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読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
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幸福な食卓
父と母と兄に囲まれ、佐和子は普通の家庭にいたはずだった。だが母は家族と離れて一人暮らし、将来を有望されていた兄は農業に精を出し、父は父さんを止めると宣言した。それでも、佐和子は幸福な日々で大人になっていく。中学生から高校生の時間。

数年前に、映画のCMで、冬の夕方の道を女子高生がマフラーに顔を埋めながらただ歩いていくという画が、ずーっと頭の中にあって、先日映画が放送されたけれど見られなかったので、原作を借りてみた。
内容は、幸福。ぱあっと明るい幸福じゃなくて、しんしんと降り積もる幸福という感じ。「幸福な朝食」「バイブル」「救世主」は当たり前の日々で、突然襲ってくる「プレゼントの効用」にどきっとした。でもやっぱりこれも日々も積み重ねのひとつなんだなあと思ったりもする。
「大丈夫だよ」
「そう?」
「大丈夫。僕、大きくなるから」
「そっか。そうだね」
『プレゼントの効用』

大浦君の止まった時間と、弟君の進む時間。佐和子がそれを認めた瞬間にほろりとした。
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あやつられ文楽鑑賞
文楽観劇のド素人三浦しをんが、いかにして文楽という芸能にのめり込んでいったかの記録

文楽見てみたいわぁと思う一冊だった(見事に釣られている)
しをんさんの、人形さんや三味線さんや太夫さんの観察がまた面白くて。UFOキャッチャーをする三味線さん、大リーグボール三号@巨人の星に例える三味線さんとか、それに対するしをんさんのツッコミがまた面白い(例:魂こめてキャッチしたい)
演目について書かれているのも、初めて文楽を見ようと思った時の参考になりそうです。「仮名手本忠臣蔵」や「女殺油地獄」がいいなあと思った。
「仮名手本〜」はそのまま忠臣蔵がモチーフになった話で、「女殺〜」は近松門左衛門の作。油屋の人妻が、別の油屋の放蕩息子に金を奪われて殺されるという話なのだけれど、この本で書かれる筋がとっても面白い! 放蕩息子は人妻に甘えている節があって、それが何故金を奪って殺すことになったのか、と考えさせられる話。放蕩息子の心理描写が意図的に省かれているらしくて、しをんさんの解説を読んでもとても面白い。
三浦しをんさんは「仏果を得ず」という文楽の世界を書いた小説も書いているので、また読みたいところ。
Bolero―世界でいちばん幸せな屋上 (ミルリトン探偵局シリーズ 2)
音と円田さんのミルリトン探偵局に、黒猫シンクのお土産によって、また新しい事件が。二つのパートが重なる、幸福な一冊。

前作は文庫本で貸して頂いたのが、今回はハードカバー。写真がいっぱいで綺麗。モノクロいいなあ。カラーも綺麗。
物語は前作同様、黒猫シンクの持ち帰るものから、音(おん)と円田さんが推理するというもの。推理といってもお話作りをすることなので、始終ほのぼのとして幸せな本だと思う。
音パートのひとつひとつ探していくような平和な日々もいいけれど、もうひとつのパート(勝手に物語パートと呼んでいる)の話も、つながりが見えて素敵だった。「ルーフトップ・パラダイス」を巡るお話になっていて、つながりというものにそそられる私としては大変幸せだった。
ちょっと登場する音楽を聞きたくなって父に聞いてみた。ら、ニール・ヤングは二枚だけ持っていて、「オンリー・ラブ・キャン・ブレイク・ユア・ハート」はなくて、ニール・ヤングよりもグループの(聞き取れなかった)方が父は好きらしい。なるほど。なんか、本から現実につなげていくのも幸せなことだなあと思うのでした。
日本の童話名作選 現代篇 (講談社文芸文庫 こJ 23)
七〇年代から日本社会の激動は童話の世界を大きく変えた。大人が子どもに与える教訓的な物語は影をひそめ、子どもの空想を刺激し日常とは別の次元に誘う幼年童話、ファンタジーの名作が生まれる一方、いじめや受験戦争に蝕まれる十代の心を繊細に描くヤングアダルト文学も登場。若い才能ある書き手達が大人と子どもの文学の境界を双方から軽やかに突破していった。山下明生、灰谷健次郎、江國香織、村上春樹等の名品二六篇。(裏表紙より)

