読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

革命前夜のフランス、パリ。降りしきる雨の中、自由奔放で美しい高級娼婦のジャンヌと身分を偽った凛々しき死刑執行人、シャルルは出会った。互いに惹かれあいながらも、けして許されることのない恋に身を委ねる2人の未来は——!? 甘く密やかに燃え上がるヒストリカル・ラブストーリー。表題作のほか、動乱のフランス革命期に一途な愛を貫いた、『嵐の狂想曲〜暁を臨む天上の歌〜』も収録。(裏表紙より)
革命を目前にしたフランス・パリでの、死刑執行人と女性の物語。死刑執行人かあ! とその立場にスポットライトをあてたことに衝撃を受けました。なんて重い立場。しかも多くの人間が首を落とされ、ギロチンにかけられていくその時代。
しかし読みながら浮かぶのはどうしてもベルばらである私をどうかお許しください。デュ・バリー夫人とかサン・ジュストとかロベスピエールと言われてもうっかりベルばら絵で再生されてしまう。
とにかく、動乱の気配漂う街に立つ男女が切なくて、すれ違いがどうしようもなくて、いい中編集でした。特に「無音〜」からの「嵐〜」が! お父さん! ちょっと火遊びしちゃったこともあるお父さん! 不器用なお父さん!(身悶え)
PR

憤怒——それを糧に、ボブは追う。別れた妻を惨殺し、娘を連れ去った残虐なカルト集団を。やつらが生み出した地獄から生還した女を友に、憎悪と銃弾を手に……。鮮烈にして苛烈な文体が描き出す銃撃と復讐の宴。神なき荒野で正義を追い求めるふたつの魂の疾走。発表と同時に作家・評論家の絶賛を受けた、CWA新人賞受賞作。(裏表紙より)
まずは読め。
という感じの分厚さと最初のアレなアレ具合に、かなり時間はかかってしまったものの、最後まで読むと、解放されたような、ほっと息をつくような気持ちよさがある物語でした。そうか、こういうのがノワールというのだな……。暴力とか反社会要素がてんこもり。
主人公ボブは、カルト集団に元妻を惨殺され、娘が誘拐されてしまう。娘を取り戻すため、カルト集団の元組織員でありジャンキーの女であるケイスの助けを得て、二人は黒い世界に入り込んでいく。物語の主なところはとてもシンプルでありながら、ボブやケイス、そしてカルト集団の長サイラスといった人物の口にする言葉が読んでいてぐっとくるというか。うまい表現が出ないけれど、真理を言葉でこねくり回して遊びながらも、本質をついてくる感じ。訳が独特でそれもまた世界観を作っていて面白かったなあ。読み始めはしんどいけれど、中盤からだんだんはまってきました。
しかし文中に出てくる単語がピー音が入ってしまうアレな感じでしかも頻出するので読まれる方は気をつけてください。私はこんなにあれやそれやの単語が飛び交う小説初めて読みましたよ……。でも不思議とそんな粘っこくはなくて、重苦しいながらも抜け出せると読んでいる間に分かってしまう話ではあったなあ。訳者あとがきにもあったけれど、妙な清爽感がありました。
勧めにくいけれど、面白かった。かっこよかった。
社会と政治と宗教、すべての世界を超える神は銃弾。この話でこれほどしっくりくるものはなかった。

「何だって俺たちを巻き込んだ?」
「悪いな」全然悪いと思っていない口調でケリーは言った。
「おまえたちの専門分野で一働きしてほしいのさ」
外で聞き耳をたてている人間には意味不明の言葉だろうが、二人にはそれで充分だった。
ケリーの眼には見たこともない冷たい光がある。
「対象は?」
「全員だ。ここにいる全員、一人残らず」
レティシアもヴァンツァーも最後は諦めたように肩をすくめた。
「あんたが俺たちの親分なら『承った』と言うところだが……」
「この場合は『了解』だろうな」
標的は『過去』
元巨大財閥総帥にして元賞金首に仕掛けられた罠。姿無き敵の狙いとは?(裏表紙より)
今回はケリー+レティシア、ヴァンツァーの共闘。おいおいそれでいいのかという感じですが、敵は報いを受けるべきことをしたので、まあそれは、まあ。夫婦が仲良さそうでなによりです。「大陸間弾道ミサイル」の言葉に噴いた。
このシリーズ、チートが一人でなくて「みんなチート(それぞれ別方向に)」という感じなので、なんというか普通の小説にはあんまりない変な安定感と面白さがあるなあ。その安定感が疲れるときもあれば楽しい時もあります。そろそろもうちょっと長編で読みたくなってきた。

