読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
僕は小説の主人公になり得ない人間だ。学生で作家デビューしたものの、発表した作品は酷評され売り上げも振るわない……。物語を紡ぐ意味を見失った僕の前に現れた、同い年の人気作家・小余綾詩凪。二人で小説を合作するうち、僕は彼女の秘密に気がつく。彼女の言う“小説の神様”とは? そして合作の行方は? 書くことでしか進めない、不器用な僕たちの先の見えない青春!(裏表紙より)
すべての台詞がぐさぐさ胸を突き刺す。一也と詩凪の語ることは、相反しているけれどどちらも正しくて、結局は「自分は何を信じて書くか」ということしかないんだろうなあ。
この作品の願いはきっと、作家はみんな、作品を愛してくれる人のために書いてほしいということなんだろう。悪評や言いがかりに負けず、それでもあなたの書く物語が好きだと言ってくれる人の存在がどれだけ尊いかということを伝えたいってことなんだ。
言葉の強さというのも感じました。作中ではある二人が、他者からの言葉で語るための言葉を失うんですが、小説に力なんてないかもしれないけれど言葉はあっさりと胸をえぐるんですよね。シンプルだからこそ、そしてそれをまっすぐに受け止めてしまうからこそ再起不能に近いところまで陥ってしまう。
すごく考えさせられる作品だったのですが、祈りと願いと希望に満ちていて、頑張ろうと思えました。
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十七歳の貴志子は、親子ほどに歳が違う恋人の有実から、彼の娘の晃子を預かってほしいと頼まれた。晃子は十五歳。気が進まなかった貴志子だが…? 表題作『月の輝く夜に』のほか、同じく文庫未収録作品『少女小説家を殺せ!』『クララ白書番外編 お姉さまたちの日々』を収録。そして文庫・単行本で134万部を記録した不朽の名作『ざ・ちぇんじ!』上下巻を併せた、氷室冴子ファン必読の一冊!(裏表紙より)
「月の輝く夜に」「ざ・ちぇんじ!」「少女小説家を殺せ!」「クララ白書番外編」を収録。合本なので653ページと少女小説ではなかなかお目にかかれないレベルで分厚いです。
「ざ・ちぇんじ!」はとりかへばや物語を下敷きにしたもので、久しぶりに読みましたがめちゃくちゃ面白かったです。コミックス版も読みたくなってしまった。
冒頭に収録されている「月の輝く夜に」は打って変わって静かな作品で、文章の美しさや物悲しい雰囲気などを堪能しました。愛と憎しみと侘しさを感じて、「ざ・ちぇんじ!」のカラーを想像して読み始めるとおや? と思ったんですが、めちゃくちゃ綺麗でした。
『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』を読んだからか、「少女小説家を殺せ!」も「クララ白書」も別の視点から読めた気がしました。
ローラの元に恋人のマニから電話が入る。組織のボスの10万マルクをなくしてしまった、助けてくれという内容だった。受け渡しは12時。電話が入ったのは11時40分。あと20分で10万マルクもの大金を作らなければならない。ローラは彼のために疾走する。
20分間で10万マルクを調達して彼の元に運ぶ。二人が生き残った上でハッピーエンドになるためにはどう行動すればいいかという話で、時間ものというので見始めたんですが、演出が面白くて見入ってしまった。数秒の違い誰かに声をかけた、こう返答した、などのささいな出来事の積み重ねで結末が変わる。ローラだけでなく関わった人の未来までも変わっているらしいのがすごく面白いです。すれ違ったこの人が実は……!? みたいな驚きもあり、ポップなのにヒューマンドラマだわ……と思いました。
そんなんありかよっていうお金の集め方をされてびっくりしました(伏線があったとはいえそれをどう持ってくるのかどきどきしてましたが)。ローラはもうマニと別れていいと思うよ……笑
