読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
「あの雲が、本当のことを全部隠してるんだ」
常に上空を覆う雲によって、空の青さを知らない世界。
雲を払えるのは《ヘクセ》と呼ばれる魔法使いの少年少女だけ。
並外れた飛行技術を持つ少年カリムは、幼馴染みで当代随一の《ヘクセ》揺月と再会する。
しかし彼女はある病により、昔とはまるで別人で……?
「高く飛べない」少年と「空でしか生きられない」少女の邂逅が、世界の色を変えていく。
第21回スニーカー大賞《優秀賞》受賞作。(Amazonより)
子どもたちが空を飛び、精霊の力を用いて社会を動かすこの世界。歳を重ねることで能力を失う子どもたちの中、未だ力を残して空を飛び回る少年少女のすれ違いと小さな変化のお話。
とてもロマンティックで、少年少女のすれ違いもだもだがじれったくも微笑ましい。空を飛ぶことで厚い雲の上から精霊を呼ぶっていうのは特別感があっていいな。
ただ、特殊な言葉やルビを用いた表現は独特で美しいんですが、私たちのいるこの世界とどのように違うのかがほとんど伝わってこなくて想像しづらかったのがすごく残念。どういう建物なの? どのくらいの高さなの? この世界や社会の仕組みってどうなっているの? という部分が置き去りなので、とても御伽話めいている。まさしく「魔法使いの世界」なんだけれど、具体的な景色が全然浮かばなくて。
それでも失敗のせいで後悔を抱えてすれ違い続ける少年と、寂しさを紛らわせることができず素直にそれを口にすらできない少女と、そんな彼を見守る少女と、という三角関係とその変化が王道でじれじれもだもだして楽しかったです。
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