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春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫―ホワイトハート)
 ある寒い冬の日、売れない絵描きの部屋をたずねてきたふしぎな猫の魔法で、壁に描いた「窓」のなかでは、毎日暖かい春の風景がひろがる。そこに絵描きは思いがけないものを見つけ……(「春の窓」)。
 あなたを、知らぬ間に、身近な日常の空間から、はるかな空想の時間へと連れゆく、安房直子のメルヘン。「北風のわすれたハンカチ」「あるジャム屋の話」など、心がほぐれ、やすらぐ、十二作品を収録。(裏表紙より)

「白いおうむの森」を読んだ覚えがあるのですが、もう忘れてしまっている。安房直子さんは、しっとりとしたメルヘンなのに、どうしようもないやるせなさというか、悲しさというか、ちょっと寂しい雰囲気が漂っているところが好きです。というわけで久しぶりに読んでみた。
収録作品は「黄色いスカーフ」「あるジャム屋の話」「北風のわすれたハンカチ」「日暮れの海の物語」「だれにも見えないベランダ」「小さい金の針」「星のおはじき」「海からの電話」「天窓のある家」「海からの贈りもの」「春の窓」「ゆきひらの話」。
一番好きなのは「あるジャム屋の話」かなあ。鹿の娘がジャム屋を手伝いにきた、二人で店を大きくしてきた、男はその日々で十分だと思っていたけれど……。その、十分だったんだよ、人間になんてならなくていいんだよ、というところが切なくて。
「春の窓」も素敵なメルヘンでした。魔法を使える猫! 素敵!
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