先生が貸してくださった一冊。詩から童話から現代小説っぽいものまで。
現代小説っぽいもの、川島誠「電話がなっている」はこの人の短編集に収録されている。受験によってクラス階級が決まり、それが未来を決めるという時代の、彼と彼女の恋の話。暗い。「電話がなっている。君からだ」の文章から、電話を取らない「ぼく」がすぐに浮かび上がってきて、どうなるんだろうとびくびくしていた。中学生高校生くらいで初めて読んだ時は、かなり怖かった。ダークなものを書く人なんだなあと思って読み返してなかったけれど、久々に読んで、面白いなあと思った。
池澤夏樹「絵はがき屋さん」が良かった。どこかの島の海の青色が見える気がした。本当に『その時だけの魔法』が描かれていて、現代の童話だなあとか。
江國香織「草之丞の話」は「つめたいよるに」にも収録されている。この話も好きだなあ。お母さんと草之丞の出会いが見たい。
書影貼る時に気付いたけれど、この本ちょーたけー!! 1400円もするのか!
きみはポラリス
短編集。「永遠に完成しない二通の手紙」「裏切らないこと」「私たちがしたこと」「夜にあふれるもの」「骨片」「ペーパークラフト」「森を歩く」「優雅な生活」「春太の毎日」「冬の一等星」「永遠に続く手紙の最初の一文」

恋愛にまつわる短編集。全体の雰囲気はいいのだけれど、「風が強く吹いている」の明るさの方が好きだ……。
「永遠に〜」二作は同じ世界観。男→男の話で、ショートショート。軽くBLかあと思っていたら、次の「裏切らないこと」がえらい始まり方をしたので、これは読むの失敗したかなあと思ったけれど、段々面白くなってきた。前園さん夫婦のエピソードに切きゅん(切なさきゅん)した。
「私たちがしたこと」は王道、直球で来て怖かった。一人称を意識しているのか、後半の文章が「〜している」形になっているのが気になった。
「夜にあふれるもの」は女→←女の話。ダーク。でも嫌いじゃない。結構好きかもしれん。
「骨片」は教え子→先生。骨をこっそり持っておく話。嫌いじゃない。好きだが、ラストはちょっと嫌だな……。他人の骨と混ぜるのか……。
「ペーパークラフト」は夫婦のところに夫のかつての友人が現れて、という三角関係もの。ダーク。大人向けな雰囲気が。ドラマや漫画みたいな終わり方。理由は「私、妊娠したかもしれない」の台詞。
「森を歩く」「優雅な生活」はコメディチックな雰囲気が流れていて、にこにこして読んだ。
「春太の毎日」は面白かった! 一番好きかも。拾われた男と拾った女とその恋人(誇張)の話。純愛。オススメ。

「冬の一等星」も好きだ。車中で眠るくせを持った少女が、突如現れた男に車を奪われて、短い誘拐をされる話。
信じる? と文蔵は聞いた。何度聞かれても、私は信じると答えるだろう。それを教えてくれたのは文蔵だ。
(中略)
八歳の冬の日からずっと、強く輝くものが私の胸のうちに宿っている。
「冬の一等星」

何も解決していないけれど、救いがあるというのか。そういう感じがたまらなく好きだ。
万華鏡―ブラッドベリ自選傑作短編集 (サンリオSF文庫)
アメリカの代表的な作家、レイ・ブラッドベリの自選SF短編集。
「アンリ・マチスのポーカー・チップの目」「草原」「歓迎と別離」「メランコリイの妙薬」「鉢の底の果物」「イラ」「小ねずみ夫婦」「小さな殺人者」「国家短距離ランナー」「すると岩が叫んだ」「見えない少年」「夜の邂逅」「狐と森」「骨」「たんぽぽのお酒」「万華鏡」「日と影」「刺青の男」「霧笛」「こびと」「熱にうかされて」「すばらしき白服」「優しく雨ぞ降りしきる」