2001年。ボストンの新聞「ボストン・グローブ」のチームスポットライトのメンバーはカトリック教会で起こった神父による性的虐待事件を捜査する。被害者や関係者に接触し、協会が隠蔽工作を行っている可能性に行き着いたメンバーだったが、様々な障害に遭うが……。
カトリック教会で神父が犯した性的虐待事件。それをスクープした人々を描く。
宗教という巨大な権力が覆い隠す真実に光を当てる。ジャーナリストたちの思いもあるのですが、どんな風にして被害者たちが告白したのかというところが一番胸に痛かったかなあ……。マスコミが権力に屈することで自衛するのは理解できるけれど、やはりそれでも本当のことを広く知ってもらわなければと心を奮い立たせてほしいという気持ちがあります。この作品の品の良さというのか、そうした「暴いてやったぞ」とひけらかすのではなくて、あくまで日常の一部みたいに静かに描いているのがいいところだと思いました。
イスラとの休戦交渉の座に就いた空の一族の要求は、風呼びの少女ニナ・ヴィエントの身柄だった。イグナシオの取りなしにより機会を得たカルエルは、出立の日、想いの丈を彼女にぶつける。「このまま逃げよう、クレア。ふたりで。空の果てまで——」かつての力を取り戻し、愛すべき人を救った風呼びの少女。革命によりすべてを失い、追放劇の果てにかけがえのない生を得た元皇子。ふたりの選ぶ道、未来は……。そしてイスラは「空の果て」にたどり着く。すべての謎が解き明かされる! 超弩級スカイ・オペラ「恋歌」、感動のフィナーレ!!(裏表紙より)
拍手! という冒険の終わりと新しい旅立ちの最終巻でした。シリーズの続きが読みたくなるなあ!
深く傷つき人間として未熟だった少年が、一人の飛空士として愛した人のために旅立つというのに涙が。ロマンだ……。立派になった表紙のカルエルがまたいいなあ。
イグナシオがだいぶといいやつなので、クレアを大事に守ってくれているんじゃないかと思うとにやにやします。
「歌えない恋の歌もある」というのが切なくて。カルエルもちゃんとアリエルのことを大事だと認識していて、かけがえのない人だと思ってくれているからこそ、恋愛にはならないというのが切ないし、納得できました。彼女の将来が描かれたということはカルエルの冒険に彼女は関わらないということなのだとしたらすごく寂しい。アリーがいてくれたからこそいろんなものが救われた気がするので。
ひとまず恋歌が終わったことに拍手! 胸がいっぱいになる空の物語でした。
「大好きだから……さよなら」級友の死に苛まれていたカルエルとクレアは、想い出の湖畔で思いがけず再会する。お互いの気持ちを確かめるため、正体を明かしたカルエルだったが、クレアには別れを告げられてしまう——。一方「空の一族」との戦いで多くの仲間を失い、疲弊した飛空科生徒たちは、悩みと苦しみを抱えたまま、再び決戦の空へ向かうこととなる。仲間の思いを受け継ぎ、潰滅の危機に瀕している大好きなイスラを、大切なひとを守るために……。超弩級スカイ・オペラ「飛空士」シリーズ、驚天動地のクライマックスに突入!!(裏表紙より)
戦いに参加して仲間を失ったことで、自分たちの道を見つめ直すことになった飛空科の生徒たち。大事な人の死と向き合いながら、自分にできることを考える。戦いはますます激しさを増し、ついに撃墜されるかと思われたその時。
ああ、もう感動だ。ぶわっとなる。これだから空モノは!! ロマンに溢れてて泣いてしまった。
これまで影が薄かったイグナシオの素性も明らかになり、カルエルも覚悟を決め、クレアは風とともに恋の歌を歌う。そして現れるレヴァームの戦艦。ぞくぞくしました。
空戦の迫力もすごくて夢中で読みました。頭の中で飛行機がぐるぐる飛んでいる。
