読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
覆面小説家のセシリアは、没落貴族の両親から逃れるために後見人の騎士ヒースと名目上の結婚をしていた。だがヒースが亡くなり、遺言でヒースの部下クラウスと再婚させられる羽目に。その上次の小説大賞を獲らなければ契約を切られる危機に陥る。が、最初は喧嘩腰だったクラウスがセシリアの小説のファンだとわかり、ふたりの気持ちは次第に近づいて…。にせもの夫婦の間に芽生えた、本物の恋。文学少女と堅物騎士のラブロマンス!
にせもの夫婦の間に芽生えた、本物の恋。(裏表紙より)
柔らかくて優しい素敵なロマンスだった! こういうのが出るからコバルト文庫が好きです。
女流作家が一段下に見られ、女の書くものは売れないとされるバルデア国。女性名で発表した作品が売れず、男性名で再デビューを果たしたものの、小説大賞を目前に売り上げは芳しくない。果たしてセシリアは新しい作品を生み出すことができるのか。そして偽装結婚と仮面夫婦生活の行方は?
作品を作ること。作品に対する思い。読書にかけるそれぞれの思い。小説家がメインで登場する作品って、作者の方が「創作」の力を信じているものが多くて、やっぱりぐっとくるなあ。ここではセシリアとクラウス、それぞれの読書の考え方が違って書かれていて、それでいいんだよと教えてくれるようでもあって、とても優しい。
またヒースの遺言状がよくて。まるで天使からのアドバイスですね。ここぞというときに囁いてきて、考えなければならないときには黙っていて。見守るようなヒースの遺言状の数々、とてもよかったです。
素敵な作品でした。
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1940年代、次第に狂気を暴走させるナチスドイツ。SS将校アルベルトはユダヤ人虐殺部隊と怖れられた特別行動隊の任務に赴き、この世の地獄を見る。一方、司祭を志していたマティアスも衛生兵として召集された前線で、自らの無力を噛みしめていた。地獄の底で再会した二人は、思わぬ共通の目的の下、ローマを目指す。その先に待つのは、絶望か、希望か。心を揺さぶる衝撃の結末が待つ歴史ロマン巨篇完結(裏表紙より)
棘はとげでも、いばらの方だったか……。最後の最後にタイトル回収していくの、憎いなあ……。
マティアスはひたすらに神への道を歩みながら自分にできることをやり通した、と思ったところで、アルベルトの行動の真の意味が明らかになって。彼もまた自らにいばらを課して、自分自身を貫き通したのだということがわかって、胸が苦しくて仕方がなかった。お前、お前な……! と言ってがくがく揺さぶってやりたい。
どれだけ苦しかっただろう。孤独だっただろう。その氷みたいな心でどうしてそこまで進めたんだろう。最後にマティアスと会ったとき、どんな思いでその笑顔を見せたのかと思うと、涙が溢れてきてしまう。
凄まじい作品でした。
鬼と修羅、宿命を負う。二人の旅路が始まる──
最強の修羅として生きる男、鳳は、人がみな鬼に殺められ焦土と化した村を訪れ、少女夜闇と出会う。ただ一人残されたのは鬼の血をひく娘だった。鬼を斬るのが役目の修羅だが、夜闇の手をとり旅に出る。少女の秘めたる力を狙う者どもが行く手を阻むなか、鳳は何故、命を賭して夜闇を守るのか?──十代で描いた鮮烈なデビュー作。著者の原点となる物語に特別書き下ろし掌編を収録。(裏表紙より)
これを17歳が書いたって、すごいなあ。
イメージや言葉の連なりに重きを置いた作品なので、ラノベっていうストーリーややりとりはないんだけれども、読んでいるとこの世界観に圧倒されて引き込まれてしまう。ものすごく諸行無常の、めぐりめぐる世界という前提の上で成り立っている世界観だなあと思いました。
