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洪水前夜(あふるるみずのよせぬまに) (新書館ウィングス文庫)
「バビロニアの都、シュメールのたまもの」
——そう謳われるウルの都に不可避の運命がやって来る。
勇士アダイアトゥムは、それを予知していた。
天使の子にして、バビロンの不死身の勇士・アダ。
〈堕ちた天使〉を殺しに向かう少年の姿のアダを、
親友の息子トバルカインが執拗につけ狙う。
そして、怪物化した〈半天使〉が。
ともに力を合わせて戦う中、
アダとバルの間に芽生えたものは……!?
伝説の洪水が近づく古代バビロニアを舞台におくる、
胸をうつ愛と生命の物語!!(裏表紙より)

古代オリエント世界が舞台の、神話的世界。書き出しからふおおおと鼻息が荒くなりました。

 この世へ生まれ出るために、彼は母親の内蔵を食らった。


そこから続く誕生の描写がもう生々しくってえぐくって好き! と思ってしまいましたすみません。
両性具有の天使の子、アダ。いつか人から隠れるほどの巨人となってしまう運命を持つバル。バルの家族を殺した過去を持つアダを、バルは憎しみを持って付けねらうが、アダが口にするのはこの世の終末の大洪水のこと。天使殺しを繰り返すアダは、怪物化した半天使ネピリムをバルとともに追うことに。
双方の不器用具合がたまらない。アダはもうずいぶん長く生きているし、バルは青臭すぎるし、すぐに素直にはなれないけれど、お互いを受け止める存在として実感したときの繋がり合いがもうね! 愛を確かめ合うシーンの壮大さが好きすぎる。世界の終わりを予期しながら、相手の存在を確かめ合うというこの、ね!
アダとバルの旅のその後「残照、あるいはアダイアトゥムの遺言」ではまた新しい始まりの予感があって、雄々しくたくましくなったバルがとてもよかったです。
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