先生が「たんぽぽのお酒がいいよ」と仰ったので借りてみた。
言い回しがとても素敵。
さあ、典型的なガーベイのだんまりが始まった。そこに坐っているのは世界一の沈黙の生産者であり配給業者である。彼に注文すればたちどころに沈黙をパッケージし、咳払いとささやきで紐をかけ配送してくれるのだ。沈黙の品数も豊富だ。当惑、苦痛、平静、平穏、無関心、幸福、金色、神経過敏などいろいろある。これらの沈黙の山のなかにガーベイ氏は坐っているのだ。
「アンリ・マチスのポーカー・チップの目」

話の終わり方も、どきっとするもの、ほうっと息を吐くものがあって、とても好きだった。
「たんぽぽのお酒」は連作で、その中の表題作「たんぽぽのお酒」が好き。たんぽぽのお酒の描写がとても綺麗。
「国家短距離走ランナー」はこれこそ映画みたいで面白かった。
この本の中で一番好きだったのが「万華鏡」!
ロケットが爆発して宇宙に散り散りになった船員たちは、かろうじて電話で繋がれるものの、向かう先は宇宙の塵だった。感情が暴走し、最後の瞬間誰かを傷付けたり、無気力になったりする船員たち。そしてホリスは……。
「願いごとをするのよ」母親がいった。「願いごとを」
ワルプルギスの夜、黒猫とダンスを。 (一迅社文庫 アイリス こ 3-1)
買ったばかりの赤い靴をはいたら、魔女と体が入れ替わってしまった…!?
14歳のルナを突然襲った不幸、それは『赤い靴の呪い』だった! 魔女の森に放り出されたルナは、ワガママだけど顔はいい猫耳男と、ダンディなネズミと共に、元に戻るための魔法のダンスを探すことになるが…。
大魔女の体を持った気弱少女と、自称使い魔の猫耳ヒーロー+最強のネズミ。1人と2匹が奏でる、マジック★ファンタジー開演!!(裏表紙より)

購入した理由の大きなところを占めるのは、ネット出身の古戸マチコさんの本だからと、文庫が好きだからと、イラストがカズアキさんだからということ。
面白かった! ルナががんばっていくところとか(すごいよ、あんなになるんだぜ……)、俺様ヘタレのノーチェのかわいさとか(ニャン、チュー、スリー!)、最強なネズチューのかっこよさとか!(紳士的でいられない時があるネズミ)しかしネズチューをつい金色で想像して「ウフコック……」と呼びたくなるんだぜ。
ああ、本当にネズチュー好きだ。とろりとした声で名前を呼ばれたい。
「これ以上の幸せはない」の意味が分かったとき、ぞくぞくしました……。とても楽しくてときめきな小説でした!
今気付いたけど、ピエナの家の挿絵で、外風景のトーン貼ってるのがすごい! はあ、イラスト本当に好きだわー。
海の底
桜祭りの行われる横須賀基地より謎の巨大甲殻類が襲来した。泊していた潜水艦『きりしお』に逃げ込んだ二人の実習幹部・夏木と冬原、そして高三から小学一年生までの子どもたち。閉じ込められた空間での衝突、地上での防衛戦。六日間を乗り越える、大人と子どもたちの行方は。

全編シリアスな空気で息が詰まりました。特に狭い空間での圭介と望たちの話はハラハラ。地上での警察側の話は結構わくわくする感じで、二つが交代して進むので引き込まれていった感じだった。
夏木が始終熱血で、冬原が重大な時はにこやかに絞めるので、いいコンビだと思ったり。それから望は冬原の言った通り良い子だ……。「クジラの彼」で確か恋愛面の話があるんだよな。「クジラの彼」もう一回読みたいわー。
「やっぱり俺は、お前らが来なければよかったって一番初めに思ったんだ。お前らが来なかったら艦長は死なずに済んだって。そんな風に思われたのが最初なんて嫌だろ。どうせなら幸せに出会って幸せに始まった方がいいだろ」