最後の書き下ろしは、この作品がこの形になったから入ったものだなあということも感じました。
1935年、ドイツ。若く優秀な保安情報部員アルベルトは、党規に従い神を棄てた。そして上官のハイドリヒから、ヒトラー政権に反発する国内カトリック教会の摘発を命じられる。一方、アルベルトの幼馴染マティアスは、大恐慌で家族を失くし、修道士として静かに生活していた。道を分かたれたはずの二人が再び出会ったとき、友情と裏切りに満ちた相克のドラマが幕を開ける。全二巻連続刊行の歴史ロマン大作(裏表紙より)
息苦しい作品。歴史ロマンとは銘打たれているものの、この、誰にも救うことのできないであろう絶望感が、作中のドイツという国には漂っている。
アルベルトの冷ややかな態度と悪魔的な仕事ぶりには、多分最後にはすごい絶望と希望を見せられるんだろうなと思いつつも、後半のイルゼとのすれ違いぶりにはかわいそうに思いつつも自業自得とも思ったり。いやそんな言葉ではくくれない状況が、この国で生きているとたくさんあったんだろうなと思う。
マティアスはどのようにしてアルベルトに牙をむくんだろう。
コンクールで優勝するほどの腕をもちながら、給食調理員として働くことになった料理人の宗。子供嫌いな彼を待っていたのは、保健室登校生や太ってしまった人気子役など問題を抱える生徒ばかり。さらにモンスターペアレントまで現れて。大人になりきれない料理人は給食で子供達を救えるか? 笑いと感動そしてスパイスも効いた食育&青春小説。(裏表紙より)
俺はこんなにスキルがあるシェフなんだ、という自意識過剰気味でプライドが高い宗が、学校給食という現場で働く。同じ料理といっても、所変われば、制限や決まりが全然違っているものだよなあとしみじみ思う。ましてや相手が大多数の子どもとなれば、ままならない事情を抱えた子がいっぱいいる。
給食ものとしつつも学校ものという組み合わせが面白かったです。序盤は宗の性格が合わなくて読みづらかったんですが(そして最後まで微妙に合わないままだったけれど)、不器用な性格と人間関係、仕事に悩んで考えて、それでも前に進む姿は応援したくなりました。
《テンペスタ》の特別区に侵入した犯人たちはなぜ最奥部に易々と入り込めたのだろうか。ジャスミンとケリーの疑問はある男へと――ディアスの二代目社長だった男へと行き着く。しかもその口から語られた無責任極まる奇妙な話はいつしか宙域を越え、某軍事大国まで飛び火することに……?
はるか辺境の地の連邦未加盟国家の内戦。超巨大軍需企業の驚愕の不祥事。バラバラな宙域さまざまな事件が、二人の調査によって縒り合わさるがごとく繋がっていく。渓谷競争の生ける伝説(!)の復活譚(?)これにて一件落着!(裏表紙より)
二巻目。《テンペスタ》での事件に関わるペンダントの行方を追った二人。後編という感じでひとまず《テンペスタ》の件は決着。
《門》の再評価が始まったというのは、今後の作品で二人が活躍する伏線かなあ。ケリーが海賊王に戻るときがやってくるんだろうか。
ジャスミンはまた人をたらして、大物(今後そうなるだろう)と思われる伝手ができたなあ。ちょっと価値観がぶっ壊れた人だけれど、オルガはいい子のように思うので、成功してほしいな。
ジャスミンに遠方から連絡してきたのは、惑星ブラケリマで整備士をしているガストーネだった。渓谷競走に参加した時、世話になった相手だ。この男の依頼を受けて、エルナト宙域にある飛翔機の開発工場《テンペスタ》に出向いたジャスミン・ケリー・ダイアナたち。ここでジャスミンが試験飛行を務めるのである。
しかしたとえ試験とはいえこの3人がかかわって、すんなり終わるはずがない。ブラケリマの大統領が絡む大事件が彼らの登場を待っていた!?
