読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
とある美しい城に住まう大公レオンは、善政を敷き、美しい妻ジュリエットとともに幸せに暮らしていた。だがそれもあの事件が起こるまでは。火事で妻を亡くし、顔に醜い傷を負ったレオンは顔を隠し、人を嫌い、無慈悲な人間として人々から恐れられるようになってしまう。そんな彼の元に父親の借金を返済するため、奉公に上がったベルは。
「美女と野獣」という名のハーレクインロマンスだな! というのが見終わった感想でした。
賢いベルという描写はなく、城に奉公に上がった直後はろくに家事をしたことがなくていつも姉がやっていたと言い訳をしてしまうところ、ヒロインとしてマイナスです……。
一方で野獣役のレオン大公は、結婚を迫ってくる従妹のエレーヌと「ベルを落とせるか」という賭けをする嫌な男です。このエレーヌもだいぶと嫌な女性で、物語の最も大きな謎に関わるんですが、ラストの駆け足でまとめられてしまったあれそれでだいぶと後味が悪い人に……。
ほかにもエレーヌの大公への執着の理由が不明だったり、ベルがどうしてそこまで好かれるのかがわからなかったり、やらかしたベルの姉のおとしまえが付けられていなかったり、あっさり引いてしまう村人にええーって思ったり、かわいそうな伯爵がどのようにして最後を受け止めたのかがわからなかったりと「きっちりわかるように描く」ことの大切さを実感させられるつくりでした。
しかしこの映画、めちゃくちゃ舞台装置が美しい。
大公の館や近くの村、ベルの実家や、キャラクターの服装などとてもおとぎ話に語られるヨーロッパな感じがしてすごく好きです。女性はちゃんとデコルテを見せて胸を上げて潰しているし、男性もきっちり古い形の服装。
ベル、レオン、エレーヌの衣装が時々はっと目につくほど色鮮やかなときがあったんですが、これってお互いの色が同系色かどうかで心を通わせているかどうかを表しているのかなあと途中で思いました。最初は感情の高ぶりや方向性を示しているのかと思ったんですが(赤は攻撃とか)、それだけじゃないのかも? と思ったり。ベルがレオンの元へ駆けつけてくるシーンはお互い赤なんですけれどエレーヌは青なんですよね。
おすすめはしにくいんですが、いろいろと面白い作品でした。
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2019年ロサンゼルス。酸性雨の降りしきる退廃した地球で、人間はレプリカントと呼ばれる人造人間を開発し、酷使していた。しかし感情が芽生え人間と変わらない情緒を持つようになったレプリカントは人間として暮らそうとする者が後を絶たず、それらを解任(処刑する)のがブレードランナー、デッカードのかつての仕事だった。そんなある日反逆したレプリカントを見つけ出せという指令が下り……。
最近新作が公開された「ブレードランナー」。初めて見ました。
なんというか、ロマンだなあ……。
人造人間と人を分けるのは何かという問いもあるんですが、反逆したレプリカント、特にロイ・バッティの狂気的かつ悲しい言動が好きで……。すごく悲しいのにすごく狂気的。ともするとデッカードよりも好きかもしれない。
見ていて、これデッカードはレプリカントなんじゃないかなあと思ったんですが、Wikiを見ると制作上の都合で色々ミスっているところがあるせいなんですね。しかも公開バージョンがいっぱいある……。興味がわいたので間をおいてまた見てみようかなと思いました。
1944年。18歳のすずは広島から呉にある家に嫁ぐ。折しも日本は戦争の只中にあったが、人々は日常を生きていた。もちろんすずも……。けれど空襲や物資不足が続き、ある日……。
すごく地味な絵で温かみのある色彩で描かれているのに、ちょっとした台詞や映り込むものが戦時下であることを示すものばかりで、これは日常なんだけれど非日常なんだ、悲しいことがあった時間なんだというのを見終わった後に感じる。
すずのうっかりなところや、ちょっとした失敗、くすりと笑えるシーンが積み重なっていって、ゆっくりと世界が変わっていく感じ、途方にくれたような、取り残されたことへの悲しみや恐れ、どこで生きていけばいいんだろうとわからなくなる感じというのか……。それでもその変化や状況を受け入れて、この先も生きていく、そのありふれた当たり前にぐっと胸を掴まれました。すごい映画だ。
「何度だって君に会いにくる——」少年・クロードが初恋の女の子ロゼと交わした約束は、花が人を喰う“花嵐”によって引き裂かれた! ロゼがいなくなって5年。クロードは、18歳の可憐な美女に成長。実はロゼを奪った花を狩る“歌姫”になるため、女の子として楽院に通っていたのだ!! そんな彼(彼女!?)の前に、少女と見紛う“舞手”の少年・ノワールが現れる。出会い頭に彼に殺されかけたクロードとノワールの仲は最悪! しかも、ノワールにはある秘密が…!? 複雑、厄介に面倒臭く“恋の花”が絡み合う!!(裏表紙より)
何故続きが出ないんだという感想を当時あちこちで見かけた覚えがあるんですが、これは何故続きが出ないんだと思っても仕方がない。女装男子と男装女子のじれじれファンタジーです。
思いを通じあわせた初恋の少女ロゼを薔薇によって失ったクロードは、自らに花を殺す歌姫の才能があることを知り、親友の作った薬で十四歳の身体に時間を巻き戻して女装、歌姫と舞手の集まる楽院で歌姫になるための修行をすることになる。
花を殺す、歌姫と舞手、楽院生活、それぞれの有能な親友、ふたりのすれ違いなど美味しい要素がたっぷり詰まっていてもっと読みたいなあと思いました。男のクロードがちゃんとかっこいいのがずるい……!
