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春のオルガン (新潮文庫)
小学校を卒業した春休み、私は弟のテツと河原に放置されたバスで眠った——。大人たちのトラブル、自分もまた子供から大人に変わってゆくことへの戸惑いの中で、トモミは少しずつまだ見ぬ世界に足を踏み出してゆく。ガラクタ、野良猫たち、雷の音……ばらばらだったすべてが、いつかひとつでも欠けてはらないものになっていた。少女の揺れ動く季節を瑞々しく描いた珠玉の物語。

この物語で始終漂っている空気は、きっと卵の中にいるような、羊水の中みたいな感じでぬるくて重い。世界はどこか遠くて暗くて、トモミは手探りで世界の形を確かめている。
家族や隣人がどこか奇妙に映っている気がして、胸が重たくなった。それが変身前の少女の風景だとすると、すごくリアルに描かれているなあと思った。
この話ではトモミが学校でどんな子かは描かれていないし(多分成績優秀で気の強い子だったんだろう)、おばさんの息子がどうなったかは分からないし(亡くなったか成長して家を出たか)、お母さんとお父さんはどうなったかは分からない(これが一番どうなったか分からない)、色々なことが解決していないけれど、でも私は気にならなかった。いつか知るときが来る、という感覚があるからかもしれない。ラスト、手探りで進む人のようなトモミとテツがいたから。
少女って薄暗い部分もあるな、と思った一冊。
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