読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまでは——。しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。
「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった……!」
恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。(裏表紙より)
ちょーきゅんきゅんした。なんだろう、私はこの子たちを知っている感! どこかでこういう子がいるっていうことを知っている気持ちにさせられてしまった。コミュ能力が低くて、自分に自身が持てなくて、それでも息をひそめながら生きていた感じが、もう懐かしくって、恋が絡むとさらにきゅんきゅんしてしまいました。
特に表題作「百瀬、こっちを向いて。」の、「自分のような薄暗い電球がどうこうとそのころはまだ悩んでいて」という部分が、特にぎゅっときたのは、十代の彼らが持つ悩みや痛みは全部その時のほんの一時的なものだという希望が見えるからです。きっとそんなことに悩まないでいい日は来ると思う。
この文庫に収録された全作が好きです。「あの日の海」に取り残されたままの年上女性と年下男子、先生と女生徒、自分を不細工に偽る美少女と飾らない男子。特に先生と生徒もの「キャベツ畑に彼の声」はジブリの映画とかみたいだったなあ。身体を丸めて座っている女の子が見える気がした。「なみうちぎわ」の閉塞感と切なく純粋な恋は染みたし、「小梅が通る」は気持ちよかった。
すごく面白かったです。
PR

頼まれた荷を届ける「走り屋」の少女リンディは、ある日、王城の竜術師から荷を託される。それは、ドラゴニア王国の命運を左右するという王竜の卵だった!! 走り出したリンディを次々と襲う困難、そして後を追う竜騎兵——。竜術師見習いのアッシュ、謎の男ゼオンに助けられながら、リンディは荷を届けるため、王国の未来のため、命をかけて走りつづける!!(カバー折り返しより)
竜と人が共存する国、ドラゴニア。人は竜術をもって竜を従え、竜を生活に役立てている。しかし王竜と呼ばれる過去現在未来を見通すことができる竜は、国王である聖竜王としか交感できない。王竜の卵は、王位継承者の数だけ産み落とされ、王位に就く者の卵しか孵化しないのだ。
腐敗した王国と無能な王の時代、密かに産み落とされた二つ目の卵をめぐる物語。
竜と暮らす王国なんて、食いつかない方がおかしいだろう! という私好みの設定がちりばめられていました。本当に目的地まで走るだけのお話なんですが、この困難をくぐり、人に助けられ、もしかしたらこの人は……? と読みながら、最後に辿り着くのが本当に待ち遠しかった。一緒に旅をした気分だなあ。このお話、ちょっとした道具とか品物に世界観が見えるようで、どこか知らない世界の風を感じられたように思います。
リンディがもう、本当にどこにでもいる女の子で、使命感とか誇りとかたくさん持っているんだけれど、やっぱり折れてしまうところもあって。かわいいなあ。勇敢で気高い女の子は大好きだ。「お前が走れば世界は変わる」って、すごくいい台詞だった。受けたリンディが走り出すのも無理はないよ!
面白かったです。

人は有史以来、常に天を目指した。
「お洋服いっぱい買うから」雛/ヒビナ。
「オレ絶対有名になるから」乙/ツバメ。
「行って参りますわ」凰/アゲハ。
都市を守るため、三人の少女は翼をもって空にはばだく——。
近未来都市ウィーン——ミリオポリスに建造された超巨大タワー、〈ヴィェナ・タワー〉。それは、人の命を削って創られたものだった。
その横をかすめて、火の玉が墜ちる。落ちた星——ロシアの原子炉衛星アンタレスは、災厄の始まりでしかなかった。動きはじめる七つのテログループ。ようやく攻勢のテロ組織として、整いつつあったMSSに、いや三人の少女に最大の試練が訪れる。
天と地の間に生きる少女たちの物語。(カバー折り返しより)
オイレンとリンクする、衛星落下事件のMSS側視点の物語。MPBの三人娘、特に涼月はかなり惨い戦いを強いられていましたが、MSS三人組は三人でいることが当たり前なのでそこはちょっとほっとして読みました。
前線に出ていたオイレンの話とは違い、スプライトは事件首謀者の周辺人物が描かれることもあって、ちょっと軽い印象の話になっていた気がしますけれど、これ読む順番が違うと全然違う感想になるんだろうなあ。「電子レンジ」が何を意味するか知っている身としては、「冬真にげてー!!!」の心境だったんですけれども!
MPBとMSSがすれ違う瞬間はやっぱり鳥肌ものでした。涼月から見るのと凰から見るのと全然違って面白い。けれど私には、ちょっとすれててひん曲がった性格の、でもどこか熱い涼月の物語の方が合っている気がする。