大人が主役の舞台が開幕——!(裏表紙より)
金銀黒天使が関わらない(いまのところ)、海賊と女王のお話。『大峡谷のパピヨン』に登場した、惑星ブラケリマと峡谷競走が再び舞台となります。
試験飛行として再びパイロットとなった(ただし試験場のみ)ジャスミン。選手たちと交流を深めつつ、相変わらずの無双っぷりを発揮するも、事件発生。《門》絡みの問題が同時発生している模様、というわけで、次はケリーの回ですかね。
適度な距離を保ちつつもケリーは結構ジャスミンのこと好きだよなあとか、二人の思い出をもうちょっと聞かせてほしいなあとか。二人がいちゃいちゃしてるの好きです。
雨の日に行方不明となったジョージーを諦めきれない兄のビル。学校はじきに夏休みを迎えるが、街は子どもたちの行方不明事件に揺れていた。はみ出しものたちのグループのビル、ベリッチー、スタンリー、エディは、ある日不良グループに暴行を受けていた転校生のベンを助ける。さらにいじめを受けている、心優しく賢い少女ベバリー、アフリカ系のマイクも加わり、夏休みを満喫しようとするが、彼らは「それ」と呼ばれる、子どもたちをさらうピエロ・ペニーワイズの存在に気付くことになり……。
排水溝を覗くことができなくなる映画。犯人は実在しているものだと勝手に思い込んでいたんですが、子どもたちを獲物にする魔物めいたものでした。
繰り返される「夏休みなのに」という台詞が、非日常に起こる冒険を想像させて、さすがだなあと思いました。この非日常の中に、子どもたちがそれぞれ抱えている問題が浮き彫りになったり、新しい関係性によって仲間内のパワーバランスが崩れたりして、最後にみんなが一人ずついなくなる……という演出、わかってるなあ! しかもそれらの問題は明確には解決されていないんだけれども、子どもたちはそれぞれに立ち向かう勇気や前に進む力を得て、明日へ進むんですよ。素晴らしい。
しかし続編を製作する予定があるんですね。おおう……どうなるんだ。
とある王国の王女として生まれたスノーホワイト。ある日母である王妃が亡くなり、王は偶然出会った美女を新しいお妃に迎える。だがその女の正体は魔女で、王を暗殺し、自らの力で王国を乗っ取ってしまう。王族たちが皆殺しにされる中、永遠の命と力を与えるとされるスノーだけは囚われの身となっていた。そして数年後、スノーは一瞬の隙をついて逃亡、王国を取り戻すために立ち上がる。
白雪姫を戦うお姫様として描くダークファンタジー。魔性のもの(善いものも悪いものも)をこういうちょっとグロテスクに描くのって、実にダークファンタジーだわとどきどきわくわくする。また映像がおどろおどろしいんですよねえ。実にいい。
お話は白雪姫の物語を大きく逸脱はしないんですが、王子様に当たる人物が狩人に相当する人だとか、自ら女王となるというのは、かなり強いヒロインと描こうとしていると思います。このまま女傑として王道を進むのかどうか、気になるなあ。
だいぶと前にオススメされた作品でした。面白かったです。ありがとうございました!
長崎県の五島列島にあるとある中学校では、合唱部の顧問だった松山先生が産休に入るため、臨時教師として松山の友人で同校の卒業生である柏木がやってくることになった。美人でピアニストだったという柏木目当てに合唱部に男子生徒が入部してくる中、ナズナや、なし崩しに入部することになったサトルたちの、それぞれの思いや傷が明らかになって……。
原作は読了済。映画は映画でわかりやすい形にしているなあと思いながら見てました。
中学生ってどこも同じだなあと思いつつも、彼らの素朴さに微笑ましい気持ちになったり、いまは大人として松山先生や柏木先生、その他教師に感情移入したりその言動に注目したりなどして、自分の状況で見方って変わるなあというのをしみじみ感じました。
全然先生っぽくないけれど、都会からこういう人がふらっと赴任してくるのってなんかリアリティあるなあと思った新垣さん、ツンツンしつつも本来優しい人であるのがにじみ出ていてすごく好きでした。主題歌でもある「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」の歌詞にもある「大人の僕も傷ついて眠れない夜はあるけど」っていうのが、15の自分と大人の自分が地続きになっている同じ人間であるというのが伝わってきました。柏木先生も「負けそう」「泣きそう」「誰の言葉を信じて歩けばいいの?」って思ってここにきたんだなあって思ったんですよね。