8月の強烈な日射しのもと、過酷な陸戦訓練を続けるカルエルたち。戦闘への不安と焦燥が募る中、それは若き飛空士たちの間に恋愛をも育んでゆく。そして、イスラはついに噴き上がる海「聖泉」へ到達する。これより先は「空の一族」が支配するといわれる未知の空域。カルエルたちは、イスラ後方への索敵飛行を余儀なくされるが——。「いつまでもみんなと一緒に空を飛びたい」ただそれだけを願った少年少女たちが飛ぶ空は、美しいだけでなく残酷で……。王道スカイ・オペラ「飛空士」シリーズ、驚愕と慟哭の最新刊!!(裏表紙より)
夏の訓練(=水着でわいわい)から一転、本格的な戦闘に入ったカルエルたち。後方部隊に回されるも敵と接触、そして仲間たちが次々に……。慟哭です。うああああって叫ぶ。丁寧にフラグを立てた後にいなくなるのが辛くてたまらない……。
これがただの冒険ではなく、命を賭したものであるとわかったところで次回。ファナの名前が出るとぞくぞくしますね。
――なんて自由なんだろう。クレアの胸は喜びに満ちあふれていた。青空の下、ひとりで自転車をこぎ、カドケス高等学校飛空科の入学式へ向かう。たったそれだけのことがたまらなくうれしい。そして今日は「彼」に逢える……。空の果てを目指し旅立った空飛ぶ島イスラで、カルエルたちの新生活がはじまった。各国から選抜された個性的なクラスメイトたちと、彼らとの和気藹々な寮生活。そして飛空訓練。意を決し、クレアにペアを申し出たカルエルだったが――。
希望と不安の狭間でゆれるふたつの鼓動。回り出す運命の歯車。待望の続刊!(裏表紙より)
主人公カルエルの性格がきつすぎて1巻で読むのを中断していたんですが、アニメの何話かを見てだいぶと印象を変え、読んでみようかと積んであった2巻を手に取る。それでも何年経ってるんだよ! という話なんですが。
学校生活と、カルエルとニナの交流がメインで、さほど大きな事件は起こらないのですが、ひたひたとせまる、お互いの正体がばれたらどうするんだろうというのがどきどきで切ない。本当にふたりとも楽しそうなんだもんなあ。
ここで「追憶」に関わる「神聖レヴァーム帝国」の名前が浮上。どういう風に関わってくるのか楽しみです。
愛し抜いた女を喰らい鬼となった酒呑童子は、盗賊仲間と異なり己のみが年をとらず若い姿のままでいることに苦しんでいた。そんな時、安倍晴明と名乗る老陰陽師と出会う。彼は酒呑童子を本名の鬼同丸と呼び、その苦しみを分かっているようで…。そして晴明との出会いは、同じ不老不死の哀しみを抱える鬼・雷電との出会いでもあった。表題作『鳴弦の月』と、同じく平安時代を舞台にした『影喰らい』を収録。(裏表紙より)
桐子の時代よりも遡って、平安。安倍晴明と側に仕えていた雷電、のちの弓生と出会った、鬼同丸、のちの聖。そして時代を経て鳥羽法皇の治世、雷電と鬼同丸が仕える安倍泰親の話。
ふたりがとっても若い! いや異形だからまったく若くないんだけれども。彼らがまだ影に潜みきれず、迷い、悩む姿は実に若いと思いました。こうやって歴代の当主たちを見ながら、彼らは歳を重ねたんだなあ。
古都・鎌倉にある、選ばれた者だけが通えるといわれる全寮制「桜の宮女学院」に、なぜか入学することになった風子。時間が止まったままのような、レトロで不思議な空気が漂う世界で、浮世離れした級友たちと過ごす甘美な12ヶ月——。
そして次々とふりかかる試練を乗り越えながら、風子に隠された出生の秘密と入学の理由が明かされていく。その謎を解く鍵は、「秘密の花園」で出会った上級生・凪子が握っていた!?(裏表紙より)
みんな幸せでハッピーエンド! な乙女たちの物語。やんごとなき身分の人々やご令嬢がたが通う女学院に入学したのは、陶芸家の祖父に育てられた庶民生まれの風子。けれど風子は持ち前の素直さと明るい性格で、学校に爽やかな風を吹き込む。
主人公がここまで持ち上げられると気持ちいい笑 展開の分かりやすさと、こういう女の子のくすぐったいくらいまでの幸せな話は、子どもの頃に読んでいたらきゅんきゅんしていただろうなあと思う。
調べてみたら続きがあるのか! 上級生になった風子たちが見てみたいなあ。