江戸時代、前代未聞のベンチャー事業に生涯を賭けた男がいた。ミッションは「日本独自の暦」を作ること。碁打ちにして数学者・渋川春海の二十年にわたる奮闘・挫折・喜び、そして恋!!(帯より)
長らく積んでようやく読みました。
天を目指して生き、星となった人たちのお話だったなあ。地の上から星となるってこういう感じなのかと感慨深く読み終わった。
どうして、なぜ、と問いながら、失敗と恥を経て、そこに至る。主人公である渋川春海が星だと思って読んでいたんですが、最後が近付くにつれてそこにいた人たちみんなが星だっただとわかる、その繋がりを知って涙がこぼれました。こうやって人が繋がるって、いいなあ。
『光圀伝』をだいぶと前に読んであったので、光圀公が出てくるところはおっと思いました。
面白かった。
父親が被害者で、母親が加害者——。高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と、向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。(裏表紙より)
これはいやーな話だなあああ。『白雪姫殺人事件』に通じるような、他人の暴走みたいなものも感じるし、もっと当事者に近いことからいやらしい野次馬根性も見える。なのに他人事のようで、劇的に変わる人たちはいない。
「何がきっかけで家族が家族を殺すかわからない」というリアリティが怖い。何かがひとつ違うことで、人は簡単に家族を殺してしまうのかもしれない。真実と自分の心を知っているのは本人だけ。他人に語る資格はない。
殺人が起きた高橋家。その向かいの壊れ始めた遠藤家。スピーカー的な小島さと子という大まかな三つの視点なのですが、もうそれぞれが本当にいや! 理想的に見えて歪んでいる息苦しい高橋家も、全然ばらばらな方向を向いて喚き散らしているような感じの遠藤家も、他人の不幸は蜜の味みたいな小島さと子も、本当に全部いやだ……。それを強調するような小道具がいやな感じを増してすごい(褒め言葉)
いやだいやだと思いながら一気に読んでしまった。すごかった。
十七歳の少女・蓮華は、大切な人たちを奪った『鬼』に復讐する旅に出る。それこそが、残された蓮華にとって唯一の、生きる意味だからだ。だが、鬼の行方を捜す道中、同じ目的を持った青年・出雲と出会う。軽薄で軟派。しかも、蓮華が忘れようとした過去の記憶を刺激してくる嫌な男——そう思っていたのに、彼と接するうち、閉じていた蓮華の心はかき乱されて!? 宿命が織りなす和風幻想譚!(裏表紙より)
和風ファンタジーはめずらしいなあという気持ちで読む。鬼を退治する真実の一族の出身で、鬼糸という糸状の武器を用いる蓮華。一族の里が滅ぼされ、生き残りである籐二とともに仇の情報を集めていたが、道中出会った別の里の青年・出雲と鳥羽から、一族の里が次々に滅ぼされていることを聞き。
少女とおっさんと美青年と少年のチームが、鬼を退治するお話。全体的にこざっぱりとしていて一冊で解決するんですが、恋愛要素が薄くてもうちょっと! もうちょっと蓮華と出雲のかわいいところを見たかった!
本当の敵が誰なのかという真実は悲しかったですが、真実の一族であることを貫き通した彼女たちがかっこよかったです。