「残された人生でやっておきたいこと」七十四歳のイコさんの場合それは、バイク・ツーリングだった。目的地は、五歳で死別した母の生家。東京から岡山まで、往復1200キロ。着いたのは、寂れた一軒の船宿だった。無人のはずなのに、そこには不思議な少女が住んでいた……。『魔女の宅急便』の著者が贈る、書き下ろし自伝的小説!(カバー折り返しより)
児童書の『魔女の宅急便』の角野さんの作品。七十四歳のイコさんの一人称で進む、イコさんと不思議な女の子ふーちゃんの旅のお話。久しぶりに一人称でがっつり読んだせいか、ちょっと読みにくかった。
母親の生家にいくと、そこにはイコさんが持っている写真に映っている母、それも十二歳のままのふーちゃんが幽霊となって住み着いていた。バイクに乗って旅を始める二人。この旅が、今まで紡げなかった時間を、また別の形で楽しく紡いでいるようで微笑ましいです。でも時々覗く寂しいところもあったりなどして。心残り、というのがキーになるのですが、誰かとの記憶というものの重みや大切さが実感できて、特にケイさんのエピソードは切なかったな……。
自伝的小説と銘打ってあるんですが、この本一冊だけでは、どのへんが角野さんの自伝的なところか全然分からなくて(あとがきもないし)、ちょっと不思議な印象の物語でした。

アリシアとカシュヴァーンの間に設定された、ルアークの誕生日。盛大な誕生会を開催することになったライセン一家は、それぞれ個性溢れる祝いの品を用意するが……そこにやってきた、奇妙な誕生祝いとは!? また、ティルナードがセイグラムに隠れて外出をするあんな一日や、レネがバルロイから決別(?)するこんな大騒動など、これまで語られることのなかった五つの「絆」を紡ぐ短編集が登場! 死神妻と暴君夫、いつもとちょっとだけ違うおかしな夫婦の日常は、いつも以上に甘〜いラブが大増量!(裏表紙より)
いつにもましてにやにや巻でした。このシリーズも電車で読めない話だよな……(にやけてしまうから)
ルアークの物語、ティルの物語、エルティーナの物語、レネとバルロイの物語、そして夫婦の物語と、五つの短編が収録されています。どこかしら影のある死神姫シリーズの、その影の部分が結構見えた巻かな、と思いました。本編はアリシアの目から語られることが多いせいか、あんまり後ろを振り向かない印象があるので……。
ティルぼっちゃんが成長したことに目頭が熱くなります。見守るカシュヴァーンの目が優しいこと。セイグラムにも助けられていますが、ティルナードはいい男、になるにはまだまだ遠そうだなあとちょっと思ったりも。ティルが悪いわけではなくて、周りが怪物じみた手腕を持った人たちばかりなので、ティルはなかなか大変なのではないでしょうか。
エルティーナとジスカルドは、関係が変わったらいいな、と希望を抱いて本編を読みたいと思います。ライセン夫婦はらぶらぶでごちそうさまでした。

アファリーン王国の男勝りの女将軍・レイア。敵対するメフル王国の軍人・リギュロン。武勇を誇る二人は、それぞれに中立国の祭見物に行った先で出逢った。身分を隠したまま意気投合した二人は自然と惹かれ合い、初めての恋に落ちた。再会を誓い国に戻り、恋心を育んでいた二人だったが、時を置かずに両国間の開戦の報がもたらされた。二人が再会したのは、戦場。互いに敵軍の将として——。(裏表紙より)
面白かった……ときめいた……! 戦場で出会ったのは私/俺が恋をした人でした、という話が大好きです。
レイアが女将軍という設定で、紹介文だけを読んだ状態で中途半端に女の子だったら残念かもなあと思っていたんですが、将軍らしさの中に女らしさについて葛藤を持つ彼女が、もうほんとかわいくて! 兵士たちから「あれは、女として『ない』(意訳)」と言われるくらいの武勇を誇るので、冒頭から敵将との一騎打ちというシーンから始まるのがすごい。なのに自分にコンプレックスを持っているところが、本当いい子だなあ……。
リギュロンもいい男だったなあ。ちょっとのうみそが筋肉っぽいところがかわいいです。なのに恋愛ごとについてちょっと鈍いレイアには優位に立てるところがいい!
二人の物語はもちろん、彼らを取り巻く人たちが心根のいい人たちが多くて、結末は、レイアとリギュロン、二人ともお互いの使命から目を背けずに立ち向かった二人だからこそ手に入れることができた未来だったなと思います。

