たちと戦う“力”を持っていた。彼女と同族の遼平もまた同じ力を有した存在だった。愛し合い結婚した二人だが、息子を授かったことから運命の歯車は狂い始め——。直木賞作家の真髄を味わえる、魅惑の幻想ファンタジー。(裏表紙より)
裂け目から生じる何かと戦う三人の連作小説。この世界のどこかに常に異界があって、戦っている人たちがいて、すべての始まりと終わりがすぐそこに迫っているという終わり方は実に恩田陸作品らしい。
根本的な何かが変わったわけでも、現況を倒したわけでもないのに、最後「六本木クライシス」に感じたわくわく感が何かに似ているなと思っていて、ああそうだ「劫尽童女」だなと思ったのでした。ここから大きな物語が展開するのかなあ。この一冊では物足りないけれど久しぶりに恩田陸成分を摂取して満足しました。
赤子のときの予言により、後宮入りを期待されて育った翠蝶。ところが皇帝ではなく皇弟・氷希と結婚させられてしまう。彼は右目に傷痕があり、夜をともにした女性にもうつるといわれている。だが結婚して半年、氷希が翠蝶の臥室を訪れることはいまだなくて……!? 翠蝶の、とある秘密を知られてしまったことから氷希との距離が縮まっていくのだが——。すれ違う想いが絡まりあう中華後宮恋物語。
恋は綾模様……謎を織りなす中華後宮ミステリー!(裏表紙より)
両片思い美味しい。後宮に入って寵愛を受けるのが女性の幸福だという価値観という基盤があって、それでも恋をしているという部分の匂わせがちょうどいい塩梅だなあ。あんまり厳密すぎると息苦しくて、悲しくなってしまうからさ……。
翠蝶の女性らしさと意地っ張りなところがとても可愛らしい。そつがなさすぎるのはちょっと心配にも感じるんですが、そのあたりは氷希のフォローが絶妙で、いい夫婦だなあ。すれ違いも含めてときめきました。
謎解き部分も独特で、翠蝶の特技が発揮されていて楽しかった。
プロテスタント系女子高の入学式。内部進学の希代子は、高校から入学した奥沢朱里に声をかけられた。海外暮らしが長い彼女の父は有名なカメラマン。風変わりな彼女が気になって仕方がないが、一緒にお昼を食べる仲になった矢先、希代子にある変化が。繊細な描写が各紙誌で絶賛されたオール讀物新人賞受賞作含む四篇。解説・瀧井朝世(裏表紙より)
何者にもなれない少女、いいよね……。
思わず万感の呟きが漏れてしまうんですけれども、「特別」になりたい女子高生たちが、「特別感」のある人やものに憧れ、近付こうとし、結局何にもなれずに大人にならなければならないという残酷さは、読んでいてすごく胸にくるし、ぎゅっとなる。
特に「甘夏」の、誰よりも抜きん出る方法が男性と付き合うことという、愚かしいほどの世界の狭さが、痛々しくて愛おしい。そんなことをしても特別にはなれないと知っているだけに、もどかしい思いもする。
最後の「オイスターベイビー」はよかったな。大人になれたという感じがあった。