印象としてはライトなミリタリもので、ちょっと軽めの読書したいわーと思ったときにいくといいかもしれない。
いっちばん
捕まえられない掏摸の話を日限の親分から聞いた若だんな。一方で妖たちは若だんなを喜ばそうと三手に別れて街へ品物を探しに行く「いっちばん」。品比べをすることになった長崎屋と二店の物語「いっぷく」。若だんなを攫った天狗と狐の小競り合い「天狗の使い魔」。菓子作りの修行に出た栄吉は、後から入ってきたにも関わらず菓子作りの上手い八助に思い悩む「餡子は甘いか」。雛屋のお雛が現れるもその塗り壁化粧がなくて人々は目を剥き、その上婚約者のいるお雛に惚れる人物が現れて……「ひなのちよがみ」。

段々文章が幼い感じになってきている気がするんだけど、気のせいかな。
若だんなが相変わらず大事にされてるけど、今回は結構がんばった感じだと。かわいい話は表題作「いっちばん」。若だんなが愛されてる。なんとなく好きなのは栄吉が思い悩む「餡子は甘いか」。栄吉が苦しむのは切なかった。小気味よかったのは「いっぷく」。意外なラストでおおっと思った。
そしてそろそろ若だんなの恋愛面の話をー! 「ちんぷんかん」収録の「はるがいくよ」も良かったけどー!
wonder wonderful 上wonder wonderful 下
異世界旅行常習者ひなたを妹に持つ、姉で会社員のこかげは、ある日異世界の国ディーカルアで病に伏しているひなたの危機を知り、自らも異世界へ旅立った。だがそこではこかげは歓迎されず、何故かひどく敵視されて(上巻)
ザキの心を取り戻し、ひなたを取り戻す作戦を開始したこかげたち。ひなたの作った花祭りに乗じて、二十三聖女の伝説を利用したこかげたちは、闇の中ユーリアの城に正面から乗り込む。そこでユーリアが告げた心は、彼女が自身に課した二つの「賭け」。やがてすべてが終わって花祭りが始まり、それが終わる頃、こかげについに帰還の時が。(下巻)

すごくすごくすごく良かった。ラスト周辺切なくて仕方なかった。派手な戦いはないけれど、人とのつながりがとても綺麗で、下巻から段々と良い方向に進んでいくのはとても素敵だった。仲良し万歳。視点が固定されているから、とても読みやすくて感情移入した。ノリの良いこかげの内面が見られてかわいくてかっこいいなあ! とずっと思ってた。だから番外編の色々はとても面白く読みました。

上巻の見所。ひとつ目。こかげに向けられるとても痛い敵意。試される辺りがとても痛くて痛くて、泣きそうになった。この辺り、普通は歓迎されない異世界人というのが描かれていてリアルだった。そこから自分で仕事をして居場所を作ろうというこかげが素敵でかっこいい。
ディレイと一緒に寝させられる、というシーンは色々悶えた。少年と大人女性か! とか。どきどきというよりわくわくの気持ちの方が大きかったかも。
落ちた……と思ったのは、ルカナートがこかげを呼び戻す「頼むから、俺を見てくれ」のシーン。大人の二人だからこそかわせるシーンだったのではないかなと。
下巻。ユーリアの賭けから、海のシーン。「何度でもお前の存在に感謝するよ」は、エゴばかりだと自分を責めるこかげに、作り上げてこれたことがあると教えてくれて、ほろりとした。それから「薄い」の辺りは噴いた。君らずっとそのままでいいと思うよ!
ミーナたちの花吹雪から、ルカナートとのあれへの流れは切なかった。花吹雪直後は、走って! と心の中で叫んだ。「私、もうすぐ帰るから」「……ああ。聞いてる」の「……」の部分、こかげが会いに来なければ何も言うまいと思っていた隊長が、その瞬間何を思ったのかなと思うと悶える。
ああ、すごく、好きだな。そんな風に思える物語で、すごくすごく素敵でした。だいすきだー!
Profile
Author:月子
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