ひとつしか瞳をもたない鷹のアキと暮らす少女・ムメは、都から来たばかりの少年・春名丸と出会った。それが縁で春名丸の父親・小野春風にさまざまなことを教わるムメ。やがて見違えるような娘へと育ったムメは、春名丸との友情をはぐくんでいく。だがそのころ、羽州では都に対する戦いが起きようとしていて——!! それが、東北の地、羽州で起きた〈元慶の乱〉のはじまりだった。(カバー折り返しより)
東北を舞台にした、歴史の流れの裏にある人々の物語、という感じでしょうか。なんとなく上橋菜穂子さんの『狐笛のかなた』みたいな話だと思い込んでいたみたいで、ムメは賢く健やかな子だし、春名丸はちょっとまっすぐすぎるけれど気のつくいい子だし、カラスは迷いながらも大事なものを失わない子でした。それから上記の紹介文ではムメにロマンス的な香りがするんですが、実はそんなことはあんまりなかった。最後まで、主人公は地に足の着いた娘さんでした。ムメの物の見方や考え方がはっきりしていて、彼女が大事なことを発言すると目が覚める思いがしました。なので、ジオがどう変わるのかをちゃんと見たかったなあ。
最後の「記録は、もとよりないが」という一文がすごく響いてくる。でも、ここにこうして物語があるように生きた人たちがいたんだな。

感染から数週間で確実に死に至る、その驚異的なウイルスの感染ルートはただひとつ、唇を合わせること。
昔は愛情を示すとされたその行為は禁じられ、封印されたはずだった。
外界から隔絶され、純血を尊ぶ全寮制の学園、リセ・アルビュス。
一人の女生徒の死をきっかけに、不穏な噂がささやかれはじめる。
彼女の死は、あの病によるものらしい、と。
学園は静かな衝撃に包まれた。
不安と疑いが増殖する中、風変わりな犯人探しが始まった……。(カバー折り返しより)
全寮制女子校で百合な話だと思っていたら、百合は百合でも共学だったのでちょっとしょんぼりしました。が、面白かったです。この疑心暗鬼とダークさが!
誰がウイルスのキャリアなのかというのは読み始めた時点で大体分かるのですが、物語のきっかけになった女生徒の死の原因は? 犯人は? を探していくのにどきどきしました。ヤングアダルト向けにしてあるせいか、それほどミステリーものとして濃いわけではなく、一つずつあっさりと謎が解明されていく。
何よりも、『キス』という行為の描写の背徳感やエロスが滲み出ていて、ついぞくぞくっとしてしまう。
雰囲気はにおってましたが、オチがそうくるかー! 男女の睦み合いを汚らわしく感じたこともある彼女が、『キス』を武器にするかー……。とてもダークでいいと思いました。
私が読んだのは旧版なんですが、新装版が出ていて、しかもサイドストーリーが収録されているなんて! 読みたいなー。

信じていた親友に裏切られて、ショックで教室を飛び出した天野蓮、14歳。瀕死の小鳥を助けたことをきっかけに、運命が大きく変わる。愛犬ハチローに異世界の神パンの魂が乗り移ったり、無理やり中華風な異世界に連れて行かれたり!! しかも、悪い神様を倒さないと、元の世界に帰れないなんて!?
少女小説界珠玉の作家、喜多みどりが贈る、昨日まで普通だった女子中学生、ある日! 突然! の異世界トリップ物語!!(カバー折り返しより)
女子中学生が中華風異世界に飛ばされてしまい、予言の娘として終末に向かう世界を救うお話。読み終わった後、よくまとまったなあ! と思いました。オチがとてもかわいい(?)というか、こういう些細なことが少しずつ人をすれ違わせるものだなと感じさせるもので、ちょっと拍子抜けもしましたけれど、ともかく女の子の友情!!(握りこぶし) 優等生で行動力もあって正義感の強い蓮が、最後に「でも本当は……」と思うところにいきなりきゅーん! としました。
中華風異世界といっても、皇帝がー後宮がーという話ではなく、天仙や地仙がいて天の意志が存在する世界の救世の物語なので、恋愛方面は淡い感じですがそこが蓮らしくてとてもいい。今のままではいられない予感を抱きながら、きっと蓮はいい女の子になっていくだろうと思いました。