みどうちんの描く摩訶不思議なラブコメディー。泰平苑家の当主・撫子は、生まれた時から魔界の王子と政略結婚することが決められていた。なぜなら、撫子の家は、代々魔界と人間界の境界を守護する家だからだ。普通の娘は、嫌がる政略結婚。しかし、撫子は違う。ヴァリーとの結婚生活を夢見てきた変わりもののお嬢様。ところが現れたのは、恋い焦がれたヴァリーではなく…爆笑必至の恋物語!(裏表紙より)
ハイテンションなお嬢様と身代わりの花婿のラブコメ。なんでタイトルが「人形姫」なんだろうと思ったら、「にんぎょうひめ」じゃなく「ひとがたひめ」と読むのかもしれないと考える(でも国会図書館では「にんぎょうひめ」で入ってたから妄想妄想)
「破廉恥ですわ!」と「おい嫁」が飛び交う会話が楽しくて、べたべたならぶこめでにやにやしました。身代わりならではの「相手が本当に好きなのは、自分が身代わりをしているあいつ」という展開がとっても美味しいです!
瀧田家の操さんが好きなんですが出番が少なくて残念。キャラ紹介の操さんがまじで好みです。旦那さんがいるんですよね、ちょっとどんな生活してるか見てみたい。

神と人と、その狭間の者である箜(くう)。その時代、神はまだ人に近く、神の心が人々に様々な影響をもたらした。愛、憎しみ、戦うこと、生と死。神話モチーフのファンタジー短編六編に序章と終章を加えた連作短編集。
これすっごく好きだったー!! 表紙はCLAMPさんなんですが、これがすごく合っている。ちょっと謎めいた雰囲気が漂っていて、私はこの神様と人が混ざり合って生きている世界がものすごく好きなんだなあと思いました……本当に好きだったんだ……。
箜の姉弟の話「リュイとシムチャッカの話」、死の神と醜い沼の神の話「グドミアノと土蛙の話」、将軍が武力で神の笛を奪おうとする「カスファィニアの笛」、盗賊と少女の「盗賊たちの晩餐」、叔父に追われる王子の話「テレペウトの剣」、すべての終わりと始まり「終わりと始まり」。
どの話もオチが読める話なんですが、これをきちんと面白く書ききるのがすごいなあ。分かりきっているけれど面白い。本当に面白い。大好き。こういう短編集が本当に好きなんだなあ……!
私が一番好きなのは「盗賊たちの晩餐」です。ちらっと悪くて、すごーくかっこいい話が好きです。
すべて読み終わった後、表紙を見ると全員が出ていることに気付く。
この本大好きだー(それしか言ってない)

彼女はこの国のあちこちで歌った。その噂は国中に広まった。彼女が歌えば歌うほど、抵抗活動に参加する者たちは勇気づけられ、力を強めていった。独裁政府は怒り狂い、彼女を捕らえようと躍起になった——今、伝説の歌姫が復活する。自由のないこの国に、春をもたらすために。(カバー折り返しより)
どこかの国の物語。寄宿学校に通う孤児の少女ヘレンと親友のミレナ。ミレナにはとんでもない歌の才能が眠っているが、そのことを知っているのはごくわずかな者だけ。同じ孤児の少年に出会ったことで、四人の少年少女の運命が動き出した。
主人公は歌姫たる素養を持つミレナではなく、ごくごく平凡な少女であるヘレン。ヘレンを通して見るこの世界は、灰色がかった夜の深い世界だけれど大切に輝く光みたいなものが見える気がする。
あっさり人が死んでしまうので「えっ」となったり、もうちょっとその後が見たかったとか色々あるのですが、ヘレンで終わるというのがなんだかしんみりするなあ。輝かしいミレナたちの物語の裏で、ひっそりと悲しみと傷を抱えたまま大人になって暮らしている人がいること。

特別に容姿が悪いわけじゃない。恋愛経験だってゼロじゃない。時には、彼氏やダンナがいることもある。……でも、常にモテないオーラがにじみ出ている「モテない系」女子たちに同情し、憐れみつつも励ましはせず、いじくりまわしたイラストエッセイ。巻末に漫画家・久保ミツロウ氏との「モテキvsモテない系」対談を収録。(裏表紙より)
かなり昔にネットで連載を読んだ覚えがあって、本になっていたのか! と思って読みました。モテない系……私はモテない系と圏外ちゃんの中間くらいかな……orz
メールの顔文字絵文字とか、服装とか、マンガとか音楽とか、あるあるすぎて面白かった。メールアドレスのかわいさについて書いてあるところがあってそういえば! と噴き出しました。そうなんだよ、モテ子ちゃんはメールアドレスがかわいいんだよ……。
「そんなことないよー」と言われるより「そうそう……そうなんだよ……」とアンニュイに同意される方が嬉しい感じとか、あーあるある! みたいな。そうそう、そんな感じなんだよ! とかそういう共感を覚えるエッセイでした。面白かったです。

現金3千万円と紫色のちっちゃな下着をトランクに詰めて、高校時代の親友・鞠子が部屋に転がり込んできた。「人を殺したの」と言って……。その日から、普通のOL千種の悪夢が始まる、と思いきや?! 腐れ縁の元カレ・都丸も巻き込んで、3人の過去に一体何があったのか。幼くも一途な恋、将来への期待と不安、そして奇妙な友情。17歳の過去と24歳の現在を交錯させながら描く、異色の青春ストーリー! 解説・吉田伸子(裏表紙より)
17歳と24歳の物語が交互に語られる。17歳パートがすごく好きです。くすぶってる感とか閉塞感とか非日常に憧れる気持ち。
都丸がすごいだめんずなんだけれどいい男で悔しい。最低なのに憎めない感じがいらっとしながらいとおしい。鞠子のだめさ加減はリアルすぎてイタタタタ。それを喜んでしまう瞬間がある千種を自分と重ね合わせて胸がぎしぎしする。

本まわりの謎、調べました!
「読書好きはモテるのか?」「処分された本の末路はどうなるのか?」「官能小説のタイトルは、誰がどのようにつけているのか?」ほか、本についてわからないこと、誰しもが(!?)気になることを、北尾トロがカラダを張ってねほりはほり調べました! 雑誌『ダ・ヴィンチ』で創刊当初から続く人気連載、通算170本超から厳選して14本を収録。解説マンガは『暴れん坊本屋さん』の久世番子。(裏表紙より)
紹介文に上がっている官能小説のタイトルの話が面白かったです。全然分からないジャンルながらも、登場するタイトルが面白い。
出版業界について踏み込むのかなーと思ったら読者寄りの話でした。阪神大震災から一年くらい経った頃のものとかもあったりして、時間の流れを感じる。東日本大震災の被害に遭われた人たちもこんな風に感じているのかな。想像しかできないけれど……。

様々な事情から、家庭では暮らせない子どもたちが生活する児童養護施設「七海学園」。ここでは「学園七不思議」と称される怪異が生徒たちの間で言い伝えられ、今でも学園で起きる新たな事件に不可思議な謎を投げかけていた。
孤独な少女の心を支える"死から蘇った先輩"。非常階段の行き止まりから、夏の幻のように消えた新入生。女の子が六人揃うと、いるはずのない"七人目"が囁く暗闇のトンネル……七人の少女をめぐるそれぞれの謎は、"真実"の糸によってつながり、美しい円環を描いて、希望の物語となる。
繊細な技巧が紡ぐ短編群が「大きな物語」を創り上げる、第十八回鮎川哲也賞受賞作。(カバー折り返しより)
あらすじからどシリアスで黒々とした話だと思い込んでいたので、からっと明るい話でちょっとびっくりしました。表紙絵の方が昔からすごく好きで、綺麗だなあとにこにこ眺めてしまう。
日常の謎をひとつひとつ解いていくと、大きな物語が浮かび上がる仕掛けになっていました。ひとつひとつは結構すぐに分かったんですが、最後はえー! とすごくびっくりしたなあ。でも一編一編が大体似たような流れで終わってしまうのがちょっと残念。
ほんのりとした少年少女の恋があったり、憧れがあったり、読んでいて微笑ましい気持ちになりました。面白かった。