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魔女の赤い太陽 樹海の娘と月狩りの騎士 (コバルト文庫)
幼い頃の記憶がなく、人里離れて薬師の師アロとふたりで暮らす少女ルーナエは、時折家を訪れる隻眼の青年イグニスに惹かれていた。しかしルーナエが15の誕生日を迎えてからほどなく、アロが失踪した。あとには不穏な内容の手紙が残されていた。アロを探すため、イグニスを頼りに王都へ出たルーナエは、王国の暗部に関わる秘密に巻き込まれてしまい!? 少女をめぐる、哀しくも切ない恋物語!(裏表紙より)

この紹介文から想像される話を、もっとシリアスにしてしっとりさせて切なくさせたのがこの物語です。もっといけいけで無鉄砲な娘さんが、王都に乗り込んでいって、ヒーローになだめられる方向かと思いきや、まったくの正反対で、非常に私好みの切ない話でした。
自分を助けてくれた隻眼の青年イグニスに恋をする、ルーナエ。過去のルーナエを知っているというイグニスはルーナエに、俺のことなど忘れてしまっていいんだよ、という。その悲しい優しさを飲み込みながら、イグニスを信じていようと決めたルーナエだったけれど、今はたった一人の家族である師匠のアロが失踪したことをきっかけに、王都へ。そこで、イグニスが隠し続け、ルーナエが見ないふりをしていた彼らの事情が明らかになって。
何が美味しいって、ルーナエとイグニスの関係がすごくいい! 押せ押せとか駆け引きとかじゃなくて、もうすっごくルーナエが大人。イグニスが事情を隠そうとしていることを理解しながら、私は彼を信じていたいからとそれを飲み込む。そして、真相が明らかになると、ルーナエの強さは、少女らしくて優しい力強いものになっている。そして反比例する、ヒーロー・イグニスのだめさ加減笑 十も年上のくせに、一番弱くて、一番悲しい人だったので、ルーナエが包み込むように一緒にいると約束してくれたところには、私がきゅーんとなってしまった。
東堂さんは本当にしっとりしたいい話を書かれるなあ! もっとこういう話を